Phantasy Star Convergencer ~PSCg~   作:Father Bear

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第3話~銃弾~

「それで、ここが例の幽霊屋敷ってやつかしら?まぁ屋敷というより、研究所みたいだけれど…」

 

「…そうみたい。どうやら、送られてきた住所で間違いないみたいだね」

 

ノアとフェンリルの二人は、突然増えた同居人。"刹那"の分の生活費を稼ぐべく、今まであまり手を出して来なかった第四種型クエスト(ここではSHの事を指す)のクエストを受け、一発逆転を狙っていた。

なぜ一発逆転ができると踏んだのか?

なんせこういった治安維持活動では何が起こるかわからない。アークスの一般的なクエストでは「どういった敵が出るのか」、「場所は、時間はどうなのか」など環境的条件がある程度までは分かるのだ。しかしこのクエストは場所も行くまで不明。時間も自分次第となる。ゆえに危険な為、報酬金が提示額より高くなるのはしょっちゅうなのである。

 

「それにしても…フェンリル。何でセツナをここに連れて来たのかしら?」

 

「いやぁ…それがさ。彼、役に立ってみせるって聞かなくてね。そのまま置いてくのもアレだから連れてきちゃったよ」

 

「アレもへったくれもありゃしないわよ」

 

フェンリルがその大きな身体でノアの正面に周り込み、こう言った。

 

「まぁ実の所、彼が当局の他の職員にでも見つかったら面倒くさいってのが本音だよ。ノアちゃんも面倒くさい事は嫌いでしょ?」

 

「ま、まぁそうね…」

「あ、あの~…」

 

その小さな声で二人の間に割って入る小さな影。

黒いボサボサの長髪で顔はほぼ見えないが、その表情は明らかに困惑の色を見せていた。

 

「なに?セツナ」

 

「僕、必ず役に立ってみせますから!どうか一緒に連れていって下さい!お願いします!」

 

刹那はノアに深々と頭を下げ、必死に説得を行う。それが効いたのか、ノアは渋々それを承諾した。

 

「ハァ…分かったわよ。ただし、自分の身は最低限自分で守ってね。どうしようもない時は助けてあげるけど…」

 

「よかったじゃんセツナ!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「ハァ…面倒くさい…」

 

その決断が後に波乱を呼ぶ事など、この時誰も知るよしは無かった。

 

 

二人…いや、"三人"はあの後、研究所の入り口らしきドアから研究所内部に侵入した。

巨大な敷地からある程度察しはついていたが、やはりとてつもなく大きな施設であった。長い廊下に割れたガラスが散乱しており、ノアの受け取った情報にあった通り、"幽霊屋敷"という表現は的を得ていたのかもしれない。

 

「分かってはいたけど…不気味だね…」

 

「えぇ…そうね。じゃあフェンリル、セツナ。軽くミッション内容のおさらいをしておきましょう」

 

クエスト名

・忘却の箱

依頼主

・(匿名の為記入無し)

報酬金

・240,000メセタ

クエスト達成条件

・研究所最深部の最高管理室にて保存されているデータの奪取。及び周辺端末の破壊。

 

 

「……以上が本ミッションの内容よ。もう一度頭に叩き込んでおいて」

 

「了解、ノアちゃん」

 

「わかりました!」

 

「じゃあ、行きましょうか。メンテナンスが停止してからこの建物は長い。あまり長居はしていられないわよ」

 

道中は床が抜けていたり、鉄が錆びて所々変色していたりした。合わせて、ここが研究所として使われていただけはあり、薬品の類いによく似た臭いがした。

 

「それにしても暗いわね…ほらセツナ、はぐれたくなきゃ私に掴まってなさい」

 

「はっ、はい!」

 

「僕には暗視センサーがあるからまだいいケド…というかノアちゃん。"自分の身は最低限自分で守ってね"とか言ってたのに、結局守っちゃってるじゃん」

 

「…うるさい、フェンリル」

 

「はいはい……………っ!?二人共、ストップ」

 

暗視センターを持っていた為、先頭を歩いていたフェンリルが急に制止をかける。合わせてノアは刹那を後ろに下げる。

 

「状況は、フェンリル」

 

「フォトン感知センサーが、"まだ新しいフォトン残子"を捉えた。近いよ」

 

「それは…私達以外にも誰かいる。そう考えていいのかしら?」

 

「えっ!?ボク達以外にも誰かいるんですか…?」

 

慌てふためく刹那にフェンリルは優しい声色で諭す。「いるかもしれないってだけだよ。大丈夫」と。しかしその諭しは虚しくも意味を失う事になる。

 

 

「フェンリルッ!数は!!」

 

「敵は10体、真っ直ぐこっちに向かってる!隠れ場所はない…マズイね…このままじゃあ…戦うしかないか…?」

 

「ボ、ボクは…!」

 

