ニグンさんがお気に入りなんです。   作:ぷにぷに肉球ランド

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04 いや初めてがサキュバスってどうなの? (某骸骨Mさん談)

「モモンガ様、シラタマ様はあの人間をどうするおつもりなのでしょう?」

 

 

 執務室にてニグンから得た情報を整理していたモモンガに、守護者統括であるアルベドが問いかける。その表情を見るに心底不思議だという様子だった。

 シラタマから人間一匹を譲って欲しいと頼まれた際、てっきりアルベドは食料か虐待用か玩具かおやつか拷問遊びでもしたいのだと思っていた。

 が、その後モモンガからたぶん違うんじゃないかなあ的な事を言われたのだ。

 不思議だった。まるで理解できない己の知能を呪ったほどだ。守護者統括という地位でありながらお仕えする至高の御方の考えを読み解けぬとは、いや、至高であるからこそ読み解けないのだろう。悔しさからアルベドは歯噛みする。そんなしゅんとしているアルベドに気づいたのか

 

「……私もシラタマさんきっての頼みだから了承したまででな。その、私にも理由はまだわからないのだよ。だからお前が恥じる事はないぞ、アルベドよ」

「モモンガ様……っ!」

 

(いやほんとなんかノリノリだったし。俺だって知りたいよシラタマさん……あんなに生き生きとしたあんた初めて見たよ俺。あんな笑顔見せられちゃNOとは言えないよ……まあ大切な仲間のお願いを断る理由はないけどさ! 転移してから絶対キャラ変わったよねあの人!)

 

 

「む、変わった……? そうか、もしかすると」

 

 ふと顎に手を当てモモンガが唸る。

 この世界に転移し、モモンガは自分の精神が人間ではなくなっている事に気付いていた。元人間でありながら、同種であったはずの人間が虫程度にしか思えない。

 つまり、シラタマにもこの現象が当てはまっていてもおかしくないのだ。

 

 

(そうか、だからあんなに真面目だったシラタマさんが……うん、これなら納得がいく!)

 

 

「もしかするとサキュバスの種族特性か何か、かもしれないな」

「サキュバスのですか!?」

 

 アルベドが食いつくように声を上げる。

 ああ、アルベドもサキュバスだったなとモモンガは鷹揚に頷き

 

「私も詳しくはないが、たしかサキュバスは異性の精気を奪いそれを自らの魔力、いやエネルギーに変換……だったか? つまりバフをかけることになるのか、それとも能力向上、強化か? いやレベルアップにも影響が……? しかしシラタマさんのレベルももう100だったはず……ふむ」

「つまりシラタマ様はあの人間を使って御自らの特性を調べている、ということですね!? さすがは至高の御方です」

「えっ? あー、ああ、うむ。そ、そのはずだ! (シラタマさん違ってたらゴメン……ん?)」

 

 アルベドが何やらもじもじと身体をくねらせている。息遣いも荒い。

 モモンガは嫌な予感を感じそっと距離を置こうとしたが、遅かった。アルベドがモモンガに飛びついてきたのだ。

 

「モモンガ様っああモモンガ様! 私もサキュバスとしてハアッ種族特性の確認をハアハアしたいと思います! いえするべきですっ! どうかハアハアモモンガ様の精気を私にハアハア!!!」

「よ、よせ! よすのだアルベド! 私はそんなつもりは、というか私の身体はおいアルベド――――ッ!!?」

 

 これがサキュバス+ビッチであるの力なのかと、モモンガは騒ぎを聞いて駆けつけたセバスとプレアデス達、偶然通りかかったマーレに連行されるアルベドを見送りながらがっくりと項垂れる。

 

 

(こ、怖かった……はああっ、アルベドはすごく美人だけどさあ! 俺みたいな童貞に初戦サキュバスはキツいよ……どこのエロゲーだよペロロンチーノさんしか喜ばないだろ! うう、ほんとに怖かった……はあ、こんな目に合ってる男なんて世界に俺くらいだろうなあ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「神よ――――――ッ!!!?」

 

 シラタマの自室最奥地にてニグンの悲鳴が上がった。

 ベッドに全裸で大の字で磔にされ、その上にのっしりと跨りながらシラタマが満足そうに頷いている。

「か、神よ……あの、これは一体……あの、あのオ!?」

「うん? ただの拘束だけど?」

「それはわかります!!!! あの、あのですね、何故このような事をなさるの、かと……ですね……!?」

「いや、普通に遊ぼうかと」

「あそ……ッ!?」

 

 こんな状態で行う遊びとは何だ。いや聞かれずともニグンは理解した。何故ならシラタマの背後の壁には数々の悍ましい拷問器具が飾られているのだから。

 

 

「…………神よッ!!!!」

 

 

 ニグンは決死の哀願をした。そりゃあもう死ぬほど頑張った。カルネ村にてもう一人の神、モモンガ様という御方に命乞いをした時よりも必死だったかもしれない。とにかく叫んだ。

