バンドリ短編集   作:キズカナ

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キズカナ発の試み、参ります。

因みに今回は文字数8000文字越えました。くそ疲れました。


ドラムスティックは2本で1つ(大和麻弥)

 

 ○月□日

 ジブンはパスパレのスタジオで倒れ、病院に運ばれました。目が覚めるとジブンは病室のベッドで寝ていて今置かれているジブンの状況がいまいち把握出来ませんでした。

 お医者さんの説明によると体が負荷に耐えられずに倒れ、今に至る…とのこと。つまりは過労です。

 何故過労になったかというと、パスパレのステージ用の機材の殆どが故障してすぐに修理に取りかからないと間に合わなくてジブンも自ら協力しました。

 ですが思っていたより壊れ具合が深刻で直すのに骨が折れるところばかりでした。スタッフの皆さんも根を上げる程に。ジブンはパスパレのバンドの練習や個人の仕事を終えた後でスタッフさんたちを手伝っていました。なので休息も思うようにとれてなかったんです。その事を見かねて皆さんも心配の声をかけてくれたのですが「ジブンがやらなきゃ」の気持ちが強くなってついつい無理をして……こうなったと。

 千聖さんにはきつく怒られましたし、彩さんに日菜さん、それにイヴさんも凄く心配してくれました。本当、皆さんには申し訳無いです…。

 因みに今はだいぶ体調も良くなったんですが、千聖さんが念のためと言って検査入院という形でベッドの上なんです…。まあ、ライブの方はジブンが退院してから間に合うように調整させているのが不幸中の幸いでしょうね。

 

 パタン、と読んでいた本を閉じて天井を見上げる。流石に2週間も入院していると暇で仕方ない。ああ…スタジオの機材が恋しいです…。

 

「ねーねー。君も暇してるの?」

 

 天井を見てると声をかけられました。声がした先を見るとそこには隣のベッドに寝転がっている男の子がいました。

 

「えっ?あ…まあ…そういったところでしょうか…。」

「あ、急に話しかけてごめんね?迷惑だった?」

「えっ?いやいや!そんなことは無いですよ!」

「そっか。それなら良かった。」

 

 まあ…突然話しかけられて少し困惑はしましたけど…。でも不思議と悪い気はしませんでしたね。

 

「君っていつからここにいるの?」

「えっと…ジブンは2週間前からみたいです。」

「そっか~。俺は1ヶ月くらいここにいるんだよね~。」

 

 遠い目をしながら話していたその子は「そう言えば」と言いながら再びジブンに振り向きました。

 

「自己紹介まだだったね。俺は涼南風音。よろしく!」

 

 これがジブンと彼の…忘れられない出会いでした。

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

「……病院食って味薄い。」

 

 お昼時、隣のベッドで食事をしていた風音くんが愚痴を溢していました。

 

「ねえ麻弥ちゃん……って食べるの速くない?」

 

 既に自分の分の食事を終えていたジブンは空になった食器を横のテーブルに置いて本を読んでいました。

 

「そうですか?というか風音くんの方こそ食べるの遅い気がするんですが…。」 

「だってさ~味薄くて箸が進まないもん。もうちょっと塩つけてくれてもいいのに…。」

「でも病院側もちゃんと健康を考えて、身体に良い食事を作ってくれてるんですから食べなきゃ失礼ですよ。」

 

 ジブンがそういうと風音くんは渋々ご飯を食べていました。

 数分後、ようやく食べ終わったみたいでまたジブンに声をかけてきました。

 

「なに読んでるの?マンガ雑誌?」

「これですか?実はこれ機材のカタログなんですよ…。」

 

 そう言うと風音くんはベッドから起きてジブンの方に来ました。本が見たいのかと思ったジブンは彼にも見やすいように机に広げました。

 

「フンフン…なんかいっぱいあるけど何か違いとかあるの?」

「ありますよ!ドラムはそれぞれ細かい違いがありまして、中でもこれなんかいい音出すんですよね~。もう心に弾ける感じの音でジブン大好きなんです!」

「そうなんだ~。」

 

 彼が反応してジブンは思わず「やってしまった!」と思いました。ついつい熱が入ってアツく語りすぎてしまいました…。

 

「ねえ麻弥ちゃん…俺にもドラムのこと色々教えてよ。」

「えっ?」

 

 思いがけない風音くんの言葉にビックリしてしまいました。

 

