「・・・」
今も眠る一人の女性の横に座っている
今の俺がどういう表情を浮かべているのか、自分でも分からない
それでも、そうしたい・・・そう思う存在が今も眠っている
「ここにいたのか、カズマ」
「あぁ、俺の仕事だからな」
「お前だけの仕事ではないさ、誰もがコイツの目覚めを待っている」
「あぁ・・・そうだな」
師匠がそう言って俺の横に立ち、今も眠るアヤカを見下ろす
「移し替えはすんだのか?」
「少し前に・・・だが目覚める気配がしない」
「拒否ってやがるな・・・無理やりはしないが、そろそろ目を覚まさねぇと犯すぞ?」
「その時は教官の銃がアンタに向くぞ?」
「・・・やっぱやめとく、あの女傑怒らすと怖いし」
その瞬間、分厚い本の背表紙が師匠の頭にクリーンヒットした
「いってぇ!?」
「不謹慎な発言をするからだ馬鹿者、何ならもう一発くれてやるぞ劣等生?」
「いつまでも過去の事言ってんじゃねぇよ耄碌する年でもないだろうがぁ!?」
「そうかそうか、過去の地獄を自ら味わいたいとな?ならばついてこい。スペシャルメニューで味合わせてやろう」
「イヤダァァァァ!!」
教官が師匠を連れて部屋を出る、その少し前に俺を横目に見ながら告げた
「背負いすぎるなよ、藍澤・・・それはお前の悪癖だからな」
「分かっていますよ、教官」
やはりこの女傑にはどうやっても敵わないな・・・そう思いながらアヤカを見なおす
やはり変わらず眠っているままだ
そうこうしているうちに、ほかの人物が来た
「今日もここにいたのね」
「おや、チビッ子学園長。デスクワークは終わったのかな?」
「・・・給与減らすわよ?」
「おや、それは嘱託職員へのハラスメントかな?」
俺の返しにぐぬぬ、と唸りながらもテレサは続ける
「目覚めないの?」
「どうやら本人が引き籠っちまっててな・・・まぁそういう奴なんだけども」
「・・・どういう意味?」
「テレサ、まさかと思うがアヤカが豪放で自由闊達で誰よりも情深い性格だとでも思ってるか?」
小首をかしげたテレサにため息をつきながら俺は続ける
「コイツは、無理をしすぎるだけの一般人だよ」
「アヤカが・・・?にわかには信じがたいわよ?」
「大丈夫、明日はきっとよくなる。こんな言葉をよく言ってなかったか?ふとした時に、悲しそうな顔で」
「・・・あるわね」
俺はそれを聞き、持参していた紅茶を飲む
「現実というものを誰よりも理解しているんだよ、いかんせん頭が俺以上に良いからな。だから自分が仲間にかけている言葉が希望的観測でしか無いことなど当たり前のように自覚していて、それでも守り抜くためにあらゆる犯罪に手を染める覚悟もある」
「でも、一般人の感覚じゃあ・・・」
「そう、いずれ限界が訪れる・・・アヤカはそれを無視し続けた。罪の意識で・・・後悔と慚愧で壊れそうな心を押し殺して」
わたしは・・・一人だけ馬鹿みたいに、笑い続けていなきゃ駄目?
いつかの次元で耐えられなくなった彼女が漏らした心からの声を思い出す
この世界ではそんな余裕すら与えられなかった・・・
「甘えたい、愛されたい、誰かに寄りかかっていたい。その願いを抱え込み続けた結果、ついに折れたのが今の状態さ」
「どうにか、出来ないの・・・?」
「あるとすれば・・・一つだけだな」
俺はついに限界を迎えて折れたその先を知っている、何せ自分が身に受けて味わったから
「その・・・方法は?」
「内輪揉めが起こればいい」
その瞬間、艦内に大音声の警告が鳴った
はい、次話にて主人公目覚めます(最悪の存在として)