この世界がおかしいとスライムだけが知っている   作:ec

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29話

- 可愛い女の子 -

 

 俺の目の前に、キスをせがむ女の子(仮)が居る。そして、ケルベロスの提案によって勝負してキスをするだと?

 

「本当に女の子かよ?」

 

「本当に女の子だよ」

 

 鎧でわかんねー。とりあえず、俺はマーナに触れる。

 

「顔も男っぽいんだよな」

 

「ボーイッシュで悪かったね」

 

 自然な流れで下半身に触れる、

 

「な、何してるんだい?」

 

「鎧が邪魔で触れないな」

 

『お兄ちゃん……』

 

 もっと触りたかっただけだもん!

 

「どんな勝負するんだ?」

 

「ヤタガラスは居るかな」

 

「居るぞ」

 

「呼んでくれ」

 

 呼ぶ必要もなくヤタガラスは現れた。

 

「早くね!?」

 

「聞いていたのだよ」

 

「あっさり隠れてたって暴露したぞこいつ」

 

 玄関で話してるからな、仕方ないか。

 

「ヤタガラスをどうする?」

 

「こうしたらいいかなって」

 

 玄関を出て、ヤタガラスを挟んで2人で手を繋ぐ。

 

「ケルベロスも来るかい?」

 

「うん……」

 

「マーナ、女の子っぽい喋り方をしてくれよ」

 

 クレイジーワールドを使うらしい。

 

「ヤタガラス、頼むわよ」

 

「フフッ」

 

 ヤタガラスは気味が悪いほど、嬉しそうだった。久々の出番に頬を赤らめてる。

 

「わ、笑うな!」

 

『クレイジーワールド』

 

 世界が反転する。

 

「はー来ちゃったか。男とキスするの嫌だわ」

 

 ケルベロス、マーナ、ヤタガラスが居るよ。めんどくさ。

 

「男じゃないから、僕は女の子」

 

「触らせろよ」

 

「それはダメ」

 

「勝ったら無理矢理剥ご」

 

 2人が心配している中、俺は空間の裂け目から黒剣を引き抜く。この世界だと普通の見た目だな。

 

『残響で消してやるから来いよ……』

 

「ふむ、やっぱりだね」

 

 俺のステータス増加の反動を何食わぬ顔で見ると、マーナも武器を召喚するつもりらしい。

 

『久しぶりだよ』

 

 羽を描いた紋章がマーナの手を伸ばした先に現れる。

 

自己拘束魔法陣(ファースト/セーバー)

 

 手を突っ込んで引き抜くと、鎧とは見合わない白羽の剣が召喚される。

 

 抜き終えた瞬間、紋章は剣に吸い込まれた。

 

「さあ、始めようか」

 

 光と闇が合わさって最強に見える。そんな言葉があるが、本当らしいな。

 

「お前それでいいのか?」

 

「大丈夫だ、問題ないね。僕はまだ変身を2回残している」

 

 よく分からないが、俺は気にせず先制攻撃を仕掛けるために詰め寄る。大きく黒剣を振りかぶって。

 

「武器は破損する」

 

 羽剣とでも言うべきか。当然斬撃は凌がれ、不思議な事に俺の剣が砕け散る。

 

「またかよ! なんだよ次は」

 

 カラミティを即座に召喚して切りつけてみた。

 

『バルデス、羽には破壊属性がついてるから』

 

 ヤタガラスが丁寧に教えてくれた。羽に触れたらダメってことだよな。

 

「ま、ネタバレしないと僕に勝てないのかも」

 

 サタンエンヴィしかないかもしれない。属性だから、それより上を用意したらいいのか?

 

 考えている間に剣が振られる。避けることしか出来ない。

 

「避けてもダメだよ?」

 

 なるべく大きく距離を取って白い剣と黒い剣を召喚し、二つを合わせる。

 

『ヘルカラミティ』

 

 この次がサタンエンヴィなんだが、唱えなかったら武器だけなのかもと思った。当然武器だけ。

 

「これなら行けるぜ」

 

 武器の名前はバスターンサ・ドレイジンとか言うらしい。めっちゃ右手が疼きそうな名前だ。

 

「最終段階の一歩手前を逆手に取ったわけか」

 

 試しに羽剣と鍔迫り合いに持ち込んでみたが、壊れなかった。サタンに持ち込んでもいいかもしれない。

 

「そうでもしないと勝てねえ」

 

 俺の体を超える大剣を振り回し、近づかせない。いや、どんなに振っても当たってくれないんだよな。

 

「でもステータスは低いな、弱点はないのになぜ使わない?」

 

「なんとなく」

 

 実際サタンでキスすると恋人が増えるからちょっとな。

 

「僕から行くよ?」

 

「行けば?」

 

 大剣を交わしながら、羽の剣が刀の様に切り替わる。紋章が刀の丸い部分に切り替わり――

 

自己強化魔法陣(セカンド/チャージ)

 

 刀に黒いオーラが宿った。刀身が半分だけ黒く染まっていた。

 

『僕は僕を超える』

 

 影のように見えなくなった途端、俺の目の前で刀を振るうマーナ。俺は防ぐ事が精一杯だった。

 

「え、ちょ早すぎだしぬしぬ」

 

「待つことはしないよ」

 

 まるで武器で浮いているような移動で、上から下へ、縦の回転斬りを放つ。

 

 ガギィン……!

 

「やべぇ、ヤタガラス説明しろ!」

 

 武器の形態を解き、カラミティとヘルの2本持ちで時間を稼ぐ。カラミティは一瞬で砕け散ってて寄生かよって思った。

 

『バースト・カラミティ』

 

「えっと……実は知らないんだ、てへ!」

 

 自身の頭にコツンと軽く叩き、天然アピールをするヤタガラス。年齢を感じる。

 

「可愛くねー」

 

「仕方ないじゃん!」

 

 マーナだけ重力に逆らっているとでも言うのか? 遠心力を使った様な回転斬りが多過ぎる。

 

 受け止める度に火花が散っていく。

 

「降参したらどうかな? 間違えて刺し殺してしまいそうだ」

 

 キス魔に見えてきたわ。俺に四天王は殺せない、まだ一段階上もあると考えるとゾッとするな。

 

「なんでそんなに……強いんだ」

 

「堕天使、だからかな」

 

 マーナは一瞬で俺の横を過ぎ去る。

 

 ピキピキ……。

 

 黒剣にヒビが入り、耐えかねたように砕け散った。

 

 まだだ! まだ終わってない。

 

『バースト・カラミティ』

 

 何も無い空間から最後の剣を引き抜く。

 

「そんな形態は役に立たない」

 

 剣の前にスッと現れ、引き抜こうとしていた剣に一筋の閃光が走る。勝ち筋は潰えない、剣は何度でも甦るからだ。

 

『数字を数えた方が身のためだぞ』

 

 俺はマーナの黒い刀を掴む。

 

「……ッ!」

 

『ライトカース』

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