【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。   作:よるくろ

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初投稿です、
よろしくお願いします。


【1】前途多難な異世界転生

「ンー…面白い動画がないなぁ…」

 

 さらりとした長い茶髪に少し顔立ちの整った男。その男は黒いベッドの上でyou◯ubeで投稿された動画を漁っていた。

 手足は酷く細く、顔色も少し悪い、健康的な生活を送っていないのが目に見えてわかる。

 部屋のカーテンは閉め切っており、机の上には大学校の参考書やノート、シャープペンシル、消しゴムがあり勉強はできると考えられる。

 

『カズマ、朝食はここに置いてくから、食べたら扉の前に置いといて』

 

 部屋の外から女性の声が聞こえる、男…佐藤カズマの母親は階段を降り玄関から外へ出る。どうもいつもより早口で違和感があったが特に気にもせず扉の前に置かれた朝食を部屋に持って入り机で食べる。ほかほかの白いご飯に、鮮やかなピンク色に、少々の塩がふりかけられた鮭。

 箸置きに置かれている箸を取り、両手を合わせていただきます、と挨拶する。だがカズマは4、5口ご飯と鮭を食べ終えると、また手を合わせ、ご馳走様、と挨拶する。

 すると、カズマに異変が…

 

「あ…れ………」

 

 

 ドサリと体が床に倒れ伏せ、意識が朦朧とする。目の前がボヤける、体が動かない。どうしたのだろうとカズマは思考を働かせる。

 考えられる原因は一つ。あの食事。そう、毒が入っていたのだ。学校にも通わず、親である自分たちにも相談せず、自分に部屋に引きこもってばかり。そんなカズマに、母は嫌気がさしたのだろう。

 そう、佐藤カズマは引きこもるあまり家族から毒殺されたのだ。何故、何故。そんな疑問を感じながらも、毒はカズマを蝕んでゆく。

 ジワジワと意識が失われる中。カズマは一言…憎しみの言葉を発する…。

 

 

 

 

「あの鮭…許すまじ…」

 

どこか見当違いな遺言を残しながら、引きこもり天才ニート、佐藤カズマはこの世を去った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 広い宇宙空間が圧縮されたような部屋で、カズマは椅子の上で意識を覚ました。見渡すと、磨かれた大理石のような石材で作られた床、そしてカズマの周りを廻る淡く白い光。

 

「午前◯◯時◯◯分、佐藤カズマさん、お気の毒ですが貴方はお亡くなり

になりました」

「…ふぁ?」

 

 気づけばカズマの目の前に、青を基調とした露出の高い服を着た美麗な女性が膝に手を置いて、カズマの死を告げていた。

 

「私は水の女神“アクア”。突然ですが、貴方には3つの選択肢があります。

 

1つ、記憶を失い輪廻転生を果たすか。

 

1つ、天国へ行き、のんびりとした空間で過ごすか。

 

1つ…元の世界とは別に、剣と魔法のある異世界へ行くか。

 

さあ、選んでください」

 

 オススメは3番目ですけど、と言いながら何処からともなく取り出したスナック菓子を食べだしたアクアという女神。いつのまにか正しかった姿勢は崩れており、先ほどまであった“形だけ”の女神の威厳は失われていた。

 

「…え、えっと、せ、選択肢と言われても…す、少し考えさせてください」

「どうぞ…まぁ、あまり時間かけられても困るけど」

 

 思考する許可を得て、カズマは理解しようとする。この状況を。死んだと思った自分が何故ここにいるのか、地球での自分はどうなったのか、今この状況はなんなのか、と。

 すると、カズマは過去の記憶に、ある情報を引き出す。ネットサーフィンをしていた時に興味を惹かれ、自分の想像を文字にして書き出し、ネットにアップする娯楽のジャンルの中で数多くあるもの。

 

「…異世界転生…?」

「ふぅん、今の状況に辿り着くくらいの知識はあるようね。まぁ説明し忘れた私が言うのもあれだけど」

「…と言うことは、特典もあるんですか?ほら、戦闘経験の何もない日本人への救済措置みたいな」

 

 カズマが問いかけると、アクアは手をパンっと叩く。するとカズマの目の前に分厚い本がポンっという音と共に現れ、カズマの膝に落ちる。

 

「それはあなたの言う特典が書かれた辞書のようなものよ。主に代表的な神器とか、才能が得られるわ。でも過度な期待はしないでちょうだい?あんま強すぎても、力に溺れちゃうだけだから。過去にそう言う人が何人も居たわ」

「…そうですか。では拝見します」

 

 ペラっとページを捲ると、エクスカリバーやカリバーン。数多の種類の武器や盾が写真と共に載っていた。その武器の特性や弱点などの詳細も細かく書かれており、全て読むにはかなりの時間がかかりそうだ。