 しかしシラタマはやれやれと首を振り

 

「あのね。何か勘違いしてると思うけどお前……えーと、ニグンだっけ? ニグンは私の玩具だからね、そもそも拒否権はないのね。わかる?」

 

「…………お、おも……ちゃ……」

 

 優しく悟らせるシラタマの微笑みに、ニグンは本日何度目かの絶望を知る。

 

「楽しみだなあ、ああ楽しみ。これってサキュバスの本能なのかな? えへへへ、たっぷり遊んであげるからねえ」

「さ、サキュバス……ですか? それが神の、御種族で……?」

 

 

 ――サキュバス。今まで実際に遭遇した事も、法国周辺で出たという報告もなかったが、その種族は六大神の残した文献でも見たことがない。陽光聖典は亜人討伐や集落殲滅をする上で人間以外の種族を学ぶ機会が多いのだが――しかしニグンの記憶にサキュバスという種族はなかった。

 もしかすると特別な種族なのか。かの神、スルシャーナ様の御種族もスケルトンでもエルダーリッチでもなかったという。先程モモンガ様に教えて頂いたオーバーロード、という種だったのだろうか。まさに神のみに許された種族だと――

 

 

「あれ?」

 ニグンがサキュバスを知らない風なのを見てシラタマは目を丸くする。

「……ふふ、なるほどなるほど。知らないなら、さ。教えてあげるよ?」

 そう言って微笑み、つつー、とその筋肉に指を這わせていく。ニグンはすっかり蒼褪め、瞠る。

「……んふ、くふふふふふふ」

 ここにあるのは環境もろくな食事もままならないリアルではなかなか拝むことができない本物の肉体だ。筋骨隆々な逞しい男の身体だ。

 

 ――嗚呼、とっても美味しそうだとサキュバスの精神が舌舐めずりする。せっかくだから楽しめ、と。

 この世界に来てから自分の精神が少しばかり変化しているのはシラタマもなんとなくは気づいていた。

 今まで真面目ぶって我慢していたものが、転移してからできなくなっているのだ。無理矢理鍵をして仕舞い込んでいた本能が溢れ出てくる感覚だろうか。

 いや、そもそも今までここまで性癖どんぴしゃりな玩具が見つからなかっただけで、本当は何も変わっていないのかもしれない。

 だがもうそんなのはどっちでもいいのだ。

 今、シラタマにとって大事なのはひとつしかない。

 

 

 

「せいぜい私を楽しませてね?」

 

 

 

 

++++++

 

 

 

 

 シラタマがニグンを連れて行ってから二日。

 なかなか部屋から出てこないのを心配したメイドに責付かれるようにモモンガはシラタマに《伝言》を送り、そこでようやくシラタマは二日も経っていることに気づいた。

 

『うそだ……まだ半日くらいしか経ってないかと……』

『二日ですよ……そろそろ今後について相談したいのでいいですか?』

『ア、ハイ。なら今からそっち行きますね』

 

 しまったなあと《伝言》を切り、とりあえず服を着て、着せる。

 そうだ。せっかくだし散歩がてらに連れて行こうとシラタマは床に転がったまま動かない――というか瀕死。HP残り1くらい――ニグンを掴み上げ、来た時同様に引きずっていくのであった。

 

 

 

 

 執務室に入るや否や最初に口を開いたのはアルベドだった。それも待ってましたと言わんばかりに

 

「それでっハア、シラタマ様! サキュバス特性の実験結果は如何でしたか!?」

「えっサキュバス特性の実験?」

 

(なんのこと? アルベドなんかモジモジしているし……モモンガさん?)

 

 モモンガを見るとスッと視線を逸らしてきた。

 

(あ、さては何か勝手に吹き込んだなこの骸骨)

 

「あー……うん。やっぱり思った通りだった、よ?」

「まあっ!」

 

 いや何が「まあっ!」なんだと。アルベドの言う実験の意味はわからないが、楽しく致せたかという質問であれば答えは「ええ勿論最高でしたご馳走様でした」――だ。嘘ではない。シラタマの直感は間違ってはいなかったと断言できるのだ。

 

 この男は自分の性癖ど真ん中である、と。

 

 ひとつ見た目は平々凡々。

 ふたつ健康かつ筋骨隆々な男の身体。

 みっつそれなりエリート経歴。

 よっつほどよくプライドありきでなんか残念。

 いつつ小物界の大物。

 他にも細かいこだわりはあるが、今までどこを探しても見つからなかった理想がたくさん詰まった玩具、いや男であった。

 これほどまでに欠陥だらけの玩具をユグドラシルが用意できただろうか? 否!

 完璧主義のNPCで表現できただろうか? 否、断じて否である!

