- 元魔王の配下 -
話したくない。
そう思いながら、牛タンに色をつけていく。
「どんな話?」
「――魔王護衛創破四天王について」
ジューという音が場を濁した。
「俺の事は話さなくてもいいな」
「ヤタガラスとケルベロスはもういいですが、2人は厄介です」
「2人?」
確かに4人居るだろうな。そんなに厄介か? 全員馬鹿だから良くね?
「2人は男です、キスなんかで倒せませんよ」
「おい、俺はキス魔じゃねえから」
「そんな展開も憧れますけどね!」
「話聞いてた?」
「あ、ウーロンハイお願いしまーす」
「おい」
元魔王の配下ユリウスは、俺の事を無視して店員に注文を投げていく。
「名前から行きます」
投げ終えたのか、ゲンドウポーズで俺を睨む。ゲンドウポーズとは、肘をついて手を口の辺りで組むポーズ。
「1人目はウロボロス。非常に残忍な性格で、妹を人形の様に扱っています。すみません、ハラミを……」
「そうなのか?」
「2人目はマーナガルム。別名ルシフェルと言われてます、ツッコミ担当としてはそこそこですね。豚トロ追加で」
『間に注文挟むなやぁ!』
俺はルシフェルについて聞くことにした。
「まずは服装から行きましょう。お尻の部分に羽が書かれたトランクス、黒の鎧で身を包み、背中に紫色の羽があります」
「トランクスダサすぎ」
「スキルはほぼバルデスと同じです。ルシフェルというスキルで、サタンと対を成す的な」
「俺の鉄パイプなんだけどな」
「それはデフォルメです」
牛タンを回収しながら、デフォルメについてみるか。
「デフォルメってなんだ?」
「剣は物騒なので、鉄パイプ。槍も鉄パイプ。四天王は普通の状態ですが、勇者のあなたは例外的なので、そういう処置なんですよ」
そうか、クレイジーワールドだとそういうのは関係ないんだな。
「本来なら不可能、バグみたいなものです」
「デフォルメは分かった。ウロボロスはどうなの?」
「白い学ランを着ているような、紳士的な服装です。パンツは虎柄のパンティーでした」
「おほっ!?」
俺は驚きのあまり、水を詰まらせる。男なのにパンティーだと?
「なぜパンティーなんだ?」
「洗脳でもして、ケルベロスのを貰ったのでしょう」
「最低だな」
「異世界の時は、洗脳と脅しでケルベロスとエッチな事をしていたなども聞いています。クズです」
「やべぇ、殺意湧いてきた」
なんだろ、妹が可哀想っていうか。衝動が収まらない。
「殺す機会はいくらでもありますし、魔王自体もそれを知っています。魔王に消されるのを祈りましょうよ」
「この手で殺したい」
俺はキャベツを箸で摘み、適当に炙る。
「奴が強いのは事実、あなたが洗脳されたらゲームオーバーですよ」
「そんなコントロール受けないぜ」
「コントロールされたことがないから言えるんですね。回避するには圧倒的ステータス差が必要」
口に運ぶと、焦げた部分が苦くて泣きそうになった。
「ステータス100倍で足りるだろ」
「500倍は欲しいですね」
「無理」
ステータスか、この世界じゃ成長なんて無理だろうな。筋トレでもしないと兆しが見えない。
「この世界にはちょうど魔物が出始めてます、魔王の力だと思いますが」
「ああ、それは知ってる。まさか、それを倒してレベリングとでも?」
「……あ、ハラミお願いします」
「聞けやコラ」
ユリウスはまた店員とゴニョゴニョしていた。
「さて、レベリングは効率が悪いのでやめといた方が」
「逆に魔物は誰が倒すんだよ。強い奴が出てきたら――」
「私が倒してます」
「ッ!?」
まさか、バトルする店員なのか!?
「こう見えて強いですからね、遠隔で敵を死滅しています」
でも、ヤタガラスとデートしていた時は割とあっさり来たんだが。
「魔王の見分け方を教えてあげましょう」
「ヤタガラスすら教えてくれなかったんだよな、教えてくれ」
「液体です」
「え?」
「魔法の影響でなんたらかんたらーって、マーナが愚痴をこぼしてました」
それからかなり食べ、情報交換も兼ねて数時間が経ってしまった。
「焼肉デートも良いですね、少しいい顔になってますよ?」
「そうか?」
上を見れば星がキラキラしてる、スラとイムに怒られちゃうな。
「また今度、話しましょう」
ユリウスは、そう言い残すと黒い粒子に身を包んで見えなくなる。
「本当に魔族なんだな……」
俺は家に向かってゆっくり歩き始めた。
マンションの階段を上がっていると、黒い鎧を纏った男が! 明らかに変だし、お前隠す気ないだろ。
俺の家のドアの前とか、待ち伏せ確定か。気にせず家のドアに鍵を差し込む。
「ちょっと待て」
マーナに俺は止められてしまう。心臓の鼓動が収まらない。
「な、なんですか?」
「髪、乱れてるぞ」
そう言ってヘアオイルを取り出し、俺の髪をセットし直してくれた。
……お前何しに来たんだぁあ!?
「何でここに?」
「知り合いの家かと思って待っていたんだけど、人違いだった」
マーナらしき男はそう言い残して消えていった。
「本当に何しに来たんだ……」
家に帰る、当然真っ暗だ。2人も寝たんだな。靴を脱いでベッドを覗くとやっぱり寝ていたしな!
「可愛いな」
ニヤッと笑うスラを見てから、タッパーに残ってるジャガイモを爪楊枝で突き刺す。スラ達は飯を食ったのか?
口に運ぶと、水分を奪っていくイモ。俺好みの醤油に砂糖を加えた様な甘い味が代わりに広がっていく。
『やっぱり、美味いよな……』
とあるボロアパートから闇の扉が開かれる。
「マーナ帰ってきたんだ?」
「あぁ、シチューの材料も買ってきたし、嫌がらせもしてきた」
そこから黒い鎧を纏ってビニール袋を引っさげた男が出てきた。
「嫌がらせって何を?」
マーナは芽以にビニール袋を渡すと、ウロボロスの近くに座る。
「勇者の前で待ち伏せして、ヘアオイルしてあげた」
「何さりげなくいいことしてんだよ」
「綺麗にセットしてやったよ。こんな夜中に風呂入れない苦しみを味わうがいい! 髪もパサパサでな!」
誇らしげな高笑いが部屋に響く。
「うぅ、うるさい……」
「ケルベロスいたんだね、ごめんよ」
ケルベロスは不機嫌そうに襖を閉める。
「細かい事で誇るなよ」
「僕だってたまにはイライラするんだよ? 早く勇者と戦いたいな」
「目的は勇者を消すんじゃなくて、魔王を連れ戻す事だ。それを忘れるな」
「へいへい、早く見つかったら……」
「あ、今度お前にも教えてやるよ。洗脳をな」
「知りたくねーわ」
2人は残ったカレーを食べる事にした。
「」