「セツナは私の後ろに!絶対顔出しちゃダメよ!」

 

 

状況は最悪。一本道で挟み撃ちに遭った。しかも場所が場所である。ロボ状態のフェンリルの身長が2m強であるのに関わらずこの通路は高さが2mも無い様にノアは感じた。対して二人のエモノはパルチザンとカタナ。この窮屈な場所においては最悪な武器種であった。

 

「く、来るッ…!」

 

『ギィシャァァァァァアァァァァァァァアァアァ!!!』

 

この施設の警備アンドロイドだったモノがまるでゾンビの様な無惨な状態で3人に襲い掛かろうとする。しかし…

 

 

『ギィィイ…?』

 

「「「へ?」」」

 

およそ3m前まで来たアンドロイドが急に動作を停止させた。面白いほど、ピッタリと。

 

「何…?どうしたのコイツ等…」

 

すると突然180度身体を回転させてそのまま10体いたアンドロイドはどこかに行ってしまった。

 

「一体なんなのよ…さっきの…」

 

「わからない…危機は去ったのは違いないみたいだけど…」

 

ノアとフェンリルはそれぞれ抜刀した武器を背中へと収納し、そのまま佇む。何が起こったかわからないのだ。

そりゃそうだろう。いきなり敵(?)が来たかと思いきや、これまた急転換しどこかに消えてしまったのだ。理解しろ、と言う方が難しい。

 

「どうするノアちゃん?このまま探索を続けるのは、あまりに危険だよ」

 

「…確かにそうね…けどフェンリル。よく考えてみなさい」

 

ノアはフェンリルにこう言う。

 

「あんなヤツ等がいたんじゃあ私達が仕事サボってる様に見えるじゃない。そんな言い掛かり付けられたら、貰えるモンも貰えなくなるの。最悪、職務放棄でクビよクビ。そうなれば私達みたいなアークスは稼ぎ場を失ってしまうの。わかる?つまりアレは…」

 

"また始まったか"と言わんばかりにフェンリルは顔を曇らせた。まぁ、フェンリルの顔は現在ロボットフォーム用のパーツとなっている為、憶測となるが。

 

「倒さなきゃならない、でしょ?」

 

「えっ…あんなの倒すんですか…?」

 

「えぇそうよ。じゃなきゃアナタも私達二人も餓死するだけよ。やるしかないわ」

 

そう言うとノアは一旦仕舞った武器をもう一度取り出し、すぐに戦闘体勢へと入った。

 

「まぁ、"倒す"とは言ったけど。慎重にね。こんな意味不明の状況で意識が乱れたらそれこそアウトだわ」

 

「はぁ…仕方ないかぁ…わかった。僕もやるよ」

 

「ぼ、ボクも…!」

 

 

こうして、ダンフォートご一行は突如出現し突如消えた謎のアンドロイドを追う事となったのだ。

 

 

 

ヴゥゥォォォォォォオォォォォオオオォォォン!!!!!!!

 

異様な轟音が響き渡ったのは、ノア達が"あの場所"から移動して約一分位だったろうか。

その音はまるで、この世に自らの存在を過剰なまでに誇示するように木霊した。

 

「………ッッ!?!?」

 

フェンリルはすぐにこの音の正体に気付いた様だった。そしてフェンリルが気付くよりも後にデータベースからこの爆音に近似するモノを検出した結果がインターフェースに表示される。

 

その正体は、レンジャーやガンナー。最近新しく発表されたファントムで使用されるアサルトライフルという武器種の"アヴェンジャー"という大型アサルトライフルである。ライフルというよりはガトリング、という方が正しいだろう。それがたった今発砲された。

 

すなわち、アークス専用の武器を使用しているという事は…

 

ヴゥゥォォォォォォオォォォォオオオォォォン!!!!!!!

 

「二人共伏せてぇぇぇぇぇえっ!」

 

「ッ!?」

 

「むがっ!?」

 

二度目の野獣の咆哮が廊下を駆け巡る。

フェンリルの叫びを聞き終わる事もなく、ノアは何かを察した様に刹那の頭を叩き付け気味に抑え、自らも伏せる。

 

「うわああぁぁあぁあぁあああぁぁぁぁぁッッ!!!」

 

着弾する瞬間、フェンリルは多少弾丸を貰いながらも、パルチザンでガードを開始した。

手首を独立させ回転する事で、格段に効率を上げる事が出来る。

 

キィンッッ!キィンッッ!!

 

甲高い金属同士の接触音が連続して響き渡る。

すると、10発目が当たった次の瞬間。突然銃撃が止んだ。フェンリルは突然銃撃が止んだ事より、次の事を考えていた。なぜ"10発"なのか、だ。このまま押していれば勝てたハズなのである。なら何か別の理由があるハズだ、と。フェンリルはそう踏んだ。

ならばその理由があるとすれば…

 

(…まさか…あのアンドロイドを…?)

