提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え? 作:夏夜月怪像
しかし、悪事を暴いてシバいてハイお終い…と、すんなりいかせてくれないのが『仮面ライダーW』ですよね……やっぱり(冷汗)
『コネクション!』
隠れて行っていたガイアメモリ犯罪を暴かれたにも関わらず、《コネクションメモリ》の所持者・張田正紀は不気味な笑みを浮かべながらメモリを取り出し、スイッチを入れると己の右こめかみに突き刺した。
『クフヒヒヒ……!仲良く潰れちまいな!!鉄クズの山でなあッ!!』
糸くずの塊ともツギハギな人形とも見える、一見コミカルな容姿のドーパントと化したが、掌から放たれたエネルギー波によって、建物の骨組みである鉄骨の継ぎ目が消失、さらに鉄骨その物の長さもバラバラとなり、建物全体のバランスが崩れた。
「ッ!!?しま……」
「提督ッ!!!」
脱出しようとしたが、張田の店は崩落。翔太郎と望月を生き埋めにしてしまった。
『ア〜バヨ!バカなヒーロー気取りさん?キヒャーハハハハハッ!!』
張田が変身したコネクション・ドーパントは、その身を一本のヒモ状に変化させ、瓦礫の隙間を抜け出していった・・・・・・。
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突然の家屋崩壊の通報を受け、超常犯罪―――すなわちガイアメモリ犯罪関連の疑いありと見た照井は、刃野と真倉を率いて現場検証に訪れた。
「うへぇあ……周りの建物を一切巻き込まずに、この一軒家だけキレ〜〜にぶっ壊れてやがるとは……」
現場の様子を見て、慄く刃野。
「課長。これはやっぱり、ドーパントの仕業……ですかね?」
照井に意見を求める真倉であったが、照井は無言のまま答えず、周りを調べていた。
「……課長?」
「こりゃあ……お決まりのアレかねぇ?『俺に質問をするな』……って奴?」
などと、二人が雑談をし始めた、その時だった。
「!」
瓦礫の中から人が出てきた。
「ひぃええっ!?」
不意打ち同然だった為、年甲斐も無く悲鳴をあげる刃野と真倉の二人の前に現れたのは……
「翔太郎!?それと……お嬢ちゃんは?」
「けほ……んぁ…?ぇっと……あー…望月でぇ…す……」
艤装を展開し、瓦礫から翔太郎を守りながら立ち上がる望月であった。
しかし……いくら艤装を纏っていようと、望月は駆逐艦で、しかも着任してまだ日も浅い。
身体的にも未熟で、艤装の練度も十分でないというのに、身を挺して翔太郎を瓦礫の直撃から守ったのである。
「ッ……ぐ……、あ!?望月!?」
それでも、多少のダメージは負っていたのであろう。気を失っていた翔太郎は目を覚まし、望月の姿に目を見開いた。
「望月!!お前、怪我を………!?」
「ぁー……いーよいーよ別に。シッポ巻いて逃げるよりは、マシ……っしょ………」
翔太郎が無事である事を確認し、安心したのか。額から血を流しながら、望月は翔太郎の腕に抱かれるようにして倒れ込み、気を失った。
「望月!?望月!!しっかりしろッ!!!」
「いかん!!翔太郎、すぐに救急車を……」
「刃野刑事、真倉刑事。それは俺が済ませておく。二人は引き続き、現場の検証を」
「え?あ、ハイ……」
当然と言うべきか、艦娘の傷は通常医学で治癒することは出来ない。
《入渠》と呼ばれる、艤装の修繕行為と並行して行われる艦娘用の特殊な薬湯を用いた湯治が必要なのである。
そして……その入渠設備は本来、提督が管理・運営する鎮守府に置かれるのだが、【風都鎮守府】本部は鳴海探偵事務所が兼務している為、そこまでの敷地が確保出来ていない。
翔太郎を提督に推薦した山県元帥が提供してくれた、臨時用の入渠施設を借りることで、不足分を補っているのが現状だった。
「左、此処で良いんだな?」
「ああ……すまねえな、照井。助かった……」
「気にするな。彼女らの……艦娘についての事は、ある程度落ち着くまで秘密にしたいのだろう?」
