- 寝起きは辛い -
そのままソファーで横たわって寝た俺は、初めてスラに起こされる事になった。
「おーきーてー」
体を揺さぶられ、目が冴える。少し体が重いな。
「なんだよ」
「お出かけしよー」
無駄に長い1日で忘れていた! 俺の目的はスラとお出かけする事!
「イムも起こして仲良く行こうな」
「うん!」
俺は風呂に入ることにした。
体をさっぱりさせると、イムがのそのそ起き上がる。
「意外に起きるの遅いな、何時だと思ってる?」
「それは僕のセリフです、何時だと思ってるんですか?」
「え?」
「午前5時です」
マジかよ。早すぎない?
「でも、寝るの?」
「二度寝は最強なので起きておきます」
「でも気持ちいいよ」
「うう……」
揺れるな! だからといって布団に戻るな!
「お腹空いた〜」
スラがひょっこり現れる。ワンピ気に入ってるのな。
「カップラーメン食うか……」
「ほう、でも飽きてきた」
「だよな」
よし、これは流れに任せて。
「じゃあ、スラが料理作ってみないか?」
「やだ」
だよなー! どうしたら、カップラーメン地獄から抜け出せるんだ?
「イムは……」
「面倒です」
モグモグと麺を啜っていた。
「りゅうきが作るでいいんじゃない〜?」
ツルツルーって食いながら俺の立場を危なくするとはこれいかに。
「賛成です」
「作りたくないわ」
「でも、最初の約束果たしてくれてないよ?」
指と指でツンツンしながら俺を見るな! 約束……? うわー、約束してるじゃん。
「う……そうだ! 膝に矢を受けてしまってな」
「矢を受けても手は動くよねー」
どこのブラック企業だよ。
「そ、そうだな」
「決まり! ご飯はりゅうきが作るー!」
適当にお惣菜買ってみるか?
食べ終えた俺達は、服を着替える。当然前のへそ出しとかだな。
「しっかし、イムはチャラいな」
「そうですか?」
右頬に十字架のタトゥーシール貼ってやがる! ちょっとピースと舌をぺろっと出してもらったら、可愛かったので写真撮っておきました。
「うんうん、可愛いな」
「私も撮ってー!」
「おうよ」
左手を腰に添え、右手を前に出してウインクするモデル体型のスラさん。
「相変わらず俺を見下してんな?」
「うむ」
「否定しろや!」
パジャっと撮ってあげると、嬉しそうに跳ねてたし許す。
「りゅうきは撮らないのー?」
「俺は要らないよ、写るのは好きじゃないからな」
「3人で撮りたい」
3人か、そうだよな。そんな思い出、作っとくか。
「今度、プリクラ行くか?」
「なんですか、それ」
「3人で写真撮るやつだよ」
1通り準備を終わらせると、家を出る。待ち伏せしていたように鎧の男が俺の視界に飛び込んだ。
「……え?」
「きゃっ」
マーナは俺の懐を過ぎ去り、イムを担ぐとマンションから飛び降りる!
「ちょ、待て!」
「僕と勝負しよう」
「お姉ちゃんたすけて!」
声が聞こえ、追うように下を覗くと、スタっと着地するマーナが見える。
「くそ、イム……!」
「りゅうきはお留守番してていいよ、私が連れて帰るから」
「え?」
『お姉ちゃん、だもん』
スラはマーナを追ってここからジャンプすると地面に滑空していく。一瞬何が起きたのか分からなかった。
「お、おい!? 死ぬぞ!」
目で追いかけると、華麗に着地して地面を抉りとったスラが見えた。
「全く、ハイスペック過ぎるな……」
待て、これがバレたらやばくね? あの地面の抉れ方はやばいぞ。
俺は何も考えずに、ガイルにお電話して見ることにした。
「なんだ、また用?」
「四天王が俺の邪魔をする、何でだ?」
「そりゃ、勇者だし、スキル使えたら脅威的な驚異だよ」
脅威的な驚異か。変な言い方だな。
「俺、スライムとおデートしたいだけなのに」
「さらっと本音こぼすな」
「どうしたらいいんだ」
「四天王消せばいいんじゃない」
消す? 争いはしたくないし、勝てないだろ。
「出来たらそうするよ、出来ねえから」
「そういや、結局魔王も変成魔法で倒したっけ」
「うむ、その後即座に帰還したから知らないけど」
「今のバルデスなら四天王を殺せる、魔力を封印した魔力を使わなくても」
そう言ってプツンと通話が切れた、2人は殺せないかもな。すると、次はヤタガラスが俺の側に現れる。
「呼んでないぞ」
転移魔法でも使ったのか。
「……家に帰れないから、泊めて」
「帰れ」
なんだよ! 芽以的な既視感を感じるし、ちょっと俺に寄り添うな。
「お願い、なんでもするから」
「よっしゃ」
「へ?」
俺は決めた、ヤタガラスに料理してもらうと! 変な意味じゃないけどな!
「ほら、財布」
「でーと?」
「お買い物デート」
「と、泊めてはくれるの?」
俺は、悪戯にヤタガラスの両頬を下から手を入れて抑える。ムにっと唇が自己主張してて鳥のくちばしみたいだ。
「みょっ?」
『――ご飯作ってくれるならな』
スラとマーナは、街を全力疾走していた。
「なんだあれ!」
「番組の撮影か!?」
「凄い速いわねー」
マーナはイムを担いでいるのに、スラを置いていきそうな速さだ。余裕ぶってチラチラ背後を見る。
「待て〜、イムをかえせ!」
「僕の速さについてこれるならね」
「……本気、出すか」とスラはボソッと呟く。
『リストレイントブレイク』
何かが砕ける音がすると、スラは力強く地面を蹴り放つ。
「なに!?」
スラの背後の地面は炸裂音と共に大きく抉れ、瞬間的にマーナを担げる距離に近づく。
「立場逆転、担がれる気分はどう?」
「え? え? どういう事?」
当然担がれたマーナの思考は止まった。
「ちょっとお腹空いた、速さに追いついたから、ご褒美にご飯食べたいな!」
「えぇ……」
「イムは何が食べたいー?」
イムはお姉ちゃん強い……と言いながら、さり気なく回転寿司をオーダーした。
「君の名前は?」
スラはマーナを担いだまま、寿司屋に向かって路地裏を抜けて近道をする。
「マーナガルム……」
「マーナの奢りでおーすーしー」
スラが足を止めると、寿司屋が見え始める。
「僕のお金が……お金そのものが……」
「お姉ちゃんありがと」
がっつり手を握られてホールドされていたマーナガルムに逃げる手段は残されていなかったのだった。