この世界がおかしいとスライムだけが知っている   作:ec

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13話

- 13話 -

 

 それからカップルを見ながら晩飯とか服をタンスに入れたり、俺は風呂に入ったり。特に何も無く夜になった。

 

 どこで寝るかって? スラとイムはベッド。後はわかるな?

 

 ……そうだよ! 俺はソファーだよ!

 

 案外あっさり決まって悲しいなと思わなくもない。悲しい気持ちの時に更にめんどくさい電話が鳴る。

 

 そう、芽以である。嫌々だが、出ないともっとめんどいな。

 

 応答をタップし耳にあてがう。

 

「誰だ」

 

「酷いなー! 私だよ、私ー!」

 

「うるさ、夜なんだが?」

 

「うう……寒いよ〜」

 

 ビューという風が聞こえなくもない。夜はまだ少しだけ寒い方だ。

 

「お前何処に居んの?」

 

「龍樹の家の前」

 

 俺の考えは一瞬途絶えて繋がり始める。そして、ビューは幻聴だった。

 

「は?」

 

「やっぱり、迷惑だった……?」

 

「そりゃね? そうだよ!」

 

「じゃあ帰るね」

 

 いやぁ、可哀想だ。俺の胸が壊れる。

 

「出るから待って」

 

「本当に!?」

 

「うむ」

 

「なんか、嫌な予感するな〜」

 

「酷くね?」

 

 通話を切り、玄関に向かう。覗き穴に目をやると本当に居た、寒そうに震えてる。

 

 ガチャっと開けると飛び込んで来る芽以! オマケに茶髪だ!

 

「龍樹いい匂いだね!」

 

「それはいいとして、本当に染めたんだな」

 

 透き通るような金色だった髪は、清楚を思わせる茶色に。月の光を返して銀に見える。

 

「どうかな?」

 

 少し遊んでもいいかなって思う、これは魔力の流れがやれと言っている!

 

 

『俺好みの女だ』

 

 

 普段なら絶対しないであろう肩を組む、なるべく顔に近寄って。

 

「私の美貌に気づちゃったのかな?」

 

 コイツはおかしくなって、謙虚じゃ無くなってるな。そんなに破壊力あるのか?

 

「美貌とか関係無しにお前の事が――待て、お前おかしいな」

 

 頬を赤く染める芽以に、トドメの顎クイを発動した所で異変に気づく。

 

 どこがおかしいってアイツの茶髪は光を返して銀色なんかにならない。よく考えろ、元は金色なんだぜ。

 

 それに『私の美貌に気づいちゃったのかな?』なんて言わない『その声録音したし、消して欲しかったらラブホ行こっか』っていう女だ!

 

「お前、本当に誰だ?」

 

「何言ってるの? 三月芽以だよ?」

 

 俺の疑心暗鬼は最高に高まってるし、絶対違う人だ。

 

「私にキスしてくれないの?」

 

 顎クイしたまま、無音の空気が流れる。

 

「芽以の一人称は''あたし''だ。わたしではない」

 

 決定的だろ。気持ち悪いな! そっくりとか気持ち悪いよ!

 

 無意識に突き飛ばし、距離を置く。

 

『あー惜しかったのに。私は三月芽以じゃない』

 

 とてつもない威圧感と殺気を感じる。

 

「誰だ? 答えろ」

 

「バレたら殺す。イモータル・ブレイカー」

 

 女は何も無い空間に手を入れ、槍のような斧を取り出す。

 

「お、おいおい。どうするつもりだよ」

 

『バルデストロン。魔王様の仇!』

 

 魔王を殺したことはないぞ!? スライムに変えたやん! ファンタジーな魔法でファンタジーに変えただけやん!

