【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。   作:よるくろ

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 梅雨明けの始まりなのに、蒸し暑いこの夏の始まり。皆様はどうお過ごしでしょうか。
 私は私と同じ身長の氷枕を抱きしめながら、時に執筆に勤しんだり、時に今まで柱に刻んできた傷跡を見ながら自身の身体の成長具合に悩んだりしています。
 さて、今回はタイトルで予測できる通りの話です。原作とは殆ど変わりありませんが、それでも私の性癖ゲフンゲフン好きなカテゴリーに当てはめた物語になっております。
 どうぞごゆっくり、お読みください…。


魔王軍幹部、アクセル襲来編
【18】 小さな魔法使いの爆裂実験


「カズマカズマ!爆裂散歩に行きませんか?!」

 

「…ん?」

 

 

 ギルドの早朝、いつも通り一番安いカエルの唐揚げを頬張りながら寝ぼけていると、少し興奮した様子のめぐみんがとんでもない単語を含んだ散歩のお誘いを提案した。

 

 口に含んだままのカズマは質問をするために、水で口の物を流し込む。

 

 

「ズズ……爆裂散歩って?」

 

「その名の通り、爆裂魔法を撃ちに散歩に行きます!前回の報酬で良質なマナタイトを手に入れたので、魔法の威力が上がっているはずなのです…ハァ…ハァ…!」

 

 

 自分で言葉にして、それに興奮してきたのか杖を身体に擦り付け始めるめぐみん。

 

 カズマはそんなめぐみんから目を逸らしながら、カエルを一口頬張る。

 

 前回のキャベツの報酬で、カズマパーティの装備はかなり上質なものになったと言っても良いだろう。

 

 めぐみんは言った通りに上質なマナタイトを携えた杖。ダクネスはオリハルコンを含んだ堅牢な鎧に新調し、ゆんゆんは魔力伝導の優れたワンドや物理防御に優れたローブなど、色々なグレードアップを果たしていた。

 

 ただ一人上記に含まれなかったアクアはというと、元々アクアの身に付けていた装備は女神専用の神器のようなもののようであり、ありとあらゆる状態異常を無効化するといった代物なのだそうだ。

 

 故に装備のグレードアップは必要なく、大好きなお酒に金を注ぎ込むのかと思いきやそうはいかなかった。

 

 元々アクアの報酬は少なかった。何故かというと、アクアの捕まえた野菜が殆どレタスであり、アクアが捕まえたキャベツはほんの少しだけ。

 

 だからアクアの報酬は少ない上に、アクアはとあるツケ、借金をしていた。

 

 

「シュワシュワ…だけでなぁ」

 

 

 それは、酒である。

 

 彼女はギルドに約六桁に迫るほどの借金をしており、今はギルドの無償雑用をやらされている。

 

 話を戻すが、パーティの装備はかなりアップグレードされた。

 

 めぐみんの提案はこれからの方針につながる行動であり、カズマは少し悩みながらもそれを了承した。

 

 

「…まぁ、いいけど。どこでやるんだ?クエスト行くにしても魔王軍の幹部だとかで俺らのレベルに合う仕事はないけど?」

 

 

 “魔王軍幹部が、アクセル付近に存在する城に住み着いた”。

 

 その事実がギルド内で発覚したことは昨日であり、カズマの耳に届いたのはつい先ほどである。

 

 目的は不明、魔王軍幹部が率いる軍団の数も不明。

 

 全てが謎に包まれている身近な不安は、冒険者達の仕事にさえ影響した。

 

 モンスター達が、姿を隠し始めたのだ。それも、駆け出しにとって美味しい経験値や報酬を落とす弱いモンスターだけが。

 

 恐らく魔王軍幹部の存在が生態系を狂わしているからなのだろう。

 

 逆に駆け出しでは太刀打ちできない強いモンスターなどが生態系の変化に影響してか、凶暴になっているため、ギルド側からのクエストが極端に減っているのだ。

 

 だがめぐみんは心配ないという表情で無い胸を張ってこう答える。

 

 

