提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え? 作:夏夜月怪像
そんな気持ちも込めて、書き上げました。
“妹”たちを守るため、戦え!
宇宙鉄人!キョーダイン!!
前回のあらすじ。
とある鎮守府に着任した、譲治提督と竜治少佐の兄弟。
艦娘たちと打ち解けはしたが、秘書艦である駆逐艦レーベレヒト・マースは、前歴が一切不明の二人に対し不安が拭えない。
そんな彼女に寄り添い、心を通わせる譲治。
しかし、その時。
深海棲艦に似た謎の怪人軍団が出現、鎮守府を包囲。
陸戦に適した装備が整っていないレーベたちの軍備では対処しきれない。
その時、譲治と竜治がロボットの戦士へと変化。
真の姿《宇宙鉄人キョーダイン》となった!
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「ア…アトミラールさん……リュージ、さん……?」
レーベたちと同じく、譲治と竜治の変化を目撃した艦娘、プリンツ・オイゲンは震える声で呼びかける。
『ギ…ギギ……』
人型の深海棲艦たちも警戒を強めた。
『すまない、プリンツ。説明は後だ!』
『そういう事!』
赤い身体のロボット・スカイゼルと青い身体のロボット・グランゼルの二人は、直立不動のままガシャンガシャン、プシューッと体のパーツだけを動かし、余熱を発しながら自分たちの身体状況を確認すると、改めて“敵”を見据える。
『俺たちの可愛い“妹”は、誰一人渡さん!!』
『行くぞ!《ダダロイド》ッ!!』
『トアッ!!!』
一糸乱れぬ動きで突撃の構えを取り、
「………」
「そんな……あれが、本当にアトミラールと…リュージ少佐なの………?」
「………」
呆然と眺めるマックスの隣で、レーベは頭の中が真っ白になっていた。
アトミラールたちがロボット……。
ずっと、僕たちを騙してたの……?
人の姿に化けてまで……僕たちを騙したかったの……?
レーベは、マックスと二人で数多の海軍基地を異動してきた。
巡ってきた司令部の大半が、艦娘を兵器や戦闘のための道具としか見ていない場所で、勿論全ての人間がそうだった訳ではないのだが、優しくしてくれた人に限って早死をしたり、提督などに排除されたりしてしまった。
それ故に、レーベは感情が希薄になってしまい、笑顔を失くしてしまった。
譲治と竜治、二人に出会うまで………
(………違う!アトミラールたちは、僕たちを騙してなんかいない!!)
目の前で起こった出来事に対し、黒い影が胸の奥から湧いてくるのを感じるが、レーベは涙を拭いながら振りほどく。
アトミラールたちは自分たちを騙してなどいない。
ただ、打ち明けられなかったのだ。
自分たちが怯えてしまうことを心配して……ずっと、ずっと話す機会を伺っていたのだ。
(アトミラールたちを……二人の気持ちを理解しようとしていなかったのは、僕たちだ……!!)
「くっ!!」
「レーベ!?」
次の瞬間、レーベは飛び出していた。
『ぐおっ!』
『スカイゼル!ぐあっ!?』
2対4……初めは乗り切れると見ていた戦闘だったが、途中、深海棲艦型の戦闘ロボット・マリーナパームは合体。半人半艦型の《軽巡棲姫》に似た形状の大型ロボットにパワーアップしたのである。
『ク……!まさか、合体するとは…!!』
『マズイぞ…アニキ……こんな大事なときに、エネルギーが切れかかってやがる……ッ…』
無理もない。
これまで、必要最低限の分しかエネルギーを補給していない。
にも関わらず、激しい戦闘を行っているのだから、エネルギーの切れが早いのも当然だった。
「アトミラール!!リュージ少佐ー!!」
『ッ!?レーベレヒト・マース!?』
『バカヤロー!!なんで逃げなかったんだっ!?』
驚くスカイゼルと、怒鳴るグランゼル。
しかし。レーベは負けじと言い返した。
「逃げられる訳無いでしょ!?アトミラールたちが……スカイゼル“兄さん”とグランゼル“兄さん”がピンチなのに、
『!!』
『レーベ……お前……?』
「ピンチの時こそ、力を合わせるのが家族……でしょ?兄さん……!」
レーベがそう言い終えた直後。
マリーナパームの右腕が、レーベの頭上に振り下ろされた。
「レーベ、逃げてぇぇぇッ!!!!」
マックスの叫びも虚しく、マリーナパームの巨腕は地面を叩き、砕いた………
筈だった。
『………ッ!?』
赤と青、2種類の腕が受け止め、レーベを護り
『ウ……オ、オォ、オオオオォォォォオッ!!!!!』
マリーナパームの巨体を、たった2人で持ち上げたのである。
『サイバエナジー、数値2京ダイン!!
勢いそのままに、マリーナパームを盛大に転ばせると、宇宙鉄人は高々とジャンプした。
『チェンジ、ダァーイン!!』
スカイゼルは手を生やしたミサイル型のバトル形態・スカイミサイルに。
グランゼルは6輪戦車型のバトル形態・グランカーにそれぞれが変形、マリーナパームに向かって突撃を開始した。
「レーベ!!」
「マックス、みんな…!」
『スカイミサイル、発射!!』
『グランランチャー、一斉掃射!!』
スカイミサイルの突撃を援護すべく、グランカーは内蔵されたミサイルポッドの弾頭全てを発射。
スカイミサイル本体も、マリーナパームの放つ砲弾の雨を掻い潜り、弱点である動力炉へと突撃した。
『どんなもんじゃあぁぁぁっ!!!』
敵の機体を貫通、破壊したときのスカイゼルの決め台詞がそれだった。
―――それから、上層部に事の顛末を改めて報告したり、詳細な情報を提供するべく、資料の整理をしたりといった一悶着がまたありまして。
譲治兄さんと竜治兄さんは、正式な海軍提督と補佐官に任命されました。
「君たちの素性については、我々海特警と総司令部の一部のみが情報を有し、身の安全と権利を保証する」
「ありがとうございます、徳川元帥閣下!」
「ありがとうございます!!」
―――僕たちには、二人の兄が居る。
賢くて、勇敢な兄と
優しくて、たくましい弟。
彼らを知る人は、こう呼ぶ。
《宇宙鉄人キョーダイン》と―――。
かなりムリヤリに終わらせちゃいました(;´∀`)
特別編、いかがだったでしょうか?
今年も、どうかよろしくお願いします!!