バンドリ短編集   作:キズカナ

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離れていても繋がる空(戸山香澄)

 

 真っ暗な部屋の中で俺は1人、机に置かれた問題集と向き合っていた。

 一段落ついたところでペンを置き、背筋を伸ばして一息つく。そのまま時計を見ると時刻は既に深夜1時を回っていた。

 

「少し休憩するか…。」

 

 椅子の背もたれに体重をかけて机の引出しにしまっていたスマホを取り出す。電源をつけ、適当にネットサーフィンをしていると突然某緑の連絡アプリの着信音が響いた。

 画面にはある人物の名前が映し出されていた。電話を賭けてきた人物は戸山香澄。俺の幼馴染みでしょっちゅう遊んでいた。今はお互い別々の高校に進んだ為、特に会うことも無くなっていたし、声を聞くことも無くなっていた。

 まーバンドも始めたらしいし、しゃーないっちゃしゃーないんだけどなんか寂しかったりもするのはここだけの話。

 

 とりあえず妙な雑念は置いといてスマホの通話ボタンをスライドした。

 

「もしもし?」

『風音くぅ~ん!良かったぁ~!』

 

 耳元にスマホを当てた瞬間、大音量の声が響き渡った。

 

「おいおい…お前今何時だと思ってんだよ…。」

『だってえ~…だってえ~…』

「……で、どうしたよこんな夜中に。」

 

 話を聞く限り、どうやら今日の昼頃にポピパの皆でホラー映画を観たらしい。そしてその内容がとんでもなく怖かったんだとか。それで怖さのあまりに眠れなくて俺に電話をかけてきたらしい。

 

「だからってこんな時間に俺にかけてくんなよ…」

『……ダメだった?』

「いや駄目とは言わないけどもし俺が寝てたらどうする。」

『うーん…かけ直す!』

「要するに何も考えてなかったと。」

 

 若干呆れながらもとりあえず話を聞くことにした。

 

「で、何を話せばいいんだ?」

『えっと……あ、そうだ!この間ポピパの皆とやったライブの話とか?』

「ライブ…?」

『先週CiRCLEでやったライブだよー!風音くんにもチケット渡したでしょ?』

「あーハイハイ、アレね。」

 

 そう言えばあったなと思いつつ机の引き出しを開け、その時ライブの半券を探しだした。

 

「にしてもよくあんな奇抜なことをしようと思ったな。」

『奇抜?』

「お前ライブ中に飛んでたろ。」

 

 と言うのも、この戸山香澄は当時のライブで突然ジャンプしたかと思ったら空を飛んでいたのだ。多分後ろからワイヤーで吊るしていたのだとは思うが、その時見ていた俺としては衝撃と心配で開いた口が塞がらない状況であった。

 

『でもお客さんも楽しんでくれてたよ?』

「それよりもこっちは衝撃の方が大きかったんだよ。大体何でライブ中に飛ぶなんて発想に至るんだよ。」

『うーん…やりたかったから?』

「それで採用されるお前のバンドどうなってんの?」

 

 本気でこの疑問しかない。普通「空飛びたーい!」と言ったとしても大体却下されるもんだろ。

 

『うーん…有咲には『駄目にきまってんだろー!』って止められたんだけどね~。多数決取ったらおたえとさーやがあげてくれて通っちゃった!』

「それで通るお前らのバンドの規格が計り知れないんだけど!?」

『えへへ~。』

「いや褒めて無いからな?」

 

「それでね」と話を続ける香澄はどこか楽しそうで正直羨ましいと思った。最近はあっていないが電話越しでも彼女が凄く楽しそうなことが伝わってきて、嬉しいようでどこか寂しくも感じてしまう。

 

『……なんだけど~

 ……あれ?風音くん?もしもーし?』

「……ん?ああごめん。何の話だっけ?」

『えー!?聞いてなかったの!?』

 

 考え事をして香澄の話を聞いていなかった俺に対して「もー!」とわかりやすく怒っていた。

 

