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五匹の雑魚を倒した俺は、鉄パイプを手放す。灰を散らして消え、紋章に吸い込まれる。
「幸せ〜」
ヤタガラスは鼻歌を歌いながら、口に弁当の中身を入れていく。急いで食べてるらしい。
「けほっけほっ」
あ、噎せた! ベンチに戻ると、背中を摩ってあげる事にした。
「大丈夫? 無理しなくていいから、ゆっくり食えよ」
「飲み物買ってなかった」
「食ったら買うか」
時々俺にキャベツを食わせつつ、なんとか食べ終えた。何故か俺が空になった弁当の袋を持ってる。
「満足〜。寝てもいいかな?」
「ダメだ、ジュース要るんだろ」
「買ってきてよー」
「いいから行くぞ。俺はお前の彼氏じゃないし、手下でもない」
ヤタガラスは「そっか……」と少し声を落とした。それに俺は、少しだけ違和感を感じた。
「なんだよ、露骨に落ち込むなって」
「元々は敵だから、仕方ないな〜って思ったんだよね」
「……敵でもいいだろ」
俺は立ち上がりつつ、なるべく笑顔で手を差し出す。
「一緒にジュース買おうぜ」
こんなにも自販機でジュース買う行為をかっこよく言ったのは生まれて初めてだな。
「一緒……そうだね」
俺の手を強く握ったヤタガラスを引っ張り、自販機に向かう。
「自販機デート」
「そんなデートあってたまるか」
「海を越えた自販機でジュースを買う的な」
「お前だけ行ってこい」
お金を入れつつ、どれにするか聞いてみる。
「じゃあ、これ!」
「分かった」
150円のペットボトルが転がり出てくる。真っ白で四角い……軽ピスだった。スッキリした味が売りだから軽ピスらしい。
「バルデスは買わないの?」
ヤタガラスはそう言いつつ、キャップを外してゴクゴク飲んでいた。
「俺は……」
「なら、一緒に飲も!」
気遣いなのか、俺に飲みかけの軽ピスを差し出してきた。ニコニコしてて、嬉しそう。
「別に……え?」
「えへへ」
とりあえず受け取り、何も考えずに飲むことにする。やっぱり、美味しく感じた。
「ありがとな」
「うんうん」
間接キス……か。案外、甘酸っぱい思い出が出来た気がする。
「これからどうする?」
「私は帰る! 今日はありがとー」
「そうか」
絶対元々の目的忘れてるよな。まあ、ケルベロスと合わせる作戦は成功したし、いいか。
「今日は楽しかったよ」
なんだかんだ、良かったな。ヤタガラスの良い一面が見えた。
「私も〜。あ、軽ピス飲み終えたから捨てといてね!」
「俺をなんだと思っている!?」
「コジロウ」
「誰だそれ」
手を振って互いに別れる。俺はヤタガラスが見えなくなるまで見つめていた。
都合よく芽以から着信が来た、タイミングやばいな。出ながらゴミ箱に軽ピスを放り込む。
「芽以? 迎え?」
「違う」
この声は……ケルベロス?
「え?」
「芽以さんが……とにかく来て!」
「わかった!……ってどこにだよ!?」
「芽以さんの家」
緊急事態なのか分からないが、俺は全力で走る。簡単に歩道橋を渡って、バーガー兵士の看板が大きくなっていく。
スラ達待ってるのにな。
人をすり抜けながら、バーガー兵士を抜けると一軒家がある。芽以の家。
適当にインターホンを連打、誰も出てこない。待ちきれないので柵を飛び越えて勝手に入る事にした。
「はぁ……待ちきれるわけないだろうが」
鍵は偶然かかってなく、入ると寒気が走る。そして、ピリピリしていた。
「おい! ケルベロス?」
靴を脱いで上がると、無駄に静かだ。キッチンを覗くと寝かせているであろう肉じゃがが待機していた。
「わけわかんねぇな……」
リビングに目をやると、カップルの次回予告が始まっていた。
「カップルの最新話録画忘れてた……」
そんな感じで抜けた頭に認識させるように呟く。俺は地味に焦っているんだ。
『バルデストロン!』
背後から声が聞こえ、話を聞くために声を振り絞る。
「ケルベロ……ッ!」
だが、タックルを受けて俺は吹き飛ぶ。気がついたら馬乗り状態だ。
「離せ! 芽以は何処に行った?」
「離せない……芽以さんは……2階」
強力な力だ、俺が抗えないって事は、本気だろうな。
「ぐ、どうしてこんなことを!?」
「任務よ……」
ケルベロスは拳を振り上げる。
『ヘルノイズ』
間一髪という所で召喚した黒パイプに拳が打ち当たる!
「あぶな」
ステータスも上がり、足で吹き飛ばす。女を蹴るのは好きじゃない。
「俺の妹だろ? 兄を殺すなんて」
「兄は……兄は……違う、ケルベロスの兄は……」
「は?」
バグっているのか?
「兄は、ウロボロス様…………」
ケルベロスはそんな事を言いながら、俺に雷の弾を撃ち放つ。切り払って打ち消す。
「ここは芽以の家だ、壊せれない」
『関係ないし……稲妻の加護を』
「無いわけないだろ! 俺だって芽以の作った肉じゃが食いたいんだよ!」
「肉じゃ、が?」
そうだ、芽以の作る料理は美味しい。上手い理由は多分、俺の好みを1043回も聞いたからだろうな。
「あぁ」
こいつの気持ちを無理矢理ねじ曲げる方法は、サタンしかないな。
「食べたい……」
「拳おろせよ」
「食べるために……うわぁぁ!」
俺に詰め寄って容赦なく炸裂するボディブロー。
「ぐほぉ!?」
「殺したくないよ」
行動と言ってることが真逆だ。どういう事?
「ほら、真のお兄ちゃんバルデス様が受け止めてやるぞー」
「ミドルキック……ごめんなさい」
『ッ! スラの必殺の右ストレートよりマシ』
攻撃を受け止め、時間を稼ぐ。隙をついて抱き、倒れ込んでみる。
「辞めてよ変態お兄ちゃん!」
「あぁ、膝蹴りが俺のお腹を気持ちよく……痛えわ!」
俺は吹き飛び、壁に打ち当たる。クラクラしててもう発動しないとやばいかもな。
「殺したらごめんね……」
「俺は、お前なんかに、殺されない」
『ワットブースト』
瞬間的に俺の髪の毛が逆立ちになった。そして、ビリビリと音を出す拳が、俺の白と黒のパイプにガツンと当たる。
「え?」
『加速出来るのは、四天王だけじゃない。異世界で戦ったことないお前は知らないだろ』
引き抜いたパイプで立ち上がると、掲げて擦り合わせる。髪が一気に光を返す銀髪に変わる。
『サタンエンヴィ』
真っ白なオーラを纏った真っ黒なパイプが現れ、仮面が備わる。紋章も砕け散って仮面に吸収されていた。
「お兄ちゃんと戦いたくない……戦いたくない……」
ケルベロスは怯えながら、俺に拳を振るう。言いたい事が真逆のツンデレだな。
『大丈夫、空間殺すから』