この世界がおかしいとスライムだけが知っている   作:ec

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24話

- 寝起きは辛い -

 

 そのままソファーで横たわって寝た俺は、初めてスラに起こされる事になった。

 

「おーきーてー」

 

 体を揺さぶられ、目が冴える。少し体が重いな。

 

「なんだよ」

 

「お出かけしよー」

 

 無駄に長い1日で忘れていた! 俺の目的はスラとお出かけする事!

 

「イムも起こして仲良く行こうな」

 

「うん!」

 

 俺は風呂に入ることにした。

 

 体をさっぱりさせると、イムがのそのそ起き上がる。

 

「意外に起きるの遅いな、何時だと思ってる?」

 

「それは僕のセリフです、何時だと思ってるんですか?」

 

「え?」

 

「午前5時です」

 

 マジかよ。早すぎない?

 

「でも、寝るの?」

 

「二度寝は最強なので起きておきます」

 

「でも気持ちいいよ」

 

「うう……」

 

 揺れるな! だからといって布団に戻るな!

 

「お腹空いた〜」

 

 スラがひょっこり現れる。ワンピ気に入ってるのな。

 

「カップラーメン食うか……」

 

「ほう、でも飽きてきた」

 

「だよな」

 

 よし、これは流れに任せて。

 

「じゃあ、スラが料理作ってみないか?」

 

「やだ」

 

 だよなー! どうしたら、カップラーメン地獄から抜け出せるんだ?

 

「イムは……」

 

「面倒です」

 

 モグモグと麺を啜っていた。

 

「りゅうきが作るでいいんじゃない〜?」

 

 ツルツルーって食いながら俺の立場を危なくするとはこれいかに。

 

「賛成です」

 

「作りたくないわ」

 

「でも、最初の約束果たしてくれてないよ?」

 

 指と指でツンツンしながら俺を見るな! 約束……? うわー、約束してるじゃん。

 

「う……そうだ! 膝に矢を受けてしまってな」

 

「矢を受けても手は動くよねー」

 

 どこのブラック企業だよ。

 

「そ、そうだな」

 

「決まり! ご飯はりゅうきが作るー!」

 

 適当にお惣菜買ってみるか?

 

 食べ終えた俺達は、服を着替える。当然前のへそ出しとかだな。

 

「しっかし、イムはチャラいな」

 

「そうですか?」

 

 右頬に十字架のタトゥーシール貼ってやがる! ちょっとピースと舌をぺろっと出してもらったら、可愛かったので写真撮っておきました。

 

「うんうん、可愛いな」

 

「私も撮ってー!」

 

「おうよ」

 

 左手を腰に添え、右手を前に出してウインクするモデル体型のスラさん。

 

「相変わらず俺を見下してんな?」

 

「うむ」

 

「否定しろや!」

 

 パジャっと撮ってあげると、嬉しそうに跳ねてたし許す。

 

「りゅうきは撮らないのー?」

 

「俺は要らないよ、写るのは好きじゃないからな」

 

「3人で撮りたい」

 

 3人か、そうだよな。そんな思い出、作っとくか。

 

「今度、プリクラ行くか?」

 

「なんですか、それ」

 

「3人で写真撮るやつだよ」

 

 1通り準備を終わらせると、家を出る。待ち伏せしていたように鎧の男が俺の視界に飛び込んだ。

 

「……え?」

 

「きゃっ」

 

 マーナは俺の懐を過ぎ去り、イムを担ぐとマンションから飛び降りる!

 

「ちょ、待て!」

 

「僕と勝負しよう」

 

「お姉ちゃんたすけて!」

 

 声が聞こえ、追うように下を覗くと、スタっと着地するマーナが見える。

 

「くそ、イム……!」

 

「りゅうきはお留守番してていいよ、私が連れて帰るから」

 

「え?」

 

『お姉ちゃん、だもん』

 

 スラはマーナを追ってここからジャンプすると地面に滑空していく。一瞬何が起きたのか分からなかった。

 

「お、おい!? 死ぬぞ!」

 

 目で追いかけると、華麗に着地して地面を抉りとったスラが見えた。

 

「全く、ハイスペック過ぎるな……」

 

 待て、これがバレたらやばくね? あの地面の抉れ方はやばいぞ。

 

 俺は何も考えずに、ガイルにお電話して見ることにした。

 

「なんだ、また用?」

 

「四天王が俺の邪魔をする、何でだ?」

 

「そりゃ、勇者だし、スキル使えたら脅威的な驚異だよ」

 

 脅威的な驚異か。変な言い方だな。

 

「俺、スライムとおデートしたいだけなのに」

 

「さらっと本音こぼすな」

 

「どうしたらいいんだ」

 

「四天王消せばいいんじゃない」

 

 消す? 争いはしたくないし、勝てないだろ。

 

「出来たらそうするよ、出来ねえから」

 

「そういや、結局魔王も変成魔法で倒したっけ」

 

「うむ、その後即座に帰還したから知らないけど」

 

「今のバルデスなら四天王を殺せる、魔力を封印した魔力を使わなくても」

 

 そう言ってプツンと通話が切れた、2人は殺せないかもな。すると、次はヤタガラスが俺の側に現れる。

 

「呼んでないぞ」

 

 転移魔法でも使ったのか。

 

「……家に帰れないから、泊めて」

 

「帰れ」

 

 なんだよ! 芽以的な既視感を感じるし、ちょっと俺に寄り添うな。

 

「お願い、なんでもするから」

 

「よっしゃ」

 

「へ?」

 

 俺は決めた、ヤタガラスに料理してもらうと! 変な意味じゃないけどな!

 

「ほら、財布」

 

「でーと?」

 

「お買い物デート」

 

「と、泊めてはくれるの?」

 

 俺は、悪戯にヤタガラスの両頬を下から手を入れて抑える。ムにっと唇が自己主張してて鳥のくちばしみたいだ。

 

「みょっ?」

 

『――ご飯作ってくれるならな』

 

 

 

 

 スラとマーナは、街を全力疾走していた。

 

「なんだあれ!」

 

「番組の撮影か!?」

 

「凄い速いわねー」

 

 マーナはイムを担いでいるのに、スラを置いていきそうな速さだ。余裕ぶってチラチラ背後を見る。

 

「待て〜、イムをかえせ!」

 

「僕の速さについてこれるならね」

 

「……本気、出すか」とスラはボソッと呟く。

 

『リストレイントブレイク』

 

 何かが砕ける音がすると、スラは力強く地面を蹴り放つ。

 

「なに!?」

 

 スラの背後の地面は炸裂音と共に大きく抉れ、瞬間的にマーナを担げる距離に近づく。

 

「立場逆転、担がれる気分はどう?」

 

「え? え? どういう事?」

 

 当然担がれたマーナの思考は止まった。

 

「ちょっとお腹空いた、速さに追いついたから、ご褒美にご飯食べたいな!」

 

「えぇ……」

 

「イムは何が食べたいー?」

 

 イムはお姉ちゃん強い……と言いながら、さり気なく回転寿司をオーダーした。

 

「君の名前は?」

 

 スラはマーナを担いだまま、寿司屋に向かって路地裏を抜けて近道をする。

 

「マーナガルム……」

 

「マーナの奢りでおーすーしー」

 

 スラが足を止めると、寿司屋が見え始める。

 

「僕のお金が……お金そのものが……」

 

「お姉ちゃんありがと」

 

 がっつり手を握られてホールドされていたマーナガルムに逃げる手段は残されていなかったのだった。

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