イノセンス   作:イツキ_6023

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私の小説を開いて頂きありがとうございます。
あらすじにも書きましたが、この小説は数年前に作者が某掲示板にSSとして投稿したもの(一話投下して失踪)をいろいろ妄想し直して書き直したものになります。
現在4話まで某大手Web小説サイトに投稿済みなので、一気に投稿させて頂きます。
私の物語にお付き合い頂けましたら幸甚です。


序章 平和
1 - 出会い①


戦火の中を一人の少年が歩いている。

全身黒の軽装鎧、頭は黒のフードで覆われ、表情は見えない。

左手に片刃の剣を携え、燃え盛る建造物と道に転がる死体の中をただ歩いている。

 

目の前に幼い少女が佇んでいた。

頬には何重にも涙の跡があったが、今は泣いていない。

 

泣きつかれたのか、流す涙も尽き果てたのか。

生者なのか疑わしいような虚ろな目で、ただ燃え盛る街を見つめている。

 

少女は少年の姿に気づいて、視線を向けた。

少年が一歩一歩距離を詰める、だが少女に逃げる素振りはない。

 

手を伸ばせば届く距離、少女は悟ったように目を閉じて、膝から崩れた。

 

少年は両手で剣を持ち直し、足元に跪いた少女の首めがけ、刃を振り下ろした。

 

 

――――――――

 

 

「はっ!!」

 

シルフは目覚めると同時に身体を跳ね上げ、枕元の剣を掴むと半身まで刃を抜いた。

ベッドの軋む音、毛布の感触、全身の汗が部屋の冷気に晒され、身体が急速に冷える感覚で、我を取り戻した。

 

まだ呼吸が乱れていたため、二、三度深呼吸をして、剣を鞘に収めて脇へ置いた。

いつもは起床のラッパで目覚めるが、ずいぶんと早く目覚めたのか、部屋は窓から入る僅かな日差しでうっすらと見える程度だ。

 

シルフは黒髪を掻き上げて、目をつむって項垂れる。

汗をかいた頭髪に指が入って頭まで冷えたおかげで、思考も冷静になった。

 

「久々に嫌な夢を見た、な…」

 

二度寝できる気はしなかったので、ベッドから降りて日課のウォームアップを行うことにした。

麻のシャツを脱ぎ、上半身裸になると、目の前の姿見鏡を一瞥する。

左肩から胸元まで刻まれたトライバルタトゥーと傷跡だかけの身体、細身ではあるが無駄な贅肉のない鍛え上げられた身体が映っている。

全身の腱を伸ばし終えたら、そのまま片手で逆立ちになり、ゆっくりと体重を落とし、戻す。

 

ただ、その動作も三カウント目を終えたところで、ノックの音に邪魔をされてしまった。

 

木製の戸を叩く音、素手で叩いたものにしては響くので、相手は金属製の籠手をしていると分かった。

となれば、宿舎を警備している兵士のものだろうと察しがついた。

 

いくらなんでも上半身裸で出迎えるわけにはいかないので、シャツを羽織り直し、ボタンを掛け、ゆっくりと扉を開けた。

 

開けた先にはシルフより頭二つ分の背丈があろうかという屈強な兵士が二名、シルフを前にした途端に直立不動の敬礼をしてみせた。

 

「シルフ隊長!!早朝より大変失礼致します!!」

 

「おはようございますッス!シルフ隊長!」

 

「これは、ヘルベルト殿、マーディン殿、夜勤の努めお疲れ様です。

 如何されましたか?」

 

壮年で短髪の男をヘルベルト、まだ二十歳そこそこの癖毛の青年がマーディンである。

シルフは二人に向かって丁寧に会釈し、笑顔を向ける。

 

こと上限関係、序列の徹底されている王国の正規軍において、シルフのこの丁寧な対応はなかなか有名だった。

魔法剣技部隊、通称「レンジャー」の少数精鋭をまとめ上げる隊長であり、国王に重宝されている身でありながら彼はどんな相手だろうと徹底して礼儀を尽くす。

下士官だろうが、新兵だろうが、傭兵だろうが、である。

この親しみやすさは特に若い兵士に好評だった。

 

