- 12話 -
スラの話によると、トイレから帰ってきた時ぐったりしていたらしい。俺は無言でソファーに向かった。
ソファーに力なくもたれかかるイム。手元に握られた青い粘液。そんなに食ったのかと問いかけたくなるカップラーメンタワー。
推定10段。
証拠の数々で導かれた真実。それは――
『イムはスライムを口に入れてしまったんだな』
どう考えてもスライムが原因だろ。
「ど、どうしたらいいの……」
スラの回復魔法で治るんじゃね? 治るだろ!
という訳で、イムの喉辺りに手を当てさせ、回復魔法を発動させる。スラは喜んで協力してくれた。
俺はその間にビニール袋を置いていたけど。
「キュア・エレクレーション!」
「誰がそんなに詠唱しろと」
「カッコイイから!」
「そ、そうか」
手から明るい緑の光が漏れだし、いかにも回復しそうだ。
「うぅ……」
イムが唸り声をあげた、回復してるらしい。スライムを口に含むほど馬鹿というのか。
「イム生きてるー?」
「なんて聞き方するんだ」
『生きてます……』
なんとか一安心だな。俺はソファーにへたれこみ、冷や汗を拭う。
「ダメだよイム! かってに物を食べちゃ!」
「……? そうですね」
イムは顎に手を当てて考えるが、何もわからない感じだった。俺は不思議な違和感を覚えた気がする。
「カップラーメンたべよー!」
「食べましょう!」
『まだ食べんの!?』
ダメだ、1日10個オーバーとかダメだろ! まぁ、3×3でわからなくもないが!
「え〜」
「いいじゃないですか、まだストックは沢山……あれ、20個しかありませんね」
もうねーじゃん! ダメじゃん!
「ダメな! とにかくダメな! 新しく服買ってきたから、着てみてくれるか」
大量のビニール袋を指差す、服が沢山入ってる。
「めんどいよー」
「着てみましょうよ、お姉ちゃん」
「……仕方ないなー」
あっさりと妹の要求を飲む姉。俺じゃダメなの?
「どんな服があるのかな!」
「これは……?」
ファッションに興味持ってくれたら有難いんだけど。チラチラ見ながら、俺は洗濯物を干しに行く事にした。
洗濯機の服を取り出し、カゴに詰め込む。服を着てるスラ達の所に戻るとカーテンを開くと日差しが射し込んだ。
「みてみてー!」
「このニーソはどうです……?」
眩しいな。
ガラガラっとスライドさせると狭い領域が。ベランダって狭いよな。
スラのワンピ、俺のジャージ、シャツ、ヒートテック。
もっと服が増えると思うと憂鬱だな。
干し終えると、スラとイムが可愛くなっていた。
「お姉ちゃんかわいいですー!」
「イムもかわいーよ! 胸いいな〜」
スラはショートジーンズにスッキリスマートな白の水玉がプリントされたシャツ、何故かへそ出し。好み過ぎる。
イムは赤と白のチェックミニスカートにニーソックスだと? 真っ黒に赤文字の『Raizen』が貼られたシャツ!?
もっと驚きなのは、それに灰色の上着を羽織ってオシャンな所だな。死語だけど気にするな。
『センス良すぎね?』
しかも服のサイズがピッタリ、女って凄い。靴下も履いてるし、靴のサイズも合ってるんだろうな。
「そうでしょー」
ドヤッと胸を張るスラ。胸に押し上げられたシャツがフルンっと揺れる。
「お姉ちゃん流石です!」
「イムも胸はって良いんだよ?」
「こ、こうですか?」
不安げに胸を張るイムは、恥ずかしそうだ。3Dのような突き上げられた赤文字はプルルーンと少し多めに揺れた。
俺はスラを何故か見下した気がした。
「胸いいなー」
「Eも多いじゃないですか!」
「負けた気がする〜」
「たまにはお姉ちゃんに勝ちます」
可愛い姉妹だなー。明日辺りはお出かけできそうだ。
「イム、お風呂入る?」
「入ります!」
「いこいこ!」
2人は服を脱ぐと、バスタオルを持って風呂場に向かった。ちょっと雑だけどイムが畳んでくれたのは有難い。
俺は素早いなと思いつつ、カップラーメンを片付けてから洗濯機に服を入れるかな。
ソファーでカップルの録画を見ているのは俺だ。最近ゲームしなくなったな……ま、スラ居るし、掃除で疲れた。
『追い詰めたぞ! ジャーブラ仮面!』
『貴様にこの俺様を倒せるとでも? 仮面ドライバーが! 早くお前の彼女を連れてくるべきだなぁ! ぺっ!』
『そこでジャーブラは唾を吐いた』
『ナレーションやめろ!』
『必殺! ナレーションをナレーションするスキル!』
『そんなん使えるわけが……』
『ジャーブラ仮面は服を脱いで、交番の人に注意されます』
『見てくれよー! 俺のマイナスドライ――すみません、親に言うのだけは勘弁してくれませんか』
安定の下ネタだった。笑っているとスマホが存在を知らせるように鳴る。
どうせ芽以だろう、そう思って画面を見てみると、名前がなかった。良くわからないやつは放置だな。
充電器に繋いでカップルを見る事にしておく。
『……ヴヴヴ〜……』
その瞬間芽以から着信が来たなんてどうなってるんだ、驚きながら出る事にする。
「なんだ」
「通話中って出て……誰と話してたの!」
「話してない、知らない人だったよ」
「ねえ龍樹、髪染めたんだけどどうかな?」
「見えないんだけど」
せめて写真を送れよ!
「茶髪懐かしいな〜、今日会えるかな?」
「無理かな」
「なんで?」
「そりゃ秘密だろ」
教えるのは危ないしな。
「そっか……またね」
「何かあったら言えよ」
あまりにも悲しそうな声だったので、俺は手を差し伸べてみた。芽以は彼氏作らないのだろうか。
「お姉ちゃんすべすべー」
「水のしたたる良い妹〜」
「「いえーい!」」
声を揃えて出てきた服を着てない2人。ドライヤーで髪も乾かしてるのに……服着ろよ!
「服着てくれよ」
「風呂上がりはすずしいーからダメ!」
「えぇ……」
――シャツと下着だけ履くように言いました。