この世界がおかしいとスライムだけが知っている   作:ec

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19話

- 愛の先進 -

 

 どうしてまずいかと言うと、スマホを確認した時、芽以からの着信が地味にあったのだ。

 

 着信無視で女の子とデート? 許されるわけがない。妹を見捨てたクズだろうな。

 

 つまり、バレないように退散するかやり過ごすか。俺達は、まだ食い終えてないので退散する事は出来ない。

 

「バルデス? 険しい顔するんだ」

 

「まぁな。ところで、ゆっくり食べて腕疲れないのか?」

 

「疲れるけど、どうしようもないもん」

 

 ゆっくりはむはむじゃ進まないぞ!? いや、これは使えるな。

 

「俺が食べさせてあげるよ」

 

 ようやく半分くらいのハンバーガーをヤタガラスから奪い取る。距離も密着して、背中に手を手を回すスタイル。

 

「へ?」

 

「いいだろ?」

 

「ひゃ……」

 

 どうやら普通の耳も弱いらしいです。耳弱すぎだろ。

 

「ふーってするぞ」

 

 密着してるので、常に囁いてる感じだろうな。

 

「いじわる」

 

「何もしてないんだけど」

 

「それがいじわるだもん」

 

「……」

 

 とりあえず、包装を広げて食べやすくした。そんで、俺がハンバーガーを持ってヤタガラスがモグモグしてる。

 

 芽以とケルベロスは、何故か俺達が常に見えるくらい直角的な位置。顔を隠すしかないだろう。

 

「なんか、暑いよ」

 

「気のせいだろ」

 

「離れて欲しい」

 

「それは無理」

 

 離れたらバレてしまう! なんとかなだめて現状維持。

 

「なんでそんなに近いのかな」

 

「好きだから、とか?」

 

 頬が触れ合いそうなくらい近づけたからな。絶対バレたくない!

 

「やっぱり、卑怯だよ」

 

「卑怯だけどな。否定はしない」

 

「いざっていう時は優しいからセーフだよ」

 

「あれ……?」

 

 なんで理不尽が消えてないんだろう、今更だけど。いざっていう時の記憶まで残ってるのに?

 

「もう食べ終えちゃった。ポテト食べなきゃ」

 

「ようやくの方が正解」

 

 亡くなったハンバーガーの抜け殻をクシャッと丸めると、自分の分を食うことにした。ポテトと交互に食って顔を隠す時間を増やす。

 

「あ、ヤタガラスじゃない? なんでここに」

 

 よく見てなかったが、ケルベロスがヤタガラスの前に来ていた。最悪な展開だ、合わせるつもりがここで起きるとはな。

 

「ケル、ベロ、ス……?」

 

「何とぼけてんの? ケルベロスよ?」

 

 おいおい、ケルベロスは名乗ってない。知らないって言うのは嘘なのか?

 

「私は一体……」

 

 ヤタガラスは唐突に肘をつき、手のひらで顔を隠す。

 

「バルデストロンを殺すんじゃなかったの〜?」

 

「そうだった」

 

 ヤバいぞ! 記憶が戻ったらまた戦うパターンに!

 

 ケルベロスはだるそうに腰に手を当て、ヤタガラスを見つめる。

 

「でも、なんかね」

 

「なによ?」

 

「間違ってる気がするんだ、まだ私達に危害を加えてないんじゃないかって」

 

 おい? どうなってるんだコイツの心理状態は!

 

「まあそうだけど……あんなに殺すって張り切ってたのに、コロコロ変わるのね」

 

「そんなあなたはどうしてここに?」

 

「秘密の任務だから言えなーい」

 

 そりゃ、バルデスの妹に成りきってます! なんて言えるわけないよな。

 

「そうなんだね」

 

「それでさー……あれ、ヤタガラスってレズじゃなかった? 彼氏作ったの?」

 

 やばい! これはバレるぞ!

