提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え?   作:夏夜月怪像

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皆さんごきげんよう、漣です。

私は昨晩、風の絶えぬ不思議な街『風都』に流れ着きました。


そこはちょっと大きめな川もあれば、海水浴場なんかもあるそうで……正直言って、名前だけで街の規模を見くびってました(;´Д`)


極めつけは、なんと言っても《風都タワー》!

街の何処に居ても見えるデカさの風車塔って、アレですよ。東京タワーとか東京スカイツリーとか、エッフェル塔並の自己主張っぷりですよ。


そんな街で、たぶん唯一のご意見番なんですかね?



あのキザ探偵は………


5話 : Sとの邂逅/風に誘われて

「!」

 

 

漣が病室のベッドの上で風都のガイドブックを読んでいた所へ、約束通り、翔太郎が見舞いに訪れた。

 

 

「よぉ。ちったあ元気になったかぃ?お嬢さん」

 

 

「おかげさまで……探偵サン」

 

 

先に断っておくが、両者は単に呼びたい様に呼んでいるだけであり、お互いにこれといった他意は無い。

 

 

「ちぇっ、まだ素直にはなってくれねぇのな」

 

 

言い回しは残念そうだが、翔太郎は安心した様子だった。

 

 

「今日は快晴だな?いい風が吹いてやがる……」

 

 

「いつも風が吹いてるのに、そーゆー違いとか判るんですか?」

 

 

またカッコつけてるのかと思い、漣は嫌味っぽく聞いてみる。

 

 

「判るさ……。この街は俺の庭だからな。そこで、誰一人泣いて欲しくねえんだ」

 

 

「……ふうん」

 

 

その一言だけは、カッコつけ等ではない、翔太郎の本心を感じた。

 

 

「さて、と。お嬢さん、これからどうするよ?行く宛が無えってんなら、ウチで良けりゃ飯と寝床ぐらいは提供出来るが」

 

 

mjdk(マジでか)!?」

 

「―――は?」

 

「ハッ……あ、いや……ゴホン。ほんとに、良いんですか?」

 

 

「お…おお、君さえ良けりゃ……な?」

 

 

 

一瞬、漣が別人になったような………

 

 

口調の変化に驚きはしたが、気にするほどではないとこの時の翔太郎は思っていた。

 

 

そう、この時までは………。

 

 

 

「………よし。それじゃ、夕方頃にまた迎えに来るぜ。とびっきり美味い飯やコーヒーを御馳走してやるよ」

 

 

じゃあな、と翔太郎は仕事へ戻った。

 

 

「…………」

 

 

 

翔太郎が病院を出るのを見届けた後……。

 

 

「ぶはぁ〜〜〜ッ!!!あっっぶねえぇ〜!思わず“地”が出ちゃうトコだった〜〜もぉ〜」

 

 

そのハイテンションかつ独特過ぎる喋り方は、先程までの薄幸な少女と同一人物とは思えないほどの変わりようだった。

 

 

「『この街は俺の庭だ』……くぅ〜!顔だけはいっちょ前だけど、台詞にオーラが伴ってねえってのオーラが、ヨッ!!……ハァ…」

 

 

翔太郎の台詞を復唱し、独り文句を垂れてみるも、すぐに虚しくなってため息を吐く。

 

 

「何なんだろ………ただのカッコつけ野郎なのに…初対面なのに……ちっとも似てないのに……」

 

 

「なんで……統也提督(ご主人様)と重なるの……?」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

さて……居場所を失くした少女を励ました後は、本来の仕事に戻るとしようか。

 

 

知っている奴には言うまでもないが……俺は基本、自分の足で情報を集めるスタイルだ。

 

 

聴き込みは勿論、贔屓にしている情報屋を頼ることだって少なくない。

 

ネットジャンキー、女子学生、屋台の店主、ペットショップの店長、カフェのマスター……といった具合にな。

 

 

 

「………ッ……しっかし……」

 

 

ここに来て、左 翔太郎は己の見込みの甘さを痛感した。

 

 

 

人捜しとは言っても、相手は『正規の軍人』である。

現代社会に於いて、戦局を大きく左右するもの……それが『情報』だ。

 

いくら家族からの捜索依頼であろうと、現役軍人の個人情報が、一探偵の聴き込み程度で簡単に手に入る訳がなかったのである。

 

 

 

「ぐっ………!こんな…こんなハズでは…ァ……」

 

 

その悔しげかつ苦々しい、愉快な表情にハードボイルドのハの字も残っていなかった。

 

 

 

「うーわ…案の定だヨ」

 

 

「うっせ!!何が案の定だよ亜き…こ………?」

 

 

冷ややかな声に対し、翔太郎はムキになりながら振り向いた。

 

 

「……ぉ……」

 

「夕方頃には迎えに来るぜとか、調子の良い事を抜かしといて……何矢吹ジ○ーみたいな落ち込み方をしてるのよさ?」

 

 

我が探偵事務所の所長サマに似た、冷ややかな態度を取っていたのは、昼間会話をした少女―――漣であった。

 

 

「えっと……なんか、最初に会ったときとキャラが違い過ぎるんですけど?」

 

「あんまり痛々しくて、取り繕ってる自分がバカみたいに思えたもんですから」

 

「痛々しいッ!?」

 

 

「それに………、私がホントのことを話せるようになるまで待つって言ってくれた恩人に、いつまでも隠し事をするのは反って失礼っしょ?半熟どん♪」

 

 

その笑顔が、彼女の心が少しでも開放されたことの表れであることを翔太郎は理解した。

 

 

だから……

 

 

「………ん?オイ!今、半熟つったか!?」

 

「だって事実じゃ〜ん?半熟どん、ハーフボイル丼〜〜☆」

 

 

「っの……!漣ぃいいッ!!」

 

 

 

彼女を……漣を含めた《艦娘》も含めて、自分が悲しみを拭い去ってやると、密かに誓いを立てた。

 

 

 

「―――つか、依頼ィィィッ!!!」




皆さん、安心して下さい。

W編は終わってません…終わらせませんよ!!?
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