 

アンドロイド達は確かに銃弾が飛んできた方角にも消えていった。ならば答えは簡単。向こうにいる同業者がアヴェンジャーをアンドロイド達に向かいぶちかましたのだ。フェンリルにはそれしか考えられ無かった。

理屈よりも、現状がそれを物語っていたからだ。だが、しかし。

 

パチィ…ッッ

 

「っ!」

 

パルチザンを持っていたフェンリルの右腕の関節部と、それを支えていた肩関節、腰部関節、膝関節等から火花が散った。そして…

 

ボガァンッッ!!!

 

「なぁっ…!?」

 

爆散。フェンリルが腰から爆発し、上半身と下半身が真っ二つに分かれてしまった。

 

「フェンリルっ!!!!!!!」

 

「フェンリルさぁぁん!!!!」

 

(いけない…このままじゃあ…このままじゃあ……!せめて…ヒントを…!)

 

骸となった黒い鋼から、声がする事は二度となかった。

 

 

「フェンリル…………あなたって人は…!」

 

「そんな…ぐすっ…フェンリルさんが…」

 

二人は悲しみに暮れた。今の今まで二人を守ってくれたチームの女房役が死んだ。これは二人の心に大きな傷を作るのには十分過ぎた。

 

だが、ノアの頭の中ではフェンリルが死んだ事に対する悲しみも勿論感じていたが、次の光景を見た瞬間、それは心の奥底へと仕舞われる事になる。

 

「……?これは…?」

 

ノアが目をつけた物、それは…

 

「何でこんな"コト"に…?」

 

フェンリルのパルチザンが、まるで通路の奥を指し示すかの様に深々と突き刺さっていた。

 

(確かに…フェンリルは普段の態度は悪かったけど、肝心な時に無駄な事をする様な子ではなかった…だとすると…)

 

「あっちに行けばいいの?フェンリル…?」

 

ノアはもう一度、銃弾が飛んできた方向に顔を向ける。

 

「ノアさん…」

 

「えぇ、わかってる。フェンリルの意志を無駄にする訳にはいかないわ。行くわよ、セツナ。」

 

 

 

 

「生態反応は…残り"3つ"か

。…アイツとは、反対の方から来てくれて助かった」

 

『紅く』、大きな図体をしたキャストが、ノアと刹那に語りかける。その手には、アヴェンジャーが握られていた。

 

「お前が……!!フェンリルを…!!!」

 

「ん?どうした、何故"2人しか来ていない"?残りの奴はどうした」

 

「死んだわ!!お前のその手でね!!」

 

すると、紅き鋼は惚けた様に首を若干傾ける。

 

「……ふっざけるなぁッ!!!」

 

瞬間、ノアは自身のカタナを抜刀し紅き鋼に向かい突進する。

 

「ノアさんッ!!」

 

「………」

 

紅き鋼は、ノアが突進を始めてもその場から動こうとはしない。まるで何かの石像の様に。

 

そして

 

「喰らえェッ!」

 

思い切りカタナを振り下ろす。

完全に右目の死角を捉えた。素早く身体を動かす事で相手の視界から消える。こういう戦闘以外でも、ノアは日常的にこういう事をしているらしい。"日常的にする事で特訓になる"んだそうな。

 

しかし、その復讐の炎で鍛えられた刃は、いとも容易くへし折られる事になる。

 

「甘い」

 

「ッッ!?」

 

紅き鋼は腰部と脚部に装備されたフォトンスラスターを"左側だけ"吹かし、無理矢理身体を回転させノアの一太刀をかわす。そしてそのまま、スラスターの勢いを落とす事もなく回転したまま左脚でがら空きになったノアの背中にぶち当てる。

 

「ゴハァッ…!!!」

 

勢い良く壁に激突する。しかも運悪く、女性の命とも言える顔面から当たってしまった。

 

ノアの耳には、骨が何本か折れる音が聞こえた。そしてそのまま、起き上がる事はなかった。

 

「あ…あぁ…」

 

「…子供か…ふむ…口封じに殺しておくか…」

 

紅き鋼は刹那に向かい、アヴェンジャーの銃口を突き付けた。

 

刹那の頭の中は、目の前に突き付けられた銃口の事よりも、"これから自分もあの二人の様になるのだろう"という考えが支配していた。

 

「全く…この女も何を思ったのか知らんが…アークスでもない子供を連れて一体何がしたかったのだ?」

 

(そうだ…ボクが着いていきたいなんて言ったから…ボクを庇っていなければフェンリルさんは死ななかった"かもしれない"…。ノアさんもフェンリルさんが死ななければあんな事にはなっていなかった"かもしれない"。そうだ、全部ボクが悪いんだ…ボクが…)

 

刹那の意識は、そこで消えた。

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