これまでの付き合いもあるから、刃野たちが艦娘に関して妙な偏見を持ったりしないことは十分理解している。
しかし、反って必要以上に気を遣わせてしまうのでは?という気まずさから、翔太郎は漣たちの事を今だに話せずにいた。
「ッ……。ああ…すまない……」
設備の管理をしてくれている妖精たちに望月を預け、運んだ後。悔しさから翔太郎は奥歯を噛み締めた。
そして……望月が着任して間もなく、フィリップに頼んで『検索』してもらった時の事を思い返すのだった。
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「【駆逐艦】望月について知りたい?それはまた随分と勤勉だね、翔太郎」
「ほっとけ!山さんからも期待されちまってる以上は、やっぱ戦時中の軍艦について、ちょっとは知っとかなきゃだろぉがよ?」
その時の翔太郎は、尊敬する師の面影を匂わせる海軍元帥・山県の期待や漣たち艦娘の信頼を裏切らないようにと、提督として成長しようと躍起になっていた。
そんな中、事務艦として派遣された大淀から勧められた『建造』にて望月を迎えた。
彼女の
そうして得た答えは、戦争を経験したことの無い時代に生まれ、育った翔太郎やフィリップにはあまりにも衝撃的な記憶だった。
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それ以降、翔太郎は『提督』としての己に二つのルールを課した。
一つはこれまで以上に己の考えを押し付けたり、過信しない事。一つの考えに凝り固まれば、かつての様な『勝手な決断』へと繋がりかねないからだ。
もう一つは、艦娘の努力や働きを讃え、個々の意思を尊重する事。戦線に赴く彼女達の覚悟や力を蔑ろにすることは、決してあってはならないのだと。
それなのに……自分の油断が望月を…大事な仲間を傷つけた。
これでは探偵として半人前でも、提督としては半人前以下だ。
「……クソっ」
情けないあまり、泣きそうになった…その時だった。
「泣かないでよ提督。カッチョイー帽子と男前が台無しだよ?」
「!?」
今ではすっかり聞き慣れた、気怠げながらもどこか憎めない声に、翔太郎はバッと顔を上げる。
「妖精さん達がさ、なんか気を利かしてくれたっぽくて。バケツ使ってくれたみたい……って、おわっと?」
「望月ぃぃいっ!!」
まるで、ドッキリを仕掛けて驚かせてしまったことを謝るようなノリで事情を話してくれた望月に対し、嬉しさのあまり翔太郎は力強く抱きしめた。
「望月!!ゴメンな…さっきは、ホントにゴメンなあ……っ」
普段のカッコ付けた様子が微塵も感じられない、むしろ今まで以上に親しみやすい様子に、望月はちょっとだけ安心した。
正直なところ、望月は翔太郎に対して、どこまで踏み込んでいいのか距離感を掴めずにいた。
提督として振る舞っている時や探偵業をしている時の彼と、普段、事務所のメンバーや知人らと話している時の“普段の翔太郎”に差があり過ぎて、どちらが本来の翔太郎なのか測れなかったのだ。
しかし……今、こうして二人きりで面と向かって話し、触れ合えた。だから、今なら分かる。目の前にいる翔太郎こそが、“自分が頼るべき提督”なのだと。
「提督、もう泣くの止めなってぇ。誰かに見られたらみっともないよ?サスガに」
「っ!?この…人が心配してる時に、随分と余裕じゃねえかコラ!!」
「はぁい、はーい!説教なら“任務”終わらせた後でいくらでも聞くから。それよか今は、あの糸くずオヤジからメモリを取り上げなきゃ…でしょ?」
態度は相変わらず気怠げだが、その眼はむしろやる気に満ち溢れているのが見えた。
「……へっ。そうだった、な!」
帽子を被り直し、翔太郎は立ち上がった。
「そんじゃ、気を取り直して。お仕事再開だ!望月!!」
「はいよぉ、提督!」
次回、コネクション・ドーパントへの反撃にかかります!!
「これで決まりだ!!」