提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え? 作:夏夜月怪像
年末も年始も関係無く、暴れる奴らは暴れるワケで。
それが、時雨の在籍する鎮守府の名であり。彼女にとって、様々な想い出の詰まった居場所だった。
「お帰りなさい、みんなお疲れ様」
この日の当番秘書艦である陸奥が、提督の代わりに皆を出迎えてくれた。
すると、時雨と共に遠征に出ていた長良や陽炎が辺りをキョロキョロと見回し始める。
「?」
「陸奥さん。あの男……いや…司令官は今、留守?」
陽炎に尋ねられ、陸奥は苦笑いしながら答えた。
「ついさっき《お仕事》に行ったところよ。毎度ながら、勤勉なものね……まったく」
陸奥が口にした《お仕事》とは、この鎮守府内においては提督業務を指すものではない。早い話が、政府官僚との会食や風俗店への豪遊を意味する隠語である。
「その励みを、ちょっとぐらいこっちの業務にも充てて欲しいよね……」と愚痴る長良。
「さぁさぁ。提督が帰ってくるまでに補給を済ませて来なさいな?今日は間宮さんや鳳翔さんが奮発してくれたそうだから、お言葉に甘えましょ」
「はーい!」
艤装を片付け、皆を追って食堂へ向かおうとした時雨であったが……その時。
「っ!」
背後から“何か”が入り込んだような、不可思議な感覚に襲われた。
さらに、何処から降ったのか分からない、白い砂を被った状態になってしまった。
(砂……?なんでこんな物が………っ!?)
戸惑う暇も無く、溢れた砂は時雨の前に移動し。何かの形を作り出した。
それは、地面から上半身が現れ、下半身がその頭上に浮かんでいるという、見方によっては砂時計の影絵のような形をしていた。
『突然のお声掛け、誠に申し訳無い。しかし、これも我に命ぜられし振る舞い……平にご容赦を』
「な…何?君は、誰なんだい?」
未知の気配を放つ“それ”に対し、恐怖していることを悟られぬよう平静を装いながら時雨が尋ねると、現れた砂の影は
『
「僕の……望み?」
『
すると、廊下の奥から時雨を呼ぶ声が。
「時雨ー!みんなご飯食べちゃうよー!」
「あ、ごめーん!今行くよ!―――ごめん、その話はまた後でね?」
『…え?あ…後でって?ちょっ、そんなのアリですか!?ま…待ってぇ〜〜!!』
謎の影は、時雨に無視されてしまったと思い、慌てて追いかけたのだった。
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一方。汪曲刻鎮守府の提督は、会食を済ませ、鎮守府へ帰っている最中であった。そこへ、提督のスマホに着信が入る。
「私だ……なに?商店街で妙な連中に叩きのめされただぁ?茶番をするならもっと面白いネタを考えてからにしろ!!」
連絡をしてきたのは、提督が取り巻きに使っている憲兵で、要件は商店街に現れた集団……モモタロス達にボコボコにされたので、艦娘を貸してくれという要求だった。
「バカバカしい!何のために金を払って使ってやってるのか、まるで分かっとらん……役立たず共め!!」
「ふぅ……。良いよ?出てきても。今なら誰も見てないから」
食事を終え、寮部屋に戻った時雨。ルームメイトでもある姉妹艦の白露が風呂に入っている間を見計らい、改めて先程の謎の影と話をしてみる事にした。
『うぅ…かたじけない……』
聞こえてくる声や、影の雰囲気からして男性なのだろう。申し訳無さそうに姿を現した。
「僕は構わないさ。ただ…この部屋にはもう一人住んでいるからね。万が一見つかったときには、君のことをちゃんと話させてもらうよ?」
『……承知いたした…で、ござる』
「じゃあ……まず、最初の質問。君は何者だい?深海棲艦じゃないのは、間違い無いよね」
『……シカり。ソレガシめは、《イマジン》と呼ばれる存在にござる』
「イマジン……」
『シカり。信じてもらえぬ事とは存じますが……ソレガシめは、この時よりも遥か彼方の時……未来より参りました』
「え……」
一部、マンガチックな展開になってしまいました。
果たして、時雨に取り憑いたイマジンは何者なのか?
そして、このブラック提督が立ちはだかる時、艦娘たちはどうなるのか!?