この世界がおかしいとスライムだけが知っている   作:ec

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30話

- 腐らせる希望の光 -

 

『ライトカース』

 

 マーナは反射的に動くがもう遅い。剣を掴み切った俺は淡い光と共に握り潰す。

 

 これが逆転に繋がるとは思えない。

 

『ヘルノイズ』

 

 隙を作らないように、黒い剣で渾身の突きを繰り出して時間を稼ぐ。

 

「くっ」

 

 俺がどうしてライトカースを使えるか、それは単純だ。

 

 俺が持ってるスキルは、詠唱しなくても発動できるくらいマスターしてる。単なるカッコつけ。

 

 ライトカース、ヤタガラスが使っていた魔法は詠唱するってことは俺も詠唱するだけで発動は可能って事になる。

 

 ガイルが言っていたように、魔法が使えないやつでも詠唱だけで発動できるものがチラホラある。

 

 まあ、中には詠唱と相応の能力が必要なスキル(魔法)はあるらしいけどな。

 

自己強化魔法陣(セカンド/チャージ)

 

 でも、無駄だったみたいだ。相手も俺みたいに無限に出せる。

 

「早く最後の形態を使ったらどうかな?」

 

 体でなんとか反応出来る速度で、振り下ろされる黒刀。

 

「嫌だ」

 

 何回もライトカースで掴んで破壊する。その度にマーナは召喚していく。

 

『なんでチャージって付いてると思う?』

 

「ッ!」

 

 使えば使うほど強くなるって言うのか? いや、そんなに変わってないぞ?

 

「最終出してくれないかな」

 

 ケルベロスもヤタガラスも、焦らしてる暇はないだろと見つめている。ノイズでは勝てない、頼りすぎなんだ。

 

「なんでなんだよ……!」

 

 斬撃を交わしながらカラミティを召喚する。その名の通りカラミティ・ドレインっていう名前だ。

 

 たまにはかっこよく詠唱したいよな。ヘルで切り払い、その瞬間に2つを合わせる。

 

『バスターンサ・ドレイジン』

 

 剣は俺を超える白と黒のオーラを纏った大剣に姿を変え、髪は白く染まった。

 

「待ちわびたよ」

 

 武器を振って半分に割れた奇妙な仮面を顔に、はめ込む。その瞬間黒いオーラが一瞬吹き荒れる。

 

『勝負を決めよう。俺が強いか、俺が強すぎるか』

 

「なかなか言うね」

 

 違う、俺じゃない! サタンが言ったんだ! 第一声はサタンが言うし、声も俺じゃない武将みたいな声。

 

「俺じゃねえよ」

 

 大剣を片手で振るい、距離を詰める。使おうと思えばワープも出来るからな、強いのは本当だが、第一声が嫌い。

 

「最後の変身しろよ」

 

 煽りながらステータス差で切り刻んでいく。形勢逆転だな。

 

「そんなに見たいのかな?」

 

「当然だろ」

 

 マーナを大きく蹴り飛ばし、吹き飛んだ先を見据える。殺れるならこの場で殺すのが勇者だからな。

 

「刺し潰す……!」

 

『マーナ!』

 

 ケルベロスが何か言っているが、気にせず大剣を放り投げた。マーナを貫いて空間の端に打ち当たっている。

 

「死んだか?」

 

「お兄ちゃん酷いよ! 死んだらどうするの!」

 

「知らねえし」

 

 大剣を手元に戻してワープ。マーナは血だらけだな、グロいわ。

 

「これは致命的な致命傷だ……」

 

 だろうな!

 

「マーナ! マーナ!」

 

 ケルベロスは泣きそうな顔で俺を横切ってマーナに近づいている。ヤタガラスは興味無さそうだな。

 

「トドメ刺すか」

 

「ダメ! 負けでいいから……」

 

『まだ負けてすらないよ』

 

 マジか! 生きてるのか!

