提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え?   作:夏夜月怪像

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一目で惚れた。

その佇まい、仕草…そして、強さと優しさを兼ね備えた眼差しとでっけえ背中……あの人の全てに憧れた。

あの人みたいになりたい。
どんな障害にも、困難や苦境にも負けない。

そんな男に、俺も―――


13話 : S との邂逅/街の切り札

「俺は……カッコよくなんかねえよ」

 

 

翔太郎の発言に、漣はポカンとなる。

構わず、翔太郎は続けた。

 

「俺の台詞は……大体が師匠であるおやっさんの受け売りだ」

「ご主人様の……お師匠」

 

「ああ。探偵助手をやっていた頃……いや、ガキの頃初めて見た時からの憧れだった。俺もいつか、おやっさんみたいにみんなから頼られる街の切り札になるんだ……って…」

 

そこまで言いかけると、翔太郎は悔しそうに表情を歪めた。

 

「けど、まだ足りてねえ……。俺はまだ、おやっさんの背中に一歩も近付けてねえんだ………。その結果が、この体たらくって訳さ」

「ご主人様………」

 

 

この時、漣は己の翔太郎に対する無知さと認識の誤り、そして考えの甘さを強く恥じた。

 

自分が見てきた人間は、敬愛する沼田統也を(おとし)めた屑提督や大本営の権力者に限らず、己の欲求や利益を優先し、他者を傷つけることに何の罪悪感も抱かない者たちばかりだった。

ならばと、漣も無意識のうちに利益や見返りを求めるようになってしまっていた。

 

 

だが、目の前の彼はどうだ?

 

仕事とはいえ、最悪人から恨まれかねないような役目を引き受け続けている。

しかも、仕事に対して過剰な見返りも利益も求めない。

 

依頼人の悩みを聞き入れ、解決するために駆け回る―――行動原理は、至ってシンプルだ。

 

 

「ご主人様……」

 

しかし……そのために、いったいどれ程傷付いてきたのだろうと思う。

損をするばかりで、苦労が報われなかったことも少なからずあった筈だ。

 

そう考えると、漣は再び、翔太郎に統也の面影を重ねずにはいられなかった。

 

「……ねえ、ご主人様。こんな言い方すると、怒られるかもしんないけどさ?私……」

 

 

漣が言いかけた、その時。

 

 

 

「見ぃ〜つけたぁ………」

 

「!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

翔太郎と漣の前に、一人の男が現れた。

 

「コイツ………!!」

「知ってるのか?漣」

 

翔太郎の問いかけに、漣は頷く。

 

瀬尾島啓太(せおじまけいた)……漣たちの前提督(ご主人様)を奪った、大本営一派の回し者よ!」

 

「ハッハハ!兵器がいっちょ前に人間振ってんじゃねえよ?つか…お前みてーなちんちくりんが、なんでこの街に居やがる?」

 

憎悪の眼差しを向けられながらも、瀬尾島は下品な笑い声をあげながら漣を罵倒する。

 

「それはこっちの台詞だよ!お前みたいな奴が、なんでこの街に…あぅっ!?」

 

それでも負けずに問い詰める漣だったが、瀬尾島は不快そうな顔で漣を平手で殴り倒した。

 

「漣!!」

 

「此処は俺の地元だ……俺の街に、俺が何処に居ようが俺の勝手だろうが!!ガラクタごときが、人間サマに意見してんじゃねえよ…あぁん?」

 

漣を気にかける翔太郎を他所に、瀬尾島は漣に歩み寄る。

 

「大体、テメェんとこのパパラッチブスが後任の提督の事を密告(チク)ったせいで、俺らまで巻き添え食ったんだぞ?それについて謝罪も無しとか…調子こいてんじゃねえぞ!」

 

漣の腹を蹴り、瀬尾島は下らない不満をぶつける。

 

「ここまで人間サマをバカにした罪は重いぞ?本当なら、テメェじゃなくてあのクソパパラッチが良かったんだが……そうだなぁ、ロリコンの豚どもに売りつけて、腰振りのダンサーにでも―――」

 

「おい」

「――あ?」

 

 

翔太郎に声を掛けられ、振り向いた瞬間―――気付いた時には、瀬尾島の顔面に翔太郎の右ストレートが飛び込んでおり。

 

瀬尾島は石畳に叩きつけられていた。

 

「ぐぁっ…かは!?で…デメ゛ェ゛……!!」

綺麗に入ったためか、顔を押さえている瀬尾島の指の隙間からは鼻血が止めどなく溢れていた。

 

 

「大丈夫か?漣」

「ご、主人…さま……」

 

殴られた漣の頬に触れる、その手は暖かく。

安心したのか、漣は涙を溢れさせた。

 

