大変遅くなりました。感想待ってます。
グレンにまとめて襲い掛かろうとしていたゴーレム達の武器を、右に曲がるショック・ボルトで撃ち抜きながら骨を拳で砕く。
「《吠えろ炎獅子》!」
黒魔【ブレイズ・バースト】でぶっ飛ばすが、耐熱を持ったゴーレムには対して効果はないが吹き飛ばすくらいなら出来た。軍用魔術を使えた事にグレンは多少なり驚いているが、なり振り構っている場合ではない。
「先生、ラスカ、できました!」
「よっし、ならぶっ放せ! ラスカ下がれ!」
「言われなくても……!」
流石は秀才、中々覚えが早い。
グレンに言われた通りにすぐさま術式を改変し、それをゴーレムたちに向けて放つ。彼女が放った術は確かに【ゲイル・ブロウ】ではなかった。威力こそないものの、風がまるでゴーレムたちを抑え込むような形で吹き荒び、この場に留まり続けている。
「名付けるなら【ストーム・ウォール】って所か。助かった」
「でも、完全に足止めは……」
「いや、上出来だ。時間を稼がないと今の魔術を使えないんでな」
それを見たグレンは懐から触媒を取り出し、左手に握った。これはセリカと同じ神殺しの魔術、強制的に五素へと返す最高峰の
「《──―我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知る者・其は摂理の円環へと帰還せよ》」
「その魔術は……!?」
「《五素より成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は解離すべし・いざ森羅の万象は須らく此処に散滅せよ・遥かな虚無の果てに》」
「しゃがめ! 下手したら学園ぶっ壊れるぞ!!」
「────えぇい! ぶっ飛べ有象無象! 黒魔改【イクステンション・レイ】!」
膨大なマナをかっ喰らいながら赤黒い魔術式を作り出したグレンは最後ヤケクソ気味に言い放ち、その魔術を行使した。
その威力はすさまじく、一瞬で自分の視界が真っ白に変わる。今まで走っていた廊下を穿ちながらも、グレンが放ったその魔術は先程までしつこいほど俺達を追っていたゴーレムを跡形もなく呑み込んだのだろう。
俺が目にしたのは、まさにそのような出来事の跡地としか思えない光景だったのだから。綺麗にされていた廊下は見るも無残に抉られ、先程まで居たゴーレムたちは跡形も見えない。
「凄い……こんな高等魔術を」
「……ぐっ」
「いや、確かに凄いが分不相応な魔術っぽいな。マナ欠乏症になってる」
「先生……!?」
「おい、とりあえず退くぞ。派手にぶっ放した時点でテロリスト達が来ちまう。回復はそれからだ」
「ああ……、そうだ、さっさと退かねえとマジでやばい……」
だが、人はそれをフラグという。
案の定、フラグを回収するかのように現れた黒コートの男が目の前に現れていた。
「【イクスティンクション・レイ】を使えたとはな、三流魔術師だと聞いて侮っていた。誤算だ」
目の前の男の背後には五本の剣が浮いていた。あれだとグレンや今の俺の固有魔術は通用しないだろう。だけどグレンは満身創痍、説教娘はさっきの呪文改変でマナも少ない。
【ディスペル・フォース】で無力化出来るほど魔力は残されていない。
「あー、もう、浮いてる剣ってだけで嫌な予感するよなぁ……あれって絶対、術者の意思で自由に動かせるとか、手練の剣士の技を記憶していて自動で動くとか、そういうやつだよ……」
「せ、先生……」
「下がれ説教娘、そいつばっかりはお前と比べて
うんざりとするグレンの隣で、システィーナが不安そうにグレンを見上げる。警戒しながらも右手でシスティーナを後ろに移動させる。
「グレン=レーダス。前調査では
「その仲間を殺したのはお前だろ。人のせいにするなっつーの」
「命令違反だ。任務を放棄し、勝手なことをした報いだ。聞き分けのない犬に慈悲を掛けてやるほど、私は聖人じゃない」
圧倒的な威圧感、圧倒的な魔力、剣に込められた魔力は桁違いだ。今の魔力量で勝てる気がしない。【リヴァイヴァー】を使ったせいで魔力残量は3割を切っている上、ラスカの身体は修復後、病み上がりの状態で救出に向かっているのだ。身体は無理している。故に本来アッドとしてのスペックは勿論、ラスカの身体ではよくて実力的に言えば経験こそあるが、システィーナと同じである。
「白猫、ラスカ、あの剣を【ディスペル・フォース】で解除出来るか?」
「無理、魔力量3割切ってる」
「私の全魔力でやっても多分足りない……」
「そうか……ならよし……」
今の魔力量では【ディスペル・フォース】で剣の解除が出来ない。そう思ったグレンはラスカとシスティーナを外へ突き落とした。
って何がよしだああああああああああああっ!?
