提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え?   作:夏夜月怪像

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エコロジー都市《風都》。
常に心地好い風が吹き、街の至る所で風車が回っている。
街に住む人々は『我が街』を愛し、街に生きている。

……だが、究極の理想都市とも言えるこの地で、奇妙な犯罪が横行していた。


《ガイアメモリ》―――『地球(ほし)の記憶』を内包した、特殊なUSBメモリを身体に刺すことで、人はドーパントと呼ばれる超人になるのだという。

ドーパントたちが起こす超常犯罪を前に、警察は無力に等しかった。

陰謀に満ちたこの街で、悲しみを解き放てるのは彼らしか居ない!


『左 翔太郎』
ハードボイルドを標榜する半熟野郎(ハーフボイルド)

『フィリップ』
地球(ほし)の本棚』に入り、様々な情報を閲覧・引き出すことの出来る、謎多き魔少年。


彼らはふたりで1人の探偵コンビ。
運命の街・風都とそこに生きる人々を守るため、数々の怪事件に挑む!


彼らは、《ふたりで一人の仮面ライダー》なのだ!!


14話 : Sとの邂逅/2色のハンカチ

「ご主人様……?」

 

『テ…テメェは……!?』

 

風が吹き、風車が回る。

 

その中心に立つのは、緑の右半身と黒の左半身を持つ一人の超人。

 

漣や目の前の怪物――ハイエナ・ドーパントは、驚きを隠せない。

 

「……仮面ライダーW!」

 

 

クールな仕草でドーパントを指差し、仮面ライダーWは宣告した。

 

 

「『さあ、お前の罪を数えろ!」』

 

 

======================

 

 

 

 

漣は、目の前の光景から目を離せずにいた。

 

一方は、かつて自分の敬愛する提督を奪った悪党の一人が姿を変えたハイエナの怪物。

もう一方は、行き場を失くした自分を受け入れると言ってくれた優しい探偵が変わった、緑と黒のツートンカラーの超人。

 

右肩から伸びる、その白銀のマフラーと背中を見て、漣はハッとなる。

 

 

(同じだ………夢に出てきた、マフラーを靡かせた影と同じだ!)

 

 

 

『グゥ…!コノ、チョロチョロしてんじゃねえぞッ!!』

 

 

数発のパンチと膝蹴りをテンポ良く繰り出し、怯んだところへすかさず風を纏わせた右脚の回し蹴りがハイエナ・ドーパントを捉える。

しかも、時折攻撃の手を止め、様子を伺う仕草を見せる為、ハイエナ・ドーパントには挑発されているように感じていた。

 

 

『サバンナの掃除屋、ハイエナのメモリか……なるほど』

 

ハイエナ・ドーパントの攻撃を往なしながら、フィリップは得心がいったような物言いをする。

 

「『検索』で何か判ったのか?相棒」

 

翔太郎の問いかけに、フィリップは肯定の意を示した。

 

 

『ああ。そして、この情報は君の推理とも一致する………そう断言しよう』

「そうかい。なら……」

 

 

「『一気にカタを付ける!!」』

 

『何をブツクサとォオッ!!』

 

Wとして一体化している、翔太郎とフィリップの会話に、馬鹿にされていると見なしたハイエナ・ドーパントは、怒りと本能のままに暴れ始めた。

 

 

「おっと!?」

『動物タイプのメモリとは言え、予想外の戦闘力だ。恐らく、適合率が上昇しているんだろう』

「なら早いとこ片付けねえと、それこそ取り返しのつかねえ事に………っ!」

 

 

ハイエナ・ドーパントの動きの違和感に、翔太郎が気付いた時には既に遅かった。

 

『そらっ!』

「うおっ!?」

 

ハイエナ・ドーパントは持ち前の身軽さで跳び上がると、口から吐瀉物の様な塊を吐き出し、Wの足に付着させる。

 

すると、それはみるみる硬質化し、Wの足を固めてしまった。

 

「こいつは……!」

 

『そいつは固まったが最後、簡単には壊せねえぜ。人をコケにした罰が当たったな、クソが!』

 

勝ち誇ったように笑いながら、ハイエナ・ドーパントは漣の方へ振り向く。

 

『翔太郎、この攻撃はメモリの使用者に強烈な空腹感を発生させる!』

「なに!?まさか、ヤツは漣を……!!」

 

『そうさ。この際だから食うことにした……その後は、テメェも食ってやるけどな』

 

「ひぅ……!!」

 

怯え、固まってしまって漣にゆっくりと近付こうとするハイエナ・ドーパントだったが。

 

 

「大丈夫だ、漣!!お前は絶対に死なせねえ、俺を信じろ!!」

 

「ご主人様……!」

『ハッ!動けねえ奴が、何をわめいて……!?』

 

 

ハイエナ・ドーパントが驚いた、その理由は2つ。

1つは自分の体が急に動かなくなった事。

 

 

もう1つは、Wの色が「半分」変わっていて、緑が黄色になっているだけでなく、右腕が伸びて自身の身体に巻き付いていたのである。

 

 

《ルナ!/ジョーカー!》

 

 

『翔太郎、一つ訂正をしてもらおう。「俺を」ではなく「俺たちを」と複数形であるべきだ。違うかい?』

「へっ……そうだった、なっ!!」

 

 

ハイエナ・ドーパントを拘束したまま、Wは右腕を振り回し、ハイエナ・ドーパントを地面に叩きつけまくる。

 

 

『ぐっ……ぇが……ぁぐ……!』

 

だいぶ打ちのめされた為か、ハイエナ・ドーパントは意識が朦朧とし始めていた。

 

当然、このチャンスを逃す手は無い。

 

 

『翔太郎、このままメモリブレイクといこう』

「オーケー。ならこれで決まりだ!」

 

右サイドのメモリを、ルナメモリからサイクロンメモリに戻し、再び緑と黒の姿・サイクロンジョーカーとなる。

 

 

続けて、Wはジョーカーメモリを抜き、右腰のスロットにセットした。

 

 

《ジョーカー・マキシマムドライブ!!》

 

 

メモリの力を全開にして、Wは風に包まれる。

風の力によってハイエナ・ドーパントの吐瀉物は砕け散り、Wはそのまま空高く浮かび上がる。

 

 

そして

 

 

「『ジョーカーエクストリーム!!」』

 

 

空中で一回転。

両脚を揃えて急降下すると同時に、Wの身体が左右に分かれ、左サイド、右サイドの順に2段キックを繰り出した。

 

 

『うぐっぅ!?うが…あぁああああああぁぁあっ!!!!?』

 

 

Wの攻撃に耐えきれなくなり、ハイエナ・ドーパントは爆発。

 

 

「きゃっ!?……あっ!」

 

 

Wが着地し、瀬尾島が倒れたその直後。

 

バラバラに砕けたハイエナメモリの破片が散らばった。

 

 

「…………」

 

 

とんでもない出来事が立て続けに起こり、理解する暇も無かったために言葉を失った漣は、静かに佇む超人の姿を黙って見つめることしか出来なかった。




W、まずは1体撃破しました。
『風都艦隊』第1章、もうじきクライマックスです!

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