Phantasy Star Convergencer ~PSCg~   作:Father Bear

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第4話~ドーナツ~

現在、フェレーナは色々とマズイ事になっている。特に男性に見せてはならない様な代物がちらほら床に散乱していた。

 

「…フェレーナ?これは一体…」

 

「わーーーー!!!わーーーー!!!ちょっとごめんホントごめん!!!外行ってて!!!」

 

「あ、あぁ……」

 

エリザベスに人の顔があれば、絶対に呆れた顔をしていたろう。まぁ、表情を写す顔など無くとも間違いなく呆れているだろうが。

 

「そうだった……こんな部屋誰も来ないだとか思い込んでた……うォおォおおォん……」

 

とても女性から出る声とは思えない唸り声が部屋の中を木霊する。

「さて…」

そしてもう一度、この悲惨な状況を見回す。

 

「…うん、これ無理だ」

 

この後、フェレーナは顔をエリザベス並みに真っ赤にしながら、凄く申し訳なさそうな顔をしながら渋々エリザベスに協力を仰いだのだった。

 

 

1日が経ち、ようやく部屋の片付けが終了する。散乱する日用品もそうだったのだが、一番重荷になったのが日々の生活で出てくるゴミであった。

 

「ソウジッテ、ダイジダナー」

 

「何故棒読み気味なんだフェレーナ。お前はその台詞をもっと感情を込めて言うべきだ。」

 

「うぅ…返す言葉もない…」

 

エリザベスに協力を仰いだフェレーナは、終始顔を赤らめながら何かに追われる様にせっせと衣服やら日用品やらを片付けた。

片付けた後の部屋はまるでどこかのリフォーム番組の如く"なんという事でしょう"と言わんばかりの変わり様であった。

 

「全く…あれほど片付けは大事だと教えたのだがな…」

 

「……はいはい…っていうか、えーと…エリザベス、さん?」

 

「エリザベスでいい。さん付けは慣れていなくてな、むず痒くなる」

 

紅き鋼、エリザベスはその大きな身体には想像もつかない小さな足音でフェレーナの座るソファーに近づく。

 

「じゃあ…エリザベス。あなたに会った時からずっと思ってたんだけど、あなたのその意味深な発言は何?まるで…」

 

「………」

 

フェレーナは、ずっと気になっていた事をエリザベスに打ち明けようとする。当然だろう。"昔が"云々言われていれば自然に芽生えるであろう疑問だったのだ。

すると

 

ピ ン ポ ー ン

 

「あ、そういえば今日は…はーい!!」

 

突然インターホンが鳴った。どうやら、フェレーナは今来た人物に覚えがあるらしい。

 

「あ、ごめんエリザベス!ちょっと隠れてて!」

 

「…?何故だ。何か問題でもあるのか?」

 

「問題があるからそう言ってるの!とりあえずどこでもいいから隠れてて!」

 

「あ、あぁ。わかった」

 

何がなんだか分からないまま、エリザベスはベランダに追い出された。

 

 

「お、おはよ~"ミナ"ちゃん」

 

「おはよう、レーナ!なんだかドタバタしてたみたいだけど…」

 

「う、うぅん!何でもないよ!ホント!」

 

「そうなの?ならいいけど…」

 

彼女の名前は"ミナ"。フェレーナの数少ない友人の一人である。

低身長、特徴的な青髪を持っている。性格はいつも元気で、常に周りを笑顔にしている。

同年代の男女の間では、彼女の"とある部位"が非常に大きいとされており、彼女自身も無意識のうちにその"とある部位"を強調する仕草をする。

 

ちなみにではあるが、フェレーナは親しい仲には、自身の事を"レーナ"と呼ばれている。"フェレーナ"だと何か堅苦しいモノがあるらしい。

 

「今日は…ドーナツ巡りだっけ!」

 

「そそ!期間限定の新しいドーナツが出たんだぁ~。一緒に食べに行こうよ!」

 

「期間限定…あー!モノメイト風味のやつ、だっけ?」

(モノメイト風味…!?)

 

奥で聞いていたエリザベスが戦慄する。

 

本来アークス専用の治療薬として開発された商品ではあるが、何を思ったか。大手ドーナツ店とのコラボが実現したのであった。

その目的としては単純であり、「一般市民にもモノメイトの味を知って欲しい」という理由である。

 

「そうそう、早く行こ!!あれ販売数に限りがあるらしいからっ」

 

「うん、わかった~!…の前に、ちょっとカバン取りに行ってきてもいいかな?」

 

「ん?いいよっ!」

 

「ありがと!」

 

するとフェレーナは扉を閉じ、隠れていたエリザベスに早歩きで近付いていく。

 

「エリザベス!あなたはお留守番で!」

 

「あぁ、わかった。なるべく、遅くなる前に帰るのだぞ」

 

(アンタはお父さんか何かか!)

