Phantasy Star Convergencer ~PSCg~   作:Father Bear

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第3話~Elizabeth~

薄暗い研究室の中で、佇む影が二人。フェレーナとエリザベスは、未だにそこにいた。

 

「………」

 

"紅き鋼"はその場に沈黙したまま動く事はない。まるで石像の様に、微動だにしない。

 

「ねぇ…その、エリザベスさん?だったっけ。なんでこんな所にいるの?そもそも、ここは何よ?なんで私こんな薄汚い所に…」

 

「…しろ」

 

"エリザベス"と呼ばれた紅いキャストは小さな声で何かを発する。が、その声はフェレーナには届かなかった。

 

「んえ??なんて…?」

 

「質問は1つずつにして貰おうか。昔、何回も何回も教えたろう」

 

「……はい?」

 

フェレーナにとっては意味不明な発言だったのだろう。しかし、エリザベスは逆に首を傾げる。

そしてハッとした様に上体を反らし、そして戻しフェレーナに向き合う。

 

「……いや、何でもない。ただの戯言だ」

 

「??????……ってあっつ…」

 

フェレーナの脳内はもはやこの状況を整理出来るだけの能力はなかった。

そしてこれはフェレーナの体質なのだろう。彼女は考え過ぎると眼球が熱を発するのだ。医者が言うには、「今まで前列が無く、極めて珍しい病状」なんだとか。

 

「……まぁ、あなたの事はまた後で聞く事にするわ!!とりあえず!ここから一緒に出るわよ!」

 

「一緒に…?俺も着いていっていいのか?」

 

「あなたなんか変だから、ここから出たら病院にぶちこむの!いい??」

 

「ふっ…大きくなっても、そういう所は変わっていないな…」

 

"フェレーナ"

 

 

「で?エリザベス、敵さんはどのくらいいるの?」

 

「10体…かそこらの様だ。どうやらあれは、この研究所の生き残りらしい。おい、俺の後ろへ…」

 

「もういるよ」

物陰に隠れながら、エリザベスは両腕でガトリング砲の様な形状をした大型アサルトライフル、"アヴェンジャー"を構える。

そのエリザベスの後ろに隠れたフェレーナがこう告げる。

 

「ちょっ、この閉鎖的な所でそれ撃つ気なの!?考え直して!!!そんなのここで撃ったら耳が…」

 

「ガスの類いは…無いな。その他引火性のある物質も…検出されず。了解。アヴェンジャー、出力上昇。イグニッション。」

 

「人の話聞いてよォッ!!!!」

 

涙目になったフェレーナの言葉とは裏腹に、"点火"されたアヴェンジャーのモーター音が廊下中に響き渡る。

 

一体全体何故こんな事になっているのか。全てはほんの数分前に遡る。

 

 

 

「さ、早く出ましょ。私はあっちから入ってきたから…出口は~っと…あ、あれかな?」

 

「そっちは廊下だ…ったはずだ。もう昔とは随分変わってしまった様だからな。判別がつかない」

 

話も一段落付き、ようやく行動に移った、フェレーナとエリザベス。まずは部屋からの脱出であった。

 

「……っていうかさっきから意味深な事ばっかり言ってるけど…」

 

「戯れ言だ」

 

「え?いやでm」

 

「戯れ言だ」

 

「んえぇ…?」

 

エリザベスは「戯れ言だ」の一点張りで、フェレーナの質問を受け流す。フェレーナからの一切を受け付けていない様であった。

フェレーナが先頭で部屋の外へ出てみる。すると、フェレーナが意識を失う前とは違い、はっきりと灯りが点いていた。久しぶりに強い光を浴びたフェレーナは、思わず目を隠してしまった。

 

「ふむ、施設の機能自体はまだ完全に死んだ訳では無さそうだな。…だがしかし、ここの灯りは…」

 

「ん?どうしたのエリザベス?」

 