「っておおい!?」
「きゃあああああああっ!?」
ラスカとシスティーナはそのまま地面に落ちていった。
「逃したか」
「まあな、アイツらには荷が重いだろうしな」
「ふん。それは貴様の僅かな生存率を減らしたようなものだ」
「ああ、そうかい。そりゃ厳しいことで。で、なんだ? その露骨な剣の魔導器は一体なんなんだよ?」
「知れた事、貴様を切り刻む剣に決まっている。では、死ね」
グレンに向けて五本の魔道剣が放たれる。
×××
「い……痛たたた……もう、なんてことするのよ……アイツ!」
落とされた先。校舎の中庭に四つん這いに突っ伏しながらシスティーナは呟いた。黒魔【ゲイル・ブロウ】の呪文で落下速度の減速を行ったために、感覚的には五、六つほど飛び降りた程度ではあるが。
「これが女の子に対する仕打ち!? もし私の呪文詠唱が間に合わなかったらどうするつもりだったのよ!? もう!」
「んな愚痴はあとだ」
叫んでみたが、システィーナの心は急速に消沈していった。冷静に考えればグレンが庇い立てしてくれたのは分かる。
身震いするほどの超絶技巧の数々を披露したダークコートの男は、あのチンピラ男とは比べ物にならないほどの格上だ。あんな規格外の魔術師との戦いの場に残ったシスティーナが巻き込まれて死亡する確率と、落下死する確率。比較する必要もない。
しかし、があの場に残っていたと言うことは、少なくとも肩を並べて戦えれる状況じゃなかったのだろう。
実際そうだ。魔術を駆使してテロリストの一人を倒した所で、熟練者のあのダークコートの男は格が違う。
「結局、私は……足手まといなのね」
あの時は何とか上手くいったが、それはグレンやラスカが庇ってくれていたからであって、しかも、最終的には援護がなければやられていたのは自分だった
「──ッ!?」
「始まったか……」
頭上から、何かと何かが激突する音が響き渡った。戦いが始まったらしい。こうなれば、もう自分に出来ることは何もない。
「もう、先生の言う通りにするしか……」
「おいフィーベル」
がくりと肩を落としてシスティーナはその場にうなだれた。自分の無力さに打ちひしがれ、目の前が真っ暗になっていく。
「な、何?」
「作戦がある。戦況をひっくり返すぞ」
だが、この男だけは違った。元宮廷魔導師団の経験は今こそ生きるのだ。アッドにとっては久々の戦場、チーム戦なら既に作戦はまとまっている。ラスカもといアッドはシスティーナに作戦を話し始めた。
×××
飛んでくる剣を左拳で受け流し、右拳で撃ち落とし、体捌きでかわす。五本のうち三本の剣は明らかに達人の動きで、されど自動化された機械のような動きでグレンに襲いかかる。
残る二本は、まるでその先を埋めるように首や心臓など、グレンの急所を狙っている。
「てめえ、その剣両方かよ」
空中に浮く五本の魔導器の剣を見てそう見抜くグレン。
「御名答だ。二本の手動剣と三本の自動剣、これが実戦によって導き出された最適解だ」
満身創痍のグレンは分不相応な魔術を裏技で無理矢理使ったためマナ欠乏症に陥った状態だ。黒コートのレイクは狙って襲撃してきたのである。
一緒に行動していたシスティーナとラスカをある理由から突き落としてその場から逃がし、単身で挑んでいるが当然劣勢を強いられている。
更に言えばグレンに対してこの男の相性が悪い。グレンの固有魔術【愚者の世界】はあくまで発動の妨害のみ、起動されてる魔術に効果はない。使い所を間違えば自身の魔術も封殺される上に三分間は解除が出来ない。【愚者の世界】のデメリットは大きいのだ。
「くそっ……! 《紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吠え──》」
「《霧散せり》」
剣を躱した僅かな隙に【ブレイズ・バースト】を撃とうとするが、術式は消える。グレンの
「遅いぞ、三流講師。手本を見せてやる《炎獅––––––ぐっ!?」
