- 魔物は消すべき -
『
人差し指を上に向け、クイッとする。
「うおお!」
1人が立ち向かってきた、挑発に乗るヤツは死ぬって決まってるからな。居合で切り抜くと死んだ魔物は粒子になって消える。
普通なら血をばらまいて死ぬ。これは異世界の魔物という事を証明していた。
「こいよーこいよ」
「一斉に行くぞ!」
立ち向かってくる3人。拳を交わし、1人の頭を手で叩き潰す。
「あんがががぁ!」
「兄者ーッ!」
2人は振り向きざまにパイプで切り裂く。ほぼ同時に3人は粒子に変わっていた。
「弱いな。早くリーダー来いよ」
人質が居ても気にせず煽る。早く終わらせたいんだ!
「くそぉ……」
リーダーと思わしき人物が人質の影からひょっこり現れる。
「そこかよ!」
『生け贄召喚! 全てを解放する……』
まさか、人質を
『それはさせない、僕の話を聞いてないのか』
「え?」
リーダーの頭がマーナに掴み上げられる。
「あ、いや……その」
『無能が。消えろ』
その瞬間、リーダーは掴まれた部分から紫の光を放ちながら消えていく。
「なんで助けたんだ?」
「ケルベロスが居たから助けた」
闇の空間に入っていくと、見えなくなった。どうやら消えたらしい。
「そうか……」
「お兄ちゃんかっこよかったよ!」
ケルベロスがいつの間にか俺の二の腕に! いつになったら元の性格に……ヤタガラスに会わせたらいいか。
「そうか?」
「特にセリフが……一緒に帰ろ?」
セリフ? うわー芽以に聞かれてないだけマシかな。
俺は呆然としている人質をよそに、ケルベロスのポケットが膨らんでいる事を気にもせずヤタガラスの所に戻った。
……寂しそうに、しゃがんで座ってた。スズメみたいだ。
棚からこっそり見てるけど。
「まだかなー」
どうしようか! ケルベロス居るしな、入りずらいわ!
「ケルベロス離れろよ」
「やだ!」
「犬かよ」
「犬じゃないし!」
いや、犬だろ。
「お、あっちに乾燥イカあるぞ」
「本当に!?」
「犬じゃん」
「はぅっ……」
露骨に凹むなよ! そもそもイカが好きでも犬とは限らないからな。
「まあ、お手しろって」
「……わん。あっ」
「手、繋げたからこれで我慢しろよ」
悔しそうに唇を噛んでたけど気にしない。普通に手を繋いでヤタガラスの前に出る。
「終わったぞ」
「やっと来た! あれ、ケルベロス居たんだー」
「……? ヤタガラス」
気まずくなるかと思ったが、そうでもなかった。ハグしてて百合っぽいなって思う。
「一緒にバルデスの家に向かう?」
「いい、遠慮しとく」
お! 元に戻ったか!
「そっかー」
「別にお兄ちゃんの事なんか、好きじゃないからね」
そうでもねえ、普通かよ。ツンデレやん。
「お兄ちゃん……? ウロボロスじゃないの?」
「今のお兄ちゃんは……」
ケルベロスは俺をじーっと見ると、ツーンとそっぽを向く。
「ううん、何でもないし」
「なら良かった」
さり気なくヤタガラスは俺と恋人繋ぎをする。ケルベロスもしたそうに見てたから助け舟を出す。
「お手」
「……お手じゃなくてもいい?」
「好きなようにしろ」
だからといって二の腕に、抱きついていいとは言ってない。ヤタガラスにこのあと聞かれるやつだからやめてくれよ。
「じゃあ私も……」
うお、両腕が女の子に抱きつかれるって幸せだわ! ハーレムじゃん!
「てもなー、2人ともそのお胸が小さいと言いますか。すみません、何も言ってないです」
サイズ的に芽以が一番でかいかな。
とりあえずお会計の体制取ってそそくさと買い物終わらせて出てきた。俺が荷物持ってる、割と重かったりするが。
「軽すぎ、ケルベロスがおんぶしても耐えれるわ」
見栄を張るのが俺なので、絶賛後悔している。
「おー高い!」
「お前がチビだから」
「チビだから下りませんよー!」
ケルベロス背負うとか無いわ! 重たくはないけどな。
「して欲しそうに見るなよ」
「いいなーとか思ってないもんね!」
「露骨だな」
流石にヤタガラスは背負えないな。今度、今度ね!
途中まで帰路を共にしたケルベロスと別れ、あと少しでマンションの階段に差し掛かる。相変わらずスラが抉った地面は治ってない。
「ねーねー?」
「泊まるなら美味いの作れよ」
「違う、おんぶ……」
やっぱり!? 手を広げて乗る前じゃねえか。
「絶対重いからやだ」
「じゃあ抱っこ」
「手を使わずに出来る抱っこなんて存在していいのか」
荷物持ってないだけいいと思ってくれよな!
「召喚したら出来ると思うんだよね!」
「早く言えや」
俺は何も無い空間から手を入れ、真っ黒なパイプを引き抜くとヤタガラスに渡す。
「体軽くなったわ、少ししかないけどおんぶしてやるよ」
両手に持っていた荷物を左手に纏め、しゃがむ。当然のようにヤタガラスは乗ってきました。
「やった!」
「子供かよ」
ちゃんと腰に手を回して支えるんだぜ! セクハラって言われそうで怖いんだけどな。
「そんなにしてもらった事ないから……」
背負ったまま階段をカツカツ上がっていく。
「してもらえて良かったな」
「幸せー!」
ちょっと羽耳が俺の耳に当たるんだけど!
上がり切ると、黒い鎧のアイツが。マーナが居た。
「さっきはどうも」
とりあえずお礼を言ってみたが、俺に用はないらしい。
「それは良い。ヤタガラス、なんで帰ってこない?」
「……言わない」
ま、嫉妬なんて言えるわけないよな。
「言え」
マーナは手を前に出し、何か魔力を感じる。
「う……ぜったい、言わない……」
「強固だね、仕方ない」
強引に聞き出そうとしたというのか!
『……バルデス、足掻け』
そう言い残して鎧をカチャカチャ言わせながら見えなくなった。どういう事なんだ。
「大丈夫か?」
俺はそっと声をかける。
「うん、大丈夫」
涙ぐんでいたが、俺は聞かない事にした。家に帰ると当然お出迎えがあるんだよな。
「りゅうきが彼女を置いて彼女を作ったー!」
「酷いですね! 処刑しましょう!」
「彼女じゃないもん! 悪いのはバルデスだけ!」
さり気なく俺だけ悪者にしやがって!
『明日は……4人で、行こうな』