提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え?   作:夏夜月怪像

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ムカっ腹の立つ野郎だった。

今までにも、とんでもねえ卑怯や(きったね)えマネをする奴らを散々見てきたつもりだったが、目の前のソイツは比べ物にならねーくらいのゲス野郎だった。


自分が怪我するのも構わねえで、命懸けで庇ってくれた奴に感謝しないばかりか、自分のバカさを棚に上げて逆ギレしやがったんだぞ?それに対して文句を言った途端に、今度は「責任を取って死ね」だと!?


冗談じゃねえ!!

あんなクソ野郎に、これ以上デカい(ツラ)させてたまるかッ!!


59話 : 突撃!隣の艦娘

……頭が痛い。

 

微かにだけど、白露とシカっぽい彼が必死に呼びかけてくれているのが聞こえる。

 

なんとかして目を開けなきゃ、そう思ったんだけど……

 

今度はお腹に強い衝撃と痛みを受けた。

 

ああ……また提督が怒っているんだろうな。

 

白露たちが声を荒げているみたいだ……抗議してくれているのかな?

 

 

ありがとう……でも、もう良いんだ。

 

これ以上、みんなに迷惑をかけられないから……

 

 

『もう勘弁ならねえ!ちょっと借りるぜ!!』

 

意識が朦朧としている中、そう呼びかけられたと同時に『何か』が重なったように感じた。

 

そして、意識が途切れる直前に見えた光景───それは僕が立ち上がり、提督を殴り飛ばす瞬間だった………

 

 

======================

 

 

「し……しぐ、れ?」

 

目の前に立つ、豹変した時雨を前に、白露は呆然としていた。

 

口調や顔付きは勿論の事、髪型や眼の色、声音まで低くドスの効いた物に変わっている。

 

「ガハ……ッ…お、お前……なんで立って……!?」

 

殴られた顔を押さえながら、片倉は時雨を睨みつける。

 

「わざわざ助けてくれた奴に、恩を仇で返すような真似をするたあ、やってくれるじゃねえか?」

「な、何を……!?」

 

「ここまでやらかしたんだ、当然覚悟は出来てるよな?良いか……俺に前振りは無ぇ。最初から最後まで、徹底的にクライマックスだ!」

 

 

「えっとぉ………」

「シラツユちゃん、これはいったい……?」

 

混乱しっぱなしの気持ちをなんとか落ち着かせ、白露とガンビアは目の前で起こっている状況を整理することにした。

 

 

まず、ガンビアは自身の傍に居た筈の赤鬼……モモタロスが消えたことを確認。

次に、白露は片倉などから受けた暴行により、怪我をして動けなくなっていた時雨が立ち上がったことを目撃した。

 

そして……現在の時雨は、先程出会ったモモタロスと同じ口調で喋り。気配も時雨とは全くの別人となっている。

 

 

「これって……」

「つまり……」

 

 

「「モモタロさんが、時雨(ちゃん)に取り憑いちゃった!?(ベイ!?)」」

 

 

当然ながら、白露と同様、傍で見ていたシカイマジンも戸惑いを隠せない。

 

「貴殿はもしや……先程まで身を潜めていた御仁か!?」

「だったらどうした?」

 

「貴殿は、我が主とは何の関わりも無い筈……なのに何故、こんな真似を?」

 

時雨に憑依したモモタロス────通称M時雨は、シカイマジンの方へ一瞬振り向くも、すぐ片倉の方へ視線を戻した。

 

 

「……似てんだよ、コイツ。“どっかの誰かさん”に、これでもかってくらいによぉ」

 

その様子に対し、何かを察したレオドンキーイマジンは片倉以上に警戒を強めた。

 

「まさか、キサマ……」

 

 

すると、そこへ騒ぎを聞きつけた別の憲兵たちが続々と集まってきた。

 

「片倉中佐!!これはいったい……!?」

「遅いぞ、ボンクラ共!!そいつらを一人残らずぶっ殺せ!!生き残ったメス共は好きにしろ!」

 

「なっ……!?キサマ、どこまで下衆な……!!」

 

「えらくゴチャゴチャしてきたな……ちっ、しょうがない。此処は一旦退くか」

 

「なに?あっ!待てコラ!!」

 

密集した状況が面倒になったのか、レオドンキーイマジンは退却。M時雨は追いかけようとしたが、敵は思いの外逃げ足が速いらしく、あっという間に見えなくなってしまった。

 

「……クソっ、コソドロみてぇにすばしっこい奴だな?」

 

出来ることなら、イマジンを追いかけたいところだが、誰かがピンチに陥っている状況を見捨てるような非道は、「カッコ良く戦う」を信条とするモモタロスには出来ない。

 

『…う…うぅ……ん……』

 

その時、時雨本人の意識が目覚め始めた。

 

「っ!」

『あれ?……僕、なんで立って……』

「よう。目ぇ覚めたか?」

 

『……えっ?その声……もしかして、君は……』

「話は後だ。さっさとコイツらをブッ倒さねえと、他の連中が危ねえぞ?」

 

『……分かった。でも、やり過ぎないようにね?』

 

「あんな目に遭ったばっかだってのに、相手の心配かよ……」

「……まっ、嫌いじゃねえけどな?」

 

 

こうして、M時雨はイマジンを追えなかった不満や片倉とその配下たる憲兵への怒りをぶつけるかの如く、シカイマジンと共に大暴れ。

 

その怒涛の攻めっぷりに恐れを()し、一人逃げようとした片倉であったが

 

 

「他者を傷つけ、踏みにじり……己は高見の見物をする勝利者気取りか?笑わせる!」

 

ブドウの房を思わせる刀身の刀を手に、シカイマジンは構えた。

 

「た……たっ、たす…助けてくれ!か、かっ…金ならいくらでも……!!」

「見苦しい……成敗ッ!!」

「ヒッ!!?ヒイイィィィイイっっ!!!」

 

 

那智や陸奥からの通報を受け、強制査察に駆けつけた海軍特別警察隊が見たものは、精神的ショックから白髪になり、気絶した片倉と、M時雨とシカイマジンによってボコボコに打ちのめされた憲兵たち。

 

そして、白露の傍で跪き、控えているシカイマジンともう一人……

 

「へっ!軍人だっつーから、ちったぁ楽しませてくれるかと思ったのによぉ?とんだ拍子抜けだぜ」

 

これまでに見た事の無い、駆逐艦《時雨》の荒々しい姿と態度だった。




やっと絞り出せたぁ……。

次回、やっと『電王編』本筋にかかれるかもです……(ヽ´ω`)
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