提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え? 作:夏夜月怪像
疾走する本能を、今!!
その鎮守府は、世間的には問題の無い鎮守府であると言われ続けていた。
だが、それはあくまで表の顔に過ぎず、提督・春島勇矢の統率という名の独裁支配を受けていた。
そうした一切の情報が露呈しなかったのは、秘密を探ろうとした者や彼に利用され続けた末に見限られた者、彼の支配から艦娘を逃がそうとした者が尽く消され、彼にとっての駒である艦娘たちを力と恐怖で抑え込んでいたからだ。
そうした支配から、艦娘となった娘や他の艦娘たちを開放しようと、春島と関わりのある大本営の一部派閥から追放された元提督・猪宮忠夫の遺志を継ぎ、無念を晴らすべく、一人の男が立ち上がった。
しかし……その男は、自分は正義などではないと言った………。
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「巧……ちゃん?」
怪物としての正体を明かした春島ことレオオルフェノクと対峙すべく、レオオルフェノクが《ファイズ》と呼んだバトルスーツ姿に“変身”した巧を、龍田たちは凝視していた。
「ひょっとして……仮面ライダー…?」
「仮面……ライダー……?」
文月の呟きに、長月が反応する。
艦娘や深海棲艦の存在が確認される、そのずっと昔……世界各地に、人々の平穏を脅かす悪と戦う、仮面を着けた戦士が存在するという都市伝説が語り継がれていた。
バイクを駆り、風と共に現れ、嵐のように闘い、そして風と共に去っていく男………
人々は彼らを、《仮面ライダー》と呼んだ―――。
「フッ!グルルァっ!」
「ふん!はっ!おらぁ!」
レオオルフェノクの振るう大剣を躱しつつ、ファイズは小刻みにパンチや膝蹴りを繰り出していく。
「グッ!」
怯んだ一瞬を逃さず、ファイズは大振りのパンチやキックを叩き込み、反撃の隙を与えない。
「すごい……。巧ちゃん、戦い慣れてる……」
「でも、あれじゃヤンキーとかチンピラのケンカと変わんないぞ……」
長月の言う通り、ファイズの戦い方は、型にはまらないラフファイトその物で、オルフェノクとはいえ、軍人としての教養と武道の基礎を心得ているレオオルフェノクとは真逆のスタイルだった。
その為、徐々にではあるが、戦局はファイズの優勢へと傾き始めていた。
『ぐっ……この、ザコがぁあっ!!』
自身の劣勢を認められないレオオルフェノクは、マントをライオンの
「!!」
ファイズは辛うじて躱していくが、その脅威は龍田や文月たちにまで降り掛かった。
「キャアアァァッ!!!」
逃げ切れない……そう思い、龍田は文月らを抱きしめて強く目を瞑った。
しかし、次の瞬間。
オートバジンがビークルモード時の前輪・バスターホイールを構えると、弾幕を張って龍田たちを守った。
「っ!!?グアァッ!!」
その弾丸の雨は、防御手段を持たないレオオルフェノクを捉え。
ファイズの打撃以上の攻撃を加えた。
………が、その猛威はファイズにも及び。
「っとと!?…おいコラ、テメェ!!前と同じことやらかしてんじゃねえっての!」
ギリギリ被弾は免れたものの、ファイズはオートバジンの脇腹を殴りつけた。
「前と同じ……って、前にもあったの?」
文月の問いに「まぁな」と簡潔に答えると、ファイズはオートバジンの胸部のスイッチを押して、バトルモードからビークルモードへ戻した。
「……さっさと終わらせる」
バスターホイールの乱射が効いていたらしく、レオオルフェノクはフラついており。
ファイズの発した一言に、恐怖を感じ取った。
「グッ……ウゥ……!」
「恨むなら俺を恨め。お前の夢は、俺の夢を潰す……コイツらの夢も潰す。だから……俺は、俺やコイツらの夢を守るために、お前の夢を潰す!」
右腰のトーチライト・SB-555L《ファイズポインター》を取り、ファイズフォンにセットされたミッションメモリーをセット。
筒状のパーツが延長すると同時に、【Ready】の電子音声が発せられ、ポインターユニットとなる。
右脚のスネ部分のスロットに装着し、そのまま腰を低く落とすと、フォンを開いてエンターキーを入力した。
【EXCEED CHARGE】
フォンを閉じると、バックルから右脚のラインに沿って光が走り、ファイズは走り出した。
「グル……グルァア……!!」
今までに感じたことの無い、恐怖という感覚に支配され、レオオルフェノクは後退りを始めた。
しかし、それも最早手遅れだった。
跳躍、一回転した直後に両足を揃え、前に突き出したところでファイズポインターから深紅の光が一直線に放たれ、レオオルフェノクの心臓部に打ち込まれると、光は円錐形に広がり、レオオルフェノクの動きを封じた。
そして
「でぁあああああッ!!!」
円錐形の光の中心部に向かって、ファイズはキックの態勢で飛び込み。
光と同化、ドリルのように回転。
必殺キック・クリムゾンスマッシュを
「グゥっ…ゥア……アガアァァァアアアアアアアアっ!!!!!!」
やがて
光が消えると、ファイズが姿を現して、着地。
瞬間……レオオルフェノクの背後に『Φ』の印が浮かび上がり、同時に青白い炎が全身を包み込んだ。
そして、砂の城が崩れ落ちるかの如く、レオオルフェノクの肉体は崩壊。
「………」
この、人殺しめ―――
崩れ落ちる寸前、レオオルフェノクこと春島に、そう罵られたことをファイズは思い返す。
ゆっくりと振り向き、遺された灰を見つめながら、一言だけ呟いた。
「
ファイズ編、1章完結まであと少しです!