この世界がおかしいとスライムだけが知っている   作:ec

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20話

- すらすらーん -

 

 手を引かれて付いた場所は……弁当屋だった。

 

「唐揚げ弁当お願いします」

 

 若干人は居るが、ヤタガラスは気にせず注文している。

 

「少しお待ちくださいね」

 

 店員が見えなくなると、ヤタガラスが鼻歌を歌いつつ帰ってきた。あぁ、とても嬉しいそうだが。

 

「バルデスが払ってね!」

 

 だろうと思ったよ! なんで俺なの? ねぇ!

 

「はあ……マジかよ」

 

「えー、ダメ?」

 

「ダメっていうか、そんなに食うの? 異世界の時もそんなに食う?」

 

 コイツガツガツ食わないくせにめっちゃ食うのかよ! 俺は腹張ってるのに!

 

「うん……」

 

 ちょっと頬を赤らめながら、頷いた。何恥ずかしそうにしてんだこいつ。

 

「で、でも! 運動はしてるもん!」

 

「本当かよ」

 

「こう見えてスレンダーボディなんだから」

 

 俺の手首を掴み、お腹を強引に摩らせてくれた。これで細いとかどうなってんだ。

 

「本当だな」

 

「よく食べて、よく寝て、よく食べて、よく寝て。この世界はつまらなーい」

 

「運動してねぇ……」

 

 テニス選手とかが聞いたら、キレそうだな。

 

「悪い、ちょっと電話していいか?」

 

「いいよー」

 

 ヤタガラスは、そう言いつつ俺の肩を背もたれにして倒れかかる。

 

「寝る?」

 

「ちょっと疲れただけ。気にしないで」

 

 俺は芽以に通話を行使するのだった……!

 

「あ、もしもし? 芽以?」

 

「うん。龍樹からなんだね」

 

「妹はどうだ? 一回着信来てたんだけど」

 

 妹を見捨てたクズ野郎という印象を拭わないとな。

 

「特に問題は無いよ。料理出来たから、一緒に食べようって思っただけ。心配しないで」

 

 その言い方は心配するんだけど。

 

「終わったからじゃないのか」

 

「食べるのは美味しい時にしたくて、寝かせてる!」

 

 クズ野郎じゃなくて良かった。よく考えたらそんなにすぐ料理が出来るわけないよな。

 

「ありがとな、芽以も頑張れよ」

 

「うん、あたしがんばる」

 

 スマホをポケットにしまい、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「終わったよ」

 

「動きたくないな〜」

 

『えーと、唐揚げ弁当でお待ちの〜』

 

「行こっ!」

 

「どうして俺の周りは食欲旺盛なのか」

 

 俺が代金を支払い、唐揚げ弁当の入った袋をヤタガラスが受け取る。当然だよな!

 

「どこで食うつもりなんだ?」

 

「立ち食いしたい気分、でもダメだよね」

 

「……近くの公園に行くか」

 

 俺達はゆっくり歩き始めた。

 

「そんなんあるんだ」

 

 正直、芽以とも来たことない所だ。スラと行きたいんだけどなー! ……しばらくは無理な話だな。

 

「人は居ないかな」

 

「えー、イチャイチャ見せつけれないね〜」

 

「その羽に息を吹きかけてやろうか? 流石にさせてもらうぜ」

 

「だ、ダメだって……ひょあえ!」

 

 可愛く唸り、空いている手で耳を摩っていた。ストレス消えたわ!

 

「顔赤いなー」

 

「うう……」

 

 涙目でチラッと俺を見ると、すぐ逸らした「いじわるダメだもん」辺りらしい。俺は悪くない!