もちろん疎ましく思う者もいる。

国王直轄の騎士団の中で、貴族の出自の者などが特にそうだが、態度というより、彼がこの国に来た経緯と役職に対する嫉妬と言える。

とは言っても、彼の実力は認めざるを得ないため、面と向かって突っかかるような輩は現在はいないのだ。

 

ヘルベルトが苦笑いを浮かべ、鼻先を掻きながら答える。

 

「いやぁ…、それが王女様がこの宿舎に参られまして、シルフ隊長に逢いたいと…」

 

「俺感動しました! こんな近くで王女様にお会いできるなんて!」

 

話の腰を折られたヘルベルトがマーディンの頭をコツいた。

大して力など入っていないが、金属で保護された指の関節で小突かれたので、それなりに痛そうだ。

 

シルフはすぐに合点がいった様子で、壁に立てかけてあった厚手のローブを羽織って部屋を出た。

ヘルベルトとマーディンもあとに続く。

 

 

―――

 

 

 

宿舎の食堂はちょっとした騒ぎになっていた。

朝の暇にカードゲームを楽しんでいた兵士などは大慌てで賭けに積み上げていた小銭を片付けていたし、食房で朝食の仕込み作業していた兵士も手を止めて配給を行うカウンターの前に整列している。

そんな周りの反応などお構いなしに、少女は満面の笑みで周囲の兵士にじゃれついていた。

ヘルト連合王国王女 ソフィア・プリスタイン、まだ五歳の幼子には自身の立場を理解するには早すぎるようだ。

その状況にどう対応していいのやら困り果てた付き人の侍女があたふたと王女の後ろついて回っては、兵士に頭を下げている。

侍女にとっても兵士の宿舎に来るなど初めてのことなのだ。

 

「姫様」

 

ヘルベルトとマーディンを連れたシルフが食堂に入ると同時に声を掛ける。

その声に即座に反応したソフィアは歓声を上げながらシルフに抱きついた。

 

「シルフおはよう! 会いたかった!」

 

「おはようございます、姫様。

 …姫様、無闇に走ってはいけないと、女王陛下よりお教え頂いたはずですよ」

 

「う…、だって…、早く会いたかったから…」

 

シルフはソフィアの目線まで腰を落として、彼女の両手を優しく握った。

笑顔は崩していないが、まっすぐにソフィアの目を見据える。

彼女はバツが悪そうに視線を泳がせる、これは彼のお説教モードなのだ。

 

「姫様、なぜお城ではなくこちらへいらしたのですか?

 給仕の方々に無理を言って、連れてきて頂いたのではないでしょうか?

 姫様の我儘で、皆様にご迷惑を掛けてはなりません」

 

「…うん」

 

「両陛下がご不在でお寂しいのはわかります。

 しかし、姫様に何かあった時に責任を取らなければならないのは、ここにいる方々なのです。

 ご自分の御立場を弁えて頂かなくては困ります」

 

「う…うぅ…ご、ごめん…なさい」

 

長いプラチナブロンドの睫毛の大きな碧眼から大粒の涙が込み上げて頬を伝っていく。

しゃくりあげながら肩を震わせるソフィアも見て、シルフは彼女の肩を抱き寄せた。

”やれやれ”と軽くため息をつきながら、頭をなで、背中をさする。

こうなってしまっては、これ以上叱ることはできない。シルフもソフィアの涙には弱かった。

いよいよ本格的に泣き出してしまったソフィアを抱き上げて、周りの兵士達に軽く会釈する。

事の顛末を見守っていた彼らもそれぞれ持ち場に戻り、ちょっとした早朝のドタバタは幕を閉じた。

 

ソフィアを抱きかかえたまま、シルフは侍女へ頭を下げた。

 