「なっ!?」
レイクに突如襲いかかる電撃が詠唱を阻害する。今、グレンの目に写っていたのは
「即興改変だと……! しかも下から……!?」
「今だ!!」
グレンはレイクに向かって走り出す。電撃による僅かな隙にグレンは走り出した。だが、追尾の剣が3本グレンに襲いかかる。
「《力よ無に帰せ》!!」
レイクの後ろに立っていたシスティーナが《ディスペルフォース》でそれを落とす。全部は無理でも3本だけならシスティーナの魔力でも足りる。落ちた剣を素早く拾い、残り3メートルを駆け抜けるグレン。
「甘い!」
まだ二本の主導権が残っている。一つで防いで一つで突き刺す。その算段は十分についていた。だが、レイクは一瞬ある事に気がついた。走るグレンの後ろには、さっきグレン自身が突き落としていた生徒がもう1人いる事に。
「《弾け閃光よ》!!」
「しまっ……ぐっ!?」
黒魔《ライトフラッシュ》学生が習う下級魔術だが、その効果は剣を手動で操るレイクには絶大な効果をもたらした。視界が潰された今なら、手動で操る剣は使えない。
「うぉぉぉおおお!!!」
それと同時にグレンはレイクに剣を突き刺した。魔術が維持できなくなり、剣は宙から地面に落ちる。
「ぐはっ……ふっ……聞いたことがある。帝国には最近まで……凄腕の魔術師殺しがいたと」
「そうかよ」
「だが、それ以上に生徒を侮った事が……俺の敗因とはな……」
レイクはその場で倒れ、動かなくなった。
アッドとシスティーナがとった方法は単純。黒魔《グラビティ・コントロール》でシスティーナはレイクの後ろから、アッドはグレンの後ろに登り、魔術的援護をしたのだ。
「疲れた……」
「おう、お疲れさん。正直、お前らがいてくれて助かったわ。腕の一本や二本は覚悟してたんだけどな……」
「でも先生、怪我が……」
「……そんな顔すんな。戦闘訓練なんか……受けてないのにあれだけできれば上出来だ。評価を付けるとしたら最高点やる……ぜ?」
そしてグレンも限界だった。【イクスティンクション・レイ】なんて神殺しの術式に加えて、マナ欠乏症の中アレだけ動いたのだ。むしろレイク相手によく勝てたものだ。
「先生!?」
怪我をしていないシスティだけが残された状況で焦りが襲う。ラスカも白魔儀《リヴァイヴァー》で復活したとはいえ心臓部を貫かれているのだ。ダメージは蓄積されている。
「これを使え、フィーベル。多少のマナは確保できる。使い方はわかるな?」
「これって……使いかたは大丈夫」
魔晶石。
予備魔力が詰まった宝石であり、戦闘に身を置く魔導士にとっては命綱なりえる品物。かなり高価なものだが、今はなりふり構っている場合ではない。
「ありがと……って何処に行くの!?」
「嬢ちゃん助けに行くんだよ。お前保健室でグレン運んで寝かせとけ」
「たった一人で!? 無茶よ!!」
「問題ねぇよ。それに時間は多分長くない」
「えっ……?」
システィーナの忠告を無視してアッドは《グラビティコントロール》で外に出て行った。ルミアを狙う理由は大体分かっていた。廃棄女王、異能を持つルミアは確かに狙われるだろう。
アッドは全力でルミアがいる場所に向かった。
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学園内に聳え立つ白亜の塔───
帝都と学院を繋ぐ転送法陣がある転送塔それがここである。
転送塔の近くは崩れたゴーレムで埋め尽くされている。
その内部、長く続く螺旋階段を登った先、最上階の大広間、そこにルミアはいた。
しかしそこにはルミアだけでなくもう一人の青年がいた。
今回の事件の黒幕であり、学院内にいた裏切り者───ヒューイ=ルイセンがそこにいた。
転送法陣の上で魔術により拘束されていたルミアがヒューイに叫んだ。
「ヒューイ先生! 貴方はこんなことをする人じゃなかった……! 私を転送して、自分の魂ごと学院を爆破させるなんて───……!」