「ここの灯りは"何か"が通ると灯りが点く設定で設置してあったはずだ。なのに俺達がここに来た時には灯りは点いていた」

 

話を聞いたフェレーナは顔が青ざめる。

 

「え…?いやいやいやいやいや。そんな…そんな事…」

 

「これは事実だ。まだ俺達以外に、何者かがこの施設に潜んで…っ!?」

 

すると、エリザベスのヒューマンやニューマン、デューマン等で言う耳の機能を持つ音声センサーに雑音が入った。二人の足音等ではない。瓦礫が落ちた音でもない。明らかに一定のリズムで音を立てながら、こちらに接近していた。

 

「おい!行くぞ!!できるだけ遠くに!」

 

「え!?うわぁっ!ちょっとどこ触ってんのよ!ってか何!?」

 

エリザベスは咄嗟にフェレーナを抱き上げ、ふくらはぎと腰部にあるフォトンスラスターを吹きながら高速で廊下を駆け抜けた。

 

「聞こえないか、先ほどの音が」

 

「え?なんの事?風の音で聞こえないよ!」

 

「あれは確実に"二足歩行"の音、つまり人間。か、あるいはそれに酷似した何かか……」

 

「ふむふむ…って、つまり何よ」

 

エリザベスは急にスラスター噴射を止め、その場に立ち止まる。そして、エリザベスはこう言った。

 

「何者かが俺達を追跡している。そして、まずい事に挟まれた」

 

「え?」

 

 

「人の話聞いてよォッ!!!!」

 

フェレーナの悲痛な叫びはエリザベスの集音マイクに入る事はなかった。

 

「周囲50mに生態反応…コイツと俺を除いて他は検出されず…やはりか」

 

『……………………………』

 

「警備型アンドロイド…それも10体とは…これはまた随分と気前のいいことだ」

 

二人を追跡していたのはこの設備を巡回していた、警備型アンドロイドであった。それも何故か"新品の"。

「俺がアイツらを1体残さずぶち抜き、道を開く。お前はその隙に乗じて走れ」

 

「え?でもそれじゃエリザベス、あなたが…」

 

「俺の事はいい、前にもこういう事があった。だから慣れっこだ。何とかしてみせよう」

 

「いや、でも…」

 

「いいから行け!!!何とかすると言っているのだ!!!!」

 

フェレーナはエリザベスからの殺気を感じとり、渋々ながらも脇道から飛び出した。

 

「走れ!!それと頭を下げろぉぉぉぉっっ!!」

 

それと同時にエリザベスも飛び出し、銃を構える。そして"フェレーナが走った方向に銃口を向けた"。

 

「食らえッ!ワンポイントォッ!!」

 

ヴゥゥォォォォォォオォォォォオオオォォォン!!!!!!!

ダダダダダダダダダダァァァァァアンッッ!!!!!

 

「ひえぇぇっっ!?!?」

 

フェレーナには一瞬、何が起きたか理解出来なかった。驚きのあまり思い切りヘッドスライディングをしてしまった事すら理解出来なかった。

アサルトライフルとは到底思えない、アヴェンジャー特有の巨大な三連連結バレルを回転させる轟音が狭い廊下の中を疾走したと思ったら、いつの間にか目の前の敵が消し飛んでいたのだ。

 

「今のフォトンアーツって…ワンポイント…よね。あんな威力だったっけ…」

 

「何してる、早く立て!死にたいか!」

 

「言われなくっても…!」

 

ガシャコーンッッ!!パシュゥーゥ……

 

アヴェンジャーの弾倉の再装填が完了し、バレルの冷却の冷却の為に発した大量の熱も一気に噴き出される。

 

「ハァァッ!!!」

 

ヴゥゥォォォォォォオォォォォオオオォォ…………

 

ガトリングの強烈な発射音と炸裂音が鳴り響いたの廊下と言う名のライブハウスはその後、女の子の駆ける、靴と床との接触音だけが響き渡る厳かな講堂へと早変わりした。

 

