【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。 作:よるくろ
盗賊と聞いただけで、このすばを知っている方なら誰が出るか知っていますでしょう。
無事(?)めぐみんの爆裂魔法によって引きつけられたカエルの群れをゆんゆんとカズマが撃退した後、カズマ達はギルドに戻らず、平原の中心に生えている一本の小さな木の下で一休みをしていた。
実を言うと、カズマは過剰討伐による追加報酬を狙っていた。先程の戦闘でクエストクリアに値する討伐量は超えているのだが、いかんせんこのクエスト一つの報酬は少し少なめだ。ならばクエストを繰り返せば良いのではないかと思ったが、いくら腐るほどいるジャイアントトードとはいえ、狩り過ぎれば生態系に支障が出る。対策として、このクエストには一パーティに回数制限があるのだ。
だからカズマはクエストをすぐに終わらせず、メンバーが回復するまで休息を取ることにしたのだ。
「…回数制限じゃなくて討伐数制限にすれば良いのにな…つってもそれで困るのは俺らだけど」
「『エクスプロージョン』!はい、これで私の勝ちですね」
「うぅ…さっきから思うけど、その戦法狡くない?」
「いいえゆんゆん、これはれっきとした”一撃必殺戦法“です。そもそも『エクスプロージョン』の発動条件が難しいのですから、これくらいは目を瞑ってくださいよ」
「うっ…か、カズマさーん」
めぐみんの言葉に反論できないのか、ゆんゆんはカズマに助けを求める。「んー?」と間延びしたような返事を返して顔を向けるカズマは、背中をずらしてめぐみんとゆんゆんの方へ体を倒した。
「めぐみんを倒してください!」
「ほほう、次はカズマが相手ですか。いくら私達のリーダーだとしても!紅魔族随一の頭脳を誇る我が知能の前では無力!」
「…まぁいいけど、ルールブックはある?」
「あ、はいここに」
カズマはゆんゆんから渡されたルールブックを軽く読んで、体を起こしてゆんゆんの座っていた場所に座る。殆どの役職が揃う盤面を挟んで、めぐみんとカズマは見合った。
「良いんですか?そんな適当に流し読んで。後で負けても言い訳にしないでくださいね?」
「んー…取り敢えず、…やろうか」
先攻はめぐみん。
「アークウィザードが爆裂魔法を撃つためには10ターン必要なので、ここは籠城作戦。防御力の高いクルセイダーを前線配置します。そして遊撃としてウィザードも前線配置です!」
「んー…確か5マス射程だから…アークプリーストの『ブレッシング』をアーチャーに使用。アーチャーで『狙撃』…っと、『ブレッシング』で命中率に補正が掛かってるから命中。射程は5マスだからギリギリアークプリーストに届くから御退場願います」
「なっ、ワンターンキル!?なるほどそんな戦法が…ではこちらも同じ、アーチャーでアーチャーを『狙撃』!厄介な芽は摘んでおきましょう」
「アークプリーストで『蘇生』。アーチャーが蘇ったから、次は盗賊を前に出して『スティール』。アーチャーの矢筒を盗んでアーチャーは盗賊が倒されるまで攻撃不可」
初心者のはずのカズマがめぐみんに善戦し、ゆんゆんは片唾を飲みながら戦況を見守る。そしてターンにして8ターンが過ぎた頃、めぐみんの”一撃必殺戦法“の要である『爆裂魔法』が発動しようとしていた。
「ふっふっふ!あと1ターンで『爆裂魔法』発動!近くに相手の戦闘職は居ませんし、これは勝ちましたね!煽りとしてカズマの冒険者の前に移動させます!」
「あぁ、カズマさん…もう誰にもめぐみんは止められないのね…」
「フハハハハハ!我が侵攻を止めるなど不可能!我が力の前に平伏せ___」
「冒険者の、アークウィザードに『ドレインタッチ』。『爆裂魔法』を5ターン先延ばし」
「「え?」」
「更に冒険者の魔力が回復したからアークウィザードに『ティンダー』で火傷効果付与。そしてアーチャースキルの『狙撃』で至近攻撃。アークウィザード退場」
「は、は、はぁぁぁぁ!?なんですか『ドレインタッチ』って!そんなスキルなんで持って!」
「だってアークウィザードを蘇生させたら何故かリッチーになったし、味方のリッチーだったら冒険者がリッチーのスキルを持ってても問題ないでしょ」
結果、カズマの勝利。そんなこんなでわいわいと楽しく休みの一時を楽しんでいたら、散歩と称して歩き回っていたアクアが帰ってきたようだ。
「ただいまー」
「おかえりー。さて、十分休憩できたし、もう一狩り行くか」
「そうですね…えっと、確かめぐみんは爆裂魔法を撃ったから休憩で、私はカズマさんの後方支援に回れば良いんですよね?」
「ん、アクアは一応めぐみんの側で待機。この近くにモンスターがいないとも限らないし、走って俺たちの所まで逃げればいいから。こっからそう遠くないところで戦うし」
「分かりました。気をつけてくださいね?」
「了解、じゃあゆんゆん、あそこの2匹を倒そうか」
「了解です!」
そしてカズマとゆんゆんは木から離れて、戦闘を行う。カズマの背後からゆんゆんの魔法は迷わずカエルに直撃し、倒せなくてもトドメを刺す前衛カズマのコンビネーションでカエルを次々と倒して行った。
やはりゆんゆんを仲間に加えたのは正解だったようで、次々と倒されるカエルを見て爽快感を覚えたカズマは、結局夕日が沈む時間帯になるまでクエストを続けていた。
結果は、30後半。これ以上はギルドから注意されてしまうかもしれないので、わざわざ討伐ペースを遅くしたのだ。
「よし、これでいいか…おーい、帰るぞー」
