- 執拗な拒否権利 -
ヤタガラスは息を切らして、俺を庇うように抱きついている……のか? よく分からねえな。
「邪魔をしないでくれ」
「私のセリフ!」
マーナは首を傾げてる。俺も分からないからどうしょうもない。
「バルデス……?」
「させないもんっ!」
意地っ張りだな。もう解放して! 俺を空に逃がしてっ!
「ふむ、無理やりするしかないようだね」
ヤタガラスを指差すように、マーナは手を翳す。
「ぁあ……頭が……」
激しい頭痛を訴え、俺の服の端を掴みながら膝を着いた。
「ヤタガラス!? ちょ、やめてあげろよ!」
「僕としてくれないのか?」
これはもうサタンで洗脳紛いな事しないとな、色々危ない。
「してやるよ」
ヤタガラスをそっと寝かせて、マーナと抱き合う。鎧がゴツゴツして痛えな。
「早くしてくれ、時間が無い」
首元に手を添え、柔らかい唇を奪う。女の子だとようやく認識した気がする。
「してやったぞ」
予想通りマーナは俺の手を握った。
「よく分からなかったからもう1回」
「嘘つくな」
クーデレという部類なのか!? 顔には出さないけど、手をふらーんふらーんして求めてる!
「マーナ……?」
ケルベロスが心配しちゃってる。
「まあ、別にして欲しいわけじゃないけどね」
また無視したよ!
「マーナが変わっちゃった……」
「バルデス〜ギュッ」
口で言いながら抱きついてくる奴がいていいのか。マーナって元ぶりっ子?
「つか、手から離れろよ!」
「そうだよ! 私の手!」
「ヤタガラスのでもねえから、俺のだから!」
無駄に元気が無いケルベロスが気になるな。やっぱり無視された事とかあるのか?
「おーい、腕食う?」
「……うん」
「え」
やっぱり服越しでも、女の子に二の腕噛まれると痛いよな。耳とか超ぴょこぴょこしてるからいいのか。
「はむ……」
本気にされると怖い。女の子を喜ばせる為なら自己犠牲も大切なのかもな、ハーレムと見せかけてゴーレムなんだ。
「マトモなのはコイツだけか……」
「にゅ?」
羽耳をバサバサさせて何かを待ってるヤタガラス。マトモに近いのはきっとこの鳥だ。
「つか、どうやってこの空間抜けるつもり?」
「あ」
マーナは考えてないらしい。誰かと普通の状態でキスすれば空間を破壊できるけど。
「バルデス!」
ヤタガラスがキラキラと目を輝かせ、両手で招いている。コイツもまともじゃねー。
「いや、ケルベロスとするわ」
『ちゅーん……』
「新しい凹み方するのやめてくれ」
無駄に可愛いって言うか、後ろに文字浮かびそうだからな。
「ま、誰でもいいんだけど」
仮面を砕いて、準備を整える。ケルベロスの頬をモニュモニュして気持ちを和らげて。
「四天王はモチモチだよなー」
「僕を見て、そんな事言わないでくれ」
「わぁん……」
ケルベロスが嬉しそうに笑ったわ、ここは可愛い。後は理不尽を超える速度で唇を奪う所だな。
流れる速度でキスをすると、空間が砕け散り。
『りゅうきだめだよ!』
科学では説明出来ない速度でスラが飛び蹴りを放つ。
「お兄ちゃん危ないよ」
「分かってる」
間一髪交わすと、着地したスラが華麗に地面を蹴って距離を詰める。
「約束はやぶっちゃだめ!」
放たれる極限の右ストレート。ギリギリで避ける!
「危ないだろうが!」
「体が動くんだもん!」
しかし、残像の様に消えたスラは俺の背後に居た。
「ッ!?」
腰に腕を回され、クラッチ。固定される。
「ま、まさか……ぁぁぁあ!!」
体がふわっと浮き、強烈な刺激が上半身を駆け巡る。
「う、うう……いってえ」
スライム・スープレックスっぽい物を掛けられたらしい。放り投げ式なだけ良かったか。
「お姉ちゃん、リュウキさんのこと待ってましたからねー」
「ご飯我慢するのは辛かったよ〜」
割と時間たってました風なんだな、時計動いてないけど。
「ケルベロスもマーナも、来るか?」
スラに連れてかれながら俺は聞いてみる。
「そうだね」
「お兄ちゃんと食べる!」
そうか、平和的で良かった。
「……私は!?」
「聞かなくてもわかる」
「巣立ちするもん……!」
唐突に鳥ネタ多くない?
「6時に帰って来いよ」
「ご飯作るからちゃんと帰ってくるよ、えへへ」
専業主婦ゲット!
それから色々整えて、パーティ的な感じになった。6人とか前代未聞だぞ。
「年齢でも捌いていきますかー! 嘘はダメだよー、サバだけに」
スラはそんな事を言いながら唐揚げを摘む。
「上手くねえ」
合コンかよ。
「そう言えば言ったことないね、僕は120歳だよ」
四天王すら、お互いに言わないのか。意外……年齢の桁おかしくない? マーナが120はちょっと困る。
「うちは……98。お兄ちゃんよりは上のはず!」
余裕で上なんだけど? 俺の頭じゃババアだぞ。
「5068歳かなー」
「「「え!?」」」
俺含め、ほぼ全員がスラを見ながら呟いた!
「う、嘘だよー! 23歳だった、ごめんなさーい」
だよな、焦ったわ。
「イムは10歳〜」
「俺は……20だな」
正直途中から年齢なんて数えてないからわからんな。
「ヤタガラスは?」
俺はチラッと見つめる。ちょっと恥ずかしそうに顔を手で覆ってる。
「やだ、言いたくないよ……」
「だめ〜」
「言ったら俺の隣来ていいぞ」
「言います」
即答かよ。
『年齢は……年齢はぁ……うう』
「吐き出しちゃいなよ、楽だと思うよ〜」
おっさん刑事みたいだなおい。
『234です……』
「僕より上!?」
「お兄ちゃんの10倍!」
「おばもぐぐっ」
俺はスラの口に唐揚げを突っ込む、ヤタガラスが泣いちゃうぞ。
「言ったから座るもん」
「辛いな、座っていいよ」
ちょこんっと俺の太ももに座った。隣だろ!?
「唐揚げ食べて〜。美味しそうに食べてないから……」
角度を横に変えて、唐揚げを箸で掴んだ。
「ちょ、そこまでサービスするとか言ってな」
「むう……」
うわー俺の扱い慣れてきてるじゃん。上目遣いされたらそりゃね。
「こんな可愛い女の子にあ〜んして貰えるとか最高でしたね」
としか言いようがないだろ!
「流石、歳上なだけあるね。僕とは格が違う」
「お兄ちゃんがオバサンに屈服してる……」
お前ら睨まれてるぞ。