- 切実な願い -
冷凍物って、そんなに必要なのか?
「おいおい……俺の財布もあの冷凍フライドポテトくらい冷たくなるから、もういいだろ? な?」
「レンジでチンしたらいいじゃん」
『比喩だと気づけ』
適当にガッサガサ拾ってく。払うのが俺のお財布だと思うと、お財布自身が冷えきって見えた。
「どういう考えなんだ?」
「お弁当を作るのにも使えるし、面倒な時はレンジでいいから、便利じゃない?」
……ここが芽以とヤタガラスの差じゃないのか。当然口に出せるわけないが。
「でもよ? そんなに冷凍に頼るのはダメだと思うぜ」
「なんでー?」
あ
「芽以が冷凍物を買っている所は見たことない。少なくとも、俺の冷凍ハッシュドポテトを買う時しか」
さり気なく言うことにした。お財布が可哀想なんだ!
「そっか……じゃあ要らないよね、うん」
待て待てーい! あっさり折れるな!
「冷凍物は長持ちするからな。多少は必要だろ、全部戻すなよ」
「どっちがいいんだろう?」
俺に聞くなよ! だが、俺は芽以とかで学んだかっこいい台詞を頭に残していた。
「はあ……要らねえな。戻そうぜ」
俺は全ての冷凍食品を元の位置に戻す。
「うん」
『超絶美少女が作った卵焼きで満足出来るからな、こんな冷凍食品なんて比じゃねえ』
「……うん」
よし、ちょっと頬を赤らめたからセーフだな! ちょこっと撫でて安心させないと。
「卵買ってなかったよ」
「――買えよ」
その時、耳に響く破裂音が鳴る。スーパーの何処かだ。
「何?」
「俺にも分からないが、少なくともドッキリとかじゃない」
スピーカーから、本来なら有り得ない声が流れた。
『このマイクはジャックした。総員お客さんを締め上げろ!』
「「ブラジャー!」」
卑猥な集団だなおい!
「どうするっていうか、俺達拘束されるっぽいんだが」
「逃げるなら転移するよ」
……単純にキスしてスラ呼び出したらいいんじゃね?
「よし、キスするか」
「今!?」
俺はヤタガラスの顎に手を添える。
『何してるんだお前ら!』
「こんな阻止もあるよな……」
悔しく舌打ちした。目の前に1人の赤い服に赤い覆面を付けた男がいるということは、倒さないとな。
「あ、武器貸して」
「俺のパイプだけどな」
真っ黒なパイプを裂けた空間から引き抜くと、ヤタガラスに渡す。
「こう見えて、槍投げは得意なんだよね」
ヤタガラスはパイプを水平に構え、地面を踏み込むと、大きく体をしならせてぶん投げる。
……槍じゃないけど、鉄パイプだけど。
『お前ら! 残った客を捕まえぐほぁぁあ!!』
お腹にジャストでめり込んだパイプは黒い煙に包まれて消え去り、男は横たわった。
「だから俺を殺す時、投げて転移したんだ……」
「何か言った?」
「なんも言ってねえよ」
男の体を調べてみたが、ナイフ的なものはない。丸腰か?
「脱出する? それとも無駄足でバイオなハザードみたいに一掃する?」
「何も買えないから助けるに決まってるだろ」
こいつらゾンビじゃないだろ。
「確かにそうだね」
「ゴミみたいなデートになってごめんな」
「……慣れてる」
前に彼女か彼氏居たのか?
「どうやって終わらせるか」
「突入で」
「どこの脳筋だよ」
まあ、それでも勝てるだろうけどな。ステータスという概念で一般人は勝てない。
「私が単騎で殲滅してくるから、そのへんで食パン入れといて」
余裕そうに俺に背を向け歩き出す。
「何言ってんだ? 今日の献立考えろや」
ヤタガラスの手を掴んで引き寄せる。一応女の子だし……な?
「む〜……」
頬を膨らませて不満げに俺を見るな、若干赤いぞ。
「お前の戦場はキッチンだろうが!」
美味しくなかったらつまみ出すからな。
「こ、壊れないでね……」
俺の唇を撫でると、既に壊れてたのかも。そう呟いた。
『だから自販機じゃねえよ!』
「もしかしたらケルベロスいるかもしれないから、気をつけて」
俺の背中を押し、ヤタガラスは笑顔で「行ってラッシャー板前」と言った。
「死んだら冷凍食品に転生しそう」
「寒くないもん……もん……」
途中自身なさげだったな。俺は背を低くして棚に隠れながら進む。
茶番をしていたおかげで、時間はかなり経ってる。全員の客を集めたと思い込んでそうだな。
途中で覆面男が転がってたんだが、ケルベロスかな?
『抵抗したら殺すからな、警察は来てないというわけだ!』
スピーカーからの声、警察無能かよ。何のためにこんなことしてんだ、身代金じゃないの?
棚から棚へ飛び移り、姿を表さないようにする。人は居ないが、1箇所に集められてるのか。
「やめて下さい!」
「うるせえ!」
声のする方向からして、お魚コーナーか! 俺は向かう事にした。
「お願いします! それは……」
「やっぱりうめえぜ。限定パクリマンチョコは」
チョコなの!? セクハラじゃなくて?
「ぁあ……」
「おい、お前可哀想だろ。マジで限定品取るなとリーダーがあれほど」
リーダー平和的じゃないか! 本当に何が目的なんだよ。
近づく度に声が大きく聞こえる。見えるような距離になると、ケルベロスが見えた。
「お兄ちゃん……ぐすん」
悲しそうにタイルを見つめてるな。さて、こっそりリーダー締め上げたら一気に終わるかな。
「あ! お兄ちゃんだ! 助けてー!」
おーーい!!
「何やってんだケルベロス! 空気読んで黙っとけや!」
「お前ら! 構えろ! こいつは勇者バルデスだ……」
なんで俺の名前知ってんだ? まさか、こいつら魔物か……ケルベロスが捕まるのも頷けるな。
「見つかったら仕方ねえな」
俺はスクっと立ち上がり、裂けた空間に手を入れた。引き抜くと、真っ黒なヘルレイジが鉄パイプ姿で現れる。
『
――このセリフ使おうかなって思いました。