「だって、麻弥ちゃんが凄く楽しそうに話すんだもん。だから俺も詳しく知りたいんだ。」

 

 笑いながら彼はそう答えてくれました。その時の彼の笑顔を見ているとなんだかジブンまで嬉しくなっちゃいそうでした。

 

「ジ…ジブンで良ければ!」

 

 そこから先はジブンがドラムについて雑誌を見せながら色々と教えていました。風音くんもなんだか凄く楽しそうでした。そしてジブンもなんだか楽しくなってきました。

 

 このままずっとこの時間が続いて欲しい…そう思う程に。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 数日後、ジブンが退院する日がやって来ました。もともと検査入院ということだったのでそんなに長くいる予定は無かったんです。その事を風音くんにも話したところ「そっか…。」とだけいってそれっきりになってます。

 

「風音くん?」

「……何?」

「もし良かったらなんですが…これから時間があるときは遊びに来てもいいですか?」

 

 そう言うと毛布にくるまっていた風音くんが少しだけ頭を覗かせてきました。

 

「……来てくれるの?」

「はい!風音くんさえ良ければ!」

「じゃあ…お願いします。」

 

 そう言ってもまだ顔を窓に向けたままでした。でも布団から出てた耳は少し赤くなってるように見えました。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「それでですね。今度発売されるドラムなんですけど…」

 

 ジブンが退院してから1週間が経ちました。パスパレの練習とかが無いときは学校帰りによくここに足を運んでいます。今は風音くんに新作ドラムの魅力について色々と語っているのですが…

 

「えっ?ドラムって音違うって聞くけどどうやって音変えてるの?」

「あー、それはですね…」

 

 このように彼も興味津々な様子で話題が尽きないんですよね。ジブンの趣味に興味を持ってくれて……本当に嬉しい限りです!

 

「ねえ麻弥ちゃん、今度の日曜日、俺外出許可貰ったんだ。だからさ、」

 

 次の彼の言葉にジブンは耳を疑いました。それは何故かというと…

 

 

 

「今度2人で楽器店行こうよ!麻弥ちゃんの好きなドラム、俺も見てみたいんだ!」

 

 こう言われたからです。

 

「ええっ!?ジ…ジブンとですか?」

「…もしかして……都合悪かった?」

「いえいえ!全然大丈夫ですけど……ジブンなんかでいいんですか!?」

「なんかっていうより……麻弥ちゃんとだから行きたいんだよ俺は。」

 

 ジブンにデコピンをした彼は屈託の無い笑顔を向けてきました。

 

「それじゃ日曜日楽しみにしてるよ!」

 

 彼の笑顔は…ジブンには眩し過ぎました。

 

 そしてジブンは……その笑顔に心を奪われていました。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 遂に当日になりました。

 いつもより服装や身だしなみを気をつけて支度をし、彼の病室に向かいました。ジブンが病室の扉を開けると既に彼はいつもの入院時の服から私服に着替えて車椅子に座っていました。

 

「あ!来た来た!」

 

 ジブンに気付くと車椅子を動かしてこちらまでやって来ました。

 

「すみません。お待たせしました!」

「ううん、全然大丈夫!」

 

 そう言うと風音くんはジブンの服装を見てました。いつもと対して変わらないとは思うんですが……

 

「ねえ、何か麻弥ちゃん雰囲気違う?」

「えっ!?そ……そんなことは無いですよ!」

「うーん…まあいっか。ほら、早く行こ?」

「あ、待ってください!ジブン、車椅子押しますから!」

 

 車椅子を動かしながら病室から出る風音くんを追ってジブンも後を追いました。

 それからそう遠くないところにあるジブン行きつけの楽器店『江戸川楽器店』に到着しました。中に入るとギターを始め、ベースやドラムといった沢山の機材がそこらじゅうに……はあ…なんかテンション上がって来ました。

 

「ねえねえ!このギター凄いよ!あ、でもかなり高い…。」

 

 風音くんも凄く楽しそうで安心しました。というか気づかないうちに結構移動してますね…。車椅子の使い方になれてるんですかね…?

