ロクでなし魔術講師と正義の死神   作:アステカのキャスター

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気まぐれ投稿ですよろしく!!





プロローグ

「避けろセラ!上からくるぞ!」

 

 

上から真っ赤に燃え上がった木材やら何やらが、ものすごいスピードでこちらを圧殺しようと迫ってくる。

 

 

「くっそ!しつこいんだよ本当に!」

 

 

グレンが叫びながらも魔銃ペネトレイターを乱射する。その背中でセラは魔法を放つ。

 

 

「《大いなる風よ》!」

 

 

セラが足止めの魔法を放つ。

銃声とゲイルブロウが迫る魔の手に向けて放たれた。

しかし、結局それは焼け石に水だ。これ程溢れ返った『天使の塵(エンジェルダスト)』を投与された住民は

 

 

「くっ!?」

「えっ!?」

 

 

 

足下に潜んでいた手が、セラとグレンの足を掴んだ。魔力も殆ど残されていない中でこれだけの人数は相性が悪過ぎる。

 

セラは兎も角、グレンとは相性が悪い。掴まれた足を【フィジカル・アップ】で蹴り飛ばしても離れない。

あのままだとこの攻撃を躱すことが出来ない。

 

 

「くそっ!」

「《吠えろ炎獅子》!!」

 

 

グレンの足を掴んだ怪物達が燃える。『天使の塵(エンジェルダスト)』によって正気を失った住民達に容赦なくぶっ放す。

 

 

「グレン!セラ!」

「アッド君!どうしてここに!?」

 

 

その先にいたグレンとセラを見て、慌てて向かう。アッドは本来なら陽動役に選ばれていない。本命を殺す為に呼ばれていたはずだ。

 

 

「なんで、お前が……」

「イヴとは関係なく独断だ。とりあえずこの状況をなんとかしないとな」

「……すまねぇ」

「礼は後だ……それよりもこの場を離脱するぞ。この場は『天使の塵(エンジェルダスト)』のゾンビと『人工精霊(タルパ)』の女神がーーーーーーーーーー」

 

 

それを言い切る前にセラに向かって放たれた雷槍に気付いてしまった。気付いてしまった時には既に身体が動いていた。

 

 

「セラッ!!!!」

 

 

セラを突き飛ばしてグレンの方へ押し出す。

 

雷槍の勢いは止まらず……

 

バヂィ!!

 

 

「えっ……?」

「はっ……?」

 

 

アッドの胸を貫いていた。

 

 

「カハッ……!」

 

 

アッドは片膝をついて胸を抑える。

 

貫かれた急所から溢れ出す鮮血と尋常じゃない痛みに身体は悲鳴を上げ口元から血が流れている。

 

 

「アッド!?」

「アッド君!?今回復を!?」

「……ジャティスの……テメェの仕業か……」

「ご明察。流石アッドだね」

 

 

グレンもセラも背後に浮遊する人工精霊に乗った男に視線を向ける。

 

帝国宮廷魔導士団執行官No.11《正義》ジャティス=ロウファンが引き起こした『天使の塵(エンジェルダスト)』による中毒者がグレン達に襲ってきた理由は恐らく、ジャティスの目的がグレンだったのだ。

 

 

「帝国宮廷魔導士団特務分室No.13《死神》アッド=エルメイ。君は確かに正義の為に戦っていた。けど君じゃダメなんだ。グレンでなければね!」

「ジャティス!!テメェ……!!?」

「君がここに来る事は()()()()()()。君は仲間を見捨てる事が出来ない素晴らしい信念を持った人間だ。けど、だからこそ君はグレンやセラを見捨てられなかった。君の負けさ」

 

 

このままだとコイツの筋書き通りか……。

今、ここで出来る最善はグレンとジャティスを戦わせない事、そしてセラを逃した後、宮廷魔導士に『天使の塵(エンジェルダスト)』の患者の殲滅を……今からじゃ遅すぎる。

 

今のままじゃ……。

 

 

「グレン、セラ、ここから離脱しろ」

「っっ!?」

「お前、何言って……!」

「……いいから行け。俺はここでジャティスを倒す。今の筋書き通りなら予定調和を崩せるのは俺しかいない……」

「お前、胸を貫かれて……!」

「……どの道長くない。行け」

「ふざけんな!!お前残してこのまま行けるか!?」

 

 

アッドの胸元を掴むグレン。しかし、アッドは表情を変えずにグレンを殴り飛ばす。

 

 

「《さっさと去れ》!」

「っ!?ぐああああっ!?」

 

 

黒魔【ゲイルブロウ】によってグレンをセラの方に吹き飛ばされる。加減はしたが充分な距離が出来る。

 

 

「……達者でな。2人とも」

 

 

俺は今まで隠していた異能を解放する。腕から黒い炎が詠唱も魔術行使無しで顕現され、グレン達との間に炎の壁が隔たれた。

 

 

「アッド!!アッドォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

「アッド君!!何で……!!嫌!嫌だよ!!」

 

 

そんな2人の叫びは無情にも届かずに、『天使の塵』を投与された生き人形はグレン達に襲いかかっていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……へぇ、君って異能者だったんだ。それは流石に()()()()()()()

 

「ハァ…ハァ…お前にも読めない展開だろ?予測するだけの未来なんて、何が起きるか予測出来ない事だってある。お前の固有魔術の弱点だ」

 

「へぇ成る程、勉強になったよ。けど、この後始末をどうしてくれるのかなぁ?その傷で僕に勝てると思ってるのかい?」

 

「………」

 

 

確かにこの傷ではジャティスに勝つ事は難しい。『天使の塵(エンジェルダスト)』の住民をあらかた始末した後じゃ魔力は半分と言った所、時間も残り少ない。

 

 

「お前……何でこんなことした?」

 

アッドにとってジャティスは実力も認めていたし、思考は危なかったがこんな人を巻き込んだことをするような人間ではなかった。

 

「時間がないからね……まぁ、強いて言えば【禁忌教典(アカシックレコード)】のためさ」

 

(禁忌教典?)