 

「はぁ…はぁ………で、出れた…ついに出れたよぉ…」

 

ついに外へ出たフェレーナは安堵の表情を浮かべる。

 

「はは…外は今お昼だったのかぁ…はぁ~っ…」

 

しかしすぐに残念そうな表情を浮かべ、すっかりホコリっぽくなってしまった自らの衣服を気に掛けながら、塀に横たわってしまう。

 

「結局、エリザベスさん来れなかったし…はぁ…無駄な1日だったなぁ…でも…」

 

フェレーナは自分のカバンの中から"あの写真"を取り出し、思い出す。

 

「うーんでも、あの研究所っぽい所の壁…この写真の壁とそっくりだったんだよねぇ……左に写ってる人の事は分からなかったケド…」

 

写真を眺めながら、フェレーナは若干、後悔めいた様な感情を抱く。そしてまさに、フェレーナが頭を伏せるタイミングで…

 

「おい、大丈夫か?」

 

「えっ…あぁ!はい、大丈夫で…す………あっ!!"エリザベス" !」

 

「なんだ、大した事は無さそうだな。良かった良かった」

 

突然座り込んだフェレーナを心配した一般人だろうか、と思い伏せかけた頭をもう一度上げて返答しようとすると、なんとそこには一般人というにはあまりにも厳つい"紅い"キャストがそこに立っていた。

 

「なんでそんな棒読みなのよ…私後ろから撃たれそうだったんだけど」

 

「まぁそう言うな、出れたのだからいいだろう」

 

「まぁ…そうなんだけど…」

 

「ところで、早く立ってくれないか。この状況では"女性に暴力を振るキャストがいる"と通報されてしまう。そうなってはせっかく出た意味がない」

 

そう言われ、フェレーナは辺りを見回す。すると、周りの通行人はこちらを見て明らかに不審そうな顔でこちらを見ている事に気付いた。

 

「あっ…ご、ごめん」

 

「いやなに、気にするな」

 

「……とりあえず、移動しよっか」

 

「あぁ、そうだな。それがいい。まずはゆっくり、シャワーでも浴びるといい」

 

「え"」

 

フェレーナが露骨に嫌な顔をしてエリザベスを見つめる。

 

「ん?どうした」

 

「ねぇそれって…私の家に来るってこと…?」

 

「うむ…まぁ必然的にそうなるだろうな」

 

「えぇ……」

 

こうして、フェレーナはエリザベスを連れ自宅へと帰る事になった。

 

 

「あ、そういえば」

 

「ん?いきなり立ち止まってどうした。気持ち悪い虫でもいたか?」

 

フェレーナの自宅へと向かう途中、彼女は"何故こんな事忘れていたのだろう"と思い、思わず立ち止まってしまった。

 

「そうじゃなくって…名前!私、あなたに会った時からずっと名前言えてなかったよね」

 

するとエリザベスは、まるで"は?"とでも言いたそうな雰囲気を見せる。

 

「いや…何よその態度…せっかく人が…」

 

「あぁ…いや、違う。そうではない…」

 

「…?」

 

「ただ、"忘れていただけだ"」

 

エリザベスはゆっくりと。まるで杖をつく老人の様にゆっくりと歩き出す。

そして夕日をバックにし、振り向き様にこう言った。

 

「教えてくれ。お前の名前を」

 

フェレーナはどこかデジャヴの様なモノを感じる。なぜだか、胸が熱くなるような。そんな何かが胸の底から込み上げた。

 

「私の…名前は…」

 

口が勝手に動く。フェレーナは困惑した。"何故"。そう、思うしか出来なかった。

 

「フェレーナ」

 

"瞳の奥に見える夕日"と、"現実に広がる夕日"を照らし合わせ、ながら、フェレーナはそう名乗った。

 

 

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