 ぶくぶく茶釜はかつて彼女にこう言った。「シラタマちゃんってダメな男フェチだよね」――と。

 

 

「もうほんと思った通りどころか予想以上でさこれが、サキュバスとしての直感? みたいな?」

「サキュバスの直感ですか?」

「うんうん。アルベドからしてみればぶっちゃけ人間の男なんてって思うかもしれないけどこれがピ――――でピ――――とか初めてにしてはピ――――な私のピ――――もこうピ――――でさあ」

「な、なんと! そのようなことが!?」

「シラタマさ――ん!? もうそのあたりで! そのあたりでやめたげてほんとお願いしま――すッ!!」

 

 レフェリー、いや、モモンガストップであった。

 

 モモンガの位置からだとシラタマとアルベドの背後、つまり扉の前で蒼褪めた顔を伏せ震えているニグンがどうしても視界に入るのだ。

 

 いや可哀想すぎる! こんなのは公開処刑だと何故かモモンガの方の精神が沈静化される。

 

(なんなの……サキュバスってみんなこうなの? コワイ……サキュバスコワイ……ははは、でも俺は無敵の童貞だぞーそもそももう付いてないんだからなーあはははは)

 と、そのまま現実逃避していたが

 

「いやでもさぁお互い楽しめたよね? お互いにさあ……んふふ、それに別に初めてってわけでもなかったでしょ?」

 ね? とシラタマがニグンの方を振り向き

「えっ」

「えっ」

「……ぇっ」

 唐突にニグンの様子が、というかあきらかに動揺した。

「え、まじ? え?」

 これにはシラタマも初耳だったらしい。

「お、恐れながら……何度も、申し上げました……」

「えっウソ…」

 おいちょっと待てなんだこの空気は!?

 現実逃避してる場合じゃなかった。その様子にモモンガが恐る恐る口を開く。

「……そう……だったのか?」

「……っわ、私は神に使える身……その身は清く正しくなければ信仰とは言え、言えず……」

「あ、うん」

 まじかーとモモンガは再び沈静化される。それくらいにモモンガも動揺していた。

 どんな酷い、いやとんでもない目に合ったのか察してしまったからだ。

 しかも当の加害者であるシラタマは狼狽えるどころか歓喜の表情を浮かべ、追い打ちをかけるようにこれでもかというドヤ顔で「初めての相手はこのシラタマだ――ッ!」なんて煽っている。その隣ではアルベドが「さすがシラタマ様ッ! 私がモモンガ様にできない事を平然とやってのけるッそこにシビれる!あこがれるゥ!」なんて賞賛している。

 

「うわあ…」

 

 酷い。酷すぎる。こんなのあんまりだ。やめたげて! もうやめたげてよお! その光景にモモンガは目を覆いたくなるのを必死に耐え、むしろこの場から逃げ出したいとすら思った。しかし

 

(し、シラタマさんがここまでサキュバスの種族特性に引っ張られてるとは……うう、俺もいつか完全にアンデッドとなってしまうのだろうか? いや俺は! 俺がしっかりしなくては!)

 

 いや別にシラタマ自身はとくに昔と変化はないのだが。悲しきかなモモンガはそれを知らない。

 

 そしてニグンの方を見遣ると、完全に目が死んでいた。ああ、あれが所謂レイプ目、いやレイプ後目なのかとモモンガは居た堪れない気持ちになり……また沈静化される。

 レベル100のサキュバスに完全にロックオンされてしまったという立場が他人事ではないからだ。むしろモモンガとは違って向こうには自己防衛の手段がない。まったくのゼロ、皆無である。なんてこったいとモモンガは憐憫の情を催す。

 

 

(……ニグン、俺カルネ村ではお前のこと即殺すか情報引き出してから虫けらのように殺すか拷問して殺すか普通に殺すつもりだったけど……なんか、ゴメンな。これからは優しくするよ……うん……ほんとゴメン…)

 

 

 過去のことは水に流そう。

 そう心のメモ帳に書き込むのであった。

 

 

 

 

「……えーと、ゴホン。それで」

 

 全員の視線がモモンガに集まる。

 

「ニグンよ、お前はもうシラタマさんの玩具……あーいや、所有物だ。そうである以上我々から手を出す事はない……ただし」

 

 わざと言葉を区切り、溜める。

 そして場の空気がピンと張り詰める中でゆっくりと杭を打ち付けた。

 

 

「裏切った時は…………どうなるかわかるよな?」

 

 

 途端、ニグンの目が大きく見開かれる。恐怖に声が出ないのか口をパクつかせ、必死にコクコクと頷いた。

 

「……よろしい」

 

 ひとまずはこれでいいだろうとモモンガは肩を落とす。

 

 

 

「それでは今後について話し合うとしよう」

 

 




ニグンさんごめんな…なんか、ごめん。


シラタマさんホックホクです。やったね!
そしてこの世界のアルベドさんは「ビッチである」のままです。モモンガさんへの愛というよりはビッチ成分が勝ってます。さすビッチ!

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