バンドリ短編集   作:キズカナ

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お弁当は誰のため(氷川紗夜)

 

「今日は私が夕食を作ります。」

「うんちょっと待って?」

 

 突然家に押し掛けてきたお隣さんこと氷川紗夜。彼女の両手には人参、じゃがいも、玉ねぎなどの食材が詰められた買い物バックがあった。

 

「ですので、今日の夕食は私が作りますので風音さんはゆっくりしていてください。」

「いや展開が急すぎて理解が追い付かないので説明を求めます。」

「日菜から聞きましたよ?あなたここ最近3食これで済ませてるみたいですね?」

 

 と、紗夜はバックから1袋8本入りのスティックパンを取り出した。スティックパンとは一人暮らしである俺の主食。両親は大手企業の社員で日々あちらこちらを転々としてるためなかなか帰ってくるのは難しく、自分の食事は自分で何とかしている。そんな生活でスティックパンは素晴らしい食べ物だと俺は思う。何故なら一袋大体120円ほどで8本も入っている。なので4本ずつ食べたとしても1日にかかる食費は240円ほど。そして腹もそこそこ満たされる。

 凄いでしょ?最高でしょ?天っ才でしょ?

 

「そんな記憶喪失の自意識過剰でナルシストな自称天才物理学者みたいなこといってますけどあなたは大きな見落としをしてますよ?」

「……それは?」

「こればかり食べてると栄養が偏ります。何より、男子高校生の必要な摂取カロリーが全然とれてません。このままだとあなたは栄養失調になりますよ?」

「うーん…一応たまーにコンビニのサラダ食べてるから大丈夫じゃないかな…」

「そういう問題じゃありません!」

 

 紗夜は机を思いっきり叩き、鬼のような形相をこちらに向けてきた。……これは逆らったらダメなパターンですやん…。

 

「いいですか!?そもそも貴方は自分のことになるといい加減過ぎます!食事を適当にしたり、睡眠をとらずに日菜といつも天体観測して……そんな羨…いえ、とにかく!貴方はもう少し体を労ってください!」

「えっ?今一瞬羨ま…」

「・・・・・・・・・・」

「あーハイ何でもナイデス。」

 

 表情を更に強ばらせて来た為、俺は発言を控えることにした。表現の自由はどこへやら…。

 

「とにかく、今日は私がご飯を作りますので貴方にはそれを食べてもらいます。拒否権はありません。」

「…ウス。」

 

 という訳で…俺は紗夜の料理をご馳走になることになった…。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

「風音さん、ご飯出来ましたよ。」

「はい…。」

 

 俺がソファーで寛いでいると紗夜に呼ばれた。紗夜の後を追い食卓に向かうとそこには綺麗に盛り付けられた2つのカレーライスがあった。

 

「カレー…ですか?」

「ええ。本当はもっとちゃんとしたものを作りたかったのですが…時間が押してましたので…。」

「えっと…いただきます。」

 

 スプーンを手に取り、カレーを掬い口に運ぶ。じっくりとそのカレーを噛み締めながら味わった。

 

「……凄く美味しい。」

 

 思わずそう言ってしまった。程よく具材が溶け込みドロッとしたルゥ、そして食べやすい大きさに切り分けられた野菜、肉は食べ応えがあり素材の味がルゥに負けていない。まるで全てが計算されているかのようなこのカレー、1度食べたらまた食べたくなるような……そんな感じだった。

 

「おかわり。」

「食べるの早いですね…。」

「ん?ま…まあ…。」

「それはそうと風音さん、食事はしっかり噛んでから飲み込んでくださいね?」

「紗夜は俺のお母さんか何かなの?」

「貴方が子供すぎるだけです!」

 

 そう愚痴を言いながらも紗夜はカレー皿を受け取り二杯目のカレーをよそっていた。

 その後ろ姿を見てると本当に紗夜はお母さんになったら厳しいけど良い母親になりそうだよな~と考えていると感づかれたのかジト目を向けられてきました。

 

 

