取り返すまでの物語 作:みかみ
夕焼けに照らされ、赤く染まる公園で彼女は言った。
『おっきくなったら一緒にヒーローになろっ!』
いつかの古い記憶だ。
まだ俺たちが小さかった頃の大切な記憶だ。
その後に2人で話し合ったんだ。
確か、どんな風にデビューするか、どうやって戦うか、そんなことを話した。
俺は結構乗り気で彼女と話した気がする。
今では、彼女と話すことも叶わない。
暗くなるまで夢中で彼女と遊んで、話して、
いつも通りの日だと思ってた。
でも
『とてもいい"個性"だね。僕に貸してくれないかな?』
男がそう言って歩み寄って来た。
俺たちは子どもながらにソレに恐ろしさを感じて必死に抵抗した。
暗い街中を助けを求めながら走った。
街は暗く、いつもならある人通りも無かった。
息も絶え絶えになって逃げ込んだ廃工場で思わず座り込んでしまった。
そこにはあの男がいて、俺たちは何もわからないままねじ伏せられた。
俺が最後に見たのは、男に頭を掴まれた彼女だった。
その後のことはあまり覚えていない。
次に目が覚めたのは病院で、俺たちは2人とも入院した。
入院している間に警察に事情を聞かれたり、男の特徴を聞かれたりしたけれど、あれだけ恐ろしかった男の姿が朧げで思い出せなかった。
それから2ヶ月も経てば俺は退院した。
でも、10年が経った今でも、彼女の目が覚めることはなかった。
「何の為にここに来てんだ」
巨大な0P敵から我先にと逃げ出す受験生たちを視界に収めながら、
準備をする
あのデカブツを倒す準備だ。
頭部を貫くイメージをする。
左の手のひらを標的に向ける。
力は充分溜まった、あとはこれを放つだけ。
「俺の邪魔をするな」
文句を1つ挟んだところで、
光を放った
「このリスナーもスゴかったよな!!0P敵に風穴開けてて、これにも思わず叫んじまったぜ!!」
モニターには0P敵の頭部を貫く白い光が映っている
ビームだぜ!ビーム!
と、騒いでる同僚を視界に収めながら話題になっている受験生のデータを見る
================================================
[氏名]
[個性] 未知のエネルギーを形成し操る
[住所] 東京都 ○○市 ○○-○-○
○○中学在学中
================================================
確かに見込みがある受験生だ。
最初から最後まで個性による体力の消耗を抑えるため、近距離では持ち込んだ棍で撃破数を稼いでいた。
棍の扱いには無駄がなく、適度に個性での撃破もしている、実に合理的だ。
個性の強さも今見た通り、かなりのものだ。
だが、やはり気になるのが、この受験生が10年前に起きたある未解決事件の被害者である、ということだ。
こいつは多分雄英に入学するだろう。
その時、こいつが自身の抱えているものを克服しないと、雄英が与える壁は乗り越えられない。
本当のヒーローになれるかはそこで別れる。
「なあイレイザー!お前もそう思うダロ!?」
「うるさい」
「さあ!相澤君も山田君も次の受験生の評価にうつるのさ!」
こうして長い作業は続いていった
「なんだか呆気なかったな」
自分の部屋に戻り独り言をこぼす。
先程まで行っていた試験のことだ。
でてきた仮想敵は全体的に脆いものだったし、冷静にあたればそう難しいものではなかった。
ただ、最後の巨大な0P敵は時間も体力もだいぶ消費してしまった。
「またまだ改善点はあるな」
あとは合格発表を待つだけだ。
雄英に入学して、力をつけて、ヒーローになってアイツを
「捕まえる」
俺の目標を再確認したところで、いい加減疲れたから飯食って、風呂入って、寝るか。
〜数日後〜
「やっと来たか」
目の前に置いてあるのは雄英からの封筒だ。
今朝、家のポストを確認したときに発見したものだが、妙な膨らみがある。
「?」
手紙と同封されていたそれを取り出してみてもイマイチ何だかわからない。
しばらく適当にいじってみる。
すると、どこかのボタンを押したようで、
『私が投影されたっ!!』
画風が濃い大男がいきなり映し出された。
「……」
『驚いたかなっ!?驚いたよねっ!!何故雄英の合格通知で私が出てくるって?
何故なら私が雄英の教師になるからさ!』
「……」
『巻きで話さなきゃいけないから手短かに伝えるぞ、霊弾少年!
筆記は十分合格圏内だ、言うことなし!
そして、実技だが、見事な実力で仮想敵を倒していたね!
敵P 78P! これだけでもかなり凄いが、我々が見ていたのはそこだけではないんだ。
もう1つの採点基準、救助P!審査制で30P!
それらを合わせて 108P! 今回の試験のトップさ!
待っているぞ、霊弾少年!
ここが君のヒーローアカデミアだっ!!』
プツンと途切れる映像
口角が釣り上がるのを自覚する。
目標に近付いたのだと思うと歓喜する。
ようやくだと、ここから始まるんだと心が荒れ狂う。
「全て返して貰うぞ」
何度目かわからない宣戦布告をした
多分続かない