提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え?   作:夏夜月怪像

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再就職先の内定が決まるなど、バタバタしていますがなんとか進めて参ります。

サブタイは単なる比喩であり、特に意識はしてませんです(^_^;)


21話 : 月下の大猪(おおしし)

場面は少し遡って、春島中佐の謀略による、輸送会社社長襲撃事件が起きる少し前。

 

 

工廠の清掃員である猪宮と新入りの乾 巧は、工廠の裏手で独り泣いていた艦娘・文月を発見、泣いていた訳を聞こうとしていた。

 

 

「え……えっと…」

「だから、どうしたのかって聞いてんだろ?別に難しいこと聞いてる訳じゃねえのに…」

 

「バカ野郎が!そんな頭ごなしに攻めかかる奴があるか!」

 

飾り気の無い、良く言えば裏表の無い、悪く言えば乱暴な巧の言葉に戸惑う文月。

猪宮は巧の頭を叩いて叱責し、文月を庇った。

 

「いってぇな!何すんだよ、イノさん!」

「ちょっとは異性に対する接し方を学びやがれ!」

 

「あ、あの!おじさん、文月は気にしてないよ?」

 

二人の言い争いを見ていて、流石にこれ以上泣きっぱなしは良くないと思い、文月は涙を拭いて二人の仲裁に入ったのであった。

 

 

「い…いただきますっ」

 

出会った直後、猪宮からもらった焼きそばパンを頬張り、文月は顔を綻ばせた。

 

「フミィ〜……久々のご飯だよぉ…」

 

 

「久々って……いったいどの位前から食ってなかったんだよ?」

「んぅー……今、日付が変わったから…ちょうど4日くらいかも?」

 

「……そうか」

「4日も放ったらかすとか、あの提督は何やってんだ?」

 

巧が新たに質問を投げかけるが、文月は再び表情が曇って俯いてしまう。

 

「…それは………」

 

すると、猪宮が立ち上がった。

 

「おじさん…?」

 

「………今日はもう遅い。乾、文月を艦娘の寮まで、送っていってやれ」

 

「は?」

「えっ……い、いいよ!パンまでご馳走してもらったのに、これ以上は甘えられないよぉ!」

 

突然の申し出に、文月はアワアワしながら断ろうとする。

 

「……俺で良いってんなら」

 

「乾さん〜……」

 

 

何かしらの気配を感じながら、巧も猪宮の案に賛成する。

 

「迷子になるよかマシだろ」

「乾……そういうのを余計な一言っつうんだが、知ってるか?」

「辞書は(きれ)ぇだ」

 

「チッ……口の減らんガキだな、お前も」

「年長者振って、威張る年寄りなんて可愛くねえんだよ」

 

言葉遣いこそ互いに乱暴だが、それは裏を返せば、本音を言い合えるほど打ち解けているということ。

 

着任して日の浅い文月だが、そのことについて他の艦娘たちのやり取りを通して学んでいた。

 

「えっと……じゃあ、よろしくお願いします」

「ああ。イノさん、悪いけど用具の後始末頼むわ」

「おう」

 

そう言って、猪宮は文月と巧を見送った。

 

 

「………あいにくだな。ここにゃ、もう俺一人しかいないぜ?」

 

倉庫の物陰の方へ呼びかけると、そこからチンピラと思しきグループが4人ほど出てきた。

 

 

「チッ!この時間なら、豚も消えてるから楽勝だって聞いてたのによぉ!」

「まったくだ。おい、このまま行かせてくれるってんなら、オッサンには手ぇ出さないでやるよ」

「まっ、向こうのかわい子ちゃんたちには手出しまくりの中出しまくりだけどな?」

「キモッ!お前、盛りすぎだろ?」

「人のこと言えんのか?ギャハハ!」

 

どうやら、このチンピラたちは何者かの手引きで潜り込んできたらしい。

 

「………ハァ…呆れたもんだな」

 

「………は?」

 

猪宮の唐突なため息に、リーダーらしいチンピラが苛立ちを見せる。

 

「お前らの幼稚臭さに呆れたって言ったんだよ。それ以上に……()()()()()()()()()()()()()()()()ことが、情けなくてたまらない」

 

 

心底残念そうに呟く猪宮に対し、グループの一人がナイフを取り出した。

 

「おい、クソブタ……今から5数えるから、それまでに土下座して消えろ。嫌ならここで即刻・死ね」

「あっ、言っとくけど拒否権無いからー。ちゃんと四つん這いになってから『人間サマ〜、生意気言ってスミマセンでした〜ブヒブヒ』って言ってね〜」

 

 

猪宮は、心の底から哀れみを抱いた。

 

何故、人間は正しくあろうと努力することをせず、外道に堕ちることを選び、際限無く堕落し続けることが出来るのか。

 

 

自分にはもう、『普通の幸せ』というものを求める資格すら無いというのに………

 

 

「はい、いくよー?5…4…3……」

 

しかし……

 

 

「2……」

 

 

それでも、自分が守りたいと思うものに、手を差し伸べることを許されるのなら

 

 

「喜んで……化物(ブタ)になろう」

 

「はい、い〜…………えっ!!?」

 

 

カウントを切られる直前。

 

猪宮の顔に、隈取の様なおどろおどろしい模様が浮かび上がった。

 

眼は白く濁り、その体躯を灰色の物へと変異させる。

 

 

 

豚の頭部を思わせる意匠の入った、スリットの入ったバイザー付きの騎士兜。

丸みを帯びた、分厚い鎧に身を固め、両肩にはそれぞれ、タックルの威力を高めるための鋭いスパイクが3基ずつ備わっていて、右手にはトゲ付きのメイス、左手には円形の盾を装備。

 

腹部には、盾に描かれた物と同じ紋章が飾られており、その姿はさながら、中世の騎士か剣闘士を彷彿させた。

 

 

「うっ…うわあぁぁああっ!!?」

「かか、かっ…怪物ううぅうう〜〜っ!!!」

「ヒイイィ〜〜〜〜〜ッ!!」

 

先程までの高圧的な態度は瞬く間に崩れ、チンピラたちは我先に逃げようとする。

 

 

豚の怪物の影が、猪宮の姿を映し出すと、猪宮は怒りの眼差しを向けながら言い放った。

 

 

「力はおろか、言葉の一片(いっぺん)さえも虎の威を借りただけの藁小屋(わらごや)ども……。己の卑しさと矮小さを知れ……!!」

 

 

工廠の片隅で、身元不明の衣服4人分と正体不明の灰が見つかったのは、朝になってからだった。




久方ぶりの執筆…そして未だ慣れぬファイズ編……(;´∀`)


そろそろ、読者離れのピンチかしらん?(;´∀`)
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