「すまねえ………ヤツの手が早かったから…なんて、言い訳にもなりゃしねえな………腹の方も大丈夫か?だいぶ蹴られただろ?」

「うん……まだちょっと痛いけど、最初よりはマシかな……。ご主人様が手を握ってくれたからかも。アリガト…」

 

そう言って感謝の気持ちを伝えると、漣の頭を翔太郎の手が優しく撫でた。

 

 

「ちょっと待ってな。すぐに終わらせるからよ……」

 

漣にそっと微笑みかけた翔太郎の眼は、瀬尾島の方へ振り向いた途端に鋭い視線を投げかける。

 

「な、何のマネだ?テメェ……まさか、そのガラクタを庇うつもりかよっ!?」

 

 

漣を―――艦娘を卑下する、醜い言葉で翔太郎を罵る瀬尾島に対し、翔太郎は静かに反論した。

 

 

「何のマネか……それはこっちの台詞だぜ。こんなにもか弱い……優しい女の子を平気で傷つけて……その上、街まで泣かせたんだぞ。恥ずかしくねえのか!」

「な…なに言って……」

 

「それともう一つ……テメェは大きな勘違いをしているぜ。『お前の』じゃなくて、『俺たちの』街だ!俺だってこの街で生まれ、育った人間だ。だが、だからこそ街に住む人たちへの尊敬や『街に住まわせてもらってる』ことへの感謝を忘れたことは一度もねえ!テメェみたいな、自分のことしか考えねえ悪党が街を泣かせることを…俺は絶対に許さねえ!!街で生きている……艦娘を受け入れる理由なんざ、それだけで充分だ!」

 

 

「ハッ……だったら、仲良くくたばれや!リア充がッ!!」

 

 

そう吐き捨てると、瀬尾島はズボンから1本の禍々しいメモリスティックを取り出した。

 

「!!ご主人様、あれって………!!?」

「なるほどな………そういう事か」

 

 

《ハイエナ!》

 

瀬尾島が手にしたメモリスティック――ガイアメモリのスイッチが押され、瀬尾島は自身の左前腕部に刻まれた、黒いコネクタの様な模様にメモリを突き刺した。

 

 

すると、瀬尾島の身体はブチ模様の毛皮に覆われていき、ハイエナの様な獣人の怪物に変わった。

 

「怪物……ドーパントに、なった………!?」

 

怯える漣に、翔太郎は手を伸ばして庇う態勢を取る。

 

「心配するな、漣。これ以上奴の好きにはさせねえ。お前も、この街も……俺が絶対に守ってみせる」

 

 

いや……

 

「“俺たち”が……な」

 

そう言うと、翔太郎はジャケットの内ポケットから2つのスロットが備わった大型の端末を取り出し、腹部に充てがった。

 

端末・ダブルドライバーからベルトが伸び、翔太郎の腰に装着された。

 

 

そして、懐に忍ばせていた「漆黒のガイアメモリ」を取り出すと、翔太郎はメモリのスイッチを入れた。

 

 

《ジョーカー!》

 

「行くぜ?フィリップ!」

 

 

 

―――同じ頃、鳴海探偵事務所の地下ガレージ。

 

フィリップの腰に、翔太郎が身に着けたものと同型のドライバーが装着された。

 

 

「了解だ、翔太郎」

 

その場に居ない筈の、翔太郎の呼びかけに応え、フィリップも「緑のガイアメモリ」を取り出した。

 

 

《サイクロン!》

 

 

 

2つのメモリ、そして2人の人間を1つのドライバーが繋ぎ、1つの意思を形にする合言葉(キーワード)が発せられた。

 

 

「変身!」/「変身!」

 

 

 

まず、フィリップが右のスロットにメモリをセット。

すると、メモリは転送され、同時にフィリップは昏倒する。

 

 

「ほいっ!」

 

そこへ、待ち構えていた亜樹子がフィリップの身体を抱き止める。

 

「ふぃー……」

 

 

 

そして。

 

翔太郎の装着したダブルドライバーの右側のスロットに、フィリップの刺したメモリが転送されてきて、翔太郎が改めてこれをセット。さらに、自身のメモリも左側のスロットにセットして、ドライバーは2本のガイアメモリを刺した状態となった。

 

「ご主人様、なにを!?」

 

 

漣が問う暇も無く、翔太郎はダブルドライバーのスロットを展開。「W」の形にした。

 

 

《サイクロン!/ジョーカー!》

 

 

 

力強い“地球の声”に身を委ねるかのように。

 

「探偵」左 翔太郎の姿は、緑と黒の“超人”へと変わった。




ずっと、ずっと書きたかった場面その2が完成しましたっ!!


次回、彼らの闘いが始まります!!


これで決まりだ!!
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