 それからはギター、ベース、キーボードなどの楽器を興味深そうに見てました。ジブンの解説にも凄く興味を持ってくれて……ジブンも凄く楽しくなってきました。

 

「それじゃドラム見に行こ!」

 

 そういって車椅子を動かしてドラム売り場までやって来ました。

 そこには色々な種類のドラムがあって、ステージでよく使うドラムや電子ドラムなど、一言で語るには足りない程の多さでした。

 

「ねーねー、ドラムって難しいの?」

「そうですね…。慣れるまで時間がかかると思います。でも上達してるって実感が沸いてくると凄く楽しくなるんですよ!」

「へえ~。……そうだ!麻弥ちゃんちょっと弾いてみてよ!」

「えっ!?ジブンがですか!?」

 

 突然の風音くんの提案にジブンはビックリしました。ワタワタしている間に風音くんは店員さん試し弾きの許可をとっていたそうで…ホントこういうところは日菜さんっぽいですよね…。

 

「麻弥ちゃん、試し弾き大丈夫だって!」

 

 時すでに遅し……というべきでしょうか…。ジブンは苦笑いしながら用意されたドラムの椅子に座りドラムスティックを構えました。

 演奏するのはパスパレの曲である『SURVIVER ねばーぎぶあっぷ!』です。ドラムを叩き、ジブンは演奏を始めました。

 

 

 それから何分たったでしょうか。気づかないうちに演奏にのめり込んでいたみたいですが……。ジブンは不安になり風音を横目で見ると彼は目を輝かせながらこちらを見ていました。

 

「凄い……凄いよ!なんか詳しくは言えないけど…とにかく凄かったよ!」

「ちょ…ちょっと風音くん!?」

 

 車椅子から倒れそうな勢いで彼は前のめりになって話しかけて来た為なんとか彼が転ばないように必死で支えました。

 

「流石プロは違うね。もしかして芸能界の中でも結構上位で上手いんじゃない?」

「それは言い過ぎですよ…。ジブンなんてまだまだですし…。」

「うーん……そうだ!」

 

 何かを閃いたように風音くんは手を叩きました。

 

「決めた!俺もドラムやる!」

 

 風音くんの突拍子も無い言葉にビックリしましたが驚くのはまだここからです。

 

「今はまだ無理だけどさ、もしその時が来たら俺に麻弥ちゃんがドラム教えてよ!」

「ええっ!?ジブンがですか!?」

「逆に麻弥ちゃんじゃないとヤダ!」

 

 彼はそこまで断言しました。正直ビックリしましたし、『ジブンで大丈夫なのかな』と不安にもなりました。でも……それ以上に…なんだか嬉しくなりました。

 

「わかりました。じゃあその時は手取り足取り教えてあげますね!」

「うん!」

 

 屈託の無い笑顔でそう言った彼は思いっきり背伸びをして「俺も頑張らないとなー!」と呟きました。

 その後、色々な機材を見て楽しんだジブン達は時間も忘れて二人で盛り上がってました。

 楽しいときはあっという間…と言いますがまさにその通りですね。……神様は少し意地悪ですよ。ジブンはまだまだ彼と楽しい時間を過ごしたかったのに…。

 

 

 病院に戻ったジブン達は風音くんがベッドに戻ると、ジブンもそこでお別れを言って帰ろうとしてました。その時、彼から「待って」と呼び止められて、彼の元に向かいました。すると彼は1本のドラムスティックをジブンに差し出しました。

 

「今日付き合ってくれたお礼。実はこっそり買ってたんだ。これ。」

 

 彼の手元を見るともう1本のドラムスティックが握られてました。

 

「あ、このスティックはただのスティックじゃないんだ。ここ見てよ。」

 

 風音くんが指差したところを見るとそこには『MAYA YAMATO』と刻まれていました。そして彼のスティックには『KAZANE SUZUNAMI』とお互いの名前が刻まれてました。

 

「風音くん…これって…」

「いいでしょ?いつかこれ使ってドラム演奏しようと思っててさ。だから…その時までそれ預かっててよ。」

 

 ジブンはそれを聞いてなんだか嬉しくなりました。このスティックは2つで1つ、彼がドラムを弾く時にはジブンのも必要になる。その時まで……これはジブンが大切にしておかないとですね。

 

「わかりました!ジブンが責任もって預かりますね!」

 

 ジブンはその日は彼からスティックを預かり、彼とお別れしました。その時の彼は子供のように笑顔で手を振ってました。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 ○月□日

 

 ジブンは何時ものように彼に会いに行きました。気づけばこれが習慣化してますね…。千聖さんにも言われましたけどなんだか最近のジブンは凄く生き生きしてるみたいで…ジブンでも理由はなんとなくわかるんですが…いざ自覚すると恥ずかしくなりますね…フヘヘ。

