- 不安の具現化 -
俺は、目を覚ますと同時に右手が冷たい何かに握られていた。見慣れた天井でここは家なのか。
ふと右をチラ見したらスラだ、左は芽以。素晴らしいハーレムっ!
「りゅうき起きた?」
「起きた、俺はどうなった」
芽以を助けようとして、白い服が現れてだろ? 全ては夢だったのか。
「なんやかんやあって倒したよー」
「どうやら夢らしい」
「ご褒美にキスして〜」
「芽以いるからダメだな」
スラはショボーンっとしていた。
「なんでしてくれないの?」
「分からない、したら俺はモロにパンチを食らうだろ?」
痛いのは嫌だ!
「……そうだね」
『さり気なく顔を近づけるの禁止な』
回転寿司を後にした私達は、闇の扉を作る。
「面倒だからって闇の魔法使うなんてね」
「お腹いっぱいだから歩きたくないもん!」
「だからデブるんだよ?」
「急にマーナの言葉酷くない!?」
私に対して針刺し過ぎだよ!
「帰ってどうするんだい?」
「そりゃあ、バルデス連れ出してプリクラを……」
闇の空間をズンズン進んでいくと、後ろから3人も付いてきた。暫く歩くとバルデスの家の玄関になる。
「そう言えばケルベロ……ッ!」
唐突に頭に激しい痛みが走る。咄嗟に膝をつき、手で塞ぐように後頭部を抑えた。
「大丈夫!?」
「ヤタガラス……?」
割れそうなくらいで、何でこんなに痛いのか疑問に思う。
「だ、大丈夫だよ」
その痛みもスッと消えてくれた。ホコリを払う様にパッパと叩いて立ち上がる。
「本当に?」
「多分」
気を取り直してバルデスの部屋に戻ると、3人がラーメンを食べていた。
『なんでカップラーメン?』
『スラが食いたいって言ってるから仕方ないだろうが!』
『なんであたしもなのか聞いてるんだけど!?』
『冷蔵庫の中身だけ異世界に行きました』
仲良さそうで羨ましいと思ってしまう。
「大丈夫?」
「大丈夫だって」
ズカズカと入り込む。
「お、ヤタガラスも食うか?」
「芽以さんもスラも……お出かけしない?」
「そうだな」
意外にもバルデスは素直に応じてくれた。
俺は今、服を着替えている。芽以もスラも追い出してな!
流石にトランクスで連れてかれそうになったら無理だ、服は着ないと。ヤタガラスから誘われるなんてな、まあ予定だったから良いんだが。
服を着替えて外に出ると、あいつらが待ってくれていた。
「おそーい」
人数多すぎるわ!
「今回は邪魔者居ないよな?」
「お兄ちゃん、それフラグだよ」
おっとそうだったな。
「ありがとな、ケルベロス」
結局フラグなんてものはなく、1番近くのゲーセンに着いた。
「ガヤガヤして好きじゃないね」
「うちも……」
「耳いいもんね、私とは大違い」
「このスライム欲しいーなー」
ちょ、バラバラに動くなって!
「動く前にこれで撮らない?」
しかし、起点の聞く普通な方のヤタガラスはプリクラを指さす。みんなは頷いていた。
「こんな大人数で撮るとか初めてだわ」
中に入るとぎゅうぎゅうだし、後ろは緑の壁。お金を投入して何枚か撮る。
「どんなポーズにするんだ?」
「うーん、それぞれ武器出すとか?」
「らしいっちゃらしい」
でも、ケルベロスと芽以は出せるのか? スラもイムも。
『ライズエーテル』
ケルベロスは雷で出来たグローブを嵌める。それは武器なのか。
『
あれは夢じゃないの!? 芽以もか!
「イム〜、スクルドって唱えたらいいよ」
「分かりました!」
え? 何すんの?
『スクルド』
『ウルズ』
イムは手から赤くて細いレイピアを。スラは青い宝玉を植え込まれた黒い液体の様な個体を取り出す。
「凄くね!?」
それぞれ構えて撮った後、いろんなポーズで撮ったりした。ピースしたりフリーにしたり。
「編集か」
「りゅうきは来たらダメ〜!」
「なんだと!?」
俺は、外に放り出されて女子チームが加工したりしてる。どうなるんだろうな。
……あ、出てきた。
それぞれ嬉しそうなのに、ヤタガラスだけ写真を眺めて羽が萎えぽよを表していた。
「ヤタガラスの見せろよー」
「絶対ダメ」
酷いな! 構ってあげようとしたのに。
「はい、リュウキさんのしておきましたよ」
「イム流石だ!」
ポーズは武器を構えて撮ったもので、ヤタガラスがここぞと俺に飛びかかったところで時間が止まってる。
書き込まれている言葉は鈍感な脳筋だった。
「ちょっと酷くないか!」
「本当の事なので、僕は悪くないです」
「いやぁ、脳筋は酷い」
それから遊んだけど、コインゲームはなかなかよかったな。ヤタガラスとマーナが途中、画面粉砕して怒られてたけど。
「ヤタガラス、機嫌悪いの?」
ケルベロスが声をかけてるぞ。俺はこっそり聞くだけにしよう。
「違うけど」
「プリクラ撮ってたのに浮かない顔して……笑ってみてよ」
「そんな気分になれない、気分が悪いっていうのもあるけど」
一体何が!?
「頭痛は治ったんだよね?」
「治ったけど」
「じゃあ何が問題?」
「分からなーい。パーって焼肉食べたいよー」
俺はこっそり距離を取った。
それから暫く遊んで気がついたら夕方。予想通り焼肉というオチに。
「だろうと思った」
「食べたいから仕方ないんだもん」
「また太る」
「縛り上げるぞお前」
「おー怖い年長だね」
ヤタガラスがマーナに襲いかかってたな。
「辞めなよ2人とも」
「そうだよー、ひどくなったら仲裁するけど」
大人数ってがやがやするんだなー、初めてだ。
「とにかく着いたぞ、店で喧嘩はやめろよな」
「分かった」
「そうだね」
前にユリウスと来た店。意外に美味しかったからな、仕方ない。
至福は今日までなんて、この時は知る由もなかった。