「そう言えばさ、香澄が意識始めたのってあの時だったよな。ほら…あのお前と明日香ちゃんが迷子になったとき。」

『そうそう!あの時聞こえたんだ~星の鼓動が。』

「……改めて聞いてみるけどさ、どんなだった?」

『うーん、キラキラしてて…ドキドキしてた!』

「相変わらずの返答だな。」

 

 ほくそ笑みながら話を続ける香澄の言葉に耳を傾けながら席を立ち、部屋の窓を開けた。

 その時、目に飛び込んできた風景に思わず釘付けになった。

 

「香澄、空見てみろ。」

『空?何があるの?』

「いいからいいから。」

 

 俺が促すと電話の向こうから窓を開ける音が聞こえた。そして香澄の「ほわぁ…」という声も同時に聞こえた。

 

『風音くん!星がいっぱい出てる!』

「だろ?お前にも見えたか。」

 

 俺たちの目に映るのは、普段は曇り空や街の街灯などで見にくい数多の星々だった。おそらく今の季節が冬ということで空気が乾燥していること、そして現時刻は既に深夜1時を越えていたことから辺りの建物の光が消えていて光の影響が少なくなり星が見えやすくなったのではないだろうか。

 

『あの時みたい。』

「あの時……もしかして?」

『うん。あっちゃんと見たキラキラドキドキみたい。』

 

 成る程。全く同じという訳ではないけどこういう感じだったのか。確かにこの感動は一言で語るには少し難しいな。その結論がキラキラドキドキなのかはまだ俺にはわからないけど。

 

『ねえ、風音くん。』

「ん?」

『なんか…不思議だよね。』

「何が?」

『あっちゃんと見たときはさ、同じ場所で一緒に同じ景色を見てた。でも今は風音くんとは離れた所にいるのに今同じ景色を一緒に見てるんだよ。』

「そう言われりゃ確かに。」

 

 突然の香澄の言葉を納得と関心を抱きながら聞いていた。

 

『それで思ったんだけどね。どれだけ離れていても…私たちはこの空の下で繋がっているんだなって思っちゃった。』

「そうか…。」

『そう考えるとさ、なんか…キラキラドキドキするんだ。』

「………ハハッ。」

 

 香澄のその一言に俺は思わず笑いを溢してしまった。それを聞いた香澄は『ちょっとー!』と苦情を入れ始めた。

 

『なんで笑うのー!?』

「あー、ごめんごめん。なんか香澄らしからぬ発言だなと思うと…つい、な?」

『それどういうことー!?』

 

 そんな騒々しいお相手との通話はそれから2時間以上に渡った。その間俺たちは冬の寒い季節であるにも関わらずずっと窓を開け、夜空を眺めていた。

 しかし楽しい時間はあっという間というものなのか電話の向こうから香澄のあくび声のようなものが聞こえてきた。

 

「どうした?眠たくなったか?」

『うーん…なんか風音くんと話していると安心しちゃって…』

「じゃあそろそろ寝ろよ。朝起きられなくなるぞ?」

『はーい。じゃあまたね~。』

「おやすみ。」

『おやすみ~。』

 

 そうして俺はスマホの通話終了ボタンを押し、再び椅子の背もたれに寄りかかった。「騒がせやがって」とは思いながらもなんだか悪い気はしなかった。

 

(さて、次来たときはどんな話をしてやろうかな。)

 

 そう考えながら俺は再びペンを持ち問題集を解き始めた。

 

 

 





信じられるか?これ最後に投稿したの去年の10月なんだぜ?
というのはさておきリクエストのキャラであるにも関わらず長々と放置してすみませんでした。
なるべく今後はバランス良く投稿していきたいと思いますのでどうかよろしくお願いします(出来るとは限りませんが…)

良ければコメントや評価よろしくお願いいたします。

前書きにその話ごとの設定書いた方がいいですか?

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