 

 彼の病室の前に来たジブンは部屋に入る前に再び深呼吸しました。…なんかここ最近は会うだけでも緊張しますから…。今日も沢山機材やパスパレの話が出来れば言いなと思い、病室の扉を開けました。

 

「風音くん。今日も来ました…よ……」

 

 カーテンを開けたそこには…何時も笑って出迎えてくれた風音くんの姿はありませんでした。どこか出掛けたのかな?と思いそこで待とうとしたその時…

 

「あの…涼南風音さんのご友人でしょうか?」

 

 1人の看護師さんに声をかけられました。

 

「はい。彼は今…お出かけ中でしたか?」

「……えっと…関係者の方から聞いてませんか?」

「何をですか?」

 

 深刻そうな顔をしながら看護師さんは口を開きました。

 

「………え?」

 

 その言葉にジブンの世界は……ジブンの時は……完全に止まりました。嘘ですよね?何かの冗談ですよね?

 

 

 

 

 

 風音くんが……死んだなんて…。

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 それからと言うものの、ジブンは毎日がこれまでと違い虚無のように感じて過ごしてました。

 頭の中が空っぽになって…何も考えられなくなって…目に写るものすべてがモノクロな何かにしか感じられませんでした。そのせいか、パスパレのレッスンにも集中しきれずミスを連発したり、スケジュールを間違えたりと…色々な人にご迷惑をおかけしました。それを見かねてか千聖さんはしばらくパスパレとしてのレッスンは休止するように言いました。彩さんやイヴさんは特に心配してくださりました…。

 

「……また来てしまいました。」

 

 ジブンは今、彼の病室の前にいます。そこに彼はいないって、ここに来てもジブンの求める風音くんはいないってわかっているのに…。多分…その事を認めたく無いんです。

 

 ジブンの初恋の人の死を受け入れられないから…。

 

 病室には真っ白なシーツがかけられたベッドがポツンとありました。一瞬、風音くんが笑っている姿が見え、慌てて駆け寄りましたが……結局そこには何も残ってませんでした…。

 

「嘘ですよね…。風音くんはイジワルだから…何かドッキリでも仕掛けてるんですよね…?」

 

 白いシーツを握り、静かに呟きました。ジブンの目からは涙が流れ、手を伝ってシーツに染みを作っていきました。

 

「嫌ですよ…!ここでお別れなんて!ジブンとの約束はどうなるんですか!時が来たらドラムを教えるって約束はどうなるんですか!ちゃんとこのスティックを大切に持ってるんですよ!約束破るなんてあんまりですよ!」

 

 周りに他の患者さんがいなかったのが幸いなのかジブンは感情に任せて泣きじゃくりました。まるで悪いことをして怒られた子供のようにとにかく泣いてました。いえ、今のジブンには……これしか出来なかったんです…。

 

 

 何分…いえ何十分泣いたでしょうか。気がつけばシーツに大きな水溜まりをつくっていました。

 病室の天井を見てふと思ってしまいました。もう…疲れた…と。このまま何もかも忘れてしまいたいと…。そしたらもしかして彼とも会えますかね…?でもそうなったら…やっぱり彩さん達が今度はジブンのような思いをするんですよね…。

 本当に思考が回らすにこんなことまで考えていました。すると、開きましたの扉が開き、シャッとカーテンが開かれました。

 

「すみません!シーツを汚してしまって…「あの…あなたは?」」

 

 顔をあげるとそこには1人の女性がいました。服装からして看護師の方では無いようです。

 

「すみません…ジブンは大和麻弥と言いまして…」

「大和……成る程。あなたが…」

 

 何かを納得したかのように女性はジブンの元にやって来ました。

 

「あ、ごめんなさい。私は風音の母親なんです。」

「えっ?風音くんの…?」

「そうです。ねえ…ちょっとお話しない?」

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 ジブンたちは病室から離れて今は病院の中庭にいます。

 

「はい、コーヒーどうぞ。」

「あ、すみません。」

 

 ジブンは風音くんのお母さん…玲奈さんからコーヒーを渡されました。

 

「あの…何でジブンのことを?」

「あ、それはあの子から色々聞いてたのよ。」

 

 お母さんの話を聞く限り風音くんは玲奈さんに色々とジブンの話をしていたそうです。

 

