提督が鎮守府より“出撃”しました。これより艦隊の指揮に入りま………え? 作:夏夜月怪像
かつて在籍していた鎮守府が解体され、行く宛の無いまま風都へ流れ着いた艦娘の少女・漣を見つけた私立探偵・左 翔太郎。
そんな彼の下に、行方不明となった現役海軍教官「白川成一」の妻子より捜索の依頼が舞い込む。
いつも通りの調子で捜査に乗り出す翔太郎だったが、初日は収穫ゼロ。
情けない所を漣に見られながらも、翔太郎は彼女を引き取ることに決める。
そして……夕飯の買い出しに行った帰り道。
二人の前に、異形の怪人が現れた……!
「ちょっとちょっと!ご主人様、アレ何!?」
「もしかしなくても……ってヤツだな」
パニクる漣に対し、
『怖くないの?』
ピエロの様な怪人が問いかける。
「職業柄、何かと縁があるもんでね?」
さらっと言ってのける翔太郎を見て、漣は驚きを隠せない。
(イヤイヤイヤ!!何をどうしたら、探偵さんにあんな怪物とご縁があるのよ!?誰かーッ!誰か説明をプリーズッ!!)
『へー……じゃあ、怖い物とか無いんだ?』
そう言うと、怪人は笑顔が描かれたボールを取り出し、ジャグリングを始めた。
「怖い物が無いかって?……あるに決まってるだろ。人間なんだから、よっ!」
言い終えた瞬間。
翔太郎は漣の手を取り、買い物袋を引っ提げたまま走り出した。
『鬼ごっこ?楽しそー!』
すると、怪人は先程までジャグリングしていたボールを投げつけてきた。
それを見た漣は、身の危険を直感した。
「ご主人様!全力疾走だおッ!!」
「言われなくても、そのつもりだよ!!」
二人の予想通り、怪人の投げてきたボールは爆弾と化しており、着弾した瞬間から爆発していった。
「うぅぅおおおぉぉったたたッ!!?」
「のぁあばばばばばばばばッ!!!」
逃げに逃げまくったのだが、ボールは無数にバラ撒かれてしまい、逃げ場を失くしてしまった。
そして―――。
通り一帯が爆発、炎に包まれたのだった。
『あーあ……つまんないっぽい』
怪人は諦めて、その場を去った。
「………行ったみてぇだな」
「ほ…ほい……」
しかし。
寸でのところで、翔太郎たちは脱出に成功していた。
翔太郎が左腕に着けている、デジタル腕時計から発射されたワイヤーで上空に逃れたのである。
「はぁ…はぁ……。ご主人様…それ、もしかして……」
「ああ……探偵を助ける秘密道具ってヤツさ」
気取ってるのか、素の状態で言ってるのか。
この状態では確かめようもないので、漣は一言呟いた。
「くぅ〜……、何も言えねえ……」
炎に気をつけながら地面に降りた後、翔太郎は念の為に110番通報。
消防署にも通報して、消火活動をお願いした。
「ハァ〜、やれやれ。お前はホント、厄介事に縁があるよなぁ翔太郎、ん?」
到着した警察が現場検証をしている中、ツボ押し器で肩を軽く叩く中年刑事・
「ハハ……まぁ、否定はしねえけどさ」
それに対して苦笑いする翔太郎を見て、漣は翔太郎と刃野刑事の付き合いの長さを朧気ながらも感じた。
「しかし、これまたハデにやらかしたもんだな……お前が遭遇したっていう怪物、ドーパントと見て間違い無さそうだな?」
「ああ……それについては、俺も同意見だ」
(ドーパント?)
翔太郎たちの会話の中に、漣は聞き慣れぬ単語があることに気が付いた。
「ところで……翔太郎?そのお嬢さんはどうしたんだよ?お前が所長さん以外の女の子を連れてるなんて、珍しいこともあるもんだな?」
「あぁ……その話はまた追々」
刃野刑事に気付かれぬよう、翔太郎は漣に「大丈夫だ」と目配せをして、漣もそれに安堵の笑みを浮かべた。
「…それより、刃さんたちこそどうしたんだよ?いくら風都署が近いつっても、随分到着が早かったじゃねえか」
そう尋ねる翔太郎に、刃野刑事は暗い顔をしながら答えた。
「近くに居たんだから、そりゃあ着くのも早くなるさ。何せ……この付近で殺人が起きたんだからな」
「えっ……!?」
スゴイ……
スゴイ勢いで『風都探偵』に染まっていきおる……っ!!
どうぞ、次回もお楽しみに!