ヒューイは静かにルミアの悲痛な叫びを聞いていた。
やがてヒューイが口を開いた。
「僕はもとより、王族、もしくは政府要人の身内。そのような方がこの学院に入学された時───」
「そいつを自爆テロで殺害するため、そんな僅かなないかもしれない事の為だけにこの学院に在籍していた。様するに人間爆弾ってとこか?」
ヒューイに割って入り声を発した人物がいた。
入り口にもたれかかっているその男を見た二人は驚きを隠せない。
「……まさか貴方でしたか……」
「そんな……ラスカ君!?」
「苦労したぞここまで来るのに、全く嬢ちゃんを攫いに来るだろうなーって近々思っていた俺の悪い勘が当たりやがった。フラグは立てるべきじゃないな畜生」
「ゴーレムはどうしたんですか?」
「ぶっ潰したわ」
そしてラスカは法陣に向かって歩き出す。
ラスカは法陣をじっと見つめ口を開く。
「……なるほど。白魔儀【サクリファイス】か」
「はい」
穏やかにヒューイは微笑んだ。
「確かに死ぬつもりらしいな」
「僕の腕前ではルミアさんの転送するための転送法陣の改変は間に合い間に合いませんでした、まさか貴方のような伏兵がいたとは……」
「伏兵つーか今はただの生徒だけどな」
「しかし白魔儀【サクリファイス】この魔術だけの起動はできる。あと十分もすれば起動します。解呪に取り掛かったとしても間に合うとはとても思えません」
カウントが始まった。
ルミアがヒューイの言葉を聞きラスカに懇願するように叫んだ。
「そんな……逃げて……! ラスカ君……貴方だけでも……!」
「おい嬢ちゃん……じゃなくてルミア。お前に聞きたいことがある」
「逃げて! 逃げたって誰も責めないよ……! だから逃げて……私のことなんて……ど───」
「どうでもいいわけなんてないだろ」
ルミアは自分が言おうとした言葉をラスカに言われて言葉が出ない。
「自分のことなんてどうでもいい。死んだって構わないって思ってる。自分が死んでも誰かが助かる方がいいって思ってんな?」
「そ、そんな事……」
「全く、昔からそういう所は成長しないな」
「む、昔……?」
「『
「えっ…………?」
あの言葉は確か、グレンと一緒にいたあの人の言葉だ。
どうしてラスカがそれを知っているのか聞きたいが、ラスカはヒューイ先生を睨む。
「この方陣を解除すれば問題ないんだな?」
「ええ、でもあと5分。解除するには間に合いませんよ?」
「解除? 別にしなくていい」
そう言ったラスカの右手からは
昔から嫌いだった。この炎は魔術とは全く違う。
アッドさえグレン達に最後まで隠していた
「嬢ちゃん、離れてろ」
「う、うん!」
「まさか……強引に結界を破壊するつもりですか?」
「ああ」
「それはさすがに無理ですよ。その魔方陣はいわば結界だ。物理的に破壊するとしても神殺しの術式を用いないことには話になりません」
「そうかい。ならさ──────」
三層を一瞬で、四層を3秒程度の拮抗で破壊された。
「
右手の炎が結界に触れると、炎がルミアの周りに広がっていき、それと同時に術式が消えていく。
まるで
大きな輝きを放っていた法陣は輝きを失い静寂に包まれ、やがて法陣は───消えた。
「まあ、俺に異能が無かったらチェックメイトだったがな」
アッドの黒炎は
魔術も、異能も、古代武器も魔で構成されたものならアッドの炎はそれを喰らい成長し続ける業火となる。
それは【サクリファイス】の術式さえ、魔力から喰われ分解されてしまうのだ。
「私の負け……ですか」
「ああ、残念ながらな」
アッドがヒューイの元へと近づく。
「私は……何を間違えてしまったのですかね?」
「……同情はしてやる。だが、お前は未来ある餓鬼どもを狙ったんだ。宮廷魔導師も、戦う者も学ぶ者も全て未来の為に戦うんだ。アンタはそれをしなかった」
未来の為に戦う。俺はそうだった。
アイツらの未来の為に戦ったから……