 

 地面を蹴って俺に急接近すると、槍を突き出し急所を狙ってくる。記憶が戻って来たんだ、軽く避けれる。

 

 それに、コイツを見る度記憶が蘇ってくるんだ。俺は多分、コイツを倒した事があるけど分からない。

 

「こしゃくな……この世界では使えないはず!」

 

「スキルの事か?」

 

「スキルが使えない勇者など……ただのザクなのだよ!!」

 

「は?」

 

 いやいや、俺はスキル使えるはずだ。詠唱がちょっぴり下手なだけで。証拠は芽以に寝盗られそうになった時。

 

 あれは絶対阻止されると確信していたんだ。理由はスキルを持っているから。

 

 バースト・カラミティが詠唱スキルだとしたら、防衛用スキルとして、ガイルが用意したスキルがある。ほぼ嫌がらせだけどね!

 

『もうバルデスとか嫌いだわ! ふりんふりんびーむ!』

 

 とかやられて、フレンチ・ブレイクとか言う思春期殺しのスキルを付けられた。効果は性的な美味しい行為が絶対阻止されるという最悪のスキル。

 

 そんなスキルが引き継がれてるのなら、詠唱スキル使えるよな!

 

「俺を殺そうとするのはいいけど、頼む。マンションを壊すのはやめてくれ」

 

「たぶん」

 

 攻撃を浴びせてきながら、地味に許諾してくれた。

 

「やはり攻撃出来ないなら殺せる……」

 

「出来るけどしないんだぜ?」

 

「何故?」

 

 スキルが不発したらダサいじゃん! しかも、どんなスキルなのかもわからない。カラミティって疫病神だからな。

 

「そりゃ……焦らしだろうが!」

 

 思いっきり見栄を張っておいた。

 

「本気で戦いたい」

 

 ちょっと予想外な回答だな。

 

「いやだわ! これから寝るの!」

 

 しかし、容赦なく俺に接近すると無理矢理指を組む。

 

「な、なに……」

 

『クレイジーワールド』

 

 俺はコイツを思い出した。

 

 視界は黒に染まり、明るくなると灰色の場所が変わってない擬似空間に立っていた。

 

「ここなら本気で戦わないと死ぬよ?」

 

 

 槍斧という武器種を肩に掛け、俺の全力を待っている女。本当は金色の髪じゃなくて銀色なんだが、カツラだろうな。

 

 ショートパンツにハイソックス、革ジャンがイケてるコイツの名前はヤタガラスじゃなかったかな。

 

 正々堂々が好きで、全力で戦う為の空間すら用意する魔王護衛創破四天王(マオウゴエイソウハシテンノウ)の1人。

 

 今思い出せるのはこれくらいだ。

 

「なんでそんなに焦ってる? ヤタガラス」

 

「何故記憶を……あのジジイ!」

 

「全力で戦う為だ、情報も半分ずつ」

 

 苦虫を噛み潰す様な顔をすると、頼んでもないのにぺちゃくちゃ喋り出した。

 

 

 他にも四天王は存在してるらしい、よく分からないけど。本当の事言うと聞き流してました。

 

「よくわかった」

 

「お前も言え、卑怯だぞ」

 

「情報か? スライムを2体買ってるだけだ」

 

「お前……!」

 

 なんかめっちゃ睨まれたんですけど。スライムって雑魚モンスター的な魔物だろ。

 

「飼うくらい、良いじゃん! つか、三月芽以生きてるよな? 生きてなかったら四天王半殺しじゃ済まないんだけど」

 

「飼う……だと……? あぁ生きてる。今の所手を出す理由が無い」

 

 何でこいつ、インコを買いだした知り合いを見る目で見てんだ。

 

 とにかくこの空間から出たい。

 

「いいぜ、本気出す」

 

「待ちくたびれて、イモータルが錆びてる」

 

 どうなっても知らないし、どうなるかも分からない。でも、場が変わるのはわかる。

 

 何も無い真っ赤な空間が解放の時を子供の様に待っている。

 

 

『バースト・カラミティ』

 

 

『吠える闘いをしようぜ』

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