「大丈夫です!昨日のうちにモンスターの生息地や縄張り、そして爆裂魔法を撃っても大丈夫なルートを発見しましたから!それにクエストは受けなくても大丈夫ですよ?」

 

「…まぁ最近暇だしな…乗った」

 

「ぃよし!」

 

 

 ガッツポーズして喜ぶめぐみん。

 

 そんなめぐみんを横目に見ながらカズマは最後の一つとなった唐揚げを口に押し込んで、立ち上がった。

 

 腰にはいつもの剣。長い髪を耳の後ろにかけながらギルドの外へと歩き出し、微風に揺られている扉に手をかけて、未だ動かないめぐみんの方へ顔を向けた。

 

 

「…どうした?お前が道案内してくれないと分からないんだが」

 

「___…ハッ!は、はい!今行きます!」

 

 

 少し呆然とした様子のめぐみんはカズマに声を掛けられて初めて動き出し、慌てて外へと歩き出すカズマに着いていく。

 

 二人が出て行った後のギルドは早朝だからか静かであり、そして人は少なかった。

 

 

「…なぁ、カズマさんって男…だよね?」

 

「そ、そのはずですけど…あの仕草や落ち着いた大人のような雰囲気を見ると…」

 

「「…見えない(ません)よねぇ…」」

 

 

 カズマに助けられたことのある駆け出し冒険者二人の言葉は、今ギルドの中にいる冒険者や従業員の心の声を、代弁したものであった…。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 アクセルの街から数十分歩いた場所。

 

 ある程度舗装はされているがガタガタな道路を歩くめぐみんをカズマは爆裂魔法を撃ち込む対象を探していた。

 

 

「…んー、あれとかダメか?」

 

 

 カズマが指さす方向にはかなり大きい岩。凡そカズマの三倍の身長があり、その存在感はただの岩と認識しきれない。

 

 だが、めぐみんは頭を振った。これで五回目だ。

 

 

「あれは少し脆そうです…」

 

「あれが脆そうって、お前」

 

「しょうがないじゃないですか!カズマと出会った時の爆裂魔法ではあの岩を壊せませんでしたが、今では爆裂魔法に使う魔力が無駄になるくらいなんですから!」

 

「また強化したのか爆裂魔法」

 

「しょうがないじゃないですか!私は爆裂魔法以外を愛せない身、残ったスキルポイントが勿体無いという私の貧乏性も相まって爆裂魔法を強化するしかないのですよ!」

 

「ハァ……ん、あれは…?」

 

 

 不意に、カズマの視界の端にとあるものが映った。

 

 それは岩というにはあまりにも大きく、家というにはあまりにも小さく、そして堅牢な雰囲気。

 

 つまるところ、カズマが視界に映したその城は、めぐみんのお眼鏡に適いそうな条件に当てはまっていた。

 

 カズマの指の先を追ってその城を視界に収めためぐみんは目を赤々と輝かせながら興奮を抑えられない声色で喜びの言葉を口にした。

 

 

「いいですねぇ良いです!あれこそ我が爆裂魔法が超えるべき壁!更なる進化を遂げる為、あの我が栄光なる爆裂道を塞ぐ悪なる城に爆裂の鉄槌を下しましょう!」

 

「…爆裂の鉄槌て…魔法攻撃なのか物理攻撃なのかハッキリしろよ」

 

「行きます!黒より黒く、闇より暗き漆黒に___!!!」

 

 

 詠唱。するとめぐみんを取り囲むように魔力の奔流が取り囲み、その力強さを相手に見せつけるように荒々しく吹く。

 

 良くも悪くもカズマが前回見た時よりも強力になった発動前の『爆裂魔法』の気配は、カズマの顔を青くさせるくらいに強大だった。恐らくカズマは胸中でこう思っているだろう。

 

 “こんなもん街の近くでぶっ放したらヤベェ!”

 

 と。

 

 だがそんなカズマの心中など気にしないように魔力の奔流はより強く、より荒々しくなり、やがては一つの魔法陣を展開した。

 

「万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!」

 

「エクスプロージョン!」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「うぅ…」

 

「まぁ、まだ明日があるだろ。それに今まで見た爆裂魔法魔法の中で一番強かったぞ?ベストを尽くせてよかったじゃないか」

 

 

 結局半壊させただけで完全に壊すまでに至らなかった廃城。

 

 そのせいですっかり落ち込んでしまっためぐみんを背負い、カズマはめぐみんを慰めながら帰路に着いていた。

 

 

「ですが…うううううう!!!」

 

 

 そんなカズマの慰めも虚しくめぐみんは落ち込むばかりで、悔しさのあまりカズマの首筋に顔を埋めて呻く。髪から香る良い匂いに癒されながらも、めぐみんは明日こそ壊して見せるとリベンジ精神を燻らして鼻息を鳴らす。

 

 

「擽ったいからやめてくれ…おっと」

 

 

 突然横から飛び出して来るゴブリン。魔王軍の所為で弱いモンスターが姿を隠したとはいえその脅威が完全になくなるはずもなく、獲物を見つけた魔物がカズマとめぐみん目掛けて飛びかかる。

 

 カズマはそれを『ワープ』を使って避け、腰に携えた剣を片手で抜いて一振りで葬り去る。めぐみんは流れるような一連の流れに思わず「おぉ…」と感心の声を上げて、同時に顔を赤らめる。

 

 

「えっとカズマ…片手で支えてるからなのですが、かなり食い込んで…」

 

「ッッ!!すまっ、すまません!?」

 

 

 思わず剣を落としてめぐみんを背負い直すカズマ。そんなテンパるカズマにめぐみんはツボに入ったようで、ケラケラと笑っている。

 

 

「あはははは!なんですかす、“すまません”って!」

 

「むぅ……『ワープ』」

 

 

 カズマはむくれながらもめぐみんをまた背負い直して、剣を収めるために柄を足先で触れて、『ワープ』を発動させる。

 

 すると足先にあった剣は“パッ”と消えて、鞘の中に現れて収まった。

 

 『ワープ』の応用で、触れたものをワープさせることができるのだ。大きいものに連れ消費魔力は大きくなるが、それでも使い勝手がいいのは事実。

 

 それにこれを発見したのはカズマであり、それをウィズに報告すると魔法の進歩だ!と騒いでいたとか。リッチーとしてではなく、昔の人格が一瞬戻ってきたようだ。

 

 

「ははっはぁ〜…ははっ。あ、そろそろ見えてきましたね…そんなにブスくれないでくださいよ、可愛い」

 

「振り落としていい?」

 

「調子に乗りました」

 

 

 かなりガチで怒っている事を察しためぐみんは平謝り。それに怒気を少し和らげたカズマは少し歩行の速度を緩めて、空を見上げた。

 

 雲一つない快晴で、青々とした空が広がる。

 

 だが遠くの空から曇天が迫って来る。それを見て少し嫌な予感を感じたカズマは、不安な気持ちを押しとどめて少し緩めた速度を上げて、アクセルの街へと急いだ。

 

 無意識にめぐみんを抱える腕に、力を入れながら。

 

 





【人物紹介】

 カズマに助けられたことのある冒険者(男)

 ゴブリン退治のクエスト途中ヘマをしてゴブリンに殺されそうになったところを助けてもらった。
 最初は女性だと思い一目惚れして、化粧品や花束などを送ったのだが、後で男だと発覚した後儚い夢がぶっ壊された感覚に陥った。
 それ以降カズマのことを先輩として慕うようになり、今ではカズマに紹介された同じ境遇を持つ女の子とタッグを組んで冒険者稼業を営んでいる。

 カズマに助けられたことのある冒険者(女)

 魔法の使いすぎによって動けなくなっていたところをギルドまで運んで貰った。
 最初はやはり女性だと勘違いしていたが、後に男性だと発覚したときは新しい魔法(扉)を覚えそうになったらしい。
 最近カズマに紹介された冒険者が童顔な顔立ちをしているため、密かに女装させる事はできないかと日々目論んでいる(カズマも対象)。
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