「失敗したことに安堵したなら、その優しさに胸を張ってやり直してきやがれ。この大馬鹿野郎が」
アッドの鋭い一撃がヒューイを突き飛ばす。
ヒューイが意識を失う直前にアッドが口を開いた。
「まっ、アンタが犯人だって事については餓鬼どもには言わないでやるよ」
アッドはそう言った後、疲労と魔力不足で倒れ込んでいた。
最後に見たのはルミアが自分の元に駆け寄る姿だった。
▼
アルザーノ帝国魔術学院自爆テロ未遂事件。
一人の非常勤講師の活躍により未遂に終わったこの事件は、関わった組織や諸々の事情を考慮して内々に処理された。学院の破壊痕なども魔術実験の暴発として片をつけられ、公式にも事件の存在は隠蔽された。
とはいえ全てが完璧に闇へ葬られはしない。現実に被害に遭った生徒達がおり、町でも一騒ぎおこしているのだ。人の口に戸は立てられず、あれこれと噂が流れた。
かつて女王陛下の懐刀として暗躍していた伝説の魔術師殺しや、悪魔の生まれ変わりとされ抹消された廃棄王女、そして誰一人として顔を知らない外套の幽霊などと。そんな噂がまことしやかに囁かれたが、所詮は噂。人の噂も七十五日と言うように、一ヶ月も経てば人々の関心は離れていった。
学院には以前と変わらぬ穏やかな時間が流れ、全てが元通りに収束していく──
▼
「って言う流れじゃないんですか?」
『アホか、まだ嬢ちゃん狙う組織があんだろうが。嬢ちゃんの異能は感応増幅者とは何か違う。何というか……昇華に近い』
精神世界でラスカとアッドが話し合っていた。グレンには二重人格と誤魔化しているので一先ず問題は無いが、ルミアは流石に気づいたいた。と言う訳で休日にルミアが俺を呼んだのだ。
「悪いね。口止めしてくれて」
「いいよ別に。ラスカ君も私と同じ異能者だって分かったら口止めくらいするよ」
「まあ、ルミアの異能。昇華系? って師匠は言ってた。心当たりある?」
「昔、アッドさんにその異能を使った事があるの。回路が別次元になったとか……」
「師匠がルミアさんを助けていた事に驚いたよ」
元帝国宮廷魔導士団執行官No.16【死神】アッド=エルメイ
丁度グレンとチームを組んでアリシア女王陛下のお願いを聞いていたのだが、あの時助けた子供がルミアだったのだ。
「しっかし異能か……」
「ラスカ君の異能は……死んだ人を憑依させる能力?」
「まるで悪魔の使いみたいだけどね」
異能者は悪魔の生まれ変わりと言われて殺される事が多い。ラスカは気付いていないが、死者を憑依させるなんて芸当は異能者の中でも不可思議な部類に入る。アッドの場合は魔に反応し、魔を喰らう黒い炎を顕現出来るし、ラスカはそれをアッドでも無いのに使えてしまう事だ。
「とりあえず、グレン先生とアルフォネア教授には話したし大丈夫でしょ」
「ラスカ君は言ってないんだよね?」
「まあ黒い炎と言い僕の異能は異端過ぎる。流石に話せないよ。まあ師匠がグレン先生にバレたく無いだけかもしれないけどね」
『うるせえ。てか少し変われ』
ラスカが目を閉じて精神を入れ替えると、ラスカの目はアッドと同じ赤い目に変わる。まああの時はグレン先生にバレなかっただけ幸いだ。
「嬢ちゃん。さっき言った通り、嬢ちゃんの異能は感応増幅じゃない。恐らくだが、
「はい……」
「まあ、嬢ちゃんなら問題ないだろう。なんかあったら言ってくれや」
「じゃあ一つだけ、アッドさんは……その……」
「グレンの事か?」
「はい……」
グレンと同僚だったからこそ、事実を告げなくていいのか? とルミアは考えていた。だが、アッドは首を横に振る。アッドは分かっていた。この身体はラスカの身体で、この人生はラスカの物だ。アッドが奪っていい物じゃない。
「俺は死者だ。何時ラスカから消えてしまうかは分からん。だからこそ、死者に縋って悲しい思いをするくらいなら、気付かれない方がマシなのさ」
【死神】は生者の前には現れてはいけないのだから。