 

「時間が無いって言ったろ?冥土の土産ってやつさ。さぁ、僕の正義のための礎になってくれ」

 

「そう簡単になると思ってんのか」

 

張り詰めていく緊張感が満たされたとき【正義】のアルカナを冠する者と【死神】のアルカナを冠する者は激突する。

 

「来い、【彼女の左手(ハーピィレフト)】【彼女の右手(ハーピィライト)】!!」

 

一人は精霊を召喚し、己が狂信する正義のために行使する者。

 

「君を殺した後グレンを殺すよ!その為にはセラは犠牲になって貰わないとね!!」

 

「やっぱ生かしておけねぇな……」

 

「君に僕は倒せない!君の行動パターンは全て把握しているからね!僕はグレンをセラを!そして君を殺して正義の魔法使いになる!僕の正義を執行する!」

 

「正義……ねぇ。俺はそんなもんの為に戦うんじゃねえ」

 

「……?じゃあ君は何でそこに立つ」

 

「俺はな……ただ、親友や仲間、家族、アイツらが紡いだ未来を。そしてーーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

「惚れた女を守りたかっただけだ」

 

 

 

アッドは目を閉じて手を合わせる。それはまるで神に祈るかのようで、今この時の太陽の光さえ神々しく見えてしまう。

 

まるで神に捧げる歌を紡ぎはじめた。

 

 

「《我が手に集え正義の鉄槌ーーー》」

 

 

地面に描かれた魔方陣は白魔儀【サクリファイス】だ。自分を犠牲にする事で自分に対するあらゆる誓約を破る事が出来る。人間ではあり得ない自爆人間や、一時的に突出した魔力を解放出来たりする代わりに発動すれば術者の命を失う。

 

それでも迷いはなく詠唱を続けるアッドにジャティスは嫌な予感を覚えた。アッドは天才だ。それこそ()()()()()()()()()()にすら届き得る才能を持った宮廷魔導士団のエースを張っていた男が、これ程長い詠唱を……?

 

「君は……何をしている?」

 

「《今は遠き晩鐘の音は放たれし悪の終わりを告げる》」

 

 

どんどん魔力が上がっていく。胸を貫いた深い傷から血が流れていながらも詠唱は止まらない。攻撃しようとしてもそこに飛び出る別の術式がそれを破壊する。

 

「行け!!【彼女の左手(ハーピィレフト)】【彼女の右手(ハーピィライト)】!!目の前の邪悪を駆逐しーーーー」

 

 

バリンとガラスが割れたような音に『人工精霊(タルパ)』が壊れていく。詠唱も無しに【ライトニング・ピアス】【プロストブロウ】【ブレイズバースト】が『人工精霊(タルパ)』を粉々に砕いていく。

 

 

「これは……!君の固有魔術か!?」

 

「《一掃せよ破邪の裁きよ》」

 

 

時間差起動の魔術には限りがある。どんな天才でさえ精々出来て5つ、だが襲いかかる『人工精霊(タルパ)』は見るからに10以上居るが、それを全て詠唱無しで撃ち落としている。

 

 

「馬鹿な馬鹿な馬鹿な!?あり得るはずが無い!この莫大な魔力にこの光!?君はフィジテを滅ぼすつもりか!?」

 

「《今一度正義の聖火を唄え。遥かなる未来の礎となりて今ここに示せ》!」

 

「待っーーーーーーーー!?」

 

「ーーー黒魔改【ファーゼス・アルゴール】」

 

 

重ねた手から溢れ出る裁きの光が街に広がっていく。町から悪だけが消えていく。『天使の塵』を投与された人間もジャティスが生み出した『人工精霊(タルパ)』も、ジャティスに協力した天の知恵研究会の幹部も全員が裁きの光に包まれて消えていく。

 

 

目の前に広がっていたのは一掃されて消えていった人々の服と、ジャティスの片腕だけだった。天使の塵にかかっていた人間は跡形もなく消えていた。

 

 

(ごめんな。グレン、アルベルト、リィエル、イヴ、そして………セラ)

 

 

身体が崩れていく。

白魔儀【サクリファイス】を使っても即座に消えなかったのは、自分で作った固有魔術の媒体となったグレンの血が染み込んだ()()

 

魔術性質上、変化の停滞、停止を持つグレンの血は文字通り、身体の崩壊を少しだけ抑えているのだろう。

 

だが、それもただの気休めだった。

 

 

「ははっ……正義の魔法使いに一度はなれたのかもな」

 

 

天に伸ばした左腕も崩れていく。もう死を待つしか出来ない現実に自嘲しながら目を閉じて終わりの時を待った。

 

最後に思い出したのはあの銀髪の髪をした自分が惚れていた女。本当は伝えたかった事は沢山有ったのに何一つ伝える事が出来なかった。

 

 

(グレン、後は頼んだ。お前ならきっとセラを……ぜってー泣かすんじゃねえぞ?)

 

 

きっと届かない言葉を最後に呟いた。

 

 

「さよならセラ。俺はお前の事がーーーー」

 

 

呟いた言葉は風の音に流されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………どうしたの?」

 

 

これは終わりなんかじゃない。

 

始まりを意味した最初の記録。

 

命をかけて正義を守った【死神】と、未来を生きる少年の奇跡の物語である。






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