提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え? 作:夏夜月怪像
ファイズ編、かなり強引ながら展開を進めさせていただきますm(_ _)m
いやぁ、ホントムズカシイ(;´∀`)
巧たちが清掃を行った、その日の夜。
春島の執務室に呼び出されたその人物は、春島から暴行を受けていた。
「ゴミ処理もロクに出来ねえのか?俺の鎮守府を汚くしてんじゃねえぞ、役立たずが」
その眼は、昼間の灰の山や艦娘たちに向けたものと同じ、物や汚らしい物を見るような不快感を露わにしたものだった。
「……申し訳ありません……提督…」
謝罪をするも、男は春島に
「ご主人様……だろ?
にっこりと微笑むが、そこには明確に殺意があった。
「それとも、見かけに相応しいように豚と呼ぼうか?ん?」
これ以上抵抗すれば、冗談抜きに始末される……
そう感じて、男――猪宮は従った。
「失礼しました………ご主人、様………」
だが
構うものか……
大切なものを守れるのなら、いくらでも家畜に成り下がってやる―――
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清掃作業を切っ掛けに、巧は今まで以上に艦娘たちと交流……もとい、声をかけられ、ちょっかいを出されるようになった。
特に、最初に会話をした文月や姉妹艦の《睦月》を始めとした無邪気な艦娘や、巧の無愛想な態度を改善しようという名目で親しくなろうとする者たちに振り回され、巧はこれらを鬱陶しがった。
「たくみちゃーん!一緒にお買い物行こ〜!」
「まだ仕事残ってんだよ、つか“ちゃん”付けで呼ぶな!」
駆逐艦からは「巧ちゃん」と、ちゃん付けで呼ばれ、それ以外からは専ら「たくちゃん」か「たっちゃん」呼びされていた。
「うふふ、たっちゃ〜ん。一緒にお昼ど〜ぉ?」
「だから“ちゃん”付けで呼ぶなっ!!
「あらぁ、じゃあたっちゃんは何て呼べば許してくれるの〜?」
五十鈴以外の軽巡洋艦で、絡まれる機会が特に多い艦娘《
「普通に巧って呼べ。それが無理なら、乾で良い」
「良いじゃねえか…あだ名で呼ぶってことは、気を許してくれてる証拠だろぉが」
そこへ、工廠の作業が一段落した猪宮が歩み寄ってきた。
「イノさん……」
「猪宮さん、こんにちは〜」
「………また腕上げたみたいだな、龍田」
「うふふ……やっぱり判っちゃう?」
天龍型軽巡洋艦2番艦娘《龍田》。
この鎮守府において、彼女は艦隊のエースとして活躍していた。
否……こき使われていた、というべきかもしれない。
龍田は、この鎮守府に在籍している千歳・千代田姉妹同様、人から艦娘へと覚醒したタイプの人間だった。
《建造》から生まれた、いわゆる《オリジナル》と比べれば基礎能力は決して高くはないが、その潜在能力の高さや成長率は大本営も一目置いており、春島もそのポテンシャルの高さに期待して、通常の海戦のみならず《特殊任務》という名目の汚れ仕事を他の艦娘以上にやらせて来た。
それはつまり、心身共に疲弊しているということでもあった。
「ホント……ただの出撃任務だったら、いくらでも頑張れちゃうんだけどねえ…」
それでも龍田が耐えられたのは、猪宮の存在があったからだ。
彼女は気付いていた。猪宮が、自分たちと同様、本職とは別の何かを強要されているらしいことに。
それが何なのかまでは分からないが、彼も何かを強要されて、悩み苦しみながらも仕事に取り組んでいるのなら、自分もそれを見習わなくては……そう思いながら、今日までやってきたのだ。
しかし……
「でも……そろそろ、限界かも……」
「………」
滅多に見せない、龍田の苦笑い。
それはつまり、本当に精神が限界ということ―――。
「………乾。龍田と、他にチビたちを何人か連れて外に行ってこい」
「イノさん……」
「猪宮さん?」
「ちっと……提督に文句を言ってくらあ」
よっこらと立ち上がり、歩きだした。
「待てよ。だったら俺たちも――」
「オメェらは足手まといだ、すっこんでろ……!」
声そのものは荒げていないが、静かに発したその言葉から凄みが感じられた。
「っ……!」
「……おう」
これには、流石の巧や龍田も思わずビクッと反応してしまい、大人しく従うことに。
そして、遠ざかる二人の背中を見届けながら、猪宮は小さな声で呟いた。
「じゃあな、乾……艦娘たちを頼んだぜ」
「それから……。最期までダメなパパでゴメンな………『
周りに艦娘が居ないことを確認し、猪宮は意識を集中。
チンピラたちの前で見せた、豚の様な灰色の怪物に変異した。
「っ!?」
変異する直前、たまたま通りかかった妖精さんに目撃されたが、怪物は妖精さんに「さっさと行け」と軽く手を振って逃してやり、そのまま執務室へと向かった。
そして
到着した執務室では、春島一人が待ち構えていた。
「それが答え……か」
執務室の壁面に、猪宮の影が浮かび上がり、怒りの表情を剥き出しにした。
『改めて分かったよ……。お前は提督の器なんかじゃない!!』
それに対し。
春島は椅子から立ち上がると、これまで以上に不愉快そうな眼差しを向けてきた。
「豚が……いや…《オルフェノク》の恥晒しが、人間のマネをするな!!烏滸がましい!!!」
そう声を荒げると、春島の顔に隈取が浮かび上がり。
怪物姿の猪宮――《ボアオルフェノク》に似た、西洋騎士の様な甲冑を纏ったライオンの様な怪物――《レオオルフェノク》に変異した。
『そもそも…マトモな戦果も挙げられず、妻子を死なせた無能な役立たずが!組織から提督の座を取り上げられてもなお、鎮守府に居座り続けること事態、不自然なんだよォっ!!』
影の中に春島の姿が浮かび上がり、ボアオルフェノクを口汚く罵り始める。
幅広の大剣を振るうレオオルフェノクに対し、ボアオルフェノクのメイスは一回りほど小振りな為、接近戦では不利に見えた。
それでも、ボアオルフェノクは盾や硬い体で防御しながら、反撃の隙を伺った。
『っ!グルル…ゴオオオォォアッ!!』
一瞬。間合いを開いたタイミングを好機と見なし、ボアオルフェノクは身体を膨れ上がらせ、下半身を四脚のイノシシに変化。爆走態となった。
『見せてやる………
―――同じ頃。
「――!」
ふと、龍田は歩みを止めた。
「龍田さん?」
文月が尋ねるも、龍田は反応しないまま、鎮守府の方を見つめていた。
「―――お父さん…?」
ファイズ編、クライマックスまでもう少し。
夏夜月が考えた話の中では、たぶん新記録なレベルの胸糞悪さ&切なさです(汗)