 それから2杯分のおかわりを食べ、お腹も膨れたところで食事は終わりになった。

 カレー鍋を見ると本人曰く4人前はあったカレーが無くなっていたらしい。片付けを済ませた紗夜はソファーに座って一息着いていたので俺は彼女の為に冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出してグラスに注ぎ紗夜に手渡した。

 

「お疲れ様。」

「ありがとうございます。」

 

 麦茶を受け取った紗夜はそのまま飲み干し、グラスの中のお茶はすっかり無くなっていた。

 

「カレー美味しかったよ?」

「そうですか。それなら良かったです。」

「もういっそのこと紗夜が夕食作ってくれれば良いのにな~。なんて。」

 

 からかうようにそう言うと紗夜は少し顔を赤くして固まっていた。

 

「え…今のは…」

「あ、うん。ごめん。気にしなくても大丈夫だよ?」

 

 とりあえず彼女を落ち着かせるために何とか弁解を試みた。しかし…

 

「い……良いでしょう。お望みなら毎日つくってあげますよ?」

「へ?」

 

 思わぬ紗夜の発言に俺は困惑してしまった。

 

「勘違いしないでくださいね!?ただ今日のことや今までの話を聞いている限りこのまま貴方を野放しにしていると栄養失調になりそうだからですからね!?」

「いや…だから無理しなくても…。」

「いいえ!貴方は信用できません!」

「ええ~…。」

 

 どうにもこちらの話を聞いてくれない紗夜を片目に俺は頭を抱えたいた。

 

「それと明日からお弁当も作りますので覚悟していてくださいね。」

「なぬ!?」

「当たり前です!毎日スティックパンだけとか栄養バランスが偏ります!」

 

 ここで俺は全てを悟った。こうなった紗夜は止められないと…。

 

「とにかく…栄養失調になられては私も困りますので…明日からはちゃんと食べてもらいますよ?」

「……本当お母さんだよね紗夜って。」

 

 こうして、俺は紗夜から手作り弁当をつくってもらう生活が始まった。

 しかし、弁当自体はとても美味しく毎日違うものを栄養バランスよく詰められてる為飽きることはなかった。というかスティックパン食べなくても全然平気になった。後たまにだけど紗夜が俺の好きなものを入れてくれてたり、気分的に食べたいものとかも入れてくれていた。紗夜ってエスパーか何か?

 でもスティックパン生活の時より断然体も軽くなった気がするし……紗夜には感謝しかない。今度俺も手料理振る舞ってあげようかな…。

 

 あ、俺料理出来なかったわ。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 氷川家にて…

 

「今日もちゃんと食べてくれてますね。」

 

 何時ものように彼から返却されたお弁当箱を開けると、中身は空っぽの状態で返ってきていた。普段は意識してなかったですけど実際にこうして作ると母の気持ちがなんとなくわかります。

 お弁当箱を洗おうとしたとき、弁当袋から紙のようなものが見えました。袋からそれを取り出すと、その紙にはただ一言だけ書かれていました。

 

『何時も美味しい弁当ありがとう』

 

 それを見たとき、なんだか凄く嬉しくなりました。普段は中々素直になれずに厳しい態度ばかりとってしまいますが、こんな私にも彼は感謝の意を向けてくれている。それだけで私の心は満たされたような気分になりました。

 

「今度、おかずのリクエストでも聞いておこうかしら。」

 

 そう思い洗ったお弁当箱を拭き、戸棚にしまいました。

 

 明日はどんなお弁当をつくってあげましょうか。

 

 

 




twitterを見ていても皆さんお疲れのようでな。
誰も見ていないだろうが私はそんな皆さんを助けたく甘い作品を目指したぞ。
これを見て癒される人がいれば私はそれだけで嬉しいです。

そして誰か私の心を癒してくれ←他力本願

次回は満を治して花音ちゃんのターンです。
フィルムライブ特典……花音ちゃんの色紙が欲しいです。←パスパレ週は都合上いけず、アフロ週はもはや行くのが絶望的。

良ければコメントや評価よろしくお願いします!

twitterもよろしく
@kanata_kizuna


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