「・・・」
命の恩人の一人である藍澤カズマを倒して数分、私は移動しながら彼の言動の意味を考えていた
私の問いにおかしな回答し、私の記憶にない過去を見せた理由
それ等には何かしらの意味があるはずだと・・・
「あそこで倒れる意味が・・・」
そこで私は思わぬ解を出す
あそこで私に負ける事が、何かしらの引き金なのではないかと
「しかしそれでは・・・」
早すぎるのではないか、タイミング的に・・・
そう思う自分がいる
なぜなら彼は無意味な事を一切しない人物だからだ
全ての行動には何かしらの意味があって、過分はあっても不足はないからだ
その彼が、重大局面のここで無駄な事をするはずがない
「まさか・・・」
そこで脳裏によぎったのはキアナ・カスラナという少女の姿だった
過去の私の名前を貰い、その定められた運命に翻弄されながらも自分の意志を貫く子の姿を
彼は言わなかったが、彼が望んでいるのはおそらく・・・
「彼女と共闘しろと言うのですか・・・?」
そんな事、言葉で直接言ってほしい・・・少なくとも任務以外で彼女と険悪な事にはならないのだから
そして任務でも、私は彼女達の側に立つ
それが天命への裏切りであろうと、これ以上、人としての間違いを犯したくないからだ
主教が何を企んでいて、その結果がどうなろうとも、これだけは変わらない
「言葉が足りないのです、貴方は」
損な役回りをするのは昔からだと、リハビリの時の会話で言われた事がある
確かにこれでは、損をするだろう・・・一言が足りないのだから
「まぁ、アレをリハビリと言えるかは疑問ですが」
そのリハビリを思い出してしまった
やっと身体が少し動かせるようになった私を床に置き、部屋内の指定した場所まで這って移動させることから始め、物に摑まり歩けるようになれば別の部屋まで移動させられた
よろめきながら歩けるようになればさらに遠距離を歩くように言われた時は恐怖したものだ
そうしてやっとまともな運動が出来るようになった時、その理由を教えられた
「その事も、関係しているのですね・・・」
それだけの過酷なリハビリの理由は自らの過去によるものだった
彼は当時の私と同じころに戦災により重度の負傷をした、それこそ後に彼の師となる人物が決死の努力で手術を行い成功させなければ死んでいて当然というほどの・・・
しかしその過程で彼は両親の死も体験した・・・
私にその過去を話していた時の彼はどこか懐かしむように自分の身体を抱いていた
彼の身体には両親から貰った多くのものがある。彼曰く、この血も肉も、骨ですら両親からの最後のプレゼントだと・・・
その言葉の意味はすぐに分かった、全て移植によるものだと
そしてそれを同時並行で成功させる確率を聞いてみたところ、返って来たのはどんな医療技術をもってしても不可能という無慈悲な回答
それでも彼は笑っていた、そして続けた
"それから様々な経験をしたし、時には傷ついてボロボロにあった事もある。そして生き延びる度に俺は両親に感謝していた、今回も生かしてくれてありがとう。今度は俺が誰かにあなた達の勇気を分けるから、とね"
その時の笑顔が、とても印象に残っている
そしてその言葉の意味はバルキリーになってから理解した
「どんなに暗い人生だったとしても、過去が血にまみれていようとも・・・」
人が人として、
どんなに冷たい凍土であろうとも、やがて溶け出し芽が息吹き、花を咲かせる
「そうですね、藍澤さん」
彼の至った領域に私が辿り着けるかは分からない
それでもその精神性は少しだけ、理解出来た気がした
実は仲間達の次に主人公代行を理解していたデュランダル様・・・
そして少しだけ語られた主人公代行の過去
その重い過去を語るほどデュランダルに自分を重ねていたのか・・・あるいは・・・