魔法科高校の野生人(仮題) 作:虚弱な溶原性細胞
『Gaaaaaaaa‼︎‼︎DELTAaaaaaaaa‼︎‼︎』
『おっと!』
一気にジャンプで襲いかかってきたアマゾンを躱して背中側へ回り込むと、彼はその背中に拳を叩き込む。
『Guaa!』
『!』
体制を立て直したアマゾンが再び口から黒い塊を発射するのを彼はスウェーで躱す。
彼に躱された黒い塊はコンクリートの壁に命中すると、途端にコンクリートが溶け始めた。
『危ねぇじゃねぇか。 溶けちまうとこだった』
『Geaaaa!!!!』
生身の時に喰らわなくて良かったと、彼は胸を撫で下ろす。
(コンクリが溶けるって事は酸性の毒か。 モチーフはコブラか? 進化してるならありえない事もないか)
通常コブラの持つ毒は神経毒であり、呼吸中枢を麻痺させる作用を持つ。
その為、この毒はコンクリートを溶かす事はない。
だがアマゾンとして独自に進化を遂げているなら、持つ毒が神経毒でない事もありえない話ではないのだ。
(なら、当たらない様に動くまで...!)
アマゾンが吐き出してくる毒の塊を左右に躱し、右肩から抉り取る様に攻撃する。
『Gyaaaaaaaa⁉︎⁉︎⁉︎』
『終わりだ!』
アマゾンが右肩から先を取られて怯んだ隙に上へ跳躍し、再び左手でアクセラーグリップを捻りこむ。
《VIOLENT SLASH》
ベルトからの音声と共に両腕シェルカットグローブのアームカッターが起動する。
『ウラァッ!』
右脚へ力を集中させて空気を踏み締め、前方のアマゾンに向けて超低空へ突っ込む。
すれ違う瞬間に脇腹へアームカッターを叩き込んだ。
だが—
(斬った感触が軽い...逃したか?)
そう、皮だけを斬った様に感触が軽い。
背後を振り返ると、確かに斬った証拠である黒い液体が飛び散っていたが、その量はアマゾン一体分にしては少なかった。
そして周囲には何のニオイもしない。
(追うにしてもこの状況じゃ無理か...まったく厄介な事に巻き込まれたな)
ベルトを外すと外気から熱が吸収され、異形の姿と化していた彼の体が元に戻る。
ベルトをアタッシュケースに戻すと、ケースの中からチーズバーガーを取り出して食べる。
「あの...」
「ん?」
建物の影から先ほど攻撃を躱すために、無理矢理伏せさせた少女達が出てくる。
「ああ...さっきは突然済まなかった」
「いえ! 助けて頂いてありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「...どういたしまして、で良いのかな? 気になる事もあるだろうけど、取り敢えず場所を変えよう」
そう提案すると近くの喫茶店へ移動した。
——————————
「こんにちは、マスター」
「おう、いらっしゃい。 女の子2人も連れて来てんのか?」
少女2人を連れて近くのこじんまりとした喫茶店へやって来た彼は、喫茶店のマスターから軽口を叩かれた。
このマスターの名は
「...彼女ら、アマゾンに襲われたんですよ」
「...わかった、店を閉めよう。 奥のボックス席が空いているから案内しなさい。 飲み物はどうする?」
「適当に見繕ってください。 それと例の物もお願いします」
奥のボックス席に2人を案内する。
「えーっと...取り敢えず自己紹介かな。 俺は水澤翼、四月で高1になる」
「光井ほのかです。 水澤さんと同じく四月で高1になります」
「北山雫。 水澤さんやほのかと同じく四月で高1」
「みんな15か。 入学する高校は?」
「私も雫も第一高校なんです」
「ありゃ、そこまで同じなのか」
「水澤さんも第一高校に?」
「翼でいいよ」
「わかった。 じゃあ翼って呼ぶ」
「雫!?」
「別に構わないさ...えと、光井さん、北山さん」
「えっとじゃあ、翼さんで。 私もほのかで構わないです」
「私も雫で」
「わかった、ほのかさん、雫さん」
「雫」
「...わかったよ、雫」
「ん!」
「私も...いいですか?」
「わかったよ、ほのか」
なんでこの子たち、こんなに押しが強いの...と考えたが、その理由も分からなかったので、翼は話を戻す。
「話を戻すけど、一科生として入学する予定なんだ」
「私達もなんですよ!」
「いっしょ」
「あ、そうなのか」
なんだかんだで4月から通う学校も同じである事が分かり、話がある程度膨らんだところでマスターが4人分の飲み物と、2つの小さな手持ちケースを持って来た。
「お待ちどうさん。 ブレンドコーヒーで良かったか?」
「ありがとうございます」
マスターは3人にコーヒーを配ると、翼の隣へと座る。
「あなたは...」
「紹介が遅れたな、俺は雁木啓介。 ここで喫茶店のマスターをしている。 翼とは爺さん繋がりで小さい頃からよく知ってる。 まあ保護者みたいなもんだ」
「それで翼は私達をこの喫茶店に?」
「それもあるけど...もう1つ、ね」
「それって、さっきのと関係が?」
「関係も何も、翼が君達を連れてきたのはそれが本題だからな」
マスターはほのかの問いにそう答えると、盆に載せてあった数枚の写真とプリントをテーブルへ表向きに置く。
「これって...」
「...さっきのと似てる?」
「モチーフ自体は違うだろうが、れっきとした同種族の生物だよ。こいつの名は...」
「アマゾン」