 

「えぇ……」

 

「無理はダメ!」

 

「無理じゃないから」

 

 マーナはケルベロスをポンポンと撫でて立ち上がる。黒刀は不自然に粒子を放って消える。

 

『また僕を超えちゃうな』

 

 紋章が現れ、すぐさま粉々に変わった。

 

『【幻月解放】フェルシーナ』

 

 その欠片が3つの剣に姿を変えていく、色がデータの様に透けて見える。1本はナイフのような小さな刃物。

 

 もう1本は刀の様な持ちやすそうな長さだ。3本目は細長い大剣、クレイモアとでも言うか。

 

「んー、これで行こう」

 

 マーナは真ん中の刀を取り、握られた瞬間応えるように黒い色に変わって現物になる。弘を描く様に素振りをすると遅れて白い粒子が流れていた。

 

「マジか……」

 

 俺はこの白と黒のエファクトに見覚えがある、俺の技とかなり似ているからだ。はっきり言って同族嫌悪だろう。

 

「どう思ってる?」

 

「いや、特に」

 

 俺の様に欠けた真っ黒の仮面を嵌める、三日月の様な白い口元が笑っているように見えた。

 

『今日は月が見えないから君の血で彩らせてもらおう』

 

 目が赤く光っていて、月に反応した狼のようだ。

 

 

 ……なんだこいつ!?

 

「お、おう」

 

「今のは僕じゃない」

 

 その気持ちわかるわ! 超わかる。

 

「マーナ大丈夫……?」

 

 ケルベロスも心配するほどおかしなセリフらしい。

 

「続けよう」

 

 あ、ガン無視されてた。

 

「殺されても」

 

 殺そうとした恨みの様な言い方。

 

「文句言うなよ? 俺の台詞だ」

 

 俺はそれを跳ね除けてやる! 言い切ったことを合図に剣を振り上げて突っ込む。

 

「君は文句を言いそうだね」

 

 全然逃げない、まるで的のようなマーナ。それに剣を振り下ろさない理由がないな。

 

 ガギィン……。

 

 なのに剣はその先へ進めない。視界の先には、データのように透明なクレイモアがマーナを守っていた。

 

「そんな!」

 

『見えない物に弾かれる、そんな攻撃じゃ僕に勝てないよ』

 

 嘘だろ? これじゃどんなに攻撃してもダメだってことじゃないか!

 

 そもそもここはヤタガラス以外マイナス効果が増大する空間。俺は圧倒的にステータスを確保出来てるのに。

 

 振っても当たる前に止められてしまう。俺に勝ち目がないことを語っているようなものだった。

 

「降参したらいいのにね」

 

 ダメだな、俺のバスターンには銃口が付いてるが、使い方がわからないから使えねえし。

 

 異世界の時は、四天王と時間稼ぎ程度に戦ったくらいだしな。もう降参しかない。

 

『……俺の負けだ』

 

 仮面を手に取って砕こうとしたが、元に戻す。

 

「ふーん、不意打ちはダメだからね?」

 

 変身を解いてない事を疑問に思ったらしいが、マーナは仮面を砕いていた。キスの為にどれくらい戦ってたんだ俺。

 

 唐突にバカバカしくなってきた。女の子と出来るだけマシか。

 

「やっぱりマーナ強い!」

 

「バルデスが負けた……」

 

 それぞれ喜んだり悲しんだりしているが、ヤタガラスの反応はおかしいよな。お前どっちの仲間だ。

 

「さあ、早くしてくれないかな?」

 

 女の子にせがまれるとか幸せ者かよ。とりあえず、マーナの腰に手が届くくらい近づき合う。

 

「わ、わかったよ」

 

 ドキドキするが、サタンのおかげで邪魔者は居ない。唇がもう触れ合いそうなくらいの時。

 

『やっぱりダメ!』

 

 ヤタガラスに弾き飛ばされた。

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