提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え?   作:夏夜月怪像

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提督としての権力を私欲の為に振るい、鎮守府の支配者として、やりたい放題をし続けた片倉とそれに与する憲兵らを叩きのめした時雨(inモモタロス)とシカイマジン。

顛末を本部に報告せねばならぬ為、形式的にではあるが事情聴取を行うことになったのだが………


60話 : 時間(とき)の彼方からごきげんよう

海軍特別警察隊の隊員達から事の経緯を尋ねられていた時雨は、困惑していた。

 

 

(どうしよう………)

 

 

鎮守府内の誰かが海特警を呼んでいて、しかも気が付いた時には自分まで連行されているなど、夢にも思わなかったからだ。

 

 

(シカの彼やモモタロスさんが暴れたとか、そういう事は無かったみたいだけど………だいぶ警戒されてるなあ……)

 

 

ちなみに、「艦娘(おんなのこ)同士の方が話し(やす)かろう」という『大隊長』の厚意により、時雨に聴き取りをするのは『足柄』と『妙高』の2名となった。

 

 

しかし……時雨が思っているよりも、妙高と足柄は警戒などしていなかった。

 

 

(案の定、と言うべきか……。必要以上に固くなっちゃってるわね)

 

(話を聞くつっても、主犯はあの風俗スキーなド三流の提督かぶれでしょ?妙高姉さん、どうにかして緊張を(ほぐ)してやれないかしら?)

 

(そうは言っても…ねぇ……)

 

 

実力行使が主な活動内容とも言える海特警の所属艦であると同時に、対話による悩み相談を受け持った経験が極端に少ない足柄。

それに対し、思慮深い面も併せ持つ妙高はそれなりにカウンセリングの経験も(こな)していたのだが、それも鎮守府内や縁のある周辺地域であった為、今回の様なケースは初めての事だった。

 

 

どうしたものかと二人が悩んでいた同じ頃、時雨も同様に悩んでいた。

 

 

(モモタロスさん達のことを話すべきだろうか……?でも、そしたらシカの彼にも迷惑を掛けちゃう……)

 

 

そもそも、『未来から来た時の侵略者』などという話を信じろというのが難問だ。

 

正気を疑われて病院送りか、良くても謹慎処分は確実だろう。

 

(折角、モモタロスさん達が助けてくれたのに……)

 

このままでは、彼らに取ってとんだ無駄骨となってしまう。

 

 

終わりなきジレンマにハマり始めようとした、その時。

 

「妙高さん!足柄さん!」

 

「うん?」

「どうしました?」

 

 

海特警のC級エージェントの一人が入室し、小声で何かを連絡した。

 

 

「………え?どゆこと…??」

 

 

伝言を聞いてすぐ、足柄が聞き返す。

 

「自分も、ただそう伝えるようにとしか言われていないものですから…詳しいことは何とも……」

 

「そう……分かりました。後は私たちが引き継ぎます、お務めご苦労さまです」

 

「いえ……それでは、失礼します」

 

エージェントが退室すると、妙高は時雨に向き直った。

 

 

「汪曲刻鎮守府所属、時雨さん。今回の騒動における、貴女の行動とそれに対する処遇についてですが……」

 

「一切、不問に付す事とします。これは海軍特別警察隊総帥、徳川成光元帥閣下直々の決定であります」

 

 

「は……は…へ?えっ?」

 

時雨は耳を疑った。

 

自身が所属する鎮守府内で散々暴れただけでなく、提督や憲兵を始めとした関係職員に手を上げたというのに、お咎め無し?

 

これは一体、どういう事だろうか?

 

「あ……あのっ!」

「なぁに?」

 

「不問に付す……って、どういう事ですか?」

 

間接的にとは言え、自分のした事の重大さを時雨は理解していた。

 

それだけに厳罰を覚悟していたのだが、ここに来てまさか不問に付されるとは夢にも思わなかった。

 

訳を聞こうと妙高に尋ねたのだが

 

 

「どうもこうも……上層部(うえ)の方で、そうなる様に働きかけがあったという事でしょう。何にせよ、あなた達をこれ以上追い詰めるようなことにならずに済んで良かったわ」

 

 

時雨の肩に手を置き、妙高は微笑みかけた。

 

 

その後、簡単な事務処理を済ませると、海特警は片倉やそれに加担していた一派を拘束。軍警察本部へと連行して行った。

 

 

「終わった……のかな?」

 

白露が尋ねる。

 

「……どうだろう?都合の良い事ばかりじゃないのが世の中って物なのは、これまでに散々教わった筈だろう?」

 

 

そう切り返す時雨の眼は、何処か「諦め」にも似た気配を漂わせていた。

 

 

 

「………ん?あ!」

 

寮部屋へ戻り、着替えようとした時。スカートのポケットに何かが入っている事に気付いた。

 

それは、遠征の帰り際に拾ったパスケースだった。

 

 

(しまった……!!帰ってすぐ、あの騒ぎになったもんだから、すっかり忘れてたッ)

 

 

スマホを取り出し、時間を見る。

 

(22時…8分か。早く交番に持って行かないと…持ち主の人、絶対一度は交番に来てる筈だよぉ……!)

 

簡単にではあるが、身支度を調える。

 

この時、時刻は22時……夜の10時9分を廻っていた。

 

玄関先へ向かい、靴を履き終えたのが10時10分5秒。

 

 

「よし……」

 

7……8……9……

 

 

パスケースを片手に、時雨がドアノブに手を掛けた時間は【10時10分10秒】を指していた───。

 

 

「…………へ?」

 

 

玄関を開けた先に広がっていたのは、未知の風景だった。




書けた……

やっと……やっと、次の展開に向けたステップを書けたァ……(ヽ´ω`)
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