「ふぅ…あ、レベルが上がってる!これであと少しで上級魔法を覚えらますよカズマさん!」
「はいはい…正直中級でも十分強かったけど、上級になるとどれくらいの威力になるんだろうな」
そこのところが気になるカズマだが、まずはギルドに戻って報酬を受け取らないといけない。カズマはめぐみんを背負ってきたアクアとゆんゆんを引き連れて、アクセルの街へと帰還した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「こちらジャイアントトードの討伐報酬に過剰討伐を加えた42万エリスです!お受け取りください!」
「はい。…そういえば、これ受け取ったままなんですけど使って良いんですか?」
「えーと…はい、大丈夫です。ですが貸し出し期限がありますので、今日含めた十日以内に返却してください」
「了解です。ありがとうございました」
「はい!お疲れ様でした!」
受付嬢ルナに報酬をもらって、仲間の待つテーブルへと歩くカズマ。そろそろスキルでも習得しようかと冒険者カードを覗くと、『ライトニング』や『ファイアーボール』などゆんゆんが使用した魔法があり、さらには消費ポイントのえげつない『爆裂魔法』までもが書かれていた。
習得するにはどうしたら良いのか、テーブルにたどり着いたカズマはゆんゆんと遊んでいるアクアに聞いてみることにした。
「なぁアクア、スキルの習得ってどうすればできるんだ?」
「確か…えっと貸して?確かポイントの足りてる欄をなぞれば習得できるんだけど…ポイントが足りないから今は無理ね。このポイントの数だったら初級魔法しか取れないわよ?」
「マジか…いやー、俺も手から炎とか出してみたかったなぁ」
「お困りのようだね」
突然のその声と共に、カズマの肩にポンと手が置かれる。突然の事で驚愕するカズマは誰かと振り向こうとすると、顔を半分ほど後ろに向けたところで頬に圧を感じた。
所謂つっかえ棒とやらをされたカズマはそのまま頬をグニグニとこねられ、離される。解放されたカズマは振り向き、犯人の姿を視認する。
銀髪のショートカットに、いつぞやの女冒険者を彷彿とさせる露出度。紫色の双眼はカズマの目を見据えており、悪戯っ子の様な笑みを浮かべていた。
「ひっかかったー…ってね、君がダクネスの言ってた『爆裂の母』って子?女の子みたいだから正直不安だったけど、その様子じゃ合ってるみたいだね」
「…すまんなカズマ、クリスにお前のことを話したら一眼見たいと言うから…」
クリスの後ろにはダクネスがおり、申し訳なさそうな顔をしている。
すると、クリスが思い出したかのように口を開く。
「っと、紹介が遅れたね。私はクリス、職業は盗賊だよ。よろしく」
「…この流れは私もしたほうがいい感じか?私はダクネス、クルセイダーを職業としている。よろしく頼む」
「あ、あぁ、よろしく。…それで、クリスさんは何の用なんだ?」
「クリスでいいよ!スキルに関して困ってたようだからね、私が持つ盗賊スキルでも教えようかなと思って」
「…無償で?」
「無償で。と言っても初心者に要求するものなんて無いでしょ?」
その通りである。一応何かリスクが無いかと探るカズマだが、ただ同業の先輩からスキルを学ぶだけ。詐欺なんてことは起こるはずもないかと判断して、カズマは承諾した。
クリスから学んだものは、『敵感知』と『潜伏』、そして今から学ぶ『窃盗』だった。
前者の二つの実験台とされ、頭に石をぶつけられたダクネスが『潜伏』を使って樽の中に隠れるクリスを樽ごと転がすという事件が発生した。悲鳴を上げながら転がされるクリスだったが、ようやく怒りを収めたダクネスによって引き摺り出されたようだ。
「さ、さて、次は『窃盗』だね…『スティール』っと、お、いきなり当たりかな?」
「あ、俺の財布…」
「じゃあ返…いや、こうしよう。今から君が『窃盗』を取って、この財布を取り返してみなよ。勿論他の物を盗っても君にあげる。このダガーなんか15万もくだらない業物だよ?幸運値が大事になるスキルだけど、やる?」
「…まぁいいけど、…嫌な予感がするのは気のせいかな」
「大丈夫!確か君幸運値が高いでしょ?私もかなり幸運値が高いから、変なことは起こらないはずだよ!」
「………じゃ、習得して…行くぞー」
「バッチこい!」と言わんばかりに自信満々な表情で待ち構えるクリス。彼女も幸運値が高いと豪語していたからか、カズマから盗った財布はおろか価値の低いものだけしか取れないとたかを括っていたのだろう。
だが、それは間違いであった。
「………『スティール』!」
右手を伸ばしたカズマの掌中に、確かに何かを握った感覚があった。それは布のような、そしてすべすべとした素材で作られたもの。
そしてクリスには、“下半身”に謎の違和感。理解していないのか、はたまた理解したくないのか、彼女の表情は硬直している。無論カズマも。
カズマの右手に握られた、この状況を作り出した張本人。何を盗ったのか察したカズマは握ったものに目を向けず、ポツリと呟いた。
「…お返ししましょうか?」
「お願いします」
真っ赤な顔で、クリスは財布を差し出して頭を下げた。
やはりカズマはパンツとの因果関係は切っても切れないようです()
クリスの幸運値が高いってことは、やっぱりパンツを盗られたかったんですかね?いやでもカズマの幸運値が上回っていたと考えるとカズマのパンツ因果(パワーワード)がそうさせたのでは…?
個人的には前者の方が面白いですね。
では次回もお楽しみくださいませ…