「そうですね。とても楽しそうに話してましたよ。母親である私相手より凄く楽しそうで嫉妬しちゃいそうでしたよ。」

 

 笑いながらそう話す玲奈さんにジブンは苦笑いしました…。

 

「そうそう。これあの子の持ち物にあったんです。」

 

 そう言って玲奈さんは1通の手紙と彼の名前が刻まれたドラムスティックを渡して来ました。

 

「あの子からです。『麻弥ちゃんへ』って書いてるから…あなた宛です。」

「……開けてもいいですか?」

 

 玲奈さんから許可をもらい、ジブンは封筒を開けて中の手紙を取り出しました。

 

『麻弥ちゃんへ

 この手紙を読んでいるということはきっと俺はこの世にいないのかな?……なーんて。

 でもこうなるのはわかってたんだよ。ずっと黙っててごめん。実は俺、不治の病って言われてる程酷い病気だったんだ。だからもしかしたら…って思ってたんだけどやっぱりそうなる運命みたいなんだ。

 でも悪いことばかりじゃなかったよ。もう治らないって言われて空っぽの状態の時…君に出会えたんだ。始めは退屈しのぎの感覚で話しかけたけど…気づいたらそれが生き甲斐みたいになっちゃった。だって麻弥ちゃん面白いし、楽器の話してると凄く楽しそうなんだもん。

 それから俺は治らないとわかっていても「生きたい」って思うようになった。だって生きてないと麻弥ちゃんに会えないからね。

 でも…それももう叶わないかも知れないんだ。だから…最後に2つだけ言わせて。

 俺が使う筈だったスティック…良かったら麻弥が使ってよ。それ結構高くていいやつだったから…持ち腐れは勿体ないでしょ?それに…ドラムスティックは2本で1つだからさ、お互いの名前が1本ずつ刻まれてて…ずっと側にいられるかな?なんて。

 それと最後にもう1つ。

 

 ありがとう、大好きです。

 こんな告白でごめんね。

          涼南風音』

 

 手紙を読み終えたジブンは…それまで溜め込んでいた何かが切れたように再び涙を流してました。

 

「ねえ…私も読んでも良いですか?」

「……はい…。」

 

 玲奈さんも手紙を読みました。するとジブンを抱き締めてこう言いました。

 

「あの子も馬鹿ですね…。母親への手紙の方が文章少ないってどういうことですか…。」

 

 玲奈さんはそう言いましたが、少なくとも怒っている様子ではありませんでした。そしてジブンにこう言いました。

 

「麻弥ちゃん…ありがとう。本当にありがとう。」

 

 ジブンは再び泣きました。子供のように人目も気にせずに…。

 

 

 

 

 それからしばらくして、ジブンの気持ちも収まりジブンも玲奈さんも目を真っ赤にしていました。

 

「本当にごめんなさいね。最後まで失礼な息子で…。」

「いえ、ジブンは風音くんに感謝してますから…。」

「それでなんだけど…もし良かったら…これ貰ってくれませんか?」

 

 そう言って玲奈さんはドラムスティックを渡して来ました。スティックには彼の名前が刻まれてました。

 

「……わかりました。大切にさせてもらいます!」

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「うう~緊張してきた~!」

「もう…そろそろ慣れてもらわないと困るわよ彩ちゃん。」

 

 今日はパスパレのライブの日、彩さん達が会話をしている中、ジブンは二本のスティックをじっと見つめてました。

 

「麻弥ちゃん、そろそろ出番よ。」

「はい!すぐに行きます!」

 

 千聖さんに呼ばれて立ち上がったその時…

 

『麻弥ちゃん、がんばれ!』

 

 風音くんの声が聞こえた気がしました。そしてジブンは再びスティックを見つめました。『大和麻弥』、そして『涼南風音』。ドラムスティックは2本で1つ。この二本に刻まれた名前はきっと…どれだけ離れててもジブンの傍には風音くんがいる。そういうことなんだとジブンは思ってます。

 

 だからジブンは今日もドラムを叩きます。

 

 天国にいる…風音くん(初恋の人)にも届くように。

 

 

 




うん、もう悲恋は書きたくない。文字数的に。どうしてもヤンデレとか悲恋になると文字数多くなる。やっぱり純愛が一番やり易いわ。

良ければ評価や感想よろしくお願いいたします!

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@kanata_kizuna

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