この世界がおかしいとスライムだけが知っている   作:ec

20 / 24
31話

- 執拗な拒否権利 -

 

 ヤタガラスは息を切らして、俺を庇うように抱きついている……のか? よく分からねえな。

 

「邪魔をしないでくれ」

 

「私のセリフ!」

 

 マーナは首を傾げてる。俺も分からないからどうしょうもない。

 

「バルデス……?」

 

「させないもんっ!」

 

 意地っ張りだな。もう解放して! 俺を空に逃がしてっ!

 

「ふむ、無理やりするしかないようだね」

 

 ヤタガラスを指差すように、マーナは手を翳す。

 

「ぁあ……頭が……」

 

 激しい頭痛を訴え、俺の服の端を掴みながら膝を着いた。

 

「ヤタガラス!? ちょ、やめてあげろよ!」

 

「僕としてくれないのか?」

 

 これはもうサタンで洗脳紛いな事しないとな、色々危ない。

 

「してやるよ」

 

 ヤタガラスをそっと寝かせて、マーナと抱き合う。鎧がゴツゴツして痛えな。

 

「早くしてくれ、時間が無い」

 

 首元に手を添え、柔らかい唇を奪う。女の子だとようやく認識した気がする。

 

「してやったぞ」

 

 予想通りマーナは俺の手を握った。

 

「よく分からなかったからもう1回」

 

「嘘つくな」

 

 クーデレという部類なのか!? 顔には出さないけど、手をふらーんふらーんして求めてる!

 

「マーナ……?」

 

 ケルベロスが心配しちゃってる。

 

「まあ、別にして欲しいわけじゃないけどね」

 

 また無視したよ!

 

「マーナが変わっちゃった……」

 

「バルデス〜ギュッ」

 

 口で言いながら抱きついてくる奴がいていいのか。マーナって元ぶりっ子?

 

「つか、手から離れろよ!」

 

「そうだよ! 私の手!」

 

「ヤタガラスのでもねえから、俺のだから!」

 

 無駄に元気が無いケルベロスが気になるな。やっぱり無視された事とかあるのか?

 

「おーい、腕食う?」

 

「……うん」

 

「え」

 

 やっぱり服越しでも、女の子に二の腕噛まれると痛いよな。耳とか超ぴょこぴょこしてるからいいのか。

 

「はむ……」

 

 本気にされると怖い。女の子を喜ばせる為なら自己犠牲も大切なのかもな、ハーレムと見せかけてゴーレムなんだ。

 

「マトモなのはコイツだけか……」

 

「にゅ?」

 

 羽耳をバサバサさせて何かを待ってるヤタガラス。マトモに近いのはきっとこの鳥だ。

 

「つか、どうやってこの空間抜けるつもり?」

 

「あ」

 

 マーナは考えてないらしい。誰かと普通の状態でキスすれば空間を破壊できるけど。

 

「バルデス!」

 

 ヤタガラスがキラキラと目を輝かせ、両手で招いている。コイツもまともじゃねー。

 

「いや、ケルベロスとするわ」

 

『ちゅーん……』

 

「新しい凹み方するのやめてくれ」

 

 無駄に可愛いって言うか、後ろに文字浮かびそうだからな。

 

「ま、誰でもいいんだけど」

 

 仮面を砕いて、準備を整える。ケルベロスの頬をモニュモニュして気持ちを和らげて。

 

「四天王はモチモチだよなー」

 

「僕を見て、そんな事言わないでくれ」

 

「わぁん……」

 

 ケルベロスが嬉しそうに笑ったわ、ここは可愛い。後は理不尽を超える速度で唇を奪う所だな。

 

 流れる速度でキスをすると、空間が砕け散り。

 

『りゅうきだめだよ!』

 

 科学では説明出来ない速度でスラが飛び蹴りを放つ。

 

「お兄ちゃん危ないよ」

 

「分かってる」

 

 間一髪交わすと、着地したスラが華麗に地面を蹴って距離を詰める。

 

「約束はやぶっちゃだめ!」

 

 放たれる極限の右ストレート。ギリギリで避ける!

 

「危ないだろうが!」

 

「体が動くんだもん!」

 

 しかし、残像の様に消えたスラは俺の背後に居た。

 

「ッ!?」

 

 腰に腕を回され、クラッチ。固定される。

 

「ま、まさか……ぁぁぁあ!!」

 

 体がふわっと浮き、強烈な刺激が上半身を駆け巡る。

 

「う、うう……いってえ」

 

 スライム・スープレックスっぽい物を掛けられたらしい。放り投げ式なだけ良かったか。

 

「お姉ちゃん、リュウキさんのこと待ってましたからねー」

 

「ご飯我慢するのは辛かったよ〜」

 

 割と時間たってました風なんだな、時計動いてないけど。

 

「ケルベロスもマーナも、来るか?」

 

 スラに連れてかれながら俺は聞いてみる。

 

「そうだね」

 

「お兄ちゃんと食べる!」

 

 そうか、平和的で良かった。

 

「……私は!?」

 

「聞かなくてもわかる」

 

「巣立ちするもん……!」

 

 唐突に鳥ネタ多くない?

 

「6時に帰って来いよ」

 

「ご飯作るからちゃんと帰ってくるよ、えへへ」

 

 専業主婦ゲット!

 

 

 

 それから色々整えて、パーティ的な感じになった。6人とか前代未聞だぞ。

 

「年齢でも捌いていきますかー! 嘘はダメだよー、サバだけに」

 

 スラはそんな事を言いながら唐揚げを摘む。

 

「上手くねえ」

 

 合コンかよ。

 

「そう言えば言ったことないね、僕は120歳だよ」

 

 四天王すら、お互いに言わないのか。意外……年齢の桁おかしくない? マーナが120はちょっと困る。

 

「うちは……98。お兄ちゃんよりは上のはず!」

 

 余裕で上なんだけど? 俺の頭じゃババアだぞ。

 

「5068歳かなー」

 

「「「え!?」」」

 

 俺含め、ほぼ全員がスラを見ながら呟いた!

 

「う、嘘だよー! 23歳だった、ごめんなさーい」

 

 だよな、焦ったわ。

 

「イムは10歳〜」

 

「俺は……20だな」

 

 正直途中から年齢なんて数えてないからわからんな。

 

「ヤタガラスは?」

 

 俺はチラッと見つめる。ちょっと恥ずかしそうに顔を手で覆ってる。

 

「やだ、言いたくないよ……」

 

「だめ〜」

 

「言ったら俺の隣来ていいぞ」

 

「言います」

 

 即答かよ。

 

『年齢は……年齢はぁ……うう』

 

「吐き出しちゃいなよ、楽だと思うよ〜」

 

 おっさん刑事みたいだなおい。

 

『234です……』

 

「僕より上!?」

 

「お兄ちゃんの10倍!」

 

「おばもぐぐっ」

 

 俺はスラの口に唐揚げを突っ込む、ヤタガラスが泣いちゃうぞ。

 

「言ったから座るもん」

 

「辛いな、座っていいよ」

 

 ちょこんっと俺の太ももに座った。隣だろ!?

 

「唐揚げ食べて〜。美味しそうに食べてないから……」

 

 角度を横に変えて、唐揚げを箸で掴んだ。

 

「ちょ、そこまでサービスするとか言ってな」

 

「むう……」

 

 うわー俺の扱い慣れてきてるじゃん。上目遣いされたらそりゃね。

 

「こんな可愛い女の子にあ〜んして貰えるとか最高でしたね」

 

 としか言いようがないだろ!

 

「流石、歳上なだけあるね。僕とは格が違う」

 

「お兄ちゃんがオバサンに屈服してる……」

 

 お前ら睨まれてるぞ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。