 

 なるべくハンバーガーの包装を近づけて誤魔化す。

 

「彼氏なんかじゃないよ」

 

「じゃあ何? レズだってバレないようにするためのゲイでも連れてきたわけ?」

 

 噛み付くねー、お前犬かよ……犬だった。

 

「そんなん関係ないじゃん!」

 

 流石に頭にきたのか、ヤタガラスは机を叩く。今更ながらケルベロスも冷や汗を流していた。

 

『おいおい、お兄ちゃんにゲイって言う妹はダメだろ』

 

「うっお兄ちゃん……」

 

 芽以はトイレらしいからな。帰ってきてない時点で明白、この時を狙う!

 

「へ? どういう事?」

 

 ハンバーガーを食べきり、ポテトをポリポリ齧る。

 

「このポテト食って頭冷やせ。後はわかるな?」

 

 1本のポテトをケルベロスの口に突き刺す。

 

「うん……」

 

「思考が追いつかない」

 

 何故か分からないが、ケルベロスはヤタガラスにぺこりと頭を下げて謝った。

 

「ごめん、言い過ぎちゃった」

 

「ならいいよ!」

 

 そうじゃなくて! 元の席に戻れよ!

 

「芽以が来る前に帰るわ、妹よ、ゆっくり待ってて」

 

 ヤタガラスの手を掴み、立ち上がる。

 

「ちょ、バルデス……」

 

「俺にとって都合悪いんだ、頼むよ」

 

 引き留めようとしたケルベロスに、お願いして店を後にした。

 

 ……自然な流れでヤタガラスを連れてしてしまったな。一応解いておく。

 

「手を繋いでてごめんな。感情が元に戻ったんなら、気分悪いだろ」

 

 あんなにベタベタだったのも、サタンのおかげなんだ。本心じゃない。それを喜んでる俺はクズだろう。

 

「感情はこの店に着いた時点で戻ってたよ」

 

「どういう事だ?」

 

「男も案外悪くないんじゃないかなって」

 

 もしかして、ジュースで酔ってる? オレンジで酔ってる?

 

「答えは見つかったのか」

 

「うん、私は……バイだよ」

 

 斜め上じゃねえか! ひっそり進化しやがった!

 

「でも俺は元勇者。魔王を倒した奴に報復したくないのか?」

 

「この世界じゃまだ危害無いし、バルデスには勝てない。今度、魔王に報復するか相談する事にした」

 

「ありがとな」

 

 ヤタガラスは俺の手を握って先導するように歩き出す、ボソボソ何か言っている。

 

 

『初めておかしな耳を褒めてくれた事が、一番の理由だよ』

 

 

 

 

 スラとイムたちは、録画分のカップルを見ていた。ソファーは相変わらず2人の居場所。

 

「グミおいしー」

 

「そうですね。これが同胞ですか……」

 

 龍樹の言葉を鵜呑みにしてしまったスラ。仲間を食べる事に抵抗は無いらしい。

 

「同胞も食べたり、使ったりして犠牲にして生きてゆくのだ……あぁ、なかまよ……」

 

「洗顔剤切れちゃった、今度りゅうきに買ってもらお! とか言っていた癖に何言ってるんですか」

 

「えー! かっこよく言ってみたくない? スライムキング的な」

 

 スラは指で弾いてグミを口に飛ばす。

 

「せめて使う量を減らしていたら、尊敬してました」

 

 カップルのCM枠が終わり、本題に入った。

 

 

『こんな監視カメラ映像を見る必要があるのですか?』

 

『……おかしいですねぇ噴水の上にあったエロ本が消えてしまいました』

 

『一体どうして?』

 

『このエロ本は氷で出来た見せかけだった。とでも言うべきですか』

 

『まさか、凶器が発見出来なかったのは……』

 

『このエロ本で川崎さんを殴り、平然とラベリングしてその辺に放置した。というのが筋でしょう』

 

『この辺のエロ本氷像家を探せ!』

 

『居るとは思いませんが』

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