 

そうエリザベスが言った瞬間、フェレーナは勢いよく扉を閉め出掛けていった。

 

「…やれやれ…何年経とうと、人というものはそう変わらないな…」

 

独り言を残し、エリザベスは自身のインベントリを開く。

中には期限切れのモノメイトや、必要最低限の防具、武器しか入っていなかった。

 

「まぁとりあえず…武器の整理でもしようか…」

 

そう言い、周りを見回すエリザベス。何かを気にしている様であった。

 

「…再び汚れないようにな?」

 

おもむろにアヴェンジャーを取り出し、整備を始めようとする…しかしここでエリザベスは、ある異変に気付く。

 

「…何…?」

 

インベントリから取り出したアヴェンジャーに深々と、"白いフォトンカラーのパルチザン"が突き刺さっていた。

おかしい、俺は"あの三人組を殺して"そのままあそこから出たハズだ。と、エリザベスはまるで愚痴でも溢すかの様に喋る。

 

「何が起きている…?」

 

 

「結構混んでるね~、レーナ」

 

「そうねミナ…モノメイト風味のドーナツなんて…物好きもいたものね?」

 

例のドーナツ店に来たミナとフェレーナ。どうやら店内はかなり混雑しているらしく、カウンターに辿り着くまでにはしばらくかかりそうであった。

 

「どうするミナ?この調子じゃあ結構かかりそうだよ?」

 

「う~ん…でも今を逃したら…う~~~ん」

 

「私は別に大丈夫よ、帰っても別に暇d…」

 

「じゃあ並ぼう!!!!!!!」

 

呆れるほど即答であった。

 

そして、列の最後尾に並ぼうとしたフェレーナに何かがぶつかった。

 

「ごっ、ごめんなさい!」

 

ぶつかったのは、目が隠れる位に伸ばしたボサボサ黒髪の少年(?)だった。

 

「あ…ご、ごめんね?ケガとかない?」

 

フェレーナはしゃがみ、少年と目線を合わせる。見たところケガも無い様で、フェレーナは内心安心した。

 

「は、はい。大丈夫…です」

 

「良かった…お姉さん余所見してて…本当ごめんね。さ、お母さんの所におかえり」

 

「は、はい…」

 

すると突然立ち止まったフェレーナを気に掛けてか、ミナが呼び掛ける。

 

「どったの?レーナ?」

 

「うぅん、なんでもない。ちょっとつまずいただけ」

 

「でも、ここ段差とかないよ?レーナ変なの~」

 

少し、フェレーナの心は傷付いた

 

 

「結局1時間くらい並んじゃったねぇ。ってか買いすぎでしょ。何個買ったの?」

 

「ん~~~と……10個?」

 

「ドーナツに好き過ぎでしょ…」

 

「へへぇ~。ドーナツは!どんな事も解決出来るすっごぉい食べ物なんだよ!」

 

「へ、へぇ~…」

 

「だからさ!」

 

ミナがフェレーナの前に素早く回り込む。その手には一つ、ドーナツが握られていた。

 

「レーナもさ!何か悩みとかあったらさ、ドーナツを頼ってみるといいよ!ほらこれ、あげる!」

 

そう言うとミナは、一つでも多く食べたかったであろうモノメイト風味のドーナツを、フェレーナの手の中に置いた。

 

「……ありがとう、ミナ」

 

「いいよいいよ!じゃ!次行こ!」

 

「ちょっ!?ちょっと待って!!今その腕の中にあるドーナツどうするの!?」

 

「え?もう食べちゃったよ?」

 

「うっそでしょ!?ってかまだ私半分も食べてないんだけど!?」

 

「次どこ行こっかな~」

 

「人の話聞いてよォ!」

 

話を聞かず行動を起こす人物に、フェレーナはデジャヴを感じた。

 

 

ただいま~、と。すっかり夜になった頃にフェレーナは自宅の扉を開ける。そこには、ベランダから外の風景を眺めるエリザベスの姿があった。

 

「おかえりフェレーナ。あの青髪の女との会話にあった"ドーナツ"は、美味かったか?」

 

フェレーナは荷物を下ろす動きを一旦止め、ゆっくりとエリザベスの方に向く。

 

「もう…リング状のモノは見たくない…うっぷ…」

 

「何があった」

 

「いや……なんでもないよ…なんでも…うっ…………」

 

とりあえず落ち着かせようと、エリザベスはフェレーナに座る事を薦める。

 

「はぁ…食い過ぎだ。馬鹿者が」

 

「私もそう思う…」

 

「おおよそ、あの女に付き合った結果なのだろう?全く…ほどほどにしておくんだな」

 

だがそれも、エリザベスは"彼女の優しさ故なのだろう"と。自己解決していた。

 

「それでだ。フェレーナ」

 

「ん?なぁにエリザベス」

 

エリザベスは、彼女が言い掛けたあの言葉を。彼女に問いかける。

 

「意味深な発言がどうのこうのだったな。昼間言ってたろう?」

 

「あ!そうそう!結局、なんだったのよあれ?」

 

「あれはな………」

 

小さな部屋に重く、鋭い空気が張り付める。

 

「冗談だ」

 

「え?」

 

「冗談だ」

 

すると、フェレーナは何も掛けられていない上着かけを手に取った。

 

「ややこしいんじゃーーーーーーーー!!!!!!!」

 

その日の夜、金属音が宿舎に鳴り響いた。

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