 

「まあまあ、手を繋ごうぜ」

 

 ぷくーっと頬を膨らますヤタガラスと手を繋ぎ、横断歩道橋を渡る。

 

「もう少しで公園つくから、ね?」

 

「繋ぎ方……」

 

 普通に四本の指を包んで繋いだのがダメだったのか。

 

「これがいい?」

 

 ヤタガラスの指と指の隙間に、俺の指を絡ませるように手を握り直す。

 

「うん」

 

「無駄に女っぽいな、何か変なの食った?」

 

「食べちゃったのかも」

 

 何を食ったのかは敢えて聞かない事にした。絶対滑りそうだからな。

 

 歩道橋を渡ってしばらく歩き続けると、公園に着いた。人は当然いる訳もなく。

 

「本当に居ないね」

 

 ヤタガラスに呟かれる始末。そりゃ、遊具とか少しあるけど錆びてるからな。

 

「ま、そのベンチに座ろう」

 

 急かすように座らせ、弁当を開かせた。

 

「人が居ない分、らしい事も出来るだろ」

 

 車が通り過ぎる音が心地よく感じるくらい静か。芽以ならつまんないなって言いそう。

 

「らしい事……」

 

 ヤタガラスは呟きつつ、唐揚げを一口齧ってから放り込む。

 

「おいしい〜」

 

 頬を手で抑え、羽耳をピコピコして喜びを表現していた。

 

「美味しそうに食べるよな」

 

「おいしいもん。1個あげよっか?」

 

「良いのか」

 

「バルデスが買ってくれたんだし」

 

 1番大きい唐揚げを割り箸で摘むと、俺の口に入れてくれた。なんだろ、凄く美味しく感じた気がする。

 

「ありがとな、美味いよ」

 

 パリパリは流石に無いけど、冷めても味付けが濃くない。

 

「えへへ」

 

 ヤタガラスは嬉しそうに俺との隙間を埋めると、ご飯とキャベツ、唐揚げをバランスよく食べ始めた。そういう時に限って邪魔者が現れるんだが、現れてしまった。

 

「バルデス、魔力を感じる……」

 

 俺達の目の前には、闇の渦が浮いている。

 

「どういう事だ?」

 

「四天王とは違う魔力、多分下っ端の魔物の予兆が」

 

「俺が倒すから食ってろ」

 

 立ち上がり、渦に警戒しながら歩み寄る。途端に五匹の魔物が抜け落ちると、渦が消えた。

 

 俺の記憶通りだと、猫みたいなサイズと体で緑と黒の体毛。ゴブリンキャットか。

 

 最下級の魔物で、スライムより若干上かもしれないレベル。

 

「ミャーグー」

 

『バースト・カラミティ』

 

 俺は何も無い空間から白銀の鉄パイプを引き抜く――

 

「なんで鉄パイプ!?」

 

 咄嗟にヤタガラスはツッコミを入れる!

 

「俺が聞きてえわ!」

 

 長さはいつもと変わらない、見た目変わるんだな。紋章も手の甲に引っ付いてるから問題は無い。

 

 20%ダウンのせいで体が少し重いがな!

 

「ミャー!」

 

「ミャーー!!」

 

 俺は、遠慮なく一撃で薙ぎ払った。

 

 

 

 

 暗くて、所々ヒビが入っているボロアパートの一室で会議が行われていた。

 

「俺とお前だけか……」

 

「ヤタガラスとケルベロスはまだ勇者の討伐任務から帰還してない」

 

 ちゃぶ台を2人の男が囲い、お茶を啜りながら話を弾ませていく。会議というのは2人でも言えるのだろうか。

 

「勇者はスキルが使えないはず。手間取るのはおかしいな」

 

「僕達が使えるなら、使えるかもしれないよ? ギルダーも勘ぐるの辞めなよ。疲れるだけ」

 

 ギルダーという男は顔を顰める。

 

「しかしなぁ……魔王は見つからねえし、どうすんだ」

 

「僕が聞きたいくらいだよ」

 

「魔王さえ見つかれば、ここに用はないのにな。もうレウスも出陣で良くね?」

 

「なんで僕!? 確かに僕より強いギルダーは残るべきだけど、どう転んでも嫌な予感しかしない」

 

 レウスはなるべくお出かけしたくないらしい。

 

「だが、この世界を考えると早急に魔王見つけないとなあ」

 

「魔物が出てきた場所を線で繋いだ中心に居ると思ったけど、ハズレだったね」

 

「うむ。あ、今日はカップルの最新話じゃね?」

 

「見ないとね」

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