 だがカズマはそんなめんどくさいことをせず、気に入ったものを適当に特典に決めようとページを捲る。が、どれもしっくりくるものはなく、やがてはページの最終ページまで捲り終わってしまった。

 だが、最終ページにはこのようなものが記載されていた。

 

『貴方様が気にいる特典がございませんでしたら、この辞典以外の特典を選んでいただいても構いません。貴方様が望む『もの』を、度を越えぬ限りなんでも差し上げましょう』

「…望む『もの』、ねぇ…」

「ねー、早く決めてちょうだい。私も暇じゃないの、この後ゲームのイベントが始まっちゃうんだからー」

 

 痺れを切らしたのか、アクアが先ほどよりもさらに砕けた態度でカズマを催促する。カズマはアクアをジッと見て、何かを思いついたのか口角を少し上げ、アクアを指差す。

 

「じゃあ、女神アクア。お前を持っていく『者』にする」

「はい。じゃあ真ん中の魔法陣に立って……あんた今なんて言った?というか急に敬語が無くなったわよ?!」

 

 信じられない事を聞いたような顔と声色で問いかけながら、カズマに近づき肩を掴んで揺らす。ガクガクと頭が揺れるカズマだが、未だに口角は上がっている。

 そう、カズマはアクアを持っていく『者』として選んだのだ。自分を転生させる立場、それも女神だというのだから、何か強大な力を持っているに違いない。とカズマは思考の末この結論を出したのだ。

 足元の魔法陣が輝く、青く美しい光が眩く発光して、カズマとアクアの体を浮かばせる。するとアクアの座っていた椅子から金色の光が出現し、それは一瞬にして人の姿…いや、天使の姿へとなった。

 

「それではアクア様、この後の仕事は私、天使長ミカエリスが引き受けます」

 

 翼の生えた幼女…天使長であるミカエリスがアクアに告げる。天使長というのだからそれなりに偉い立場なのだろうか、とカズマは光に照らされる中どうでもいい事を考えているが、アクアはそれどころではないようだ。

 

「え?ちょ、ちょっと!この特典なし!やり直し!」

「では…佐藤カズマ様、貴方が魔王を倒した暁にはどんな願いも叶えてあげましょう!」

「いやぁぁ!!それ私のセリフゥゥゥ!!!」

「この素晴らしい世界に‘祝福,を!!!」

「いぃぃやぁぁぁぁ!!!」

 

 視界は真っ白に染まってゆく。同時に体全体に浮遊感を感じ、慣れない感覚に少し恐怖したのかカズマは近くで暴れているアクアの腕であろうものに抱きつき、目を閉じた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 ドスンっと臀部に衝撃を受け、うぐっと苦痛の声を漏らすカズマ。抱きついていたアクアの腕から手を離して、尻についた土を払いながら立ち上がる。次に目を開けると、そこは中世ヨーロッパの様な街並み。様々な日本では見慣れない風景が視界に入った。

 

 そこらを走り回る子供や、その子供達に注意する、大きな剣を背中に携えた大男。他にも耳の長い、エルフらしき女性や、何か動物の耳が頭部に生えている男女がこの大きく広い道を歩いていた。

 横では座り込んでいるアクアが嗚咽の声を漏らしており、カズマはそれを見つけるとしゃがみ込んでアクアの背中を撫でた。

 

「うぅ…うっぅ……」

「お前選んだの謝るから、泣くなって」

「どーしてくれんのよ!?魔王倒すまで帰れないじゃない!」

「ンー…まあ、そこら辺は程々に頑張ろうかな」

 

〜閑話休題《それは置いといて》〜

 

 しばらくしてカズマは、ようやく落ち着いたアクアを連れて噴水の前にあるベンチに座る。そしてこの後の事をアクアに問いかける。

 

「今からどうすれば良いんだ?」

「そうね…まず冒険者ギルドに行きましょう。幸い、ミカエリスが二千エリスを旅資金として送ってくれたみたいだし」

「エリス?」

 

 聞き覚えのない通貨をカズマは耳にする。アクアの手には女性の横顔が彫られたコインが四枚乗っており、カズマはその一枚を手に取ってまじまじと見つめる。

 するとアクアが口を開き、カズマが手に持っている通貨の説明をする。

 

「この世界の単価の名は『エリス』、大体1円1エリスと解釈して良いわ」

「へー、やっぱり日本とは違うんだな」

 

 変なところに感心しているカズマと、若干気落ちしているアクア。この二人がこの世界で今後どのような生活を送るのか。それは神でもわからない…。

 

 





文章を大幅に変えました。セリフなどはあまり変えてません。
今日からは1〜6話までの文章を修正することにします。次話投稿するのはもう少し先になりそうです。楽しみにしてくださっていた方、申し訳ありませんでした。
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