「ご迷惑をお掛けしました。

 姫様は私がお城までお連れしますので、どうぞ仕事にお戻り下さい」

 

「は、はい…。

 あの、僭越ながら…、あまり王女様を怒らないであげて下さい…。

 シルフ様にお会いするのは楽しみにしてらしたので…」

 

「ええ、私も姫様に嫌われたくありませんから。

 それよりも、少し姫様と散歩にでようかと思いまして。

 外は寒いので、そちらの羽織ものを着せたいのですが」

 

「あ、はい。

 王女様、さぁ、こちらのお召し物を」

 

ソフィアを一度床に立たせて、美しい白狼の毛皮の外套をソフィアに着せる。

首元までファーが覆うので、非常に暖かそうだ。

 

「我儘言って、ごめんなさい…」

 

胸元のボタンを締める侍女に向かって、ポツリとソフィアが呟いた。

涙で濡れた瞳で、必死に許しを請うような表情に一瞬驚いた侍女だが、すぐに慈愛に満ちた笑顔で応えた。

 

「滅相もございません、王女様」

 

「姫様、よくご自分から謝ることができましたね。

 シルフは誇りに思います」

 

「…うん」

 

ソフィアは照れくさそうに顔をフードで隠すと、シルフの首に両手を巻き付けて抱っこをねだった。

「それでは」と宿舎から出ようとするシルフにヘルベルトとマーディンが声を掛ける。

 

「あ、お待ち下さいシルフ隊長」

 

「部屋に剣を忘れてますよ! 勝手に触っちゃってすみません!」

 

マーディンが大事そうに両手に抱えた剣を差し出してきた。

長さは一般的な両刃の片手剣と同様の長さであるが、細身の湾曲した刀身を収めるため木製の鞘も曲線を描いている。

柄頭と十字鍔に金色の装飾が施されているが、それ以外は黒一色だ。

グリップに巻いてある革が手垢で変色している以外は不自然なほど美しい外観をしていた。

 

「申し訳ありません。

 それは私の部屋に置いておいて頂けますか」

 

「えぇ? い、いいんですか?」

 

「姫様が怖がるんですよ、それを身に着けていると」

 

「は、はぁ…」

 

「それに、その剣には呪いが掛かっているので、あまり触らないほうがいいですよ」

 

「いいッ!?」

 

「冗談です」とクツクツ笑いながら「それでは」とまた一言残して、ソフィアを抱きかかえたシルフは宿舎を出ていった。

 

「はっはっはっ、誂われちまったなぁ、マーディン?」

 

「いや、なんつーか、シルフ隊長ってすげー良い人なんスけど、掴みどころがないっていうか…。

 あの人って、この国の人なんですか?」

 

「あん? おまえ知らねーのか?」

 

「いや、俺より年下に見えるのに、一個部隊の隊長なんてすげーなぁ、て思ってましたけど…」

 

「あの人は外から来た人だよ、俺らと同じさ。

 あの人はな…」

 

―――――女王陛下と王女様の命を救った人だ

 

 

 

―――

 

 

 

ヘルト連合王国は大きく三つの地区に分かれている。

広大な湖の中心にある小島に、王城、貴族階級の住居・宿泊施設を備える最も狭い地域を「ムート区」。

職人、商人、教会関係者の住居の他、庁舎、各種ギルドホールなど、交易・都市機能の中心となる埋め立てられた地域を「クラフト区」。

クラフト区から東西南北に伸びる長い四つの橋から先、湖畔を造成した一般的な労働階級の人間が住む最も広い地域を「リーベ区」と呼ばれ、いずれの地区も砲撃に耐えられる厚い外壁で囲まれている。

王都の市民はクラフト区とリーベ区の行き来は自由であるが、ムート区への立ち入りは原則できず、往来する外部の人間は各地区に入る前に税を支払う必要がある。

湖から小高い山を挟んで流れる河川より先はすぐに海へ通じており、貿易港と軍港を備え、陸路以外の大量の物資輸送を可能にし、多種多様な物品、文化が行き交う交易都市とも言える。

