提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え?   作:夏夜月怪像

49 / 73

探偵事務所に置かれた《風都鎮守府》。

探偵提督、提督に着任して最初の依頼です。

※少し修正しました。


43話 : mの誘い/縁を取り戻せ

―――その依頼は、これまでに引き受け、扱ってきた様々な事件に引けを取らない……そして、良くも悪くも忘れられない事件の始まりだった。

 

 

「初めまして。えっと……()島狩(じまがり) (もと)()って言います……」

(みな)()(がわ) ゆかりです……」

 

 

訪ねてきたのは一組の男女で、第一印象は、どこにでも居そうな、ごくありふれたカップルといった感じだった。

 

公衆の面前でありながら、しっかりと手を繋いでいる事からも、依頼人たちの仲の良さを窺い知ることが出来た………かに見えた。

 

 

「もしかして、お二人さんは恋人同士っぽい?」

 

唐突に夕立が尋ねると、返ってきた答えは翔太郎たちを驚かせた。

 

 

「いえ……2日前まで、お互いに名前も顔も知らない、赤の他人でした」

 

「ええぇぇえッ!!?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

依頼人の名は『津島狩 幹雄』。風都市内にある、数少ない自動車整備を営む会社『風都モータース』に勤務する、入社2年目の若手社員。

 

連れ添っていた女性『水面川ゆかり』は、1ヶ月ほど前に風都へ引っ越してきた新卒者で、就職活動していた所で今回の事件に巻き込まれたとの事だった。

 

 

「それじゃあ……改めて。今の状態に至るまでの出来事について、詳しく聞かせて下さい」

 

「はい……」

 

 

―――事の始まりは、2日前。

 

いつもの様に仕事を終えた津島狩は、翌日が休みということもあって、ファミレスでのんびりと時間を潰していた。

 

そして、そろそろ家に帰ろうかと店を後にした……その時。

 

 

「キャアアッ!!」

「へ?――うわっ!?」

 

近くを通りかかった水面川が、いきなり津島狩に『引き寄せられ』て密着。

幸い、どちらにも怪我は無かったのだが、問題はその後だった。

 

「…ん?あれ……」

「えっ……ちょ、な…何……!?」

 

 

……離れられなくなってしまったのだ。接着剤で貼り合わせたかのように。

 

 

 

「嘘ぉ……」

 

話を聞き終え、瑞鶴は思わず本音を洩らした。

 

出会い頭にぶつかって、それ以降離れられなくなる……そんな話、聞いたことが無い。

耳を疑っている瑞鶴の反応は当然であるし、こんな冗談みたいな話を信じるものは基本いないだろう。

 

 

しかし……どんな悩みであろうと、頼ってきた人の話を聞くのが、この探偵事務所のスタイルだ。

 

だから、漣と夕立はまず、津島狩と水面川の『繋いだ手』に注目した。

 

「ぱっと見だと、ただ手を繋いでる風にしか見えないっぽい」

「えっと……。最初にぶつかったときは全身で密着したので?」

 

漣の質問に、津島狩は「あ…はい」と答える。

 

「変な誤解を与えるとマズかったし、急いで離れようとはしたんですが…その…右手だけは、どう頑張っても離せなくって……」

「私も、津島狩さんにぶつかる前、左手に妙な違和感があって……くっついてしまったのはそのすぐ後でした」

 

「フム……」

 

考え込む翔太郎であったが、津島狩は深く頭を下げた。

 

 

「お願いします!!彼女を……水面川さんを助けて下さい!!」

「おぅっ?」

 

その必死な様子に、思わず驚きの声をあげる亜樹子。

 

「実は俺、婚約者が居るんですけど……コイツが変な誤解を持ってしまったらしくて、水面川さんに嫌がらせをするようになってしまったんです!いくら話をしても聞く耳を持ってくれないし、このままじゃ、水面川さんが体を壊してしまうかもしれない……!!」

 

「津島狩さん、私は大丈夫です。むしろ、貴方の方こそ……」

 

そのやり取りだけでも、二人とも誰かの痛みや苦悩を受け止め、思いやることの出来る優しい人達なのだと理解出来た。

 

 

「……分かりました。その依頼、お受けします」

「提督!?」

 

翔太郎の承諾に、摩耶は驚きの声をあげた。

 

明らかに普通じゃない、異常な案件に対し、何故受けようと思えるのか。摩耶と瑞鶴には信じられなかった。

 

 

「津島狩さん、水面川さん。お二人の手を無理に縛り付ける、その結び目は必ず俺たちが解いて、誤解と苦しみからだなと開放します」

 

「あ……ありがとう、ございますっ!!」

「よろしくお願いします……!」

 

 

《探偵提督》左 翔太郎、捜査開始である。




望まぬ結びつき、果たしてその正体は?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。