提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え? 作:夏夜月怪像
やっぱり特撮世界もアートだなぁ……という訳で、第2集フィナーレです。
―――コネクション・ドーパントによる悪質な縁結び事件は、犯人である張田が逮捕されたことにより、無事に解決した。
奴の身勝手な欲望を満たす為だけに存在したサイトも削除され、街の風通しはまた良くなるだろう。
とは言え……奴の犯行に巻き込まれた被害者達の心身の傷は、簡単に癒せるものではない。
時間を掛けて、少しずつケアしていくしかないと分かってはいるが、その為に何も出来ないという事が悔しくてたまらない……
「提督さーん!」
「って、おわぁっと!?いきなり飛び付いてくんなよ、夕立!」
報告書を書き終え、窓の外を眺めながらコーヒーを飲もうとした翔太郎に、夕立が背後から抱きつく。
「え〜〜」
「…とか言って〜。ご主人様も案外満更でも無さそうじゃないですか〜?」
単に甘えたいだけなのに、注意されて不満げな夕立と、そんな二人のやり取りを面白そうに笑う漣に挟まれ、翔太郎は困惑の表情を見せる。
「漣ちゃん、夕立ちゃん。あまり翔太郎をからかわないでやってくれ。彼は、これまで女性に泣かされた経験しか無くてね。そういう純粋な好意を向けられることに免疫が無いんだ」
「おいコラ、フィリップぅっ!!?」
助け舟が来たかと思いきや。フィリップから贈られたのは、ある意味無慈悲な一撃だった。
「もぉ〜……提督さんってば、まぁた仕事ほったらかしてるし」
その光景に対し、亜樹子や瑞鶴らが呆れた様子で見ていた。
「なあ所長。やっぱりアイツ、提督向いてないんじゃ……ん?」
摩耶が亜樹子に聞こうとした、その時。津島狩幹夫と水面川ゆかりが訪ねてきた。
「ごめんください」
「おっと……。津島狩さんに水面川さんじゃないか、どうしたんだ?」
「えっと……今日は近況報告を兼ねて、お礼の挨拶に……」
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事件が終わってすぐ、津島狩さんは婚約者であった女性・松本智絵里の元へ、事件解決の報告に向かった。
ゆかりさんも改めて謝罪をするべく同行したのだが、しかし……当の彼女は、彼が水面川さんと浮気をしたと決めつけ、一方的に婚約を破棄。それだけでなく、事件が解決する前の日に張田のサイトを利用し、新たに男を作っていたことが判明。
「先に浮気をしたのは、そっちじゃない!!」と、彼の話をマトモに聞こうともしなかった事を棚に上げて、津島狩さんを一方的に責めたのだが、その時。
水面川さんが松本に対し、平手打ちをしたのだという。
「お言葉ですが……初めてお会いした時から、私には貴女が本当に幹夫さんを愛していらっしゃるという気持ちが全く感じられません!貴女が幹夫さんと結婚しようと思ったのは、彼に対する想いなどではなく、お金欲しさからだったのではありませんか!?」
水面川さんの指摘した通り、松本が選んだ新しい男も、中小企業ながらそれなりに稼いでいる社員であり、預金もそれなりに持っている裕福な男だった。
ちなみに、フィリップの検索によれば、松本は酷い浪費癖があり、学生時代からあちこちで金を巻き上げては湯水のごとく使っていたとの事。
そんな訳で、全てを暴かれた松本は新しい男からも家族からも捨てられ、残ったのは多額の借金のみとなった。
その金額も相当なものらしく、生きてる内に返せるかどうかすら怪しい……との事だ。
「うへぇあ……。自業自得とは言え、一生返済生活だなんて、恐ろしいですなあ……」
話を聞き終え、感想を述べる漣。
「しかし……水面川さんの洞察力も相当なもんだな?」
「ホント。探偵やってる時の提督さんみたいっぽい!」
翔太郎と夕立が褒めると、水面川は照れ臭そうに笑いながら答えた。
「小さい頃、祖父からよく言われたんです。『人を上っ面だけで判断するな。内面や見えないところをよく見て、それから見極めろ』って」
「ほぉ……」
一同が感心していると、「……あれ?」と津島狩が反応した。
「どしたの?」
望月が尋ねた。
「いや……ウチの社長も、同じことをよく言ってたなあと思って……」
「同じも何も……あっ、しまった……」
今度は、それを聞いた水面川が反応したが、途中口籠ってしまう。
「え?えっ…ちょ、ちょっとどーゆーこと??」
状況が飲み込めず、混乱する亜樹子。
「……水面川さん。貴女のお祖父さんの名前は?」
何かを察したのか、翔太郎が質問する。
「……
「えええぇえ〜〜〜ッ!!?」
ここに来て、まさかの新事実。亜樹子と艦娘一同が驚きの声をあげた。
「み…水面川さんが、社長のお孫さん……!?」
驚きを隠せない津島狩に、水面川は「ごめんなさい!」と頭を下げる。
「私……小さい頃から、『社長の孫』っていう肩書きでチヤホヤされたり距離を取られたりしてて……それが嫌で、風都から離れていたんですけど……でも、お祖父ちゃんの事まで嫌いになるのは嫌だった!だから、その気持ちだけでも伝えようと思って、この街に帰ってきたんです…そしたら……」
「今回の、超常犯罪に巻き込まれたんですね?」
「はい……。幹夫さんは初対面だった私にも良くしてくれて、本当に嬉しかったんです……でも、その時はまだ彼には結婚相手が居ましたし、それに…私の事を知ったら、もう親しく接してくれなくなると思ったら……急に怖くなって……っ!!」
震えながら泣き出したゆかりであったが、そんな彼女の頭を望月が優しく撫でた。
「………え…?」
「望月……?」
「ゆかりさん。アンタ…強いね。引っ付いたまんまなのも怖い筈なのに、自分の事よりも相手の事を思い遣ったり、誰かの為に怒ったりなんて……普通、出来るもんじゃないよ?津島狩さんもそうだよ……とばっちり食らってさ?八つ当たりの一つもしたくなるような状態なのに、そんな気持ちを抑えられる強さは、今時の提督にもあるかどうか知んないよ。こんな言い方は変だと思うけどさ……二人ほどお似合いなカップル、あたしは無いと思うよ?」
「望月……」
「もっちー……」
それは、曇りの無い満月のように、偽りの無い望月の本心から出た言葉だった。
誰かを思うが故に思いを伏せ、時には己を偽る。
風都が最初の鎮守府である為、望月は漣や夕立の様な過酷な過去を経験してはいない。
しかし……最も身近な存在として、思いを伏せ、偽る素振りを見せることもある男が居るので、その辛さは少しだけ分かる。
だから、津島狩と水面川の二人はどちらも強い心を持っていると理解した望月は、二人に言葉をかけた。
「お疲れ」と―――。
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鳴海探偵事務所に津島狩と水面川、二人の婚約が改めて決まったことの報告と、提督としての翔太郎を『少佐』に昇格する辞令が届いたのは、それから数日後の事である。
久しく書き込みましたぁ……(ヽ´ω`)
もっちー、かなりキャラ変わり過ぎたかもですが、どうか『風都の望月』ってことでご容赦を……
『風都艦隊』第2集、完結でござい。