「結構遠いね・・・」
「私は今の所長になる前に1度来ているから平気だが・・・」
「もうバテそう・・・」
「まだ早いぞ」
地図で見た時は近かったが甘く見ていた
標高差でなく直線距離であったことを忘れていた
「2000mも登るだなんて聞いてないよ」
「しかも相手からの要求は麓から登山という過酷なものだからな」
ちなみに、研究所までの道路はきちんと整備されているらしいが、それでも相手の要求はあくまで登山だった
登山道は相手の指定したコースであり、問題なくクリアしている
「なんでなのよぅ・・・」
「中途半端な覚悟ではないと試しているのだろうな」
「言葉で聞くより行動の方かわかり易いって言いたいの?」
「どっかの誰かさんのようにな」
さて、誰の事だろうか・・・
「私を焚き付けてここまでの道を歩ませているのは誰だ?」
「ホントに誰よって・・・私だったわ」
「本当に呆れてくる・・・」
あーだこーだと言いながら、登山自体は順調そのものだ
時折崩壊獣に遭遇するも簡単に倒している
というか・・・
「まさか、研究所周辺の崩壊獣を倒すのが主題なんじゃないだろうか」
「えぇ・・・萎えるんですけど」
「それでもやるしかないだろう・・・だるくなるのは仕方ないがな」
私が先行して注意を引き付け、彼女が強襲して撃破する
高い戦闘能力を持つ訳では無い彼女だが、その属性は一点突破に向いている
私のように器用貧乏でないだけマシだろう
私の場合は総合的に高い能力を持っていることが仇となり、ここぞと言う時の切り札が欠けている
器用貧乏とはそうことへの皮肉だが、それは考えれば窮地に陥りにくいことも意味しているためなんともいえない
「そろそろ見えるぞ・・・あそこだ」
「デカい・・・」
「それはもちろん、国内屈指の最先端技術開発拠点だからな」
最後に入口の前に立つ、自動で開く扉をくぐると、そこに居たのは呼び出した本人であるこの研究所の所長で・・・
「死ねオラァァァァ!!」
「ははは・・・やっぱり元気にしていたか、アヤカ君!!」
私のよく知る人物・・・森谷闘真だった
「知り合いなのか?」
「えぇ、でもその説明のために私とこの人の説明をしないといけないんだけど・・・」
「転生者と言うやつかねぇ・・・一度死んでから目が覚めたらこの世界に居たわ」
「はぁ・・・それではアレか?私の知らない技術も持っていると?」
それを言われると思っていた・・・だけどこれだけは言える
「君が悪用しないと確約してくれるなら、俺は自分の持つ技術全てを教える気でいるよ」
「私も、私達のいた世界の技術は危険な物だってある・・・ソレを教える事は絶対に出来ないし、ソレによって起きる未曽有の災害を私達は事前に防がねばならない」
「約束する、悪用だけは決してしないと。それは私のやり方にも反するからな」
強い意志の目・・・嘘はないと信じられる目だ
「ところで、闘真さんはなぜこの世界に?」
「俺もわからん、言えるとしたらきっと俺に出来る何かを成せという事だろうな」
「はぁ・・・で、今そこにあるのは船の設計図ですか?」
「あぁ、俺のこの世界での成果の集大成だ」
語られたのは、新型の空中戦艦の構想だった
「波動砲・・・あれを実装する気ですか?カズマさんでさえ、戦艦クラスでの実装は危険だと判断してましたよ?」
「確かに、波動砲には危険が伴う、元々次元兵器だからな」
「なんだ、その波動砲というのは?」
私が代わりに説明しよう、闘真さんだと誤解が生まれる言い方をするから
「正式名称は次元波動爆縮投射砲、そこの闘真さんとカズマさんが共に開発した新型機関、波動エンジンをエネルギー源として、その内部で発生した余剰次元を射線上に放出し、『我々の暮らす宇宙』を押しのけて『別の宇宙』として展開し始める際、その小さなサイズに見合わない膨大な質量によってマイクロブラックホール化し、それが放つホーキング輻射のエネルギーにより効果領域内の敵を破壊し尽くす兵器よ」
「崩壊現象とかが可愛くなるほどえげつない武器だな!?」
「えぇ、だから私達も使う時は慎重になってた、それこそ使わなくては全てが終わるという時でしか使わないというように」
かつて使用した際は、基地の中枢区画のみを破壊するつもりが基地そのものを破壊してしまったほどの力を見せつけることになった
その結果から反省し、使用は原則禁止として決戦用兵装として温存された
「だからこそ・・・闘真さん」
「分かっているさ・・・無闇には使わない」
さて、ここから先どうなるか・・・
それは私にも分からないものだ
次話、バトルの予感