【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。 作:よるくろ
実はNo○aの方で本命の小説を書いていて、そちらに集中するあまりハーメルン様の方を疎かにしていました。
本命の小説があらかた書き終えたらこちらの方の頻度が上がると思います
人の負の感情を含んだような暗く重い雨。まるで泥水がそのまま雨となって降って来るように、身体で弾ける雨粒一つ一つが、カズマにはとても痛く感じた。
灰色の曇天はカズマの心を鏡写しのように黒く染まり行き、そして、カズマの前にいる小さな魔法使いの面影を消そうとする。
カズマは、堪らず声を掛けた。
「なぁめぐみん…」
だが、すかさず返ってきたのは、拒絶の言葉だった。
「もう…放っておいて下さい!どうせ私など必要ないのでしょう!?役に立たない他人に迷惑しかかけない魔法使い…___”先が短い魔法使い“なんて!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「エクスプロージョンッ!!」
爆風と共に崩れる廃城。
だが全壊とまでは行かず、“不自然に奥の部屋だけがしっかりと残る”廃城を見てめぐみんは落胆の表情と共に倒れ伏した。
「…今日も、ダメでした…」
「まぁ、まだ始めて一週間だからなぁ…レベルアップもしてなければスキルポイントで魔法の強化もしてないし、そんなに容易ではないだろ」
「よっ」と掛け声を上げながらめぐみんを背負い、空を見え上げるカズマ。
「…それにしても、雨が降りそうなのに降らないな…」
「ホントですね…この辺りは比較的雨が降りやすいのですが、なんででしょう…?」
「うーん…まぁここで考えても仕方ないな」
「です…ね。帰りましょうか」
まだ雲が薄い所為か、明るい灰色が空全体に広がる。
この雲がやってきたのは、カズマ達が爆裂散歩をし始めた初日の翌日くらいであり、その時からこの”雨の降らない雨雲“はやってきた。
「帰ったら何か食べませんか?」
「んー…俺は腹減ってないかなぁ」
「えー…いいじゃないですか、一緒に唐揚げ食べましょうよ」
「唐揚げ…油物ばかり食べ続けると太るぞ?」
「うぐっ…」
その雲からはただの一粒の雨も降らず、そして決して晴れることはなかった。
そんな見たこともない異常に冒険者達の不安を燻り、最近は勘のいい冒険者などが少し早い休業の支度をし始めた。
雨になんの違和感も感じていない冒険者は言った。「何故冒険に出ないのか?」と。
冒険者は言った___
___「こういう天気には、首の無い騎士がやってくるんだ」と。
「ついたー。着いたぞー」
「あ、あぁはい…ふわ…」
カズマの背中が心地よく、思わず眠ってしまっためぐみんはカズマの声と揺らされる身体の感覚によって意識を微睡から覚ませる。
カズマの声の次に聞こえてきた、ギルド特有の騒がしい声がめぐみんのボーッとする頭を覚醒させて、カズマに一言声を掛けて降りた。
まだ無意識に抵抗する瞼を擦っているめぐみんに、カズマは意地悪な質問を掛ける。
「で、寝起きの唐揚げでも行くか?」
「…カズマは、私に太れと?」
「冗談だよ。そう睨むなって」
カズマが戯けるように謝ると、めぐみんはむくれながら机に向かう。
カズマもめぐみんに続いて机へ向かおうとすると___異変は起こった。
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは戦闘態勢で街の正門に集まってください!』
ギルドの騒音を掻き消すような放送と共に、騒いでいた冒険者全員が跳ね上がるように武器や防具を身につけてギルドを出る。
「!、キャベツか?」
「いえ、時期的にあり得ませんし、何よりキャベツの二期作なんて聞いたことがありません。それに戦闘態勢…嫌な予感がします」
「とりあえず、ご飯は布を掛けて保存して…行くか」
「…はい」
カズマとめぐみんは急いで冒険者達の後を追い、正門へと駆けつけた。
そこには町にいる冒険者全員がおり、その中には当然見知った仲間もいた。
「…あっ、カズマ!遅いじゃない!」
「悪い、遅くなった」
いち早くカズマの到着に気づいたアクア。
それに波及してカズマのパーティメンバーもカズマに気付き、駆け寄った。
「何があった?」
「そ、それが…」
ゆんゆんが口籠もりながら指を刺し、そしてカズマもゆんゆんの指の先に目を向けると…それはまさしく“異常”だった。
黒い
そして何より、“首がない”。それは騎士も、騎馬も。
その代わり騎士の首は身体の脇に抱えられており、兜の隙間から覗く赤い目がこちらを睨みつけるように光っている。
首無し騎士のデュラハン。カズマは地球にいた頃の知識を引っ張り出して、目の前の異常に確定づけた。
そしてそんなカズマ達を含めた冒険者全員を見渡しながら、デュラハンが口を開いた。
「俺はつい最近この近くの廃城に越してきた魔王軍の幹部の者だが…」
「幹部…」
“魔王軍幹部”という単語にカズマは言葉を漏らして、デュラハンの次の言葉をまつ。
そしてデュラハンの次の言葉は…まるで火山の噴火のように出てきた。
「ままま、毎日毎日毎日毎日!ポンポンポンポンと俺の城に爆裂魔法を打ち込んでくる頭のおかしい大馬鹿者はどいつだあああああああああぁぁぁぁ!!!!!」
「爆裂魔法?」
「爆裂魔法っていやぁ…」
レベルの低い駆け出し冒険者が集まる街の中で、爆裂魔法を覚えている頭のおかしいアークウィザード。そんな問題児はただひとり。
「うわぁ…」
「ありゃりゃ…」
副犯のカズマと主犯のめぐみんは“やっちまったな”と言わんばかりの顔で顔を見合わせ、頷く。
そして冒険者達が開ける道を通ってデュラハンの前に、二人で立った。
「お前が…お前が…ッ!」
「おい、めっちゃ怒ってるけど。お前のせいで」
「カズマ!?この期に及んで責任を私だけにするにやめてくださいよ!カズマも同罪ですからね!」
「えっ、俺も?壊したのめぐみんじゃん」
「私を運搬したカズマも同罪なんですよ!なに平然と“私関係ありません”みたいな感じ出しちゃってるんですか!」
「やかましいわああああああぁぁぁぁぁああ!!!」
突然始まった二人の喧嘩にデュラハンは痺れを切らして怒鳴り上げ、結果的に仲裁する。怒りながらも二人に話を聞いていたデュラハンはめぐみんに指を刺して、怒りを発散させるために文句をぶつけた。
「お前!俺が幹部だと知っていて喧嘩を売っているなら堂々と城に攻めてくるがいい!その気がないなら街で震えているがいい!ねぇなんでこんな陰湿な嫌がらせするの!?どうせ雑魚しかいない街だと思って放置しておれば調子にのってポンポンポンポン撃ち込みに来おって!頭おかしいんじゃないのか貴様!」
「誰が頭のおかしいアークウィザードですか!それにいくら上位職でも私は駆け出し冒険者!そんな私が爆裂魔法の練習をするのがいけないと言うのですか!?初心者が強くなるために練習するのを貴方は禁止するのですか!?」
「練習だったらもっと他の場所でしろよ!?なんでウチなの!?百歩譲って七日に一回なら俺だって許したよ!あぁもう一週間過ぎたのかって目安にもなるし!けど一日一回クッソデッカイ音を鳴らす爆裂魔法を放たれてみろ!?そりゃノイローゼにもなるわ!俺が魔力で固定してるからいいものの、それがなかったら城がおじゃんになってたぞ!?」
「というか元々アンタの城でもないだろ」
「やかましいわ!というかなんだお前は!俺とこの馬鹿の話し合いの横で地味に土を俺の方に蹴り飛ばしやがって!鎧汚れるだろ!」
「そう陰湿なのが得意なので、アンタの城にも結構悪戯したと思うけどなぁ?気づかなかったか?」
「は?何かやったのかお前」
「『ワープ』つかって城の玄関に石ころとか大量にばら撒いたり、お前の部屋の換気窓の外に家畜のフン置いたりしたけど」
「お前かあれ!俺完全に気配なかったから部下がやったと思って数十体くらいボコボコにしちゃったよ!つーかお前が置いた糞の所為で俺の部屋が臭えんだよ!どうしてくれんのお前!」
「体臭と思って過ごしたら案外楽かもよ」
「俺の体臭は家畜のフンじゃねえんだよ!…ハァ、ハァ。クソ、埒があかん!」
熾烈を極めためぐみん、カズマ、デュラハンの言い争いはデュラハンが痺れを焦らしてめぐみんに向けて指を向けたことで終止符が打たれた。
「“死の宣告”ッッ!!!」
「なんっ!?」
「なっ!」
指先から怪しい瘴気が放たれ、それがめぐみんに向かって飛んでいく。
予想外の出来事にカズマは反応できずに固まり、当然めぐみんも自分に向かって放たれた瘴気に反応できずまともに食らってしまう。
背後から“ゴンッ!”という重い何かが地面へ叩きつけられる音がしたが、カズマ達は特に反応を示さず、急に胸を押さえて呻き出しためぐみんを凝視していた。
「よく聞けめぐみんとやらよ!今お前に放ったのは『死の宣告』!断言しよう。お前は一週間後に死ぬ!お前は死の恐怖に怯え苦しむことになるのだ!!」
「なん…!?」
「苦しいだろう?辛いだろう?それがお前の愚行の証、愚かな愚者の末路!貴様のような頭のおかしい魔法使いにはお似合いの死に様であろう!」
「てめェ…!」
デュラハンの物言いにカズマは憤慨し、『ワープ』を使いデュラハンの背後へと移動する。そして無骨の剣を振りかぶり、隙だらけのその背中を叩き斬ろうとした。
”ガキィンッ!“
「なっ」
「『ワープ』か…随分と懐かしいスキルだ。だが…この俺には通用せん!」
奇襲は失敗に終わり、一撃を防がれたカズマはデュラハンの反撃の一撃を貰おうとして、『ワープ』で退避する。背中は冷や汗でぐっしょり濡れており、剣を持つ手はカタカタと震えている。
”死ぬところだった“場面に初めて遭遇したカズマはこの世界に来て初めて命の危険を感じ、恐れた。それでも、となりで呆然としている小さく偉大な魔法使いの為に無理矢理笑みを作って剣を”ギシリ…“と握る。
「…良い面構えだ。貴様、名はなんという?」
「…カズマ…サトウ カズマだ」
「そうか…俺の名は”ベルディア“。この俺に一太刀掠めさせた戦士カズマよ、その魔法使いの呪いを解いて欲しくば、俺の城を攻略し、俺を打ち倒すことだ。それができなければ…俺の呪いはその魔法使いの”生“を蝕むだろう」
「…」
ベルディアは馬を返して、アクセルから去る。
その鎧の背中には、一筋の小さな傷が残されていた…。
いかがでしたでしょうか、私的には枕の方の文章が一番書くのが大変でした。
次の投稿はいつになるかはわかりませんが、楽しみにしていてください。
それでは、次回をお楽しみに…