 

シルフはソフィアも抱き抱えながらムート区の遊歩道を歩いていた。

立ち並ぶブナの木は紅葉の絶頂期なら美しい黄金色や茜色になるが、本格的な冬の到来が近づいているせいか、葉は散りはじめてしまっている。

 

早朝のせいか、行き違うのは礼拝の行き帰りの僧侶が多く、シルフの事を知るものは立ち止まり手を合わせて深々とお辞儀をした。

中にはソフィアの存在に驚くものもいたが、まぁ、シルフがそばにいるのなら、と騒ぎ立てることもなかった。

 

「おお、シルフか」

 

「これは、アルド老師様、おはようございます」

 

紺色のローブを着たやや恰幅のいい初老の男が、たっぷりと蓄えた顎髭を撫で付けながらシルフ達に声を掛けてきた。

ヘルト連合王国常備軍の兵科の一つ「魔闘士」を束ねる武官の一人、アルド・ハバーだ。

 

「ああ、おはよう。

 ところで…、抱き抱えておるのは姫様かな?」

 

「ええ、まぁ、ちょっと一悶着ありまして。

 こうしていたら、また眠ってしまいました」

 

「うんうん、寝子は育つというしのぉ。

 いやぁ、女王の幼い時を思い出す…、かわいい寝顔じゃ。

 ますます孫に会いたくなったわい」

 

「魔闘士部隊の士官の皆さんは今日から休暇に入られるはずですが、アルド老師様もご自宅に戻られるのですか?」

 

「ああ、娘も婿殿も一緒にな、ほれ」

 

アルドの視線の先に、連れ立って歩く男女がこちらへ手を振っているのが見えた。

白を基調としたダルマティカに上からカズラとストラに身を包んだ女性神官をルイーサ・ハバー、チェニックの上から毛皮のコートを羽織った男をエドゼル・ハバーという。

 

「やあ、シルフ君。朝から姫様のお守りかい?

 宿舎に寄った時に聞いたよ、君が姫様を泣かせたってね?」

 

エドゼルがニタリと笑いながら茶化すようにシルフに詰め寄った。

 

「ハバー中尉…、それにはやや語弊があります…」

 

「はっはっは! わかってるよ、でも事実だろう?

 それより、肩書で呼ぶのはよしてくれ、休みの日ぐらい仕事は忘れたい。

 エドゼルで構わないよ」

 

「は、はぁ…」

 

「あなた、シルフ様が困っているでしょう、お戯れが過・ぎ・ま・す・よ」

 

エドゼルの隣にいたルイーサが彼の背中をつねりあげる。

 

「いぐぅッ!? わかったわかった!悪かったよ!

 しかし、こんな朝早くに姫様を城からだすなんて、女王陛下もよく許したね」

 

「いえ、両陛下は同盟のご領主様へ冬至の挨拶に行かれているのです」

 

シルフの言葉に「なるほどね」とエドゼルは合点がいったようだった。

そして、そんな事も把握していなかったエドゼルの脇腹を妻のルイーサがつねりあげた。

 

「それで寂しくてシルフ様に会いにに行ってしまったのですね」

 

ルイーサがシルフの腕の中で眠るソフィアを慈しむ笑顔で髪を撫でた。

その話を聞いていたアルドが「はて」と思った疑問をシルフに問いた。

 

「王族の外出はいつもお主が護衛を務めておっただろう」

 

「ええ、まぁ、そうなんですが…。

 私の部隊の年長者から…」

 

 

―――隊長、両陛下の護衛は我らが同行いたします!

 

―――そうです! 隊長、たまには休んで下さいよ!

 

―――我ら四人もいれば、隊長の代わりにもなりましょう!

 

―――てゆーか、隊長はいつ寝てるんですか!? 倒れたら私達が困るんですけど!!

 

 

「などと言われまして、国王に進言したところ、問題なし…とのことで…」

 

「ふむ、フェンリル一族に騎士に魔闘士、それにお前の部下が四人、何も問題ないではないか! はっはっは!」

 

「良い部下を待ちましたね、シルフ様」

 

「ええ、みんないい子たちです。

 …ただ、騎士の方々とうまくやってくれればいいのですが」

 

 

複雑な表情で視線を落としたシルフにエドゼルが引きしめた表情で口を開いた。

 

 

「子離れできない親にしびれを切らして、子が巣立とうとしてるんだ。

 シルフ君、君の底抜けの優しさは良いところだけど、最大の弱点でもある」

 

「ちょっと、あなた…」

 

「シルフ君、僕は君をこの国で最強の剣士だと思ってる。

 家柄だとか、口先だけの騎士道精神に陶酔している騎士団なんか目じゃないさ。

 だから、魔闘士から独立させた魔法剣技部隊を君に任せたんだ。

 それをいつまでも籠の中の鳥にしておくのは困るよ」

 

「面目ありません…」

 

「おっと、自分から仕事のことは忘れたいといっておきながら…、悪かったねシルフ君。

 大丈夫、君は僕の自慢の部下だ。 君の部隊のこともちゃんと評価しているよ」

 

 

上司と部下のちょっとした諍い、というには上司の一方的な説教にルイーサは自分の夫の性格にため息がでたが、まぁ、仕事になると熱心になるところに惚れているという自覚があるので目をつむることにした。

それよりも、ルイーサはある提案をしてみることにした。

 

 

「シルフ様、もし宜しければ姫様と一緒に私達の家に来ませんか?

 私達の娘は姫様と同い年なの、きっと仲良くなれると思いますの」

 

「それはよい! 聞けシルフよ!

 さすが我が孫じゃ、もう魔法に興味を示しておる!

 幼児向けの魔法文学書をたんまり買ってやるつもりじゃ、喜ぶかのぉ」

 

「使用人からも手紙が来ていてね、もう三ヶ月も帰れていないから、やはり寂しがっているみたいなんだ。

 姫様となら、良き友になれるんじゃないかな」

 

 

三人から矢継ぎ早に言われて、あっけにとられるシルフだが、腕の中で眠るソフィアを見て、この話を聞けばさぞ喜ぶだろうと想像し、思わず心が高鳴った。

だが、無断で王女を連れ出すことにはやはり戸惑いもある。

そんなシルフの様子を見抜いたアルドがシルフの肩をパシリと叩いて見せた。

 

 

「心配せずともよいぞ!

 王にはワシから弁明してやる! 心配するな!」

 

「国王陛下は問題ないかと、問題は女王陛下がなんと仰るか…」

 

「あら、女王陛下でしたら私からお話しますわよ。

 元同期ですもの、うふふ」

 

「はぁ…それはとても心強いです」

 

「決まりだね、準備を整えて午前中に出よう。

 うちで少しゆっくりして、クラフト区の市場に出かけよう!」

 

 

「…みんな、市場にいくの?」

 

 

目を覚ましたソフィアは、まだ覚めぬ目をこすりながら、一同を見回し問いかけた。

 

 

「ねぇ、シルフ、みんな市場にいくの?」

 

「ええ姫様、ここにいる皆様と一緒に、市場へ行くのですよ」

 

シルフの言葉に隠せない喜びと興奮がソフィアの表情に現れる。

キラキラと輝く宝石のような目をしながら、するりとシルフの腕の中から飛び出て体全体で喜びを表現するように走り出した。

 

 

「やった!! やったぁ!! ねえシルフ!! 早く行こう! すぐに行こう!!」

 

「姫様ッ、そのように走ってはなりません!」

 

 

シルフの警告は一歩遅かったようで、外套の裾を踏んでしまったソフィアは仰向けで芝生に倒れ込んだ。

石畳に頭を打たなかったことに安堵しながら、シルフが駆け寄ったが、彼女はキャーキャーとはしゃいで聞かなかった。

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