提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え?   作:夏夜月怪像

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前回のあらすじ。

遠征先にて謎のパスを拾ったその帰り、未来から来たという謎の存在〈イマジン〉に取り憑かれた艦娘・時雨。
鎮守府に戻ってからもイマジンが次々に乱入し、基地内は大騒ぎ。

加勢してくれた赤鬼のイマジン・モモタロスのお陰もあり、事態は一旦収まったが、艦娘を傷つけ、苦しめているブラック鎮守府問題について、街の人たちからある程度聞いていたモモタロスは、このまま放っておく気になれず、時雨に自分たちを仲間に入れるよう要求したのだった。


63話 : 波を乱すモノ

時雨とシカイマジンの丁寧な説明と懸命な説得により、モモタロス・ウラタロス・キンタロス・リュウタロスのイマジン4名は、汪曲刻鎮守府の艦娘たちに一応受け入れてもらえる事になった。

‥‥と言っても、皆に話を聞いてもらうまでの間、モモタロスが初顔合わせの艦娘に怖がられたり、ウラタロスが「怖がらないで、どうか話を聞いて欲しい」などと(もっと)もらしい理由を付けてナンパしたり、リュウタロスが妖精と勝手に遊び始めたりと、今までにあった様で無かった様な、とにかくメチャクチャな展開がこの鎮守府内で繰り広げられたのだが。

 

「まぁ‥‥その、なんだ?言い出しっぺは俺なワケだから、細かいコトは言わねーけども‥‥」

 

「何なんだ!?この服装(カッコ)はよっ!?」

「わーいわーい!船長だ〜」

 

モモタロス達の鎮守府着任が認められた証として、各員、軍服を着用するようにとの辞令が届いたそうなのだが、いくつか疑問が生じた。

まだ申請すらしていないのに着任が認められたり、それぞれのサイズに合わせた軍服まで用意されているとは、あまりにも対応が早過ぎる。

 

「陸奥さん、これはいったい‥‥‥?」

 

時雨が尋ねると、陸奥もよく分からないといった様子で答えた。

 

「3ヶ月ほど前よ。艦隊司令部に《司令長官》を名乗る老紳士が突然やって来て、『近いうちに汪曲刻鎮守府の指揮を取るに相応しい者たちがやってくるから、彼らを迎える準備をしておいて欲しい』って頼んだそうなの。勿論、最初は敵勢力の刺客かと警戒したらしいのだけど‥‥総統や元帥たちに贈った『お土産』がキッカケで、交渉は成立したみたい」

 

 

二人のやり取りに対して耳を傾けていたモモタロスとウラタロスは、謎の老紳士の正体についてほぼ確信した。

 

ああ‥‥絶対オーナー(あの人)の仕業だ‥‥と。

 

「先輩‥‥僕たち、完全に釣られちゃったみたいだね?」

「ああ‥‥ったく。あのオッサン、本当に得体が知れねえぜ」

 

「ところで、話は変わるけど‥‥そちらのシカっぽい怪人さんが、時雨の新しいお友達?」

「いえ。某としては、その様な畏れ多い立場ではなく、主にお仕えする者と心得ております」

 

陸奥に問われるも、シカイマジンは跪いて答えた。

 

「僕は止めてってお願いしてるんだけど‥‥」

「何を仰る?艦隊の皆を守る為、力を尽くして欲しい‥‥それが貴女の願いでございましょう?我が主」

「あらあら‥‥」

 

シカイマジンの言動から、陸奥は理解した。

 

このシカ男は真面目だ。真面目であるが故に、考え方が少し固くて融通が利かないのだ、と。

 

「もぉ〜、それなら名前ぐらい付けさせてよ〜」

「‥‥ん?名付け?それって、どういう事?白露ちゃん」

 

「あぁ、そっか。陸奥さんたちには言ってなかったよね」

「僕も完全には理解してないんだけど‥‥彼らイマジンは、未来から来た存在なんだけど、過去の記憶を持ってないんだって。その影響なのか、実体も持てないから適当な人間に取り憑いて、その人の持つイメージを利用して実体化するから、怪物みたいな姿になっちゃうみたい」

 

ふぅん‥‥と話を聞いていたところで、駆逐艦の一人・浦風がポンッと手を打った。

 

「そんなら、うちらでシカさんの名前考えるってのはどうじゃ?時雨に考えてもらうんは申し訳ないんじゃろ?」

「え?」

「おお!浦風、(あったま)良いっ!!」

「ちょちょ、ちょっと待たれよっ!?」

 

浦風の提案に白露が同意したのを皮切りに、話は妙な方向へと進み始めた。

 

「う〜ん‥‥侍っぽくてシカな見た目じゃからのう。〈ブシジカ〉とかどんげね?」

 

最初に立候補したのは言い出しっぺの浦風。

 

「武士とシカをそのまま組み合わせただけじゃない。ここは一つ、捻りを入れて〈ディアーズ武士(モノノフ)〉でいきましょう!」

「売れない芸人みたいな名前だね‥‥」

 

得意げに提案をしたビスマルクのネーミングセンスに対し、流石の時雨も思わず苦笑い。

 

「ウラちゃん達からは何か無い?」

「う〜ん‥‥無くはないんだけど、僕たちが候補として思いつく名前って、どうしても〈タロス〉が付いちゃうというか‥‥むしろタロス繋がりじゃないとしっくり来ないってゆーか‥‥」

「難しい所やなぁ」

 

ウラタロスとキンタロスの意見に、シカイマジンの名付け大会は行き詰まってしまった。

 

「困ったわねぇ‥‥」

「時雨。時雨は考えたりしてないの?シカさんの名前」

「えっ‥‥」

 

一同が頭を捻る中、村雨が時雨に尋ねる。

 

暫しの沈黙の後、時雨ははにかみながら答えた。

 

 

「――〈シド〉。シカっぽくて、侍が武士道を貫くみたいに真っ直ぐな信念を持っている、優しい人だから」

 

「主‥‥」

「ヘッ!良いじゃねえか?他の連中より、よっぽどセンスのある名前だぜ?」

「モモタロス殿‥‥」

「うん。いい感じ、いい感じ♡」

 

皆にも意見を求めたところ、「やっぱ名付け親はご主人が一番だよね」と納得してもらえた為、シカイマジンの名は〈シド〉に決定した。

 

「我が主。シドの名を賜りし事に対する感謝と共に、貴女への忠誠を改めてお誓い申し上げる!身命を賭して、貴女の期待と願いに応えてみせましょう‥‥!!」

「うん‥‥気持ちは嬉しいけど、まずはその堅苦しい態度を止めてくれないかな?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一方‥‥時雨たちが鎮守府で騒いでいた頃。

 

レオドンキーイマジンは追川を連れ回しながら、鎮守府周辺に居るゴロツキや憲兵といった、とにかく体格の良い「強そうな見た目の人間」を片っ端から襲っては痛めつけていた。

 

「フゥ‥‥。まだか?お前の望みは?」

 

レオドンキーイマジンの問いかけに、追川は力無く首を横に振る。

 

「‥‥チッ!まだダメなのかよ」

 

舌打ちをしつつ、レオドンキーイマジンは次の標的を探しに動き出す。

 

その後ろをついて行きながら、追川はブツブツと呟くのだった。

 

「強くならなきゃ‥‥俺は強くなきゃダメなんだ‥‥」と。




ハイ。スランプが激しく続くのに加えて、去年から精神科の病院にてカウンセリングを受けている最中の夏夜月で御座います。
求職どころか執筆も思うように捗らず、頭の中で組み立ててもそれを文章に著すことが出来ないという苦しみの中、ようやく自身が納得出来る物に仕上がった(‥‥と思いたい)ところです(ヽ´ω`)
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