提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え?   作:夏夜月怪像

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W編のストーリーですが、クウガ編を考えるのと同じくらい楽しいです!


とゆー訳で、張り切って参ります!


4話 : Sとの邂逅/涙を失くした少女

「では、改めまして。私が、所長の鳴海亜樹子です!それから、こっちが……」

 

「探偵の左 翔太郎です、初めまして」

 

 

自己紹介もそこそこに、二人は白川母娘を応接間へ案内する。

 

 

 

「それで……今回は、どういったご要件で?」

 

 

亜樹子にお茶を淹れてもらい、差し入れる翔太郎。

 

 

しばらく俯いたまま黙り込んでいた白川夫人だったが、やがて口を開いた。

 

 

「実は……主人が行方不明になってしまって……。探偵さんに、捜索をお願いしたいのです」

 

 

「ご主人の?」

 

「志穂理ちゃんのお父さん、ですか?」

 

 

翔太郎と亜樹子の問いかけに、白川夫人は小さく頷く。

 

 

 

「主人は、都内にある海軍兵学校の教官を勤めておりまして……士官候補生や、艦娘と呼ばれる女の子たちからも大層慕われていたとか」

 

 

 

「フム………」

 

 

 

 

 

―――その後、白川夫人からご亭主・「白川成一(せいいち)」さんについての話を一通り聞き終えた俺は、横でボンヤリと事務所内を眺めている、志穂理ちゃんの方へ目が向いた。

 

 

ぱっと見た様子だと、父親の行方不明について何も感じていないのかと思われたが、第一印象で相手の心境を決めつけるなど、ハードボイルドな俺は決してしない。

 

 

だから、不安を煽らないように話しかけることにした。

 

 

「お父さんの事は心配しないで。俺が……いや、俺たちが必ず君のお父さんを見つけてみせるよ」

 

 

すると、翔太郎の言葉が嬉しかったのだろう。

 

「探偵さん……ありがとう!」

 

 

可愛らしい笑顔を見せてくれた。

 

 

「……分かりました。依頼の件、承りましょう!」

 

 

「え?い、良いんですか!?その……調査期間とか、前金のお支払いとかの相談は…!?」

 

 

 

慌てふためく白川夫人に対し、翔太郎はそっと語りかけた。

 

 

 

「探偵を頼る依頼人はみんな訳ありだ。細けー事を一々気にしてたら、探偵なんか出来ねぇ……」

 

 

 

「えっ………?」

 

「ぽい?」

 

 

首を傾げる二人に、翔太郎はフッと柔らかな笑みを浮かべる。

 

 

「―――俺が尊敬する、先代の受け売りですよ。安心して下さい!必ずご主人を見つけ出して、お二人の下へ連れ戻します!」

 

 

「……ありがとうございます……!どうぞ、よろしくお願いいたします……っ!!」

 

 

その言葉がよほど嬉しかったのであろう、白川夫人は涙を流しながら深々とお辞儀をした。

 

 

情報が集まり次第、改めて連絡をする約束をして、その日は二人を見送った。

 

 

 

「なんか、不思議な感じの娘だったね?志穂理ちゃん」

 

「確かにな。………けど、ま。しょうがねえんじゃねーかな?大好きな親父さんが、突然居なくなっちまったんだ……行方不明だっていう事実に対して、実感が湧かないのか……それとも………認めたくないから、なのか…………」

 

「うーん……きっと、すごいショックだったんだろうね……」

 

 

 

 

 

「―――実に興味深い」

 

 

その時。

 

 

カーテンの奥から声がしたと思えば、そこから1冊の本を手にした腕が伸びてきた。

 

 

「おっと……悪いな。起こしちまったか?“フィリップ”」

 

 

謝る翔太郎に、フィリップと呼ばれた主は朗らかに返した。

 

 

「問題無い。僕もちょうど目が覚めた所だからね。それより……君が帰り際に遭遇したという少女……。非常に興味深い存在だ」

 

「へ?何何、どーゆーコト!?」

 

 

話が見えない亜樹子はズズイっと詰め寄る。

 

 

「さあな………。いずれにしろ、白川さんたちもあの女の子も、まとめて救って見せるさ」

 

 

「えぇ〜……そう言って、まぁた失敗するんじゃないのぉ?」

 

 

ジトーっとした目を向ける亜樹子に対し、翔太郎はムスッとした顔になる。

 

 

「またとは何だよ、またとは!!―――何度も言ってるだろ?この街は俺の庭だ。行方不明の男一人ぐらい、あっという間に捜し出して見せるさ」

 

 

 

ハッハッハー!と高笑いをするなど、ハードボイルドの欠片も無いような態度に呆れつつ、亜樹子は翔太郎を見送るのだった。

 

 

 

「……どー思う?フィリップくん。あたし、今回もあの半熟男はしくじると思うんだけど……」

 

「……相棒として、弁護したい気持ちが無い訳でもないが……亜樹ちゃんに同意見だね」

 

 

そう。

 

 

ハードボイルドを謳っているのは、あくまで形や振りだけ。

 

実際の左 翔太郎は、些細な事でムキになったり調子に乗ったりと、とてもハードボイルドには程遠い…“ハーフ”ボイルドと言われ続けているのである。

 

 

 

「何か、良からぬことに巻き込まれなければ良いんだが……」

 

 

残念ながら、フィリップのささやかな望みは、時を待たずして呆気なく消えてしまうのである……。




次回、翔太郎の探偵業・捜査と漣との再面談が行われる……ハズ。


何か、良からぬことが起きそう?!

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