- スライム攻撃 -
既視感のある声、近づく足音。俺にら引っ付いてるヤタガラス。
頭に衝撃が走ると、視界が一気にぐらつく。何かに殴られた様な感じだ。
「バルデス!」
「あぁ……いってぇ」
頭を抑えながらふらつき、電柱に当たると力が抜けるように座り込んでしまった。
「またりゅうきを……」
「大丈夫だから」
それでも気が利くスラは、心配そうに回復魔法を2重がけしてくれた。1回で全快なんだけど!
「本当に大丈夫?」
ヤタガラスも多少は心配するらしい。
「「心配だから一緒に行こ!」」
無駄にハモったのは、何故だろう。
「被っちゃった」
「恥ずかしいな」
まあ、レズのヤタガラスが惚れるほどの凶悪なサタンの捻じ曲げと理不尽スキルの効果はやばいんだろうな。
怪我は治ったし、ゆっくり立ち上がる。
「悪い、ヤタガラスと一緒に帰らせてもらうぞ」
「そんなー」
「用事があるんだよ!」
「ヤタガラスちゃんの事好きなの?」
お前ら女子か! スラは軽く嫉妬して、コイツは嬉しそうに羽耳がバサバサ揺れてる。
「ちげーし」
そして俺は小学生か! と自分でツッコミを入れたくなった。
「キ〜スッ! キース!」
「どこの小学生だよ! 絶対しないから! ヤタガラスも困ってるだろ」
「そんなわけないよ……私からする」
頬に軽くチュッと可愛くキスしてくれた。嬉しいけど、当然あのスキルが働く。
『りゅうきだめだよー』
「はい、俺死んだ」
華麗に放たれる回し蹴りをしゃがんで回避、ワンピからチラッと見えた水玉のパンツにグッジョブした。
だが、音速で放たれた右ストレートは俺の横腹にクリティカルヒット。
「ぐほぁ!」
「あ、バルデス……」
膝を地面につけて俺は腹を撫でる。今度はヤタガラスも背中を摩ってくれた!
「ぁ〜、ふう。助かった」
スラの回復魔法は効果抜群だ、すぐさま治る。スライム辞めてるって思う。
「ありがとな。スラ、これあげるから家で待ってくれない?」
立ち上がると、ポケットからグミがパッツンパッツンになるくらい入った袋を渡す。元々はスラとイム用だしな。
「なにこれ〜」
俺はドヤ顔で「同胞」と答えておいた。
「イムと食べながらまつ〜」
「分かってくれて嬉しい」
「じゃあね」
スラはスキップしながら帰って行った。さあ、ヤタガラスと2人きりだ。
「行くぞ」
「手、繋いでもいい?」
「……ほら」
何故か恋人繋ぎなのは聞かない事にした。行く場所は特に無いな、芽以の電話待ち。
「どうして四天王であるお前がこの世界に?」
俺の目的は、話を聞き出す事。ケルベロスに会わせる事。
「魔王護衛創破は、名前の通り魔王を守る。だから来た」
「おい、この世界に魔王が居るというのか?」
「居るはず。まだ発見出来てないけどね」
その魔王をひっそり倒さないといけない。暗躍はするつもりだ。
「どんなのか分かるか?」
「バルデスにも言えないよ」
「そうか……」
そうだよな、いくらサタンが効いてもそうなるよな。敵に情報なんて与えれない。
「ケルベロスは知ってる?」
「知らない」
「嘘だろ? ケルベロスだぜ? 四天王だろ?」
「あいつは四天王なんかじゃ、ない」
ちょっと涙目だな、もう聞かないでおく。
「次は私が質問してもいい?」
「いいぞ」
どんな質問でも答えるぞ!
「私のどんな所が好き?」
早速地雷来ました!
ちょっと恥ずかしそうに視線を逸らし、答えに期待してるようにチラチラ見てくる。心臓の鼓動が早いと言わんばかりの羽耳がユサユサしてた。
「この耳かな……」
優しく羽耳を撫でると、嬉しそうにピコピコする。
「耳を褒められた事ないから嬉しい」
「そうなのか?」
「いつもこの耳が原因で苛められてた。だからいつも、無くなればいいのにってミミカしてた」
ミミカって何!? ミミカって!
「可愛いのにな」
ちなみに、ヤタガラスの中は「路地裏で襲われたい……」らしいです。俺的にちょっと引き気味です。
「猫耳の人には勝てないよ……」
「大丈夫、俺はまだ猫耳を見かけてない」
そんな感じで気がついたらバーガー兵士に着いた。バーガー兵士って言うのは名前の通りハンバーガーに命をかけた店。
交差点に店を構えている辺り、やり手だな! 本当はここから芽以の家が近いってだけなんだけどね。
「寄るか?」
「いいのかな、羽耳お断りかもしれないよ」
なにこの白人お断り的な精神。何も書かれてないだろ!
「えー? こんな可愛いのに」
羽耳に息を吹きかける。
『ひゃぁ!』
羽耳が弱点らしく、顔がリンゴよりも赤くなってる。
「い、イジメ、ナイデ」
とりあえず入店すると、人はそれほど居なかった。注文待ちしなくていいから楽だな。
「いらっしゃーさーせー」
適当な店員だなー、その発音流行るのか。
「これとこれ、セットで」
適当にフィフバーガーを指差しておく。
「サイズはどうしますか〜」
「……Lがいいかな」
意外にも大食いな鳥だな。みんなこんな感じなの?
「全部Lで、食べていきます」
「ありがとごさーさーす。お会計〜」
支払ってる間に完成していく高速スタイルはどっかのM文字の店より早い。
「通常の3倍……!」
「店員紅くないだろ」
「まだバイトザクっす。赤い推薦の代理店長になりたいっすね」
「挨拶の発音がなってない時点で推薦もねえよ!」
ハンバーガーのセットが乗ったトレイを受け取り、ソファー席に座った。端側が俺のマイノリティなんだが、ヤタガラスにツンツンされた次第。
「で、どうして向かい合うんじゃなくて俺の隣?」
「嫌かな? ごめん、羽邪魔だよね」
「全然嫌じゃないぜ、こうやってポテト食べさせれるし」
立ち上がったヤタガラスを引き止め、細長いポテトを口に入れてあげる。
「おいしい」
「フィフバーガーも美味いよ」
意外にも食べ方を知っているヤタガラスは、包装を剥がして食べ始める。鳥のように少なめだが。
女子力高くね? スラとか見てたから女神に見える。
俺は大きく食らいつく。シャキシャキレタスとベーコン、パンズと合う肉もいいな。口の中は幸せです。
だが、二口目に行こうとした時、見覚えのある2人が現れた。無意識に咳き込み、ジュースで流す。
「バルデス、大丈夫? ハンカチあるよ」
「あぁ、ありがとな。女子力高くて助かる」
軽く拭い、ヤタガラスにハンカチを返した。花柄とかおちゃめだよな。
「芽以お姉さんありがとうございます!」
「龍樹なんかより、いいよ」
芽以とケルベロスが現れたのだった。
『この状況はまずい』