Phantasy Star Convergencer ~PSCg~ 作:Father Bear
「う、う~ん…?」
目を覚ますとそこには、見慣れた光景が広がっていた。
いつも寝ていたベッド。フェンリルと一緒に食事を取っていたリビングの大机等々がそこにはあった。
「私…なんでこんな所で寝ていたのかしら…というか立ったまま寝てたの…?」
目を覚まし、周囲を確認するノア。どうやら"自身の家"と何ら変わりない内装の様だった。しかし、どうやら明度がいつもより暗いようにも感じた。
「………私、どうしてたのかしら…。確か…私は……………っつ!!」
突如、ノアの脳裏に記憶がフラッシュバックする。そこに浮かんだのは、自らが気を失ったであろう"瞬間"であった。
~"「ゴハァッ…!!!」"~
「ッッッ!!!」
ノアは吐き気を催した。自らが死ぬ瞬間を再び目撃してしまったのだから。
「そうよ…私死んだんだったわ…。けどなんでこんな所に…」
その時だった。
「う、うん…実はね…ボク…違う世界から来たんだ」
「………は???」
ガシャーン
「…………………………………………。」
そこには、もう1人の"ノア"と"刹那"がいた。
「………は???」
不覚にもノアは、そこにいた"もう1人の自分"と"同じリアクションをしてしまった"。
※
「とりあえず……一旦状況を整理するのよノア……。落ち着け……ここは刹那が目覚めてトンデモ発言した"あの時間"。そしてどういう訳か死んだハズの私が何故か"同じ場所だけど違う場所"にいる。」
自身の死亡シーンをリプレイした後に唐突な回想シーンが目の前に展開される。
あまりに現実離れしたこの経験を、ノアはすぐに受け入れる事などはできはしなかった。
「そして今まさに…昨日の私がそこでくっちゃべっている……」
そして現在。ノア、フェンリル、セツナの3名が昨日と同じ会話をしていた。
この常軌を逸した光景に、繰り返し言う様ではあるがノアの頭はパンク寸前であった。
「だけど………どうやってこんな所に来たのかしら……。そんな要因、あの場所じゃあ何もなかった…」
ノアは少しだけ冷静になり、何故このような意味のわからない場所に行き着いたのかを目を閉じて整理する。
まず、廃棄された研究所に3人で向かい内部を調査。そして突如として大量のアンドロイドがノア達を襲うが、何故か寸手の所で停止し、帰っていった。
そしてここからである。突如通路の奥から爆音が響き渡った。フェンリルがノアとセツナ両名を床に伏せさせ、通路を奥から来ているであろう銃による攻撃をガードするも、間もなく押しきられフェンリルは胴体を銃弾によって真っ二つにされ死亡する。
そしてこれに激昂したノアはあの"謎の赤いキャスト"に攻撃するもこれを受け止められ、背骨を脊椎ごと粉砕され壁に叩き付けられた衝撃で死亡した。
その後、セツナがどうなったかはノアが想像するまでも無かった。
「あるとしてもあの研究所に放棄された機器が暴発してこの様な怪現象を引き起こしたか…それしか考えられない…」
考えていても仕方ないと思い、ノアは行動に出てみる事にしてみた。
まず。物に触れれるのかどうか、それを検証する事から始めた。が、結果は分かりきっていた。そもそも床を貫通しない辺りそれには気付いてはいた。結果は触れれる。しかし、ノアは一つ驚いた事があった。彼女が触れた物は"こちら側の次元へと転送される"ようだった。元の次元にはノアが持ち上げたコップの姿形は残っているが、こちら側に運んだソレは確実に、確かにそのコップを"掴んでいた"。
そして次の検証へ。ノアの存在についてだ。先ほどから、"彼ら"が目の前にいるノアに全く気付く素振りを見せない所から察するに彼らにノアの姿は認識出来ていない。激しく足音を鳴らしてみるが、やはりこれにも気付かない。
「やはりか……」
そもそも、ここが過去の世界であるならばあちら側の人間がこちら側に気付ける訳がない。何故ならノアも元々は"あちら側"だったのだから。
次の検証。ノアは大きく出てみる事にしてみた。
ノアは、あちら側の自身の身体に触れてみる事にした。こればかりはノアもどうなるか検討が付かない。
「……………」
そっと。そーっと。恐る恐るノアは自身の身体に手を翳す。すると……
「ッ…!?」
視界が一瞬真っ白になり、明度が低くなっていた景色に色が戻った。そしてノアの意識は完全に、"過去のノアの肉体"に入っていた。
「ん?どうかしたのノアちゃん?」
一瞬呆けたノアにフェンリルが不思議そうな目を向ける。
そして全員が生きているというこの状況にノアは微かな感動を抱いた。
「い、いや…ちょっと……砂って食べれるのかなって…」
だが遥かに上回る"状況に対する困惑"がノアの頭脳を狂わせた。
そしてこれを機に、彼女の運命は180度回転した。
※
(そして遂に来てしまった………)
どこに??答えはただ1つ。"例の研究所"である。
ノアはこの意味のわからない状況にも希望を見出だそうと考え模索した結果。これに至る。
"未来"では"死んでいる"のだ。だがここは"過去"であり"生きている"。
「今なら…出来る…」
つまり何がしたいのかと言うと、未来の改変である。
過去で行動して、未来で自分が死ぬ未来を回避する。無論、フェンリルとセツナの命もだが。
そしてノアは、自身が言っていたであろう台詞をそのまま口に出した。
「それで、ここが例の幽霊屋敷ってやつかしら?まぁ屋敷というより、研究所みたいだけれど…」
「…そうみたい。どうやら、送られてきた住所で間違いないみたいだね」
フェンリルの返しもそのままである。
そしてノアは彼女がしていたであろう残りのセリフを言い、施設の内部へと侵入した。
※
当然の事ではあるが、内部は前回と至って変わらずであった。
本来の目標は長い廊下に割れたガラスが散乱している光景が第一印象であるこの古びた施設の最深部にあるデータの奪取、もしくは破壊が今回の目標である。
悔しくも、その目標はあのキャストの妨害によって達成出来なかったのだが。
(けど今回は違う……何が来るのかも全て分かってる)
そして異様なその警戒度にフェンリルとセツナは、味方ながら恐怖したという。
それはそうだろう。"全員殺された"という未来を変える為にノアは孤独な戦いを強いられているのだから。
「ねぇ……ノアちゃん?どうしたの?いつもの任務中より気迫が凄いんだけど…」
「ちょっと怖いです…」
「うるさい、こちとら食えるか食えないかで神経ナイーブなの。当然こうなるわ」
「そりゃボクも焦っちゃうけど…今回は割と簡単な任務じゃない?そうしてたら、いつまでも続かないよ?」
「あなたはいつもそう。任務中にそんな事ばかり。少しは集中しt…」
「二人共、ストップ」
突撃フェンリルが二人に止まる様に言った。
来たか、とノアは既に握っていた拳を再び握り直した。そして後ろにいたセツナを自らの後ろに隠した。
「フォトン感知センサーが、"まだ新しいフォトン残子"を捉えた。近いよ」
ノアは悟った。ここが運命の分かれ道だと。前回はこのただただ真っ直ぐな廊下を進んでいた。そしてそのまま全滅した…
「危険だわ。事前に決めたルートとは少し遠回りになるけれどそっちに行くわよ」
「…? どうしたの?さっきから様子が変だよ。いつもの君なら構わずに進んでいたのに…」
「………………?」
セツナが怯えた様子で二人の間に立つ。どうしたらいいのかわからないのだろう。
「いいから…はやく来なさい。今日の私の勘は冴えてる」
だが時は刻々と過ぎて行くものであり、残酷なモノである。
"死は待ってはくれない"様であった。
※
「まさか……こんな古びた施設の中にまだ稼働しているアンドロイドがいるなんて…セツナ、大丈夫?」
「はい…大丈夫です…あの、ノアさんは…?」
「ノアちゃんは…扉の前で見張ってるみたいだね」
ひとまず隅にあった小部屋へと逃げ込んだ3人。どうやらこちらの存在には気付いていない様であった。
「足音が聞こえてからで間に合ったからいいけど…もう少し遅かったら巻き込まれていたのよ?」
「だねぇ…確かに、ノアちゃんの勘冴えてたみたいだ」
そしてフェンリルは立ち上がり、この小部屋を調べ始めた。
「この部屋……まるで手術室みたいだ…」
「何気味悪い事言ってるのよ」
「しゅじゅつ…?」
そう言われ、ノアは改めて周りを見渡す。すると、床には錆びたメス等の道具が散乱していた。
「……ヒッ!」
「…!? どうしたのセツナくん!?」
セツナの短い悲鳴を聞いたフェンリルは急いで駆け付けた。すると…
「……血痕?…」
「血ィ…!?」
「どのくらい前のモノなの?」
「…1日も経っていない。かなり新しい物だ」
何故そんな物が…と、ノアもフェンリルと似たようなセリフを溢す。しかし3人はここで察する。"血を流す様な何かがあったのだ"と。
「ん…これは…」
フェンリルが何かを見つけた様だった。どうやら紙ようだった。
「被験体識別番号0438-FLcA…何の事だろう…」
続けてフェンリルは、重なっていたもう一枚の紙を見てみる事にした。そこにはこの被験体と思わしき"人間"、しかも女性の裸の写真が載っていた。この女性の体を見る限り、全身にアザの様な物があ
ったり「次はここを切る」と言わんばかりの線等が入れられていた。
「……なんなのコレ…。酷い…」
以上の事で分かった事は2つ。まず1つ目は、ここが手術室とは名ばかりの一種の"拷問部屋"の様なモノであった事。
そしてもう1つ。ここでは彼ら、"被験体"達の扱いが人間ではなくモルモットに近しい事であることだった。
「………となると……依頼人の目的は何だろう……解剖データの回収…?もしくは全てを含めた諸々の隠蔽工作…?」
すると、セツナが近くに寄ってきてフェンリルにこう尋ねる。
「ここって一体…なんなんでしょうか……さっきの変なのといい…」
「…ッ…。そ、それはね……」
言えない。フェンリルは口を開ける事が出来なかった。その理由は少なくとも、セツナが子供だからという安直なモノでは無かった。
「……病院よ、ここは。そういう資料がそこら辺に散らばっている」
ノアも同じ様な資料を見たのであろう。声色には出ていない様だったが、顔には怒りの文字がハッキリと出ていた。
「病院…ですか」
「そう。病院」
「…………」
その時だった。
ヴゥゥォォォォォォオォォォォオオオォォォン!!!!!!!
それは唐突に、始まりの鐘が鳴った。
※
「うわぁっ!?何!?今の音!?」
「怖いよぅ…」
(ついに来たか……!)
先ほどの轟音。恐らく"例のキャスト"があのアンドロイド達に発砲したのだろう。そして前回はその流れ弾にノア達を襲った。
(とりあえず……これでフェンリルが死ぬ未来は変えられた…!)
「急ぐわよ。とてつもなく危険よあんな音」
「……あの音何処かで…ライブラリーを探してみるよ」
「わかった。でも移動しながらになるから、転ばない様にね。ほらセツナ、私の背中に乗りなさい」
「え?どうして…」
「おぶって走る」
そう言うとノアは半ば強引にセツナを担いで入った扉から飛び出した。
「ちょっ…!?待ってよノアちゃん!」
背中の巨大なブースターを噴かしながら、ノア達の後に続くフェンリル。
なぜいきなり飛び出したのか。それはノアが早く帰りたかったのもあったのだろうが、それはまた違う。
ノアは例のキャストの目的について考えていた。そしてその目的、それは"自分たちと同じ"と考えたのだ。
「急がないと、マズイのよっ!」
向かう、地下へと。
※
道中は拍子抜けする程静かであった。ある程度広いがとても暗く、フェンリルがライトを照らしていなければ何も見えていないだろう。
先ほどのアンドロイドの様なモノが襲ってくる事も覚悟していたが、そんな事もなくスラスラと走り抜ける事が出来た。
「……道が広いわね…」
「そうみたいだ、何かの搬入路だったのかな…?」
「どうなんでしょう………」
そしてフェンリルがある"違和感"に気付く。
「長い間放置されてそうなのに、なんでホコリがこんなに少ないんだろう」
「確かに、言われてみれば少ない。誰かが定期的に掃除に来ていたんじゃ…………」
すると突然、ノアの脚が止まる。
「…? どうしたの?」
「"来ていた"…?誰が…?」
ノアの頭は一瞬にしてパニックになった。最悪だ、ノアはそう思った。
そして今から自分たちが走ろうとしていた足元をよく見てみる。
「…足跡……」
ノアはゆっくりと、自らの足跡を見る。すると明らかに"人間大ではないサイズ"の足跡を、ノアは上から重ねる様に踏んでいた。それが意味するモノ。あの場所にいたモノ。それらを照らし合わせた上での結論。
「"ヤツ"が……ここに………」
遅かった。既にあのキャストは来ていたのだ。
ノアは二人に伝えようとするが、上手く説明出来る訳もない。二人はソレを"見たことが無い"のだから。
「……武装、展開…」
「へ?敵なんかどこにも…」
「いいから!死にたくなかったら言う通りにしなさい!」
「りょ、了解…。」
急げ、急げ。ノアは走りながらただそれだけを思っていた。この施設の最深部へと。
「着いた!!!!」
「ここが…"最深部"」
ノア、フェンリルは周りを確認する。特に荒らされた様子はなかった。
「…?」
いや、訂正しよう。"一ヶ所"だけ触られていた。
「これは…何かを置いていたのかしら……汚れ方が周りと全然違う…それに、コードっぽい物の接続部も錆びていない。まるで新品みたい…」
そこには、"細長い"物でも置いてあったのだろうか。その形状通りに沿った跡が残っていた。
形状からノアが察するにブレイバーやファントムが使っているカタナと呼ばれる武器種に酷似している。
「どうやら…ここでは武器を作っていたみたいだね。あっ、PCが生きていたから起動してみるね。データを抜きとらなきゃ」
「えぇ…お願い」
しかし不可解な事はあった。何故施設の最深部で武器など作っていたのだろう。
「それだけ重要な武器って事かしら…」
「うぅ…怖い…」
暗い所は苦手なのだろうか。セツナが涙目になってオロオロしている。
「…はぁ…仕方ない。ほらセツナ、怖いならこっち来なさい」
「うぅ…すみません…」
そう言うとノアはセツナを自らの横にベッタリくっつく様に置いた。
「まぁ、もう少しで終わるから。もう少しの辛抱よ」
「……よし、動いた!今からデータを抜きとr……うぅ~?」
急にフェンリルがすっとんきょうな声を出した。何事かと、ノアはセツナを連れPCの前に屈むフェンリルの元へ向かう。
「データがない……」
「は?どうして!?」
「そんなの知らないよ!ただ…これは…」
機械がバグった物ではない。明らかに人為的なモノであった。
「このままじゃ……ってか、これいつのPCだろう……」
そう言うと、フェンリルはPCの設定画面を開き、型式番号を取得する。
「解析………!? 10年前のモデルじゃないか…よくそんなもの最近使ってるなぁ…」
「………」
違和感。セツナはまだ感じられないが、ノアとフェンリルは確かにその違和感を感じていた。
「フェンリル」
「わかってる。この研究所、何かおかしい。第一おかしいんだ。あの血痕が残っている事自体。この研究所は放棄されて10年経つと聞く。なのにあの血痕。相当新しい物だった。それにあのアンドロイドもそうだ。恐らくあれはまだ容姿設定もされず保管されていた"10年"前の警備モデルだ。こんなのまるで…」
「「時間が狂っている」」
と、しか言い様が無かった。
「事前に周辺の住民に聞き込みもしてみた。するとどう反ってきたと思う」
「"そんな施設は知らない"…でしょ?」
「なんだ…ノアちゃんも聞き込みしてたんだね。その通り。誰もこの研究所について認知していなかった。いたとしても最近気付いたって人がほんの数名…」
続けてフェンリルはこう言う。
「そもそもこんな大きな施設が認知されてないなんておかしいんだ。何故??」
「わからない…けど、これで私の任務は終わったわ。さっさと出ましょう」
「そうだね…気味が悪い……」
その時だった。
「"俺"も今から出ようと思っていた。よかったら一